2022年8月26日 | カテゴリー:Column the Reflection 後藤秀樹,ライターコラム
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前回ベガーズ・オペラ(Beggars Opera)を取り出して原稿に向かっていると、レコード棚の隣でクレシダ(Cressida)のセカンド・アルバム『Asylum』のマネキンが微笑んでいるように思えた。今も人気の高いクレシダは69年から70年というわずか2年間の活動で2枚のアルバムを出して消えていく。レコードは入手困難な上に高価で手が出なかった。しかし、その後CDの時代となり何度も再発され待ちかねたマニアばかりでなく新たな若いファンによって聞き継がれてきた。
◎画像1 Cressida/Asylum
驚いたのは2011年になって英国Record Collector誌が主導した形で『tropped in time-The LOST TAPES』という未発表テープが発掘されたこと。過去の未発表作品がリリースされることは既に珍しいことではなくなっていたものの、そこに収められた曲は、人気が高いセカンドの『Asylum』ではなく、ファースト・アルバムの楽曲ばかりだった。それにもかかわらず大きな評判を得たのは、クレシダというバンドが「今」という時代に息づき愛されているという事実の証に思えた。
既に作品も評価を受けており、バンドについても知られていると思うが、今回はクレシダについて掘り下げてみたい。
バンド結成の中心となったのは、初代ギタリストのジョン・ヘイワース。68年3月、地元シェフィールドを離れロンドンで活動していたジョンは、アンガス・カレンと出会い共同で曲を書き始めた。バンド名はチャージ(Charge)と決めていた。年末までにキーボードのロル・コーカー、ベースのケヴィン・マッカーシー、ドラムのイアン・クラークと出会うことでバンドが整い、新たにクレシダという名前に変えることにした。
◎画像2 Cressida member #1+#3
クレシダというと天王星の衛星の名前であるとか、ギリシア神話に素材を求めたシェークスピアの『トロイラスとクレシダ』の恋多き女性クレシダを思い浮かべてしまうのだが、それほど大きな意味は持たず、アンガスは「単に言葉の響きがよかったから」と答えていることには、ちょっと力が抜けてしまう。
彼らがリハーサルをしていたのはノース・ケンジントンオール・セインツ・ホールというところで、そこは当時ピンク・フロイドもよく訪れていた場所だった。
68年12月にそのホールにオジー・バーンというプロデューサーが現れ、オーディションを受けた。彼はオーストラリアでビージーズを見出し、ロンドンに連れて行って初期のヒットを生んだ立役者。年が明けて69年1月に彼らはオジー・バーンのプロダクションとマネージメント契約を結ぶことになる。すぐにロンドン周辺で演奏活動を始め、ハンブルグのスタークラブにも登場した。結構過酷な日程だったが、3月にレコード会社との契約に向けたデモをレコーディングする。
当初は米エレクトラとの契約が予定されていたのだが、急遽英フィリップスが関心を示し新たなレーベルヴァーティゴ(Vertigo)からデヴューすることが決まる。気持ちが落ち着いた中でしばらくマーキーをはじめとするロンドン周辺のクラブ周りが続いた。しかし8月にロルが家庭の事情で脱退。新たなキーボードを見つける必要に迫られる。幸運にもイアンの友人からピーター・ジェニングスが紹介され、オーディションの結果すぐに加入が決まった。そして9月に確定したメンバーで改めて独スタークラブに向かい、イースト・オブ・エデン(East Of Eden)、コラシアム(colosseum)と共演している。
そして10月にロンドンに戻りレコーディングを始めることになる。
その忙しい時期(11月)に、クレシダは当時共産圏だったチェコスロバキアのブラバチスラで行われた「第1回スロヴィアンスキー・ビート・フェスティヴァル」にも参加している。これは8月のマーキーでのギグに訪れたカップルが申し入れたものだった。バンド側も半信半疑で聞いていたが、まさか実現するとは思わなかったようだ。西側の音楽も禁止されている状況の中での演奏だったが、世界中の若者はやはりウッドストックの影響から「自由と平和」を願っていたことがわかるエピソードだ。(この時のクレシダの演奏写真が2017年になってFacebookに投稿されていて驚かされた。)
◎画像3 Cressida Stage in Czchoslovakia(1969)
70年2月に彼らのファースト・アルバム『クレシダ(Cressida)』(VO7)がリリースされた。2月13日の金曜日だった。同時発売のブラック・サバスの最初のアルバム『ブラック・サバス』(VO6)に合わせたわけだ。ちなみにロッド・スチュワートの英国ソロ・デヴュー作『An Old Raincoat Won’t Ever Let You Down』(VO4)も同日に発売されている。フィリップス傘下の新興ヴァーティゴ・レーベルとしては2回目の発売となる。
◎画像4 Vertigo 発売広告1970 Feb
今となっては伝説的なヴァーティゴ・レーベルとその販売戦略があるのだが、当時はクレシダのメンバーにとってはヴァーティゴというレーベルも数多あるレコード会社のひとつに過ぎなかった。当然クレシダのメンバーにとっては新興レーベルということでどんなものなのか未知だったわけで、むしろ当初話に出た米エレクトラ・レコードの方が広く知られた存在で魅力的だったかもしれない。
◎画像5 Cressida / Cressida (1970)
クレシダの最初のアルバム『Cressida』をプログレ作品として期待したら、その意味・意匠がよくわからないデザインのジャケットと、12曲という収録曲の多さに戸惑ってしまうかもしれない。
現在という時点で聞くとポップなアート・ロックといった趣もあり少々古さも感じないわけではないが、60年代後半にあって多くのミュージシャンが時代の変化を感じ取り、自分たちの音楽をどのように体現していくのかを模索していった時期のひとつのサンプルとして非常に興味深く面白い作品になっている。
★音源資料A Cressida / To Play Your Little Game
オープニングの①からオルガンとヴォーカルが印象的。ギターもリズムもシャープ。何よりも輪郭のはっきりとしたメロディーを奏でていることが素晴らしい。
アンガスのヴォーカルは技巧派とは言えないが、演劇や朗読劇的な舞台での歌唱のようで、ロック・ヴォーカリストしては柔らかく聞こえて異色。アルバム12曲中10曲がそのアンガスの作品なのでその柔らかさを持ったメロディアスな曲調がクレシダのスタイルなのだと受けとめることが出来る。
シングルになっても良さそうなポップな曲が多く、ボッサ的な雰囲気、ジャージーな味わい、フォーク・ロック的なアコースティックさと多彩な要素を含んでいるが、散漫な印象は感じられない。
★音源資料B Cressida / Depression
演奏の中心はピーターのオルガンとジョン・ヘイワースのギターということになるが、二人ともにテクニックは間違いなく一級品である。ピーターはオルガン中心だが、ピアノも曲展開に合わせて導入し、時にメロトロンも演奏する。そして、ジョン・ヘイワースもエレキばかりでなくアコギも多用し、曲のイメージをより深めることに貢献している。ただ、どちらのソロももっと長く続けてもいいのではないかと思わせる部分を多く感じるのも確かだ。
聞き所は各所に存在し、アルバムを通して聞くことを勧めたいが、ここでは特にポップな「To Play Your Little Game」「Winter Is Coming Again」の冒頭2曲、バンド名でもある「Cressida」、そして「Depression」、ラストの「Tomorrow Is A Whole New Day」を挙げておきたい。
アルバム中異色なナンバーは10曲目の「Spring’69」で、ギターのアルペジオをバックにアンガスのヴォーカルが静かに響く。題名と歌詞から、レコーディング契約を取り付けた時期の喜びを表したものだろう。それを遠慮がちに語るように歌うのだから、アンガスの人柄が垣間見える気がする。
彼らのアルバムは英国内では好意的に受け取られ、アルバム曲なのにラジオでも頻繁にオンエアされていた。アルバムの売り上げを伸ばすために、ヴァーティゴからは新たなシングルを録音するように提案を受け、「Situation」という曲を2月末に録音するのだが、これはリリースされなかった。(後にAnthologyとThe Lost Tapesに収録)
◎画像6 Cressida Anthology(Esoteric)
同時期、英国内をツアーした後、ヨーロッパに演奏の場を広げた。3月終わりに仏ルーアンで4日間行われた巨大サーカス・テントで行われたサイケデリック・ショーが特に印象的だった。360度円形ステージにライト・ショーというからさぞかし壮観だっただろう。共演はイースト・オブ・エデンとブライアン・オーガー&ザ・トリニティ。
一度英国に戻った直後、今度は独ミュンヘンでコラシアムと共演するのだが、バンド内で亀裂が生まれる。その結果、結局4月に帰国した時にバンド創始者の一人でありギタリストのジョン・ヘイワースが脱退してしまう。残ったメンバーにとってミュンヘンのイメージは悲惨だったという。その後1週間でオーディションを行い新たなギタリストになったのはジョン・カリーだった。
その後5月末すぐに再び仏アミアン郊外にある見事な庭園を持つベンタングル城に招かれ、演奏はもちろんだが、ひとときの休息も取ることが出来た。
6月にはBBCラジオのためにファースト・アルバムから「Winter Is Coming Again」と「Depression」の2曲のレコーディングを行った。ヴァーティゴからは2枚目のアルバムの作成のオファーを受け、もちろん彼らは同意した。70年6月に新たなアルバムに向けての準備が始まった。
セカンド・アルバムの作成にあたって、デヴュー時からのプロデューサーでありマネージメントも担当しているオジー・バーンと ①ピーター・ジェンキンスが作曲に加わること ②いくつかの曲にオーケストラを加えること ③長尺の曲を含める といった確認がなされた。
それら確認事項が出来上がったのは、アルバムのレコーディングに用意されたIBCスタジオの素晴らしい環境にもあったようだ。彼らのこれまでの歴史を振り返っていると、ファースト・アルバムのレコーディングを行ったWessexスタジオの充実ぶりに感心したり、各地のステージの様子を細かく把握したりしてきた様子がうかがえるだけに、レコーディングに向かう慎重さが作品の出来に反映されている印象を受ける。
◎画像7 Cressida / Asylum
冒頭のタイトル曲『Asylum』がまず凄かった。スピード感を持った曲ということもあるのだが、前作ではあまり目立たなかったリズム陣のイアン・クラークとベースのケヴィン・マッカーシーがしっかりと存在感を示していることが確認出来た。
★音源資料C Cressida / Asylum
そして『Munich』で圧倒される。キーボードのピーターのペンによる10分近い大作であり、今では英国オルガン・ロックの名曲のひとつに数えられている。誰もが納得する素晴らしい曲だ。
前半は静かに展開するが、中盤からのスピーディなギター・ソロはうまくツボを心得ている。それを受けてのピーターのオルガン・ソロも見事。曲は再び前半と同じ静かな映像を喚起するような落ち着きを見せた後・・・アンガスがア・カペラ・ヴォーカルを聞かせる。と、その直後ピーターのオルガンを合図に一気にクライマックスに突入する。オーケストラはそれまでストリングスだけだったのが、ホーンも加わって一気に盛り上がり、締めくくりには銅鑼が鳴る。
★音源資料D Cressida / Munich
CDになってからはあまり意識されなくなってしまったが、この『Munich』にはじつは本来次のように副題がつけられている。
Munich1938;Appeasement was the cry
Munich1970;Mine to do or die
前半の『Munich1938』とは1938年のミュンヘン会議において英国のチェンバレン首相がヒトラー・ドイツに対して行った宥和政策のことだ。それによりドイツによるチェコスロバキアの一部占領を認めたことで、ポーランド侵攻を招き、それが第二次世界大戦に発展するという大失態の政策。(以前、本コラムでWarm Dustを取り上げたときに、彼らも題材として取り上げていた有名な歴史の一断面である。)
一方の『Munich1970』の1970年は、自分たちがミュンヘン滞在中にジョン・ヘイワースとの間に亀裂が入り、彼が脱退してしまうことで訪れた危機状態を指しているのだろう。それでも残された自分たちは「やるしかない!」といった開き直りの気持ちの表れなのだろう。力の入った見事な演奏を聞かせてくれる。
アルバムは余韻を感じさせる間もなくレコードのA面ではあと3曲が続く。
これも何か歴史的なエピソードを感じさせる『Goodbye Post Office Tower Goodbye』だが、ここではアコースティック楽器のみの楽曲で、ピーターもピアノを演奏。ラストに原爆の爆発音が効果音として入っていることに衝撃を受け、『Munich』の最後に鳴る銅鑼とイメージが重なる。
その後の2曲が『Survivor(生存者)』と『Reprieved(戒め)』と意味ありげなタイトルが並ぶ。アルバム自体をトータルに捉える必要はないと思われるが、どこか、皮肉が込められたような曲が続いていく。『Reprieved(戒め)』は、ジャズ・トリオ風の演奏にハミングが乗っていてタイトルとは裏腹の軽快な雰囲気を持っている。
★音源資料E Cressida / Lisa
B面の『Lisa』はクラシカルで緊張感を伴ったストリングスとオルガンのユニゾンで幕を開けるが、途中で優雅な旋律も出てきてなかなか凝った構成。ここでは英国ジャズ畑のハロルド・マックネア(Harold McNair)がフルートとして参加している。続く『Summer Weekend Of A Lifetime』は、5月に訪れた仏ベンタングル城での思い出が歌われる。よほどくつろいだ時間を過ごせたのだろう。
ラストの『Let Them Come When They Will』は、脱退した前ギタリストのジョン・ヘイワースの作品だが、彼らのライヴの定番ということで収録された。メインのメロディーは基本としてあるものの、メンバーのソロ・パートを随所に盛り込むことで12分近くに膨らんでいる。ここにもストリングス+ホーンが加わるが、それらのアレンジは結構難度の高いものと想像できる。
ここでオーケストラを担当したグレアム・ホール(Gream Hall)という名前を調べてみたのだが、オーストラリアでジャズ・ピアニストとして64年にEPを出すことでスタート。その後、英国に渡って広くポップス系のアレンジャーとして活躍することになる。よく知られたところではニュー・シーカーズのアルバムにも参加している。プロデューサーのオジー・バーンとのつながりからの起用だろう。本作品にはもう一人、ポール・レイトン(Paul Layton)もアコースティック・ギターとしてクレジットされているが、彼もこの後ニュー・シーカーズに加わる時期があった。
アルバム『Asylum』の制作と前後して、70年5月以降ヴァーティゴ主催のギグが続き、Fairfield parlorとの共演を皮切りに、9月にはBlack Sabbath、May Blitzと一緒にオランダ、ベルギー、ドイツ等も同行し、10月にはさらにManfred Mann’s Chapter 3とも共演した。
しかし、なんとバンドの活動はそこでストップしてしまう。
ファースト・アルバムもライヴ・ギグも好評だったのに何故?
すべてはプロデューサーであり、マネージャーでもあったオジー・バーンが、運営面で行き詰まり、クレシダの未来を見据えたギグ等の予約を取れなくなってしまったためだった。あまりにも彼自身が采配を振るっていたために、他の援助は受けられない状況になってしまったようだ。
当惑したのは各メンバーだったが、特にピーター・ジェンキンスが早々に不満を示し脱退を表明。他のメンバーも平常心を保つことが出来なくなり、バンドがバラバラの状態になってしまった。
結局1970年11月にクレシダは解散することになってしまった。
皮肉にも『Asylum』が発表されるのは年が明けて71年の2月。前作以上にアルバムが好評で迎えられた時には既にクレシダは存在していなかったということになる。
◎画像8 Vertigo 発売告知 1971 Feb
ドラムスのイアンはユーライア・ヒープに加わり『対自核(Look At Yourself)』のレコーディング。ギターのジョン・カリーはブラック・ウィドウに参加。『Black Widow III』のレコーディング。まずはその二人がうまくリクルートが出来た。そう言えば、ユーライア・ヒープも2枚目まではヴァーティゴからアルバムを出していた。
ベースのケヴィン・マッカーシーはトランクィリティ(Tranquility)の結成に加わり、72年にファースト・アルバム『Silver』をリリースする。
アンガスは自作曲を作り、デモを作成したが実を結ばず、その後完全に音楽からは身をひいた。
音楽ビジネスに不満を持ったピーター・ジェンキンスは、新たな音楽プロジェクトに取り組み多くのバンドとの演奏に参加したが、思うような成果は得られなかった。非常に残念なことだった。
ポップスとロックのシーンにあって、このように消えていったバンドはそれこそ星の数ほどにある。私がクレシダを知り、実際に聞くことが出来たのは1980年代に入ってからになるので、当然過去のバンドとして、その素晴らしさを味わっているに過ぎなかった。
日本では当然のこと(?) アルバムが発売されたこともないばかりか、頼みの米盤も存在しないことから実際に聞くまでにはかなり時間がかかった。
当時ヴァーティゴのレコードでは、アフィニティ、ベガーズ・オペラ、スティル・ライフも米盤・国内盤で入手して聞くことができていたので、あとはフェアフィールド・パーラーとクレシダを聞きたい・・・とずっと頭から離れなかった。
◎画像9 Cressida First (Bootleg Record)!
最初手に入れたのはおかしなブートのLPだった。ファースト・アルバムは雑誌に出ていたオリジナルとは違って赤いジャケット。一緒に手に入れた『Asylum』の方は色合いも何か変なシングル・ジャケット。どこか求めていたものとは違ったものの、とりあえず彼らの音楽が聴けたことはうれしかったのではあるが。
聞く順番でいえば『Asylum』が先だった。それにしてもキーフのデザインの中でも印象度でいえばトップだ。表情のないマネキンの首が海岸にずらっと並ぶ。手前のひとつは横になり炎を出している不気味ではあるものの、それだけでひとつの短編小説が出来上がってしまうような、そんな世界観を持つジャケットに魅せられたのは私だけではないだろう。
ただ、このジャケットが決まったのもクレシダが解散を決めた後のことなので、メンバーには皆知らされていなかったものと思われる。英国ロックを象徴するひとつの存在となったことについて当人たちはどう思っているのかな・・・と漠然と考えていた。
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最初のきっかけは、90年に独Repertoireから彼らの2枚のアルバムがCDとして発売されたことだった。メンバーはすべてバラバラに生活をしていると思っていたが、アンガスとイアンはスコットランドのハイランド地方の同じ村に住んでいたことから、ずっと付き合いがあった。クレシダのCD化に伴い著作権使用料が生まれたことから、彼らは昔のメンバーに連絡を取ろうと考えた。
その結果、2007年までにメールでやりとりが出来るまでになった。ピーターはロンドンに、ジョン・ヘイワースとケヴィンは米国に住んでいた。特にケヴィンは、彼も皆と連絡を取ろうとしていたところだった。残念なことにジョン・ヘイワースは2010年1月に亡くなってしまった。彼は2人目のギタリスト、ジョン・カリーの所在を探し出したところだった。
2つ目のきっかけは、2011年5月にイアンが自分のレコードを売りに出そうとディーラーに連絡を取ったときに生まれる。たくさんのレコードの中にクレシダがあることを知り、何故それがあるのかを尋ねられ、イアンが「私がクレシダのドラマーだった。」と答えたことで、ディーラーは「自分はクレシダが大好きだった。今当時のメンバーはどうしているのか。」と熱心に聞いてきた。結局、直接に会うことになり、「現在もプログレ・ファンにはクレシダに興味を持っていて、未発表の音源があれば凄いことになる。」という言葉を受け、イアンは「オリジナル・メンバー全員に聞いてみる」と答え、実際に残されたテープの捜索が始まった。これも、メンバーの所在をつかんだ後だから出来たことだ。
それこそ、クレシダのメンバーが活動して録音したと思われる各国各所を探し回り、結果的に初期のデモ・テープを含め複数が発見された。レコード店のディーラーは英Record Collector誌のイアン・シャーリーと連絡を取り合い、話が一気に進む。発見されたデモをRecord Collectorのレーベルから12インチ・レコードにして発売したい旨をバンド側に伝え、2011年9月に同意を得た。それが、『Trapped in Time: The Lost Tapes』であり完全限定盤として発売された。翌年にはEsotericから2曲のボーナスを加えてCD化された。
イアンが自分のコレクションのレコードを売ることを考えなければ、そしてディーラーが違っていたら・・未発表音源の発表はなかった。 - まさに「偶然が生んだ奇跡」と言えるのではないだろうか。
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◎画像10 『Trapped in Time: The Lost Tapes』
私は限定盤だったLPは入手できず、翌年に一般流通されたEsotericのCDとして聞くことが出来た。この発掘アルバム一番のポイントはデヴュー直前のデモ音源ということで、キーボードがピーター・ジェンキンスに交替する前のロル・コーカー在籍時の演奏が聴けるところ。また、未発表になったシングル曲「Situation」も2ヴァージョンが収められている。
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その未発表音源の発表(2011年9月)に伴い、メンバーが40年ぶりに顔を合わせることになった。それももう一度演奏することを視野に入れて。スコットランドのイアンの家に集まったのは、アンガス、ピーター、ケヴィンの三人。前年死去したジョン・ヘイワースは仕方ないにしても、2番目のギタリスト、ジョン・カリーがマン島にいることはわかったものの参加できなかった。
顔を合わせた翌日に、彼らはリハーサル・ルームで一緒に演奏した。不在のギターの替わりはイアンと一緒に地元でバンドを組んでいるロジャー・ニーヴンが参加した。
その後も何度かセッションを重ね、満を持して11月29日にスコットランドのBlack Friars Highland Pubのステージに立つことになった。90分間、彼らが残した2枚のアルバムからのほとんどを演奏した。集まった多くの観客にとってクレシダというバンドは神話の中の存在でしかなかっただろうが、結果的には大成功だった。
そして2日後の12月2日はロンドンのカムデン、Underworldでのステージ。観客は若者が多かったというが、その前で彼らの演奏は大喝采を受けた。その日客席にいた著名な音楽ジャーナリスト、クリス・ウェルチのコメントがすべてを表している。「英国の伝説的なプログレッシヴ・ロック・バンドのクレシダのセンセーショナルなカムバック・ショーは、ファンと批評家を驚かせた。間違いなく、長いこと失われていたバンドのサウンドはプログレッシヴ・ロックの復権だ。」
★音源資料F Cressida / Munich Live 2011 (London Underworld)
驚くことにその翌日、カテドラル(Cathedral)というドゥーム・バンドのライヴでも30分のサポートを務めている。会場は同じロンドンのケンティッシュタウンのForum。これは本来Comus(!!!) が参加する予定だったが、リード・シンガーの急病で急遽依頼されたということだった。なんだか畑違いの音楽性のようにも思えるのだが、クレシダの登場は好意的に受けとめられた。
(Dawnから71年に独特の世界観を持った音楽性でデヴューしたComusも、実は2008年に再活動していたことを思い出す。その印象的なジャケットは忘れられないものだ。・・・ということは、急病のリードシンガーとはロジャー・ウートンだったのか。ただ彼らは翌2012年に来日してそのライヴCDも出ているので、大事にはならなかったということなのだろう。)
70年前後に活動を開始し、現在も活動を続ける息の長いバンドはいくつもその名をあげることは可能だ。そして長い時を超えてバンドのメンバーが同窓会的に集まることも、演奏を公開することも探してみれば結構見つかるのだろう。
私はクレシダのライヴを目にしたわけではないが、彼らの奇跡的な復活劇を振り返っているうちに、彼らはもちろんのこと、他の消えていった多くのバンドに思いを馳せていくことになった。
今回のクレシダの復活劇に当たって、もう一人マイケル・オーカーフェルト(Mikael Akerfeldt)の名前を挙げておかなくてはならない。彼はスウェーデンのバンドオペス(Opeth)を率いるギタリストで74年生まれ。オペスの最初のアルバム『Orchid』を95年に出している。
マイケルはクレシダの2011年『Trapped in Time: The Lost Tapes』がリリースされる時に、クレシダのサイトにその喜びを投稿し、オペスでの曲作りがクレシダに大きな影響を受けていることを伝えた。さらに自らのWebページを通じてオペスのファンに向けてクレシダのことを紹介した。
そしてオペスのエジンバラ公演では、マイケルはイアン・クラークをゲストに招いている。
◎画像11 Invaness one day Live 2013 + Melloboat Festival 2013 Poster
そうした経緯があって2013年に再度クレシダが復活する。それはマイケルの計らいでMelloboat Festivalへの参加依頼から始まった。もう2011年の再結成ライヴで終了したと思っていたメンバーも快諾し久々にイアンの元を訪れ、フェスティヴァルの3日前にはスコットランドで2年ぶりのライヴも行った。
そして9月6日スウェーデンのストックホルムから、バルト海を渡ってラトヴィアのリガまで17時間の航海に乗り、客船の中で1時間のパフォーマンスを行った。事前の告知も効果を呼び、大盛況だった。
★音源資料G Cressida / Tomorrow is a Whole New Day(2013/09/07)
クレシダの現役時代を知らない世代が、こうして盛り上げたということになる。
やはり、音楽は聞き継がれていくことが重要だと改めて思い知らされるエピソードのひとつと言えるだろう。CDとして過去の音源が再度紹介され続けてきたとはいうものの、CD化が未だかなっていない音楽作品はまだまだ多い。CDそのものが売れなくなったという話を寂しく聞く昨今の状況には、なかなか展望が見出せないかもしれない。CDにこだわらなくてもかまわないから、何とかならないものだろうか。(ただ、私たちにはサブスクの形はなじめず、やはりジャケットや情報が重要なのだ。)
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クレシダに関しては何度もCD化されてきていますが、2017年には日本でMarqueeから最初の2枚と『Trapped in Time: The Lost Tapes』が紙ジャケ化されました。そこには『Asylum』の3曲のオーケストラが入る前の録音がボーナスとして収録されていて、とても興味深くありがたいものでした。
MarqueeはEURO ROCK PRESSのNo.73(May.2017)では今回取り上げた、再度メンバーが集まったことに関してのインタヴューが載せられていたことも嬉しく思いました。
今回の原稿を書くに当たって、そのインタヴュー記事と『Cressida-Band』のWeb(ホームページ)を参考にさせていただきました。ここでお礼を申し上げます。
秋らしい日もありますが、まだまだ暑い日もあるでしょう。しかし、クレシダの曲にもありました。
気がつくと『Winter Is Coming Again……… 』 それでは、また次回!
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音楽ライター後藤秀樹氏による連載コラム「COLUMN THE REFLECTION」!今回はVERTIGOレーベル屈指の人気バンド、ベガーズ・オペラのサウンドの変遷を追いながら、その魅力に迫ります。
70年にVertigoレーベルよりリリースされた1st。叙情性溢れるメロディーと憂いのあるオルガン、クラシックやジャズの要素を取り入れたプログレッシヴなアンサンブルというスタイルは、いかにも英国70sロックの真骨頂。美しいメロディーを持った佳曲揃いの傑作。
英国オルガン・ロックを代表するグループがVERTIGOレーベルより70年と71年にリリースした1st&2ndをカップリングした2枚組CD。叙情性溢れるメロディーと憂いのあるオルガン、クラシックやジャズの要素を取り入れたプログレッシヴなアンサンブルというスタイルがいかにもブリティッシュ・ロックと言える1st。1stに比べて、演奏、アレンジとも磨きがかかり、美しいメロディーとドラマティックなアレンジが絶妙に絡んだサウンドが圧倒的な完成度を誇る2nd。どちらの作品も英国ロックを語る上では欠かせない名作です。2ndの2曲目「Munich」は、クラシック、ジャズ、ロックを剥き出しのままぶつけたようなテンション溢れるサウンドが絶品で、緩急自在の曲構成が秀逸な出色の名曲。
盤質:傷あり
状態:良好
スリップケース無し
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