2021年12月24日 | カテゴリー:Column the Reflection 後藤秀樹,ライターコラム
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ビートルズのサージェント・ペッパーズの衝撃、そしてウッドストックによる若者文化の改革、そしてその後に訪れる反動としてのSSWの台頭。大きく括るとそんな時代の変化の中で生まれたニューロックの一形態としてのブラス・ロックの流れは、もちろんヨーロッパにも広がっていた。
今回はそんな欧州的ブラス・ロックを眺めていくことにしようと思う。
まずは、2つのジャケットを見て欲しい。
◎画像1 Zoo/ Hard Times, Good Times + J.J.Band
ひとつは、フランスのZooの3枚目、もうひとつはベルギーのJ.J.Bandの2枚目なのだが、それらを見て思い浮かぶのは、ブラッド・スェット&ティアーズの『子どもは人類の父である(Child Is Father To The Man)』だ。明らかに意識的にそうしたデザインにしたことが分かる。そして、当然そこにはブラス・ロックの世界が広がっているはずだと考えて手にした作品だ。
しかし、今思い起こしてみても70年代初頭はヨーロッパのロック・シーンは日本にはなかなか伝わってはこなかった。
私が、ブラス・ロックの作品を探していた頃は、日本で発売されたもの以外、聞いたことのない米国盤のジャケットやクレジットを眺めてそれらしいものを探すしかなかった。
ただ、ヒントになったのはポップス系のヒット曲だ。日本のヒット・チャートにはヨーロッパ発のヒット曲がたくさん存在していた。そう言えば、かつてはシャンソンとか、カンツォーネなどは日本でも高い人気を誇っていただけに、エキゾチックで独特なメロディーは日本人の感性に合っていたと思われる。
それが60年代後半からフランスはシルヴィー・バルタン、マジョリー・ノエルらに続いて、ミッシェル・ポルナレフが次々と大ヒットをとばし、フレンチ・ポップなる言葉が定着した。イタリアでは、ジリオラ・チンクエッティやミルバ、ペピーノ・ガリアルディら(「ヒロシです・・・」の「ガラスの部屋」)がヒット・パレードに並んだ。
そして、世界的な人気となったショッキング・ブルーを筆頭に、ゴールデン・イヤリングやアース&ファイアが続くオランダのダッチ・サウンドがヒット・パレードの常連になった時期もあった。
個人的にはフランスのシルヴィー・バルタンの「悲しみの兵士」のヒットが印象的だった。タイトル通りドラマチックな歌詞とメロディーを持っていて、バックのオーケストラ、中でもブラス・アレンジのカッコよさに惹かれた。次のシングル「あなたのとりこ」は今ではスタンダードな趣を持っているが、同様にアレンジも見事だった。(「あなたのとりこ」のほうが仏本国では先にリリースされていたが。)
そしてもうひとつ、日本で70年からヤマハ主催の世界歌謡音楽祭が開催されるようになり、世界中の音楽を身近にとらえられる雰囲気が醸成されていったことも確かだった。第1回のグランプリ、イスラエルのへドバとダビデの「ナオミの夢」は多くの人にとって忘れられない1曲だろう。
あわせて、ヒット・チャートを賑わせていたのが、ヨーロッパ映画のサウンドトラックと、フランスのポール・モーリア、レーモン・ルフェーヴル、サン・プルーといったオーケストラ・サウンドということも懐かしく思い出される。スペインのロス・ブリンコスやミゲル・リオス、トニー・ロナルドのヒット曲も個人的には懐かしい。要するにごった煮的に何でもありの、いい時代だったと振りかえることが出来る。
そんな中で、少しずつヨーロッパのロック・グループのアルバムも70年初頭には日本で紹介されるようになってくる。思いつくものを挙げていくと、
東芝からのアモン・デュールII(独)、カン(独)、ディアブロス(Los Diablos)(スペイン)、ディナスティ・クライシス(Dynastie Crisis)(仏)、ウォーレス・コレクション(Wallace Collection)(ベルギー)・・・。
フォノグラムからルシファーズ・フレンド(独)、アフロディテス・チャイルド(ギリシア)、エクセプション(蘭)・・・。キングからはズー(仏)、マグマ(仏)・・・。ポリドールからはフォーカス(蘭)、ゴールデン・イヤリング(蘭)・・・。コロンビアからはアリス(仏)・・・。
そんな中、73年にひとつの転機を迎える。
テイチクからジャーマン・ロックがシリーズ化、Basfレーベルからジョイ・アンリミテッド(Joy Unlimited)を皮切りに、Brainレーベルからはジェーン(Jane)、グローブシュニット(Grobschnitt)を中心としたラインナップが順調に発売されるようになった。テイチクはそれまでもSonetレーベルを持っていたことから北欧のビート・バンドが発売されていたのだが、スウェーデンのメイド・イン・スウェーデン(Made In Sweden)等もアルバムが出されていたことは驚きではある。
東宝レコードからはBYG、Vogueレーベルを中心にしたフランス系が、フランソワーズ・アルディ、デヴィッド・アレンズ・ゴングの初期作を中心に、マルタン・サーカス(Martin Circus)やシステム・クラプーチック(Le Systeme Crapoutchik)、エクスペリエンス(Experience)らが次々と登場した。
さらには、73年秋にパイオニアからManticoreのPFMの『幻の映像』(伊)がピート・シンフィールドの「Still」と同時に発売されたことは、当時ひとつの事件でもあった。それは、音楽誌に発売告知が出たときに、だれもがいち早く「Still」をどう手に入れるかを考えていたはずなのに、聞いてみるとシンフィールドのソロ作以上に『幻の映像』のとんでもない素晴らしさに圧倒されたという経緯があったからだ。
その後、79年にキングからユーロ・ロック・コレクションが発売されて、ヨーロッパのロックもプログレ系を中心に浸透していくことになるのだが、その辺りの経緯は別の機会に紹介することにし、話を欧州ブラス・ロックへと戻すことにしよう。
◎画像2 Martin Circus
私がフランスを意識して最初に聴いたロックバンドはマルタン・サーカス(Martin Circus)だった。東宝レコードという邦楽中心だった会社が73年に海外部門を打ち出したと思ったら、いきなりデヴィッド・アレンのゴング(Gong)が紹介されて驚いたが、続いて出されたフランス勢がマルタン・サーカスだった。彼らのファーストはライヴ盤、セカンドは2枚組という変則的な登場だっただけに、無名のバンドとしては売り方が難しかったと思われる。そこで日本での3枚目として出されたのが『人生は夢だ』という日本独自の編集盤だった。ベースとなるのがセカンドの2枚組の1枚目をベースにして、アルバム冒頭に本国でのデヴュー・シングルとなった「人生は夢だ」を加えたもの。やはり73年に発売。
何といってもその「人生は夢だ」が名曲だった。彼らのことをブラス・ロックとしてとらえている人はほとんどいないだろうが、この曲でのソロ・トランペットがじつに効果的だった。マルタン・サーカスを立ち上げた管楽器担当のジェラール・ピサーニ(Gerard Pisani)がいたことで、彼らの演奏面での個性が表われていたと思われる。彼はジョニー・アリディのバックで活動していた実績を持っていた。
★音源資料A Martin Circus / Tout Tremblant de Fievre (人生は夢だ)
彼らは70年代後半まで活動を続けるが、デヴュー当時のシアトリカルなイメージが印象深い。画像2の右端のジャケット裏写真にはメンバー全員が白い仮面と衣装をまとっている姿が写っているが、なかなか怖いものがある。このアルバムを知る前に、日本では横溝正史原作『犬神家の一族』の映画が公開され、その中で印象的な白仮面の男が登場する場面を見ていたこともあり、イメージがダブって一層怖さが増した。
ジャケットの表にも、被り物を身にまとったメンバー写真があって、ステージでの様子を想像することが出来た。ただ、彼らは母国語であるフランス語で歌っていたことから、全世界的な成功には至らなかったが、アンジュ(Ange)と並ぶ存在だったのだろう。日本では本国での3作目『III』まで発売されたのだが、残念ながら管楽器担当のジェラール・ピサニはこの『人生は夢だ』で脱退してしまう。ひとつにはソロとして活動を目指したようだが、シングルを出したのみで再びジョニー・アリディのバック・バンドに戻ってしまった。
マルタン・サーカスでもう1曲、非常に人気の高いキラー・ナンバー「恋のセネガル」も聴いていただこう。テーマ・リフのギターとのユニゾンの管楽器が素晴らしい。ただ、この映像は冒頭の白仮面が結構怖いので閲覧注意です(笑)。
★音源資料B Martin Circus / Je M’Eclate Au Senegal (恋のセネガル)
フランスから、もうひとつはズー(Zoo)。彼らは英語で歌っていたこともあり、世界的にもその認知度は高い。アルバムは69年にデヴューし72年までに3枚残しているが、もう1枚フランスの女性ヴォーカリスト、ニコレッタ(Nicoletta)の71年のアルバム『Visage』にも参加している。先にも触れたとおり、日本では3作目『Hard Times,Good Times』が『ズー/ファンタスティック・デヴュー』というタイトルで72年にキング・レコードから発売されていた。
◎画像3 Zoo
彼らは9人編成で、サックス2人とトランペットがいるが、面白いのはそのメンバーがヴァイオリンやヴィオラを奏でる場面もあるところ。結成当初は、メンバー間の音楽性の違いが顕著で最初のアルバムではブルース色の強いナンバーもあったが、メンバー・チェンジの末、堂々たるブラス・ロックを演奏するようになった。
★音源資料C Zoo / Hard Times, Good Times
ズーの最初のヴォーカリストだったジョエル・デーデ(Joel Dayde)はファースト・アルバム後にソロ・アーティストに転向し、71年に「マミー・ブルー」をはじめ多数のシングルと2枚のソロ・アルバムを出している。日本でも競作盤のひとつとして「マミー・ブルー」のシングルも、2枚目のアルバムにあたる72年の「ジェザエル(White Soul)」も発売されていた。アルバムの方は、バックにはマイケル・ジャイルズやリック・ウェイクマンも参加し,緩急のついたなかなかの力作となっていて面白かった。その作品にもバックでしっかりとした演奏を聴かせる元ジャズ畑のベテラン・ブラス・メンが入っているのも特筆だ。
◎画像4 T.N.T.H + Synthesis + Magma
フランスには他にも、T.N.T.H(‘71)とかSynthesis(’73)等の未CD化の作品がまだまだ埋もれている。
そしてあのマグマ(Magma)もその強烈な音楽性を支えた本格的なブラス・セクションを含んでいた。日本では74年に3作目にあたる『呪われし地球人たちへ(Mekanik Destruktiw Kommandoh)』が唯一発売され、私は出た時にいつものレコード店の視聴ブースで聞いたが最初の印象はただただ驚き、おののいてしまった。タイトルもおどろおどろしいが、コバイア語なる架空の言葉に彩られた呪術的なコーラスに圧倒され、レコードは買わずに宣材のパンフレット(彼らのマークを模った円形のもの)だけをもらって帰ってきた思い出がある。
◎画像5 Ekseption 1~5 (‘69~’72)
オランダといえば、まずエクセプション(Ekseption)の名前が浮かんでくる。ブラスを中心にクラシックの有名曲のカヴァーを多数取り上げたことで知られるが、プログレ・ファンにはキーボードにリック・ヴァン・ダー・リンデン(Rick Van Der Linden)がいたことが大きなポイントになっていると思われる。
しかし、エクセプションはトランペットのライン・ヴァン・ダー・ボロイク(Rein Van Den Broek)が1958年に始めたジョーカーズが元になり、65年にエクセプションに改名したところでスタートとなる。リックは67年に加わり、69年に最初のアルバムで、『運命』の実際のオーケストラ・テープに続けてバンドの演奏が始まる「The 5th」で、ヨーロッパ中のポップ・ファンを驚かせた。その後76年までに6枚のアルバムを出すのだが、ブラス隊以上にリックに注目が集まることになってしまう。単にキーボードをこなすだけでなく教会オルガンまで本格的に弾いてしまうのだからその実力が目立っても仕方が無い。
日本では4枚目のロイヤル・フィルとの共演を含む盤を除いて、他の5枚はフィリップスが新譜として本国とほぼ同時期に発売していた。
私が最初にエクセプションを聞いたのは70年発売の『3』だったが、最初から結構気に入った。特に2曲目のオリジナル曲「B 612 」はシカゴ的なブラス・アンサンブルも聴くことが出来て面白かった。
★音源資料D Ekseption / B 612
リック・ヴァン・ダー・リンデンは、67年にエクセプションに加わり、69年から74年までに6枚のアルバムを発表後、トレース(Trace)でキーボード・トリオとして74年から76年までに3作品を出している。その間もエクセプションはリックの後任にハンス・ジャンセン(Hans Jansen)を迎え、2枚のアルバム『Bingo』(74年)『Mindmiller』(75年)を出し続けた。しかし、トレースの活動を終えた後、リックは78年に再びエクセプションに加わり『Ekseption’78』を発表する。その後もソロ・アルバムを含めいくつかの活動もあるものの基本的な活動はあくまでもエクセプションとして94年まで関わり続けた。
その気になれば世界的なキーボード・プレイヤーになった(かもしれない)リックが、自らの出発点を大切にしたという事実には感じるものがある。ただ、他のメンバーにとってはどうだったのか? 彼の不在中にスピン(Spin)というバンド名を変えて76年、77年に2枚のアルバムを出しているのだが、そこではオリジナル曲をフュージョン的に演奏する姿に伸び伸びとした開放感を見せているのだけれど・・・。
エクセプションでもうひとつ、演奏を途中で止めてリックがブラス隊に指示を出す(!)という珍しい映像があるので見ていただこう。
★音源資料E Ekseption Play “Alla Turca” from Piano Sonata no.11 Mozart
有名どころでは、ソリューション(Solution)もその仲間に入るだろう。トム・バーラージ(Tom Barlage)が唯一の管楽器奏者だが、結成当時はやはりBS&Tの影響を受けていたという。
◎画像6 Solution + Crazy Mabel + Werehouse
71年に最初のアルバムをCatfishから出し、72年のセカンド『Divergence』はHarvestから、73年、74年はRocketからとは次々とレーベルが変わるが音楽性の芯となる部分は一貫していた。日本では4作目の74年の『透明な風景(Fully Interlocking)』が発売されていた。アルバムを追うごとに、より洗練され聞きやすい雰囲気になっていった。ここでは、フォーカス『Moving Waves』の「Eruption」中ヤン・アッカーマンのギター・ソロで知られる「Tommy」の原曲である「Divergence」を72年の同名アルバムから聞いていただこう。
★音源資料F Solution / Divergence
私もCD化されてカケレコで買って初めてその音を聞いたクレイジー・メイベル(Crazy Mabel)もブラス・ロックだった。それにしても何故こんなジャケットにしたのだろう。LP時代に手に取ったかもしれないが、すぐにその手を引っ込めてしまうタイプのジャケットだった。肝心の音楽の方はなかなかよかったのだけれど・・・。
オランダにはウェアハウス(Warehouse)というバンドもあった。72年にImperialから唯一のアルバム『Powerhouse』を出しているが、7人編成で管奏者はサックスとトランペットのふたりで端正な演奏を聴かせている。しかし未CD化。
◎画像7 Jass & James + J.J.Band
今回の冒頭で触れたJ.J.バンド(J.J.Band)。2枚のアルバムを出している。恐らく、バンド名を聞いたこともない人が多いのではないかと思うが、J.J.とはジェス&ジェームス(Jess & James)という兄弟デュオのことで、68年に活動を開始している。そのバック・バンドがJ.J.バンドということになる。ジェス&ジェームスはポルトガル出身だが、政情不安から逃れて59年にベルギーにやって来た。
67年にシングル「The End Of Me」でデヴューし、続く「Move」がヨーロッパで大ヒットした。68年アルバム『Move』を発表。アルバムの名義がJess & James and the J.J.Bandということで、なかなか面倒なネーミングだった。まずは当時の演奏の様子がTV映像として残っているので見ていただきたい。
★音源資料G Jess & James / Move
時は68年、曲調もソウル系のダンスナンバーだ。(ゴーゴーガールズが舞台で踊っていて、時代を感じさせる別バージョンも存在する。)バックのブラス・セクションを加えた演奏が見事で、この後ジャズ・ロック方面に方向を定め本格的に独立してJ.J.バンドとなるわけだ。残ったジェス&ジェームスはやはりソウル・ジャズを目指して2人名義で活動を続けることになる。
J.J.バンドは新たなメンバーを補充し8人組として70年にポリドールから、71年にCBSからアルバムを出す。どちらも曲が粒選りで、編曲もBS&T、シカゴの影響下に練られていて素晴らしいブラス・ロックになっている。曲の明るさとコーラスはライトハウスに似たところがある。是非、聞いてみることをお勧めしたい。ファーストは1度CD化されているが、セカンドは未だされていないことが信じられない。
★音源資料H J.J.Band / Changing Face
私はこの2作品ともにベルギーを訪れたときに見つけた。最初オランダ、ベルギーに出かけ、ベルギーのブリュッセルの街が気に入りその後2度訪れた。もう20年近く前のことになる。グランプラスという街の中心の昔のギルド・ハウスに囲まれた広場が大好きで、その周辺をそぞろ歩きすると有名な「小便小僧」の像が現われる。冒頭に紹介した2枚目のアルバムのジャケットはその像の前で、メンバー全員それぞれが「小便小僧」のミニチュア像を抱えて収まっている。
近くのレコード店で何枚かのレコードを買った。店主が値段をチェックする中で、件の2枚目のアルバムを見つけると、取り出して「これはすぐそこで撮影されたものだよ。」と教えてくれた。もう既に「小便小僧」には寄った後だったのだが、おおげさに驚くととても喜んでくれた。当然値引きをしてくれた。
私はベルギー・ビールが大好きで、旅行中は昼から街のカフェで飲んでいたのだが、彼の地のビールはアルコール度が高いので、飲み過ぎると腰が立たなくなることを学んだことも思い出だ。
BS&Tのファーストでメンバーが子供を抱き、その顔がメンバーにすげ替えられているのと同じモチーフととらえていい。それゆえに、「BS&Tの影響下にある!」と直感してしまったのである。
◎画像8 Plus + Placebo
このJ.J.バンド名義としては2枚しかアルバムを残さなかったが、72年に主要メンバーはそのままにプラス(Plus)と名を変えてアルバムを1枚Pink Elephant(’72)から出している。驚くべきことにこの作品のCDは日本でもP-vineから紙ジャケットとして2012年に出ている。新たなヴォーカリストの歌い方とパーカッションの使用が増えたこともあって幾分ソウル寄りになった印象を受けるのだが、端正なブラス・アレンジは健在だったので嬉しい。また同時期、ジャズ畑のキーボード・プレイヤーであるマーク・モーリン(Marc Moulin)がプラシーボ(Placebo)を結成し、J.J.バンドのギタリストとベーシストが参加している。71年から74年までに3枚のアルバムを発表している。ファンク・ジャズからフュージョン風な展開を見せているが、バンドには管楽器も4人含まれていて、その演奏部分は私にはブラス・ロックの名残のように聞こえてしまう。この3作品も日本ではP-vineから紙ジャケCDとして発売されていた。
また、袂を分けたジェス&ジェームスだが、単独名義のアルバムも面白いので聞いてみてほしい。
ベルギーは他にもShampooの71年のアルバム『Volume One』もある。クールなジャズ・ロック的展開でこれも面白い。かなりブラスも活躍するのだが、それ以上に疾走感のあるヴォーカルとコーラスが新鮮だった。こちらもCD化されている。
◎画像9 Satin Whale + Out Of Focus
ドイツのロック・バンドはサックスやフルートが一人加わっているといった形が多く、他国のようにブラス・ロックと呼びにくい点が特徴と言えばそうなるかもしれない。
例えば、サテン・ホエール(Satin Whale)の75年のアルバム『ロスト・マンカインド』の1曲目「Six O’Clock」。これは、日本では79年の『キング・ヨーロピアン・ロック・コレクション』の記念すべき第1回発売の1枚だが、私はサテン・ホエールというバンドをそこではじめて聞いた。そして、久し振りにブラス・ロックを聴いたような気分になったことを思い出す。サックス担当者はDieter Roesburg。彼らは74年から81年までにライヴを1枚含んで8作品を残している。
★音源資料I Satin Whale / Six O’Clock
ドイツのロックを聞いてきて一番びっくりしたのが、アウト・オブ・フォーカス(Out Of Focus)のアルバムだった。68年暮れに結成され71年に『Out Of Focus』と『Wake Up!』という、ジャーマン・ロックともクラウト・ロックとも呼ばれるバンドに共通したゲルマンの森を思わせる暗い世界を描き出していた彼らだが、72年の3枚目の2枚組アルバム『Four Letter Monday Afternoon』で大きな変貌を見せたのだ。ほぼ全編で壮大なブラス・オーケストラの演奏が繰り広げられていたのだ。ここでは、17分を超えるアルバム冒頭の前半を聴いていただこう。
★音源資料J Out Of Focus / L S B Part 1
結局、彼らは72年の3枚目のこのアルバムが最終作となったが、74年まで活動を続け、未発表となった音源が後年CDとなって3種類リリースされている。アルバムを順に聞いていっても、謎の多い不思議な感じがつきまとっていたのだが、「最後に何故このブラス?」という思いも含め、彼らに関する謎は解決できないままだ。
◎画像10 Emergency
そして、エマージェンシー。このバンドはサックス系の管楽器のHanus Berka率いるジャズ・ロック系のバンドだが、Brainから71年から74年までに4枚の作品を出しているが、メンバーの変更も多くアルバムごとに雰囲気が違っている。それでもファーストは71年という時期もあり、客演にトランペットを招きブラス・ロック的演奏がより濃厚だ。
★音源資料K Emergency / Springtime
◎画像11 Roundhouse + Panta Rhei
独Harvestに72,73年に2枚のアルバムを残すラウンドハウス(Roundhouse)も3管を含む7人編成のブラス・ロック・バンドだ。彼らはスイス出身らしいのだが、ドイツ原盤となっている。ヴォーカリストはBS&TのD.Cトーマス的な歌声を持っていて、その影響を感じると共にじつに理想的なブラス・ロックを演奏するバンドとして印象に残っている。
★音源資料L Roundhouse / If You Know
最後に旧東独(DDR)のパンタ・レイ(Panta Rhei)を紹介しておこう。4管と女性ヴォーカルを含む9人編成のバンドだが、公式には73年に1枚のアルバムを出しただけになっている。(しかし、CDとなった2008年のベストでは16曲、2020年には2枚組アンソロジーとなり30曲収録と大きく膨らんでいて驚かされた。活動時期は71年から75年となっていて実体は完全にはつかめないのだが、メンバーは11人になった時期もあったようだ。ヴォーカルにはドイツ国内で成功を収めるヴェロニカ・フィッシャーがいて、他のメンバーはカラット(Karat)として70年代後半から活動を続けている。その中の何枚かは聞いたことがある。国内の政治的事情にも関係がありそうで謎は多いバンドだ。
そのアンソロジーの中に、あのリチャード・ハリスの「マッカーサー・パーク」(ジム・ウェッブの作品だが、多数のカヴァーを生み、ベガーズ・オペラのヴァージョンも印象的)の中間部のインストを取り入れた曲が気になった。73年の唯一作には収録されていないし、シングルにもなっていないと思われる上に、ヴォーカルはヴェロニカだから同時期の録音に間違いないと思われる。
★音源資料M Panta Rhei / Prometheus
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ここまで思いつくままに、ヨーロッパのブラス・ロックを取り上げてきた。と言っても、日本で早い頃から紹介されたフランス、オランダ、ドイツを中心に考えた。もちろん、他にもたくさんの国があるのですべてを網羅するのはここでは無理だが、今回私のメモの中にリスト・アップしたものを名前だけでも紹介しておこう。
◎画像12 Czechoslovakiaのバンドから
特に、旧共産圏のバンドについて考えていくと、特にかつてのチェコスロバキアはものすごい。JazzQをはじめBlue Effect、M Fffect、Flamengo等を含めた昨年CD紙ジャケ化された「チェコと日本の外交関係100周年を記念」した作品群もあるので、この辺りについては,この場で簡単に紹介してしまうよりも、また別の機会に取り上げたほうがいいと考えたので割愛することにした。ご了承願いたい。
ただ1曲だけ、プログレス・オーガニゼーション(The Progress Organisation)の71年の『Barnodaj』(Supraphon)に収録された「Ptacnik」だけ紹介しておきたい。
私は最近になって知った4人組なのだが、ゲストに女性ヴォーカル、ブラス、ストリングスも入れて壮大な雰囲気の作品になっている。よく調べていくと、80年代に突入した頃に注目されたプログレス2(Progress 2)の前身バンドになる。なるほど、プログレ的な感性は71年当時から持っていたことがわかった。こちらもCD化されている。女性ヴォーカリーズにブラスが加わることで、今はじめて聞いてとても新鮮に聞こえた。ぜひ聴いてみて欲しい。
★音源資料N The Progress Organisation / Ptacnik (1971)
◎画像13 Modern Music Band + Feta Heta Linjen + Appendix + Splash
まずは、シカゴの「僕らに微笑みを(Make Me Smile)」の絶妙なカヴァーを聞かせるモダン・ミュージック・バンド(Modern Music Band)が興味深い。72年Sparkレーベルからの唯一作の1曲。彼らは8人編成でホーンはシカゴと同じ3管。明らかにシカゴの影響を受けているのだが、ヴォーカル部分のメロディーだけがシカゴと分かるものの、イントロからエンディングまで曲全体が彼らのオリジナルのように聞かせていることが凄い。
★音源資料O Modern Music Band / Make Me Smile
スウェーデンには他にジャケットも刺激的なフェタ・ヘタ・リンジェン(Feta Heta Linjen)が71年に、そしてカンタベリー系ジャズ・ロックを思わせるアペンディックス(Appendix)も73年に唯一作を出している。しかし、どちらもCDにはなっていない。
他に本格的ブラス・ロックとしてスプラッシュ(Splash)がいる。72年と74年の印象的な2作品がCDになった際、私はカケレコに入荷した段階でその存在を知った。8人編成で管は4人。明らかにシカゴを意識した部分が多く聞き応えは十分にある。
◎画像14 Undertaker’s Circus
アンダーテイカーズ・サーカス(Undertaker’s Circus)の73年の唯一作『Ragnarock』はCD化も再発LPとしても出されている。アルバム・タイトルの『ラグナロック』とは北欧神話に因んだもので、本来の「Ragnarok」の最後を「Ragnarock」にしたもの。「ラグナロク」その言葉をバンド名にしたスウェーデンのバンドもいたのでちょっと紛らわしい。自体CDには11人がメンバーとしてクレジットされているが、ジャケットの人数とは合わない。クレジットを信じると6人が管楽器(!)。詳細は不明。しかし、ブラスの数が多いだけでなく、リズムのバック・サウンドも大編成バンドとしてさすがに迫力がある。ここではテレビ映像を見ていただこう。
★音源資料P Undertaker’s Circus / Ragnarock
◎画像15 Nicosia & C.Industia Musicale
CD化されているニコシア&インダスティア・ムジカーレ(Nicosia & C.Industia Musicale) の 『Una Favola Vera 』(Fonit ’73)があるが、これは清々しく美しいブラス・アンサンブルとイタリアらしい渋いヴォーカルとの一見アンバランスな取り合わせがまた面白い。考え方によってはOsannaのエリオ・ダナ(Elio D’Anna)のサックスの導入もMaxophoneの2人の管楽器の参加も(曲によっては)ブラス・ロックの仲間に入れられそうだ。特にMaxophoneのホルン担当者の存在は、初めて聞いたときに驚き新鮮だったことを思い出す。
◎画像16 Connexion + Grupo Oz + Maquina
日本でもCDとして輸入盤仕様で出されたコネクション(Conexion) の 『Harmony』 (Movieplay ’73)がまず頭に浮かぶ。あまり人気は無いようだが、私は大好きな作品の一つ。また、ソウル系になるかもしれないし、何と(!)メキシコ経由のアルバムなのだがGrupo Oz / Same(Diresa ’73)がスペイン原盤として浮かんでくる。
また、先ほど挙げた独のアウト・オブ・フォーカスのように、突然ブラス・ロックに姿を変えたマキーナ(Maquina)。それはセカンドの71年の『En Direct』でこちらも2001年にCD化されているのだが、LPでは2枚組のライヴ録音だったことに驚いた。
◎画像17 Bergendy
71年から75年までの4枚のアルバムがCD化されているベルゲンディ(Bergendy)。彼らはオメガ(Omega)と並んで自国では国民的なバンドのようだ。60年代初期から活動しているが、基本的にはポップスを4人のブラスを入れて演奏している印象で、71年の最初のアルバムは当時の世界的なヒット曲のカヴァー・アルバム。ディープ・パープルの「ブラック・ナイト」やシカゴの「長い夜」に混じって、マンゴ・ジェリーの「イン・ザ・サマータイム」まで飛び出すので面白いのだが、昔日本にもあった匿名バンドの演奏でヒット曲を集めたレコードのお手軽さも見えてしまう。ジャケットの印象もそれ以後と大きくイメージが異なっている。
しかし、時代に合わせ72年の2枚目以降からロック色を強めていき、特に73年の3枚目『Herfo』はLP2枚組のトータル・アルバムになっていて凝った音作りも聞かせる。ただ、基本的にハンガリー的ポップな感覚がコアにあるので好みは分かれてしまうかもしれない。70年中期にはフュージョン、後期以降は再びポップスやダンス・ナンバーと時代の流れに合わせて幅広く演奏している。
◎画像18 Thors Hammer + Trouble + Fjara + Def Cism
CD化もされて知られている作品をまず二つ。まずはソーズ・ハマー(Thors Hammer)の71年作品。管はサックス担当の1人だが、6人のアンサンブルのバランスがよく聞きやすい。何度もCD化され聞く機会もあって評価の高いプログレの逸品と言ってもいいだろう。
もうひとつはトラブル(Trouble)の『After The War』。CDとしてカケレコでも紹介・販売されたのでお持ちの方も多いだろう。これは70年Sonetから出たのだがジャケットの老婆の印象がちょっと強すぎるかな。メンバーにはジャズ・ミュージシャンが多く、ホーンは2人。ベースのニールス・ヘニング・ペデルセンの名はジャズ畑ではよく知られている。ただ彼はダブル・ベースを演奏する印象が強いのだが、ここではフェンダー・ベースを弾いている。エレキ・ベースを弾いている作品は結構珍しいのではなかろうか。冬の夜にくつろぐ雰囲気を持ったジャズ寄りのジャズ・ロックと呼べるように思える。
他にもフジャラ(Fujara)73年のCBS盤は幾分フォーク、民族色の強い音楽性。デフ・シズム(Def Cisum)74年のEpic盤等はブラスが炸裂する場面もあるのだが、メロディーがポップ寄りなので好き嫌いが分かれそうだが、ひとつのブラス・ロックとして名前を挙げておこう。
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ここまで6回にわたって(半年間!)ブラス・ロックについてまとめてきたが、まとめているうちに難しさが伴った。形式も含めて私の責任ではあるが、そのことを如実に感じられた方が多かったのではなかろうか。何か資料をまとめ原稿にしながらも、ずいぶん迷いながら進めてきたのが本当のところだ。
純粋にブラス・ロックでスタートしたBS&Tやシカゴの影響力(ブラスの強力さを意識づけた表現法)は間違いなく大きな波及を見せたが、それに続くバンドに関しては、その背景が当然のことながら色々あったわけだ。ブラス・ロックを売りにして「シカゴに続け!」と感じられるバンドもあったのだが、勢いだけでアルバムを出しても1枚のみで消えていったバンドもかなりの数に上る。またバンドは続いても、ブラスに執着せずに違う方向に向かったバンドも多い。
ただ、音楽は悔しいことにその時代の変化に対応を迫られてくる。
今回、意識的に60年代後半から73年頃までの作品を選ぶことを考えていたのだが、作業を進めていくうちに自然とその時期のバンドと作品がセレクトされていく結果となった。それだけに73年から74年がブラス・ロックの最終段階にあったという思いについてはより強くなった。
今、手許に懐かしい雑誌「ADLB」の2号(’74 Winter)がある。ジャズ専門誌として知られるSwing Journal社が当時、新たに出したMook本的な雑誌だが、時代の音楽変化を視点として鋭く切り込んだ革新的な内容になっていると思う。発行されてすぐの73年の暮れに買った1冊なのだが、高校生だった私にはとても刺激になった。中に出てくるアーティストは、マイルスやコルトレーン、チック・コリア、ジョン・マクローリンに並んで、クリムゾンやフロイド、EL&P、クリーム、BS&T、スライ&ファミリーストーン等々、さらには当時一連のバッハの演奏で注目を浴びたクラシックのアンソニー・ニューマン等も取り上げられたことで新鮮な思いで読んだ。気になることがあると時折読み返すことが多く、資料として今も手放せない一冊である。
あらゆる音楽ジャンルが渾然一体となったところに新たな音楽の形が生まれる。それを同書ではNew Soundsと呼んでいた。その言葉も定着しなかったが、未だ、クロスオーバーとかフュージョンという言葉も生まれていない頃だったことを思い出す。
日本でピンク・フロイドの『原子心母』の帯に記された言葉「プログレッシヴ・ロック」が最初というのは確かなことだ。しかし、実際にその言葉が広く使われるようになるのは、ややしばらくしてからのことだったと記憶している。それに比べ、「ブラス・ロック」という言葉はジャンルを表わすというよりは、説明上便利な言葉として便宜上使われてきたものだった。
それゆえに、「ブラス・ロック」をテーマとしてまとめていくことは難しさが伴うことは分かっていたことだが、作業を進めているうちに「ブラス・ロック」を旗印として掲げたバンドは、より「ジャズ・ロック」「プログレッシヴ・ロック」に近づいていくことが多いことも改めて確認することができた。特に、前回の英国、そして今回のヨーロッパを取り上げていくうちに確信に近づいてきたような気がする。
「誰かがやりそうに見えて、じつは誰もやっていない」テーマを掲げるというのが私のコラムの立ち位置と考えてきたが、「ブラス・ロック」に関しては,カテゴライズは難しいものの、やはり魅力的であるという結論は変わらないので、是非一度どこかで大きくまとめてみたいと思う。ただ肝心の本場、米国編はこれからになるのだが・・・。
さて、新年一発目はどうしようか。
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それにしても便利な時代になったものだ。今回紹介しているバンドは すべてYoutubeで検索すると見ること,聞くことが出来る。有名無名にかかわらず検索結果が出てくることに改めて驚かされてしまう。しかし、そんな世の中にあっても、未だにCDでもレコードであっても、やはり物として求めたくなる私はもう間違いなく旧時代の人間なのだろうな・・・と思う。
でも、同じではなくても、きっと似た思いでいる方々がこのコラムを読んで下さっているのだろうと考えています。
この文章を書いているのは12月19日。今年は雪のない12月が続いて快適と思っていたら、結局、昨日までの2日間で大雪に見舞われました。一晩で55センチは記録だそうです。外の世界は、車は渋滞するし、道は滑るので皆赤ん坊のようによちよち歩きになってなかなか大変です。
今年も、ここまでおつきあいいただきありがとうございました。
来たる年が皆さんにとって良い年になることを願っています。
引き続きよろしくお願いいたします。 HG
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フランスのブルース/ジャズ・ロック・グループ、69年の1st。聴いて驚きました。フランスにコロシアムやニュークリアスやグレアム・ボンドに対抗できるこれほどのグループが居たとは。グルーヴィーかつ時に水面を子供がジャバジャバするように無邪気で浮遊感いっぱいのハモンド、ニュークリアスばりに艶やかで陰影に富んだホーン・セクションやギター、クリス・ファーロウもびっくりのソウルフルなヴォーカル。時にヴァイオリンも入って、テンションみなぎる超絶アンサンブルも聴かせたり、これは相当に熟達のメンバーが集まったグループに違いありません。マグマやゴング以前にこんなグループが居たとは。恐るべしフレンチ・ロック。これはオススメです。
フランス出身グループ、70年作2nd。鍵盤、サックスを加えた7人編成で、ジャジー且つダイナミックなLAURA NYROのカヴァー「LUCKIE」を始め、ブラス・ジャズ・ロックを全編で展開。ブイブイと唸るベース、手数多くドタバタとしたドラム、プリミティヴなパーカッション、グルーヴィなオルガン、リリカルなピアノ、フリーキーなヴァイオリン、豪快なサックス、ブルージーなギター。豊富な楽器群による熱気をはらんだインプロヴィゼーションの応酬が堪能できる一方で各曲は3分台とコンパクトに纏められており、熱狂しつつも冷静な計算高さを感じさせるアンサンブル。その佇まいはIFなど英ブラス・ロック・バンドを彷彿とさせます。楽曲にダイナミズムを加えている、声量豊かでパワフルなヴォーカルも素晴らしい。無名ながら英ブラス・ロック勢にも引けを取らない完成度の高い一枚。
72年作の3rd「FOUR LETTER MONDAY AFTERNOON」録音時の未発表曲集。いかにもジャーマンなクールな質感のハード・ロックにサックス、トランペット、フルートのジャジーな旋律が絡む魅力的なジャズ・ロック。重厚かつ叙情的なフレーズが多く、ブリティッシュ・ジャズ・ロック・ファンにおすすめです。
70年代前半に活動し、4作品を残したドイツ出身のジャズ・ロック・バンドによる71年デビュー作。安定感ある職人的なリズム・セクションに乗って、熱気ある派手なプレイスタイルのオルガンと、重層的な響きを持つブラスが交錯する、グルーヴィーかつ重厚感溢れるブラス・ジャズ・ロック。これは猛烈にかっこいいです…!ヴォーカルは英語。
69年〜79年にかけて活動したスウェーデンのジャズ・ロック・バンド、74年作2nd。CHICAGOをはじめとする英米ブラス・ロックからの影響と北欧フォーク/トラッド・ミュージックをミックスさせた作風が特色で、特に本作は彼らの創造性がこれでもかと堪能できる傑作!収録内容は21分・7分・14分の大曲3曲。21分の「Carrot Rock Rock (Elephant Nilson)」はクリムゾンの同年の「RED」を思わせるような強靭なオープニングに始まり、まるでELOみたいに壮大でワクワクするヴォーカル・パート、PINK FLOYDをジャジーにしたような深遠なパートなど様々な展開に目まぐるしく移り変わっていく、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさいっぱいのナンバー。中間の「Ten Kronors Polskan」はチェンバー風味の不穏なバスーン・ソロに始まったかと思えば、中盤からはアイリッシュ・ミュージックを思わせる祝祭的なヴァイオリン合奏とCHICAGO風ブラス・ロックが交差してしまう、彼らにしか作り得ないようなヘンテコな一曲。14分の「Collective」ではなんとアフロやラテンの要素を取り入れ、情熱的なパーカッションを交えながらスピーディーかつスリリングなジャズ・ロック・アンサンブルを繰り広げます。これだけ色々詰め込むと収拾がつかなくなりそうなものですが、キワモノ臭はせず洗練された聴き心地なのは彼らの高い技術力によるものでしょう。これまで再発されず眠っていたのが信じられないくらいの北欧ロック名作です。
SLIP&SLIDELTD159(SLIP & SLIDE)
デジタル・リマスター
レーベル管理上の問題により、CDやジャケットの状態が良くありません。また盤面にキズがある場合がございます。ご了承ください。
69年〜79年にかけて活動したスウェーデンのジャズ・ロック・バンド、72年デビュー作。商業的な成功は収めなかったものの、母国や海外の専門家から高い評価を受けたグループとのことで、そのサウンドはかなりハイレベル。CHICAGOやBS&Tなどの米国ブラス・ロック、そしてPINK FLOYD、CARAVAN、CRESSIDAといった英国ロックからの影響をベースにしつつ、それらを確かなジャズの素養と北欧らしい「温もり感」で調理した高水準のアンサンブル。溌剌としたブラス・セクション、丸みを帯びたトーンでジャジーに転がっていくオルガン、毛羽立ちつつも素朴なトーンのエレキ・ギター。力強いシャウトを炸裂させつつ、どこか哀愁漂う母国語ヴォーカルも絶品。明るくメロディアスな中にも独特の「郷愁」が滲むサウンドにたまらなくグッと来ます。ブラス・ロックや哀愁の英国&北欧ロックが好きな方は気に入る事間違いなしの一枚です。
SLIP&SLIDELTD160(SLIP & SLIDE)
デジタル・リマスター
レーベル管理上の問題により、CDやジャケットの状態が良くない場合がございます。また盤面にキズがある場合がございます。ご了承ください。
73年デビュー、ノルウェー出身のブラス・ロック・バンドによる最終作となった75年2ndアルバム。ハード・ブラス・ロックと言えた重厚感ある前作と比べ、幾分メロウでポップになったサウンドが特徴的です。FACESにゴージャスなブラス・セクションが入ったような1曲目、SANTANAを思わせるラテンっぽいノリで聴かせる3曲目、ファルセット・ヴォーカル&コーラスをフィーチャーしたメロウなフュージョンの4曲目など、ブラス・ロックというスタイルの中で様々なサウンドに挑戦している印象です。面白いのが、前作よりも歌をメインに聴かせていることで、ノルウェー語のどこかのんびりした語感が強調され、かの国らしい「いなたさ」もアップしている点。もちろんそこが愛すべきポイントです。でもラストでは、1stを思い出させる硬派なブラス・ジャズ・ロックで盛り上がり、やはりカッコいい!前作と共にユーロ・ブラス・ロックの好作品。
68年にバルセロナで結成された、スパニッシュ・プログレ黎明期を代表するグループ。70年に1stリリース後、メンバーが徴兵制度で次々に脱退、代わりのメンバーを加えたりやりくりしていたもののついにオリジナル・メンバーが居ないこととなり活動停止に。71年に徴兵から戻ってきたオリジナル・メンバーのKey奏者、Enric Herrera中心にメンバーが一新され、BS&Tやシカゴなどブラス・ロック・ムーヴメントに呼応し、ブラス・セクションを加えて再始動しました。オリジナル・メンバーのJordi Batisteは正式復帰はしなかったものの、全面的にヴォーカルとしてゲスト参加し、72年にライヴ録音されたのが本作2nd。シャープかつふくよかなリズム隊、キレのあるカッティングからジャジーで流麗なソロまできらめくギター、そしてグルーヴィーかつ陰影に富んだオルガン&ブラス!後にスペイン・ジャズ・ロック・シーンで活躍する名手がずらり揃っていて、さすがと言える素晴らしいブラス・ロックを聴かせています。ちなみに他の主要メンバーは、バルセロナ出身ミュージシャンによるビートルズ・カヴァー作(名盤!)をリードしたSAX奏者のPeter Roar、MUSICA URBANAで活躍しマイルス・デイヴィスやチック・コリアとも活動するベースのCarles Benavent、同じくMUSICA URBANAに参加するドラマーのSalvador Fontなど。歌詞は英語です。
ツイン・ギター編成のケベック産ハード・ロック・グループ、75年の唯一作。気持ち良く歪んだヌケの良いトーンのギターによる突き抜けるギター・リフ、ちょっと線が細めながらロバート・プラントを彷彿させるハイ・トーンのエネルギッシュなシャウトを中心とするエネルギッシュなハード・ロック。時に変拍子も織り交ぜるなど、巧みなリズム・チェンジによるキメのパート、そこからスピーディーに弾きまくるギター・ソロに突入する展開に痺れます。ギター・ソロの疾走に呼応するようにハイ・ポジションで動きまくるベースも印象的。アコースティックな楽曲では、流麗なシンセをフィーチャーするなど、ユーロ・ロック的なリリシズムも聴かせます。爽快でキャッチーなカナダ産ハード・ロックの名作です!
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