ビートルズの登場以降、R&B~ブルース、クラシック、サイケデリックなどを飲み込み、『サージェント・ペパーズ』にて芸術へと高まったブリティッシュ・ロック・ミュージック。より高みへとロックが進化していく70年代のシーンで一翼を担ったのが、「プログレッシヴ・ロック」ムーヴメントです。
ジャズからクラシックまでを飲み込んだ鮮烈なデビュー作でプログレッシヴ・ロック時代の幕を開け、その後、一つのサウンドに収まることなく、ひたすらに前進を続けたプログレの代名詞バンド、キング・クリムゾン。
60年代末のサイケの時代からシド・バレットを中心に活躍し、シドが抜けた後、ロジャー・ウォーターズを中心にロックの哲学面を掘り下げ深遠な世界を描きつつ、同時にポップ・ミュージックとしても成立させ大衆をつかんだ怪物バンド、ピンク・フロイド。
この2バンドを先頭に、イエス、EL&P、ジェネシスが続き、「プログレッシヴ・ロック」が70年代はじめの一大ムーヴメントとなりました。
ここから英国だけに収まらず、その魅力は世界中に広がり、その土地固有の哲学や精神性、民族音楽と結びつきながら数多くのドラマティックな名盤が生まれたわけですが、そんな僕らをいつまでも魅了してやまない『プログレッシヴ・ロック』を一人でも多くのリスナーが好きになることを願いつつ、いわゆる五大プログレ・バンドに2バンドを加えた英プログレの名グループとその名盤を紹介し、そこから同じテイストを持つ世界のプログレ名盤へとカケハしてまいります。
まずは、彼らの代表曲を聴いてまいりましょう。
デビュー作にして『アビー・ロード』を蹴落として全英トップに立つなど、プログレッシヴ・ロック時代の扉をスリリングな轟音とともにこじ開け、70年代ロックの礎を築いたロック金字塔。オープニングを飾るクリムゾン屈指の名曲「21世紀の精神異常者」をピックアップ。
アメリカのビルボードチャートにおいて200位以内に15年間に渡ってランクインするという記録を打ち立てたモンスターアルバム『狂気』。哲学的でいて分かりやすく人間の内面に潜む「狂気」を描いた歌詞世界と、深遠かつキャッチーなアンサンブル。プログレッシヴ・ロックのみならず、ロック史上に残る金字塔。
プログレッシヴ・ロック最高峰のテクニックとキャッチーなメロディを持つ名作がイエス『危機』。ピチャピチャ水が跳ね回るようなキーボード、影響元不明の奇想天外ギター、突拍子なく切れ込んでくるハーモニー!それにしてもよくこんな奇天烈な音楽が生まれたものだ!
キース・エマーソンの格調高さと狂暴さとが同居した外連味いっぱいのシンセ、グレッグ・レイクの強靱なベースと伸びやかな歌声、そしてカール・パーマーの力強くダイナミックなドラム。轟音ギター・バンドをも飲み込む迫力で鳴らされるキーボード・トリオ屈指のプログレッシヴ・ロック傑作!
ファンタスティックな「静」とスリリングに畳みかける「動」のパートとの鮮やかな対比。次々に先鋭的かつリリカルなフレーズを連発してドラマティックに盛り上がる展開。永遠に色褪せない名曲・名演。数多くのフォロワー・バンドを生んだプログレッシヴ・ロック界随一の演劇派バンド。
オーケストラ・セクションを迎え、ポール・ギャリコの小説「白雁」をコンセプトに掲げたアルバム。リリカルなギター、キーボード、フルートが織りなすファンタスティックな音世界。叙情派プログレッシヴ・ロックの金字塔。
演奏のテクニカルさと前のめりな変拍子、先の読めない複雑な展開は、これぞプログレッシヴ・ロックの魅力。どこまでも偏屈でひねくれたポップセンスと卓越した多声ハーモニーも見事!
KING CRIMSON
69年に「In The Court Of The Crimson King」で衝撃的なデビューを飾り、プログレッシヴ・ロックの夜明けを作ったグループ。 彼らはヘヴィネスと幻想を同居させた唯一無二の音楽性を基本に、時にスペーシーに、時にアヴァンギャルドに化学変化を繰り返し、積極的なポリリズム、変拍子の多用や、フリーフォームなインプロヴィゼーションの応酬、果ては、へヴィ・メタルの元祖と言われる硬質なサウンドまでを操り、またたく間にスターダムへと登りつめました。 奇才Robert Frippを中心にした、その常に先鋭的な音楽性は、プログレッシヴ・ロックというジャンルに留まらず、全ロック界の中でも孤高の領域へと達しており、あまたのフォロワーを生み出しています。
67年にブルース・ロックを基調にしたサイケデリック・ロックバンドとしてシーンに登場し、最初期にはSyd Barrettを中心に活動。Syd Barrett脱退後にはRoger Watersが徐々にバンドの中で頭角を現し、その哲学的な歌詞と、アルバムを通して一つの世界を作り上げると言う大掛かりなコンセプト性でプログレッシヴ・ロックバンドとしての地位を築きました。 バンドの代表作『狂気』は、アメリカのビルボードチャートにおいて200位以内に15年間に渡ってランクインするという記録を打ち立てたプログレッシヴ・ロックの金字塔。 プログレッシヴ・ロックの枠を超えて賞賛される70年代を代表するロック・グループです。
69年に結成され、サイケデリック色を残したサウンドから時を経て徐々にプログレッシヴ・ロック的なアプローチを開始。絶技巧を要求されるレベルの高い楽曲と壮大なコンセプト性を携え、プログレッシヴ・ロック全盛期を作り上げたグループです。 ハイトーン・ボーカルが魅力のJon Anderson、リッケンバッカーによる硬質なベースとブレのないコーラスで脇を固めるChris Squire、ハモンド・オルガン、メロトロンを駆使した華麗なキーボード・オーケストレーションを見せるRick Wakeman、カントリーからフラメンコまでを自在に操るギタリストSteve Howe、ロックからジャズドラムまで幅の広いテクニックを持つBill Brufordという黄金期のメンバーが残した作品は、広くロックの名盤として知られています。
THE NICEのKeith Emerson、KING CRIMSONのGreg Lake、ATOMIC ROOSTERのCarl Palmerによって結成され、クラシックとロックの華麗なる融合を成し遂げたグループ。 それまでのロックに不可欠と考えられていたギターを廃し、キーボード・トリオ編成でありながら強烈に歪ませたオルガンをドライブさせ、時にナイフを突き立て、ギターのパワーコードにも負けないダイナムズムを演出。加えて、シンセサイザー黎明期からその可能性に着眼し、楽曲をカラフルに彩る最先端のサウンドを作り上げてきました。 クラシックからの選曲も特筆すべきであり、代表作「展覧会の絵」をはじめ、インプロヴィゼーションで繰り出されるKeith Emersonのクラシカルなキーボードワークは、多くのミュージシャンに影響を与えています。
69年にデビューし、Peter Gabrielによる、何人もの役柄を演じるシアトリカルなボーカルと演劇的なステージパフォーマンス、Steve Hackettによる御伽噺の世界を彩るような12弦ギター、堅実なプレイで英国然とした味わいと深みを楽曲に与えるTony Banksのキーボードを中心に、70年代のプログレッシヴ・ロック黄金期を支えたグループ。 特にPeter Gabrielのしゃがれた味わい深いボーカルと摩訶不思議コンセプト性は多くのフォロワーに影響を与えましたが、70年代中期でPeter Gabrielが脱退すると、ドラマーPhil Collinsを中心にその音楽性をポップなサウンドへと華麗に変化させ、プログレッシヴ・ロックフィールドを越え、ポップグループとしても大きな成功を収めました。
CAMEL
Andrew Latimerを中心にファンタジックなアプローチでプログレッシヴ・ロックの重要バンドに位置づけられるイギリスのバンド。 初期はAndrew Latimerによるギターやフルートのエモーショナルな泣きと叙情性、Peter Bardensによるマイルドで味わい深いキーボード・アンサンブルをフューチャーし、ジャジーな魅力のあるリズム・セクションが支える作風。作品を発表するごとに甘みを持ったファンタジックなシンフォニック・ロックを形成していき、代表作「Snow Goose」へと辿り着きます。 その後はCARAVANのRichard Sinclairを迎えたフュージョン・サウンドへの傾倒、Mel Collinsの加入とPeter Bardensの脱退、HAPPY THE MANのKit Watkinsの参加などメンバーチェンジを繰り返していきますが、その幻想的な作風と、マイルドなトータル感は一貫しており、英国叙情派を代表するグループとして君臨しています。
GENTLE GIANT
70年にデビューし、技巧的な演奏が一つ特徴であるプログレッシヴ・ロック界の中でも一際そのテクニカルな音楽性が際立ち、ライブではメンバーがヴァイオリン、チェロ、サックス、フルート、トランペットなどの楽器を持ち替えるなどマルチな才能を発揮したグループ。 特に超絶な技巧を必要とする変拍子をはじめ、予測不可能なフックを多用した多難な楽曲や緩急を織り交ぜたバンド・サウンド、コーラス・ワークが有名であり、初期は商業主義への徹底した反発を見せるも、徐々に楽曲にポップな要素を加えていき、70年代半ばまでに独自の地位を確立。その後はパンク・ロックやニュー・ウェイヴの音楽性を取り込みながら70年代を突き進んでいきました。 その技巧派で職人気質な音楽性はロック・アンサンブルに新たな解釈を提案し、現在のプログレッシヴ・ロックシーンの技巧主義に受け継がれています。
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