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COLUMN THE REFLECTION 第73回 70年代、北米に現れたプログレ系バンドの魅惑 ④   ~ やはりカナダにも現れたプログレ系ロック、メロディアス・ハード  そして、後に発掘紹介された本格派プログレの世界観  カナダ編➀ ~ 文・後藤秀樹





第73回 70年代、北米に現れたプログレ系バンドの魅惑 ④
~ やはりカナダにも現れたプログレ系ロック、メロディアス・ハード そして、後に発掘紹介された本格派プログレの世界観 カナダ編➀ ~

北米のプログレ系バンドのカナダ編に入るのだが、それまでもカナダのポップス、ロック・グループもたくさんあった。その昔、ゲス・フーステッペンウルフ、スタンピーダーズ、チリワック、ケンジントン・マーケットといったバンドは日本でも紹介されていたし、個人的にはオリジナル・キャスト、ライトハウスは忘れられない存在だが、彼らはアメリカでもヒットの実績を持っているわけで、当然のように世界各国でも紹介されていたことは想像に難しくない。

70年代の初頭にはゲス・フーの「アメリカン・ウーマン」が日本でも大ヒット、大阪万博(70年)に来日したライトハウスにも「ある晴れた朝」のヒットがあった。ゲス・フーのランディ・バックマンの3兄弟が中心となるバックマン・ターナー・オーバードライヴ(BTO)も日本でも人気バンドとなり、特に75年の4作目『四輪駆動(Four Wheel Drive)』の国内盤は輸入盤のWジャケット仕様(高級感が感じられるお得感覚)で発売されたこともあり結構売れたと思われる。


今になって考えると、アメリカ、カナダのプログレにこだわった作品は同時代的に日本では紹介されなかったものが多く、後になって発掘・紹介されたものが多かった。

この辺りは、イタリアを中心としたヨーロッパ各国のプログレが紹介されるようになった事情と似ていた。それは、東京・大阪の輸入盤レコード店が積極的に海外盤を発掘し、国内発売はないが魅力的な作品を音楽雑誌の広告として積極的に掲載してくれたこと。その後、79年のキング・レコードのユーロ・ロック・コレクションのスタートとなる。

地方都市に住む私にとっては、その広告の作品群がどれだけ魅力的に映ったことか!

その後、CDの時代に入ったことで比較的手軽に聞けるようになったことでそれまで知られざる作品もマニアの認知を得たことがきっかけとなり現在の評価につながっていると言えるだろう。


というわけで、カナダ編の➀は同時代的に日本で紹介・発売されたものを、いつものように私自身が経験的にどうとらえたかという観点で取り上げてみたい。現在、よく知られているが、後年になって明らかになった名盤系の作品に関しては次回のカナダ編②としてまとめようと思っている。




◆ Heart ◆

個人的には、地元の音楽仲間のサークルに所属していたこともあり、その仲間が独自にリサーチし、手に入れたアルバムをいち早く聴かせてもらえたこともありがたいことだった。



◎画像1 Heart / Dreamboat Annie


カナダもので言えば、プログレとはちょっと違うが、ハート(Heart)の最初のアルバム(75年)が出た時点で借りて聴くことが出来た。そして、それは衝撃だった。アンとナンシーのウィルソン姉妹のバンドとして日本でも2年後に発売され、高評価を受けることになるのだが、全く予備知識がない中で聴いた「ドリームボート・アニー」「マジック・マン」に夢中になったことは忘れられない思い出だ。今となっては懐かしいお馴染みのナンバーだが、今も変わらず魅力的な彼らの「マジック・マン」をまず聞いていただこう。国内発売は77年だった。その後の活躍は皆さんご存知の通り。



★音源資料A Heart / Magic Man

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◆ Klaatu ◆

続いては、ちょっと意外に思われるかも知れないが、クラトゥー(Klaatu)について見ていこう。彼らの最初のアルバムは76年の『謎の宇宙船(3:47 E.S.T)』。日本ではハート同様77年に発売されている。

彼らは73年にジョン・ウォロシュク(John Woloschuk)ディー・ロング(Dee Long)のデュオとしてデビューし、2枚のシングルを出していた。75年テリー・ドレイパー(Terry Draper)が加わりトリオ編成となり、Capitolと契約する。アルバムからシングル・カットされた「コーリング・オキュパンツ(Calling Occupants)」が、その曲調から「ビートルズの再来」とか、「ビートルズのメンバーによる覆面バンドか・・・」なんて紹介をされていたが、どう考えてもそんなことはあり得ないと多くが思っていた。(アルバムにはメンバー紹介がなく文字通りの覆面ではあったのだが)

しかし、その話題性は強力だった。もちろん曲の良さもあったのだが、大きな評判を生んで、驚くべきは翌77年にあのカーペンターズがアルバム『パッセージ(Passage)』でカバーしたこと。シングル・カットもされ、英で最高位9位を記録し、何とアイルランドでは1位となった。特筆すべきは、クラトゥーのレコードと同様に、7分強のアルバム・バージョンと4分弱のシングル・バージョンが存在していることだ。カーペンターズのアルバム・バージョンの方は壮大なフル・オーケストラも登場する。



◎画像2 Klaatu 『謎の宇宙船(3:47 E.S.T)』 + 『来(た)るべき世界(Hope)』


クラトゥーポップ・ロック的なグループとして認知されたと思っていたが、77年のセカンド・アルバムのジャケットを見てちょっと何かが違うように感じた。『来(た)るべき世界(Hope)』とのタイトルで、周囲の枠デザインは共通しているのにどこか暗い。赤い太陽が凄く気になる。

国内盤帯には、「“来るべき世界”に向かって更に飛びつづける謎の飛行船、クラトゥーのプログレッシヴなセカンド・アルバム! (ビートルズ論争)で1977年最大の話題を巻き起したクラトゥーの華麗なる世界!!」と記されていて、確かに前作のビートルズ直系ポップ・ロックプログレ的な雰囲気が強く感じられるアルバムだった。



★音源資料B Klaatu / The Lonliest Of The Creatures ~ Prelude

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この2曲は、見方によってはクィーンに通じる「The Lonliest Of The Creatures」とつながる「Prelude」を合わせて聴くことによって、彼らの魅力をより広げることにつながっているように思える。もっと言えば、アルバムでさらに続く「So Said The Lonliest Of The Creatures」も続けて聴くことでその世界観が更に広がるので、音源をお持ちの方は試してみて欲しい。

クラトゥーはこの後も、78年に『Sir Army Suit』、80年に『Endangered Species』、81年に『Magentalane』を出し、2枚組の未発表音源も含めたアンソロジー『Sun Set Anthology 1973-1981』、ライヴ&レアリティーズの『太陰暦(Solology)』と編集盤を出していて、どれもちょっとひねくれたポップ・ロック好きを刺激する愛すべき世界を展開している。

しかし、今になって考えると、狭間のニッチ・ポップと呼ぶにはちょっと「主流ポップ」に思えてしまうことが、彼らにとっては逆に損をしていたと言えるかも知れない。




◆ Mahogany Rush ◆

この77年という時期に忘れられないのが、マホガニー・ラッシュ(Mahogany Rush)『宇宙の賛美歌(World Anthem)』だ。何と言ってもジミ・ヘンドリックスへのリスペクトで知られるギタリスト、モントリオール生まれのフランク・マリノ(Frank Marino)を中心としたトリオだが、日本ではColumbiaと契約になった4作目の『鋼鉄の爪(IV)』(76年)が最初のリリースだった。国内盤の帯には、ジミ・ヘンドリックスの志を受けた、若干21歳のギタリスト、天才フランク・マリノ率いるヘビー・メタル・トリオ“マホガニー・ラッシュ”。熱き視線を浴びて遂に日本デビュー」とあった。彼らの最初の3作品も国内盤は未発ながら輸入盤で入手しやすかったこともあり、そのままジミ・ヘンのギターそのものと思えるブルースを基調としたハード・ロックは素直に聴いていた。ヴォーカルまでジミ・ヘンそのものなのは笑ってしまった。特に3作目の『Strange Universe』のラストのタイトル曲は全体にメロウな雰囲気なのだが、中間部にはプログレ的な要素も感じられた。



◎画像3 Mahogany Rush 『鋼鉄の爪( IV)』 + 『宇宙の賛美歌(World Anthem)』 + 『ライヴ!(Live)』


国内盤デビュー作『鋼鉄の爪(IV)』ではアルバム冒頭からメロトロンが登場し、期待感を含め「プログレか?」と思われたが、結局基本線はギター・トリオのブルース・ロックのまま。でも、大好きなアルバムだった。バンド名はこの4作目以降、「フランク・マリノ&マホガニー・ラッシュ」と記載されている。

続く77年『宇宙の賛美歌(World Anthem)』は通算5作目ということになる。


国内盤帯には「マホガニー・ラッシュに、ジミ・ヘンドリックスはもういらない。」という言葉に続いて「時代は早くも電子ジェネレーションの出現を見た!二十二才の天才、フランク・マリノのギターが自由に飛び交い舞い謳う。「鋼鉄の爪」に続くCBS第2弾。これ又。傑作。」と記されていた。

マリノの年齢を前作からひとつ繰り上げているのはともかく、「電子ジェネレーションの出現」という言葉はどうなのかな。確かにマリノは前作のメロトロンに替わってアルバム冒頭からシンセを使用している。もう当時(77年)シンセも既に普通に使われているものが多かったと思われるのだが・・・。

全体に風格さえ感じるようになったマホガニー・ラッシュ。その最たるものがタイトル曲「The World Anthem」だった。歌詞はないのだが、この曲の意味するところが日本語を含め10カ国語でライナーにちりばめられていた。マリノは当時私より2~3歳年上なだけなのにその世界観の凄さに感心してしまった。



★音源資料C Mahogany Rush / The World Anthem

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この曲は日本のYoshikiのX(エックス)がカバーしていることから、原曲は知らずとも世間一般になじみ深い曲になっている。マホガニー・ラッシュ翌78年のライヴ・アルバムにこの曲を収録しているが、大熱狂で迎えられていることにも目頭が熱くなった。その直後、アンコールと思われる「紫のけむり(Purple Haze)」が続けて演奏されたことにも興奮させられたものだ。そのライヴ国内盤の帯のコピーは、夢幻境に誘う熱き衝撃波! 天才児フランク・マリノひきいるマホガニー・ラッシュ熱狂のライヴ!」とあったのだが、私はフランク・マリノのギターを聴く度に彼の世界観を表すには「夢幻境」の言葉がふさわしいと思ったものだ。(最初の「夢幻境」という言葉。本当はラブクラフトが『クトゥルフ神話』の中で使った言葉の訳語としての「幻夢境」が使い方としては正しいのかもしれないが、やはり「夢幻」という使い方のほうが一般的かな? 当時真剣に悩んだ覚えがある。)




◆ Rush ◆

マホガニー・ラッシュを紹介したからには、トロント出身ラッシュ(Rush)の名も挙げておかなくてはならない。『閃光のラッシュ(Rush)』(’74)『夜間飛行(Fly By Night)』『鋼の抱擁(Caress Of Steel)』(ともに’75)と最初の3枚は国内盤として日本フォノグラムのマーキュリー・レーベルから順調に発売されていた。



◎画像4 Rush 『西暦2112』


デビュー当時から、高校の放送局と音楽サークルの仲間(後輩)には評判がよかったが、私はまず、その国内盤ジャケットの簡略化された造りが不満だった。(当時のフォノグラムのジャケットについてはこれまでに何度もこのコラムで指摘してきた) 

ファーストではジャケ裏はモノクロの歌詞、解説は帯の裏に記載されていた。

「音楽は中身でしょ!」と、後輩に諭されアルバムを聞かされた。そのツェッペリン直系のハード・ロック。確かに爽快で「いいね。」と認めた。しかし、帯には彼らの音楽を「ハード・メタル」「ヘヴィー・メタル」と表現されていたことにも若干の違和感を持っていた。(考えてみると、当時から私は「メタル」と称される音楽に抵抗感を持っていたのかも知れない。)

セカンドのジャケでは「可愛らしくユーモラスなフクロウ(?)」はともかく、何と裏も国内盤もカラー印刷になっていた。サードは哲学的・神話的な雰囲気を持ったジャケットで気になったが、原盤ではダブル・ジャケットがやはり国内盤はシングル・ジャケット。やはり、相変わらずのフォノグラムの姿勢が不満だった。ただ、帯の紹介文には惹かれるものがあった。それは「閃光のラッシュ!! 話題のハード・ロック・ファンタジー!!」そして、「そのありあまる若さのエネルギーをいかんなくたたきこんだまがいものでない本物のロック・アルバム!!」と、日本語の表現の稚拙さを生意気にも感じたところだが、真剣に素晴らしい内容を伝えようとする意欲もまた理解した。

そんな中で私は高校を卒業して浪人の時期、76年に『2112』を輸入盤新譜として購入した。



★音源資料D Rush / 2112 (Overture The Temple Of Syrinx)

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これが、私にとっては決定打だった。売り文句にプログレという言葉はどこにも使われていないし、演奏にはキーボードも使われないのだが、私は彼ら3人の世界にプログレらしさを感じ取った。そしてラッシュは、その後も大好きなバンドのひとつになった。ゲディー・リー(Geddy Lee)のヴォーカルとベースはもちろんのこと、ギターのアレックス・ライフソン(Alex Lifeson)、ドラムスのニール・パート(Neil Peart)という3人の圧倒的な演奏力、アンサンブルにも舌を巻いた。

その後も期待を裏切らないアルバムを次々と出し続ける。『A Farewell To Kings』『Hemispheres』『Permanent Waves』『Moving Pictures』『Signals』『Grace Under Pressure』『Power Windows』『Hold Your Fire』『Prest』・・・70年代から80年代を駆け抜け、さらに90年代で3作、2000年代に入ってやはり3作品とアルバムを発表し続けた。すべてゲディー、アレックス、ニールの不動の3人で創りあげてきたことが凄いことだ。同メンバーでのバンド活動の年数としては世界的に見ても記録となるのではなかろうか。ライブ・アルバムも多数存在するので、改めて時代ごとの彼らの姿を確認することも興味深いと思う。2013年には『ロックの殿堂』入りも果たしている。

長年リズムを支えたニール・パートは2015年に引退状態になり、2018年にアレックスがRushの活動の終了を宣言し、2020年にニールが亡くなった。




◆ Triumph ◆

同じカナダのハード・ロック・トリオであるトライアンフ(Triumph)もここで挙げておきたい。彼らもラッシュと同様に、同じメンバーで長く活動を続けていた。

メンバーはギターのリック・エメット(Rik Emmet)、ヴォーカル、ベースのマイク・レヴィン(Mike Levine)、ドラムスのギル・ムーア(Gil Moore)の3人。本国カナダではファースト・アルバムがバンド名と同じ『Triumph』として76年に、さらにセカンド・アルバム『Rock’n Roll Machine』も77年にリリースされていた。

日本では、79年になって『炎の勝利者(Rock’n Roll Machine)』RVC/RCAからリリースされた。

このアルバムはジャケットからして完全にハード・ロックだろうと私はスルーしていたのだが、大学の軽音サークルの後輩が「きっと気に入ると思います。」と貸してくれた。ライナーを読むと、本国カナダで発売された2枚のアルバムを編集したものだった。(編集・企画は米国RCA)

後になって考えてみると、編集盤なのにカナダでのセカンド・アルバムと同じタイトル『Rock’n Roll Machine』であることが紛らわしい。80年代に入るとカナダでも同タイトル・米国と同じ編集内容でジャケット違いのものが発売されたものだから、さらに混乱してくる。



◎画像5 Triumph 『炎の勝利者(Rock’n Roll Machine)』+『Just A Game』+『重爆戦略(Progressions Of Power)』


そうは言うものの、基本は痛快なハード・ロックだし、ジョー・ウォルシュ「ロッキー・マウンテン・ウェイ」もカバーしているのも面白かった。が、それ以上に私が夢中になった理由は、曲の構成も演奏にもプログレ的な雰囲気があって、アコースティックな味わいの活かし方がじつに上手いと思った。

この編集盤から、「Blinding Light Show/Moon Child」(ファーストに収録)を聴いてみよう。



★音源資料E Triumph / Blinding Light Show/Moon Child

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カナダ盤オリジナルとなるセカンド『Rockn’roll Machine』に収録された『The City:War March/El Duende Agonizante/Minstrel’s Lament』という3パートからなる組曲もまた必聴曲だ。中盤で演奏されるエメットのフラメンコ・スパニッシュ・ギターは悶絶ものだ。

日本盤としては、先に述べた編集盤のリリース後に79年に『ジャスト・ア・ゲーム』を、そして80年に『重爆戦略(Progressions Of Power)』・・とカナダのリリースに並び、その後も順調にリリースされていったが、10作目にあたる87年の『Surveillance』でエメットがソロ活動に向けて脱退することでバンドは活動休止となった。やはり、同メンバーでの活動の長さという点ではラッシュにはかなわなかった。

世界的には、80年代のハード・ロック人気の代表的なバンドだけに、私のように未だに70年代後半の初期のトライアンフにこだわる者はもう珍しいのかも知れないなあ。

しかし、何よりもリック・エメット(Rik Emmet)のギターの力量と音楽的素養の多彩さはトライアンフの各アルバムでわかるのだが、90年代以降のソロ作品で改めてその凄さを実感することになる。




◆ Walter Rossi ◆

カナダからは、他にも76年パット・トラバース(Pat Travers)、ウォルター・ロッシ(Walter Rossi)といったギタリストが日本でソロ・デビューし、アルバムがどちらもポリドールから発売された。一般的にはパットの方が若くて元気なロッカーで人気もあったように覚えているが、個人的にはモントリオール出身でキャリアのあるウォルター・ロッシーの方が面白く聞いた。

『不滅のカナディアン・ギター(Walter Rossi)』と名付けられたそのアルバムの国内盤帯には、「今、ようやく華ひらくカナディアン・ロック。ストレートでハードなロック魂を聴け!」との言葉。キャリアを持ったカナダのミューンジシャン(ギタリスト)であることが読み取れた。ただ、裏ジャケットに写る彼の姿には驚いてしまった。



◎画像6  Walter Rossi Album


ウォルター・ロッシーは基本的にはブルースに根ざしたハード・ロック・ギタリストと言えるのだが、アルバムの中にはメロディアスで壮大なナンバー等、多彩な音楽的なセンスを持った実力者だったと言える。バディ・マイルス・エクスプレスのメンバーとなり、73年にはデヴィッド・ボウイのツアーにミック・ロンソンの代役として参加するよう要請されるほどの実力者であった。彼のアルバムは4枚あるのだが、日本では最初の2枚のみ発売された。78年2作目『太陽のストラダ/Six Strings Nine Lives』は、ジャケットを広げると彼が使用しているギブソン・レスポールのギターの形が出来上がる変形3面ものになっていた。その頃、彼の音楽性も変形ジャケットも、もっと話題になると思ったが残念ながら盛り上がらなかった。

そこでの帯コピー「計り知れない才能としたたかさを持ったウォルター・ロッシー。彼こそ真のカナディアン・ロック魂を次代に伝える遅れてきたギター・ヒーローだ。」その言葉に間違いはなく、決して若くはないが、その名の通り、幅広い音楽性を持ったギタリストだったと言えた。今考えても、もっと聴かれ、広く知られるべきギタリストだったと考えている。

ここでは、そのセカンド・アルバムの中から冒頭のインストのジャズ・ロック的なナンバーを聞いてみよう。



★音源資料F Walter Rossi / Strada Del Sol

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ロッシーは、カナディアン・サイケ・バンドのインフルエンス(Influence)に在籍し、68年に唯一のアルバム『Influence』を残している。72年にはさらにトリオ編成のチャーリー(Charlee)としてハード・ロック・アルバムを作成。どちらもなかなか面白い。ウォルター・ロッシーのソロを含めて、ここに紹介した2枚もCD化されたことがあるので是非チェックして聴いてみることをお勧めしたい。




◆ Prism ◆

77年にはバンクーバー出身のプリズム(Prism)がデビューし、同年に日本盤として1作目『宇宙反射(Prism)』(ビクター/アリオラ・アメリカ)が登場した。帯には「荘厳なギターの唸りが、感涙にむせぶ透明なヴォーカルが、ようしゃなく僕の胸をしめつける。プリズム、奴らはボストンに次ぐアメリカン・ロックのニュー・ヒーローだ!」と政則さんのコピーが記されている。ボストンを引き合いに出したところは期待感としていいのだが、プリズムカナダのバンドとして扱われているのに「アメリカン・ロックのニュー・ヒーロー」となっていたことに当時「あれっ?」と思ってしまった。

彼らの存在は後に有名なプロデューサーとなるブルース・フェアバイアン(Bruce Fairbairn)76年に手がけた最初のプロジェクトとも言えるバンドだった。77年のアルバムのメンバーはヴォーカルのロン・タバック(RonTabak)、リード・ギターのリンゼイ・ミッチェル(Lindsay Mitchell)、リズム・ギターのトム・ラヴィン(Tom Lavin)、ドラムスのジム・ヴァランス(Jim Vallance)、ベースのアブ・ブライアント(Ab Bryant)、キーボードのジョン・ホール(John Hall)という6人編成。ジム・ヴァランスロドニー・ヒッグス(Rodney Higgs)という別名で参加していたのが面白いところ。

そのドラマーは次作78年『永遠の輝き(See Forever Eys)』では、ロケット・ノートン(Rocket Norton)へと変わり、ベースもアレン・ハーロウ(Allen Harlow)に交替。リズム・ギターのトム・ラヴィンは脱退し、バンドは5人編成となった。デビュー・アルバムからから「Spaceship Superstar」を聞いていただこう。



★音源資料G Prism / Spaceship Superstar

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プリズムは、シンセを利用したスペイシーな感覚は持ちながらもメロディックなバンド・アンサンブルとコーラス・ハーモニーが特徴。やはり、メロディアス・ハードの範疇に入るだろう。バンドの成り立ちから考えると、英プログレの影響というより、Styxあたりのアメリカの先輩格の音楽性を意識する部分が大きかったのだろうと思われる。


79年『アルマゲドン(Armageddon)』は日本では(キング/アリオラ・アメリカ)からの発売。ジャケットとタイトルからプログレ色が出てくるかと思われたが、基本線は変わらず。

80年『Young And Restless』Capitolからのリリースでニュー・ウェイヴ・バンド化と思わせるほどに意外なジャケットだったが、音楽の方は変わっていなかった。(国内発売は見送り!) 

81年『少女のように(Small Change)』は東芝EMI(Capitol)から発売された。メンバーは更に減り、4人となってしまったが、パワフルでメロディアスなサウンドはこれまで通り。新たなヴォーカリストのヘンリー・スモール(Henry Small)の歌声の溌剌さ、そして、曲作りに同じカナダのブライアン・アダムスが加わっていることもあり、AOR感、ポップ感が一層際立っていたように感じられた。アルバムからのシングル「シークレット・ラヴ(Don’t Let Me Know)」は、プリズムにとって初の全米Top40入りを果たした。この曲のAメロはカンサスの『伝承(Carry On・・・)』を思わせる。残念ながら日本でのアルバム・リリースはこれが最後になってしまったが、個人的にも忘れられない素敵な1枚だ。



◎画像7 Prism 『宇宙反射(Prism)』 + 『永遠の輝き(See Forever Eyes)+ Armageddon』 + 『少女のように(Small Changes)』


プリズムはデビュー当時からカナダ国内では大きな期待感の中で迎えられていた。アルバムも大きなチャート・アクションは見せないものの人気グループであり続けたことは間違いないようだ。

83年Prismは『Beat Street』を同じCapitolからヘンリー・スモールが引き継いだ形で発表する。そこで一度活動を停止することになるが、その後87年以降現在に至るまで、かつてのメンバーアレン・ハーロウを中心に演奏活動は続けている。


なお、プロデューサーのフェアバイアンは、プリズムの後にラヴァーボーイを手がけるのだが、日本では81年「それ行け! ウィークエンド(Working For The Weekend)」が大ヒットしたことで、カナダのバンドとしてはラヴァーボーイの方が一躍有名になったものだった。

80年代後半以降は、エアロスミス、AC/DC、ボン・ジョヴィ、シカゴ、ブルー・オイスター・カルト等の人気バンドのプロデュースを手がけることで大物プロデューサーとなっていったが、99年にはイエス『The Ladder』のプロデュースが生前最後の仕事となった。


久々にネットでプリズム(Prism)を検索してみて驚いたのは、同時期に活動していた日本のフュージョン・バンドばかりが出てきたこと。カナダのPrismは忘れられてしまったような印象があって寂しい。




◆ Saga ◆

プリズムと同じ時期に活動していたサーガ(Saga)も忘れられないバンドのひとつだ。オンタリオ州オークヴィル出身。カナダ本国では78年にファースト・アルバム『Saga』を発表し、79年にはセカンドの『黄昏のイメージ(Images at Twilight)』を出していたのだが、そのセカンドが日本でのデビュー盤としてポリドールから80年1月に発売された。



◎画像8 Saga 『黄昏のイメージ(Images At Twilight)』 + 『Silent Knight + Worlds Apart』 + 『不思議の旅路(Heads Or Tales)』


翼をもった巨大な昆虫(?) が黄昏の都会を破壊するイラストが描かれたジャケットからは、ハード・ロックが想像されたが、国内盤の帯には「デリケートなしなやかさと衝撃力! サーガは今、世界のロック・フィールドに降り注ぐサンダー・ストーム。」と、その音楽性が上手く想像できないコピーだった。

しかし、全体に柔らかで端正なシンセが広がり、ハード・ロックというよりは、ポップでメロディアスな曲が並んでいた。一歩間違えると当時流行のテクノ・ポップになりそうにも思えたが、ヴォーカルの質感がロック、ギターも要所でハードに活躍する。曲展開にはドラマチックな側面もあり、プログレ的な要素も十分に感じられた。



★音源資料H  Saga / Images(Chapter One)

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この日本デビュー作(本国2枚目)のメンバーはリード・ヴォーカルとキーボードのマイケル・サドラー(Michael Sadler)、キーボードのグレッグ・チャッド(Greg Chadd)、ギターのイアン・クリッチトン(Ian Crichton)、ベースのジム・クリッチトン(Jim Crichton)、ドラムスのスティーヴ・ネグス(Steve Negus)の5人。

日本では2作目(本国3枚目)の『サイレント・ナイト』が80年の暮れに発売された。前作と同様にトニー・ロバーツ(Tony Roberts)というデザイナーの印象的なイラストだった。私にとって、サーガのイメージというと彼が描いた2枚のジャケットのイラストを今でも浮かべてしまうほどだ。

81年には日本で3作目となる『Worlds Apart』(本国4枚目)が出た。日本では翌82年のリリースとなる。国内盤帯には「異次元の扉を開く超絶ロック。ハード、プログレッシヴ、エレクトロ・ポップ、渾然一体、変幻自在、一糸乱れぬSAGAサウンドが時代を直撃。全米チャート急上昇中!」という文言。何だか、サーカスの告知のようにも思える派手なコピー。更にジャケットのモチーフが、先ほど紹介したプリズム2作目『See Forever Eyes』にも似た「サングラスをかけた女性のアップ」。本当に2枚並べてみるとモチーフが同じだけに見間違えてしまいそうだ。



◎画像9 2枚のジャケット・・・驚き(!) の似たモチーフ!!


ただ、このジャケットは米Portraitバージョンが基本。カナダPorydorのオリジナルは、映画の一場面のような奇妙なもの。どう見ても売れそうには思えないものだっただけに、オシャレな米盤に従った日本盤は正しかった。

その後、82年の『In Transit』と87年の『Wildest Dreams』は日本での発売は見送られているが、83年の6枚目『不思議の旅路(Heads Or Tales)』が日本での4作目として、85年の7枚目『ビヘイビアー(Behavior)』は日本での5作目として国内盤が発売されていた。しかし、日本でのレコードとしての発売はそこまでとなる。CDの時代に入って思い出したように何枚かのアルバムは出されてはいたのだが。

個人的には、日本での最初の2枚が思い出深く今も時々聴くアルバムなのだが、83年の『不思議の旅路(Heads Or Tales)』の人気が高かったようで、今もあちこちで国内中古盤を見かけることが多い。世界的にもその時点がピークだったような印象を持っていた。


驚くべきことだが、サーガは現在に至るまで、私の数え間違いがなければスタジオ盤に限っても20枚以上のアルバムを出し続けている。ちょっとチャート・アクションを調べてみると、本国カナダではやはり80年代がピークだったのに比べ、ヨーロッパ(特にドイツ)での人気が高く、2020年を超えてからのアルバムも上位にチャート・インしているという事実には驚かされた。特に日本で発売された『不思議の旅路(Heads Or Tales)』は3位、『ビヘイビアー(Behaviour)』は2位(共にドイツ)という記録を残している。




 

今回のアウトロ

前回まで70年代米国のプログレ・ハード~メロディアス・ハード、ジャズ・ロック系のバンドとアルバムを紹介してきました。しかし、まだまだ紹介し切れていないものが多数あることは言うまでもありません。

じつは、前回のアウトロでも書いたように、かなりの数をリスト・アップしたのですが、後になって存在を知り私が同時代として聴いていないものは外したことになります。それだけ資料的には物足りないものになったことは否めないでしょう。


そんな中でカナダ編に向かったのですが、これまた、70年代当時に日本で紹介され私が聴いたものは限られてくるので、自分の中で割り切って、今回も同様に当時の国内盤で紹介された作品を中心に見てきました。

今ではアメリカもカナダもロックに関しては手に入れようと思えば多くの資料があるわけで、総括的に眺めることが出来ます。しかし、私は70年代当時を過ごした者として、当時の歴史的な状況を重視し、「私が聴いた頃の雰囲気が少しでも伝われば」という思いで進めているので、物足りなく思われた方には申し訳ないところです。が、そんな側面があったのか・・と思ってもらえる部分があったら嬉しいです。


次回は、「今回のイントロ」で書いたように80年代以降に発掘、紹介され今では広く知られていると思われるカナダのプログレ系作品をピック・アップしようと考えています。今回出てくるだろうと予想された方もいたであろうシンフォニック・スラムFMについても次回にまわします。








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  • KLAATU / KLAATU and HOPE

    カナダ出身、ビートルズの遺伝子を受け継いだニッチ・ポップの代表格、76年1st/77年2nd

    BEATLESの覆面バンドと噂されたカナダのグループ。雑誌などのビートリッシュなポップ・アルバム企画では常連中の常連と言える76年作の名作1stと、よりプログレッシヴなサウンドを聴かせる77年作2ndをカップリングした2in1CD。やはり1stが出色の出来で、PILOTなどにも通ずるパワー・ポップなバンド・アンサンブルと、メロトロンやストリングスをフィーチャーした優美なアレンジとが絶妙にブレンドしたサウンドは絶品。

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  • RUSH / VAPOR TRAILS

    02年作

  • RUSH / RUSH IN RIO(CD)

    02年ブラジルはリオ・デ・ジャネイロでのライヴ音源

  • RUSH / RUSH IN RIO(映像)

    02年作『VAPOR TRAILS』リリース時のツアー映像を収録

    • VIBP20/1

      デジパック仕様(トールサイズ)、スリップケース付き仕様、2枚組、DVD、NTSC方式、リージョン2、帯元から無し、日本語字幕明記無し、情報記載シール付仕様、定価8190

      盤質:無傷/小傷

      状態:並

      帯-

      軽微なカビあり、スリップケースに傷みあり

  • RUSH / FEEDBACK

    04年リリースのカヴァー・アルバム。エディ・コクラン、ヤードバーズ、ブルース・スプリングフィールドなどをカヴァー。

  • RUSH / SNAKES AND ARROWS

    全米3位をマークした07年作

  • RUSH / SNAKES AND ARROWS LIVE(CD)

    08年リリースのライヴ・アルバム

    • WPCR12894/5

      ペーパーケース仕様、2枚組、初回限定ミニチュア・ツアー・パンフレット封入、定価3600+税、全27曲

      盤質:無傷/小傷

      状態:良好

      帯有

      1枚は無傷〜傷少なめ、1枚は傷あり

    • WPCR12894/5

      ペーパーケース仕様、2枚組、初回限定ミニチュア・ツアー・パンフレット封入、定価3600+税、全27曲

      盤質:傷あり

      状態:良好

      帯有

      軽微な圧痕あり、軽微なしわあり

  • RUSH / RETROSPECTIVE III 1989-2008

    90-00年代より選曲の09年ベスト

  • RUSH / TIME STAND STILL: THE COLLECTION

    2010年編集コレクション

  • RUSH / CLOCKWORK ANGELS

    全米チャート2位を記録した12年リリースのコンセプト・アルバム

  • RUSH / CARESS OF STEEL

    75年3rd、大きなスケールで展開される荒々しく豪快なハード・ロック・サウンドが魅力!

    カナダを代表するトリオ編成のロック・グループ、75年作3rd。前作から参加しているNeil Peartが存在感を徐々に発揮。ハード・ロック色が強いながらもSF、ファンタジー色の強い大作2曲が収録されるなど、プログレッシヴな印象が増しています。LED ZEPPELINの3rdを髣髴とさせるアコギによるアルペジオが印象的なオープニングから一転、前のめりで攻撃的なリズム・パートと躍動感溢れるギター・リフが炸裂。粗削りで、やや性急な曲展開も表現力豊かなヴォーカルがドラマティックな世界観でまとめ上げています。圧倒的な手数のドラム・ソロも聴き所。BUDGIE張りの疾走感溢れるギター・リフでグイグイ引っ張るハード・ロック・サイドの名曲「Bastille Day」も収録。次作「2112」に構成力では及ばないものの、大きなスケールで展開される荒々しく豪快なハード・ロック・サウンドが魅力的な一枚。

  • RUSH / FLY BY NIGHT

    カナディアン・プログレの雄、75年リリースの2nd!

  • RUSH / 2112

    複雑に構成されたプログレッシヴな楽曲展開とキレのあるハード・ロック・サウンドを融合させた初期の傑作、76年作

    カナダを代表するトリオ編成のロック・グループ。76年発表4枚目。初期のスタイルであるLED ZEPPELINタイプのハード・ロックに加えて、本作では英プログレの要素を導入。物語性とドライヴ感が同居した楽曲群により、独自の個性を確立しました。1曲目「2112」は20分を超える大作。スペーシーなSEから幕を開け、Neil Peartによる怒涛のドラム・ソロ・パートに突入。的確なリズムのみならず、隙間にアドリブを必ず詰め込む緻密なテクニックは圧巻です。続くミドル・テンポでエモーショナルなシャウトを聴かせるヴォーカル・パートから、一転疾走するリズムに乗ってギター・ソロ・パートへ。透き通るような高音でスケール感豊かなフレーズが鳴り響きます。緩急を付けた曲展開に引きつけられ、一気に聴けてしまいます。「2112」の後に続く5曲はいずれも3分台とコンパクトな楽曲。中近東メロディを取り入れた楽曲、初期を彷彿させるZEP風ハード・ロック、ウィスパーがミステリアスなミドル・ナンバーなど、多彩な魅力が楽しめます。大作指向スタイルを完成させた、RUSH初期の最高傑作。

  • RUSH / PERMANENT WAVES

    80年作

  • RUSH / MOVING PICTURES

    猛烈にテクニカルで最高にキャッチー、81年発表のRUSH代表作!

  • RUSH / HOLD YOUR FIRE

    87年作

  • RUSH / PRESTO

    89年作

  • RUSH / COUNTERPARTS

    バンド史上最高位の全米2位を記録した93年作!

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