2023年10月24日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
近年、世界各国から新鋭プログレ・バンドが続々と登場し、大いに活気づいているプログレッシヴ・ロック・シーンですが、シーンを盛り上げているのは新鋭バンドばかりではありません。
「若い者には負けちゃいられんっ!」とばかりに往年のベテランたちが精力的にニューアルバムをリリースしているのも、現プログレ・シーンの活況を支える大きな要因となっていることは間違いないでしょう。
というわけで、各国のベテラン・アーティストたちによる18~23年リリース作品を、厳選してご紹介してまいります!
まずは直近リリースの作品からご紹介しましょう。英国ネオ・プログレの名バンドが放った23年作☆
PENDRAGON、IQらと共に英ネオ・プログレの隆盛を担った名グループ、23年作。
GENESISを核に据えたファンタジックなシンフォニック・ロックにエレクトロなビート感を溶け込ませた、00年代以降彼らが模索してきたスタイルの集大成と言える一枚に仕上がっています。
1曲目はBIG BIG TRAIN好きにも聴いてほしいメロディアスなモダン・プログレ・チューン!↓
往年の名グループの動きが活発なのがイタリア。ベテラン・アーティストの4作品をご紹介!
PFMでも活躍した名ヴォーカル、ベルナルド・ランゼッティの健在ぶりに嬉しくなる23年作!
近年加入メンバーによる色彩に富んだキーボードワークもかなり素晴らしくって、往年の伊プログレが持っていたエネルギーと溢れる浪漫をたっぷりと堪能できる会心作に仕上がっています。
試聴は下記ページで可能です!
https://maracashrecords.bandcamp.com/album/moving-fragments
伊ロック史上の名グループによる22年オーケストラ共演作。
メロトロンを中心とした神秘的ながら牧歌的温かさも宿したシンフォニック・サウンドに、オーケストラが加わり一層色彩豊かに輝きを放つような演奏は、一曲目から感動しちゃうこと間違いなし!
76年のクラシカル・ロック名作『VOCI』で知られるヴェネチア出身のキーボーディスト、23年作。
クラシックの高い素養を感じるソロ・ピアノ曲&宮廷音楽のように華麗な室内楽ナンバーで構成された素晴らしい逸品です。
ソロ・ピアノ曲は、聴いていて個人的にリック・ウェイクマンのソロ・ピアノ名品『Country Airs』を思い起こしました。
イタリアン・ロック史上の傑作として愛される72年1stで知られるバンドの22年作!
モダンなメロディアス・ロックを軸としながらも、持ち味のたおやかで幻想的な演奏は往年を彷彿させる素晴らしさですなぁ。
エモーショナルかつシアトリカルな厳かさも隠し持った伊語女性ヴォーカルも良い~。
ポーランドからは、あの人気グループによるまさかの新作が届きました♪
90年代ポーランドを代表する活躍を見せたシンフォ・バンドが、前作『SAFE』から27年を経てついにリリースした6thアルバム!
まるでFISH期MARILLIONにエレクトロ要素と絢爛なストリングスkeyを加えたようなスタイルで、往年に劣らずドラマティックに盛り上がります。
ゲスト参加のスティーヴ・ロザリーによる渾身のギターもフィーチャー!
22年の年間ベストセラーではTOP10入りを果たしたこの作品もベテランによる会心作!
フランスが誇るプログレ名バンドPULSARのkey&gによって結成されたバンドの22年3rd。
これはCAMELやPINK FLOYDのファン、そしてPULSARの傑作『Halloween』が好きな方に是非体験して欲しい、叙情的にして夢想的な音世界が素晴らしい絶品シンフォニック・ロック!
元KAIPAのレジェンド・ギタリストRoine Stolt率いる人気グループもナイスな22年作をリリース。
どこまでもファンタジックでスケール大きなTFKサウンドに、ジャケの雰囲気からも読み取れるパーカスやアコーディオンが織りなす異国情緒が豊かな色彩を付与しています。
揺るぎないTFK節と飽くなき探求心が一体となった雄姿に敬服するしかない22年作!
22年作と言えば、P.F.Mのオリジナル・ギタリストがリリースしたこの新譜も円熟の出来栄えでしたね。
地中海の風をまとった美しいアコギの調べと、語りかけるような味わい深さを持つ歌声。
穏やかながらもイマジネーション豊かに響くサウンドが絶え間なく胸を打ちます。
P.F.Mを長年支えた名ギタリストによる22年作!
P.F.M関連作と来ればBANCOからも出したいところ。というわけで素晴らしき22年作をどうぞ♪
P.F.Mと並ぶイタリアン・ロックの雄による22年作!
1~2曲目へのこの流れ、誰もが『Darwin!』や『Io Sono Nato Libero』を思い浮かべるでしょう。
往年にも匹敵するテンションとロマン溢れ出すパフォーマンスに感動がこみ上げる一枚!
もう一枚、イタリアからベテランによる22年作をご紹介!
CELESTEのリーダーによる22年ソロ。
ゆったり敷き詰められていくシンセに、川のせせらぎや雨音も交えほんのりファンタジックに浮遊する音像が最高に心地いい。
明確なメロディはほとんど提示されないのに、どこか「歌心」を感じさせる音作りはさすがイタリアですなぁ。
2021年にもイタリアからは往年のアーティストによる新作が多数リリースされました。
黄色い便器のジャケットでお馴染み、72年作『ジョバンナに捧ぐ』で知られるイタリアのキーボーディスト/シンガーが、なななんと49年ぶりに2ndをリリース!
冒頭からハードなエッジ感を持つアグレッシヴなキーボード・シンフォに驚きますが、合間で聴けるロマンティックでポップな曲調は往年のままで、こりゃ愛すべきだなぁ~。
特に1stに入っていてもおかしくない感動的な歌ものの8曲目は全伊ロック・ファン必聴!
イタリアン・プログレの雄NEW TROLLSのオリジナル・メンバーNico Di PaloとGianni Bellenoが主導するバンドの21年作。
エッジの立ったギター&Gianniのパワフルなドラミングが光るソリッド&リズミカルなプログレ・ハード調が軸の新曲、そして過去名曲の感動的な再録。
本家を食わんばかりのエネルギーとキレの良さに痺れる~~!
21年2月に元メンバーのダニーロ・ルスティチが死去。伊ロックを象徴するレジェンドがまた一人この世を去ったのは悲しい事ですが、彼が残したOSANNAというバンドが歩みを止めることはありません。
物悲しいギターのリフレインとリリカルなフルートが紡ぐメランコリックな演奏に、Linoのエモーションを内に秘めたイタリア語ヴォーカルが歌う「静」の展開から一転、ギターがハードに唸りを上げヴォーカルもエネルギッシュに歌い上げる「動」の展開へ。
そうそうこれこれ、これぞOSANNA!
「前衛」と「伝統」を名に冠したイタリアン・プログレ・グループ、なんと21年作!
1stと変わらぬ俯き加減でメランコリックに奏でるクラシカルなピアノと、初期に比べオペラ的な表現力を高めたフィメール・ヴォーカルが織りなす芸術的世界観はやはり孤高の一言です…。
もちろん、イタリア勢に負けじと各国からベテランによる力作が届けられていますよ~!
カンタベリー・ロックの生ける伝説、21年作!
1曲目冒頭から、CARAVAN節全開の張りがあって弾けんばかりにフレッシュな演奏に、「Golf Girl」を初めて聴いた時のような感覚がこみ上げてきて「おぉっ」となりましたよ…!
PyeのアコギにゲストのJimmy Hastingによる愛らしいフルートが寄り添う兄弟の共演パートも涙ものだし、Richardsonのヴィオラをフィーチャーした最終曲はWOLFの「悲しみのマクドナルド」ばりの名演だしで、聴き所満載。
デビューから53年目(!)、衰え知らずの溌溂としたCARAVANサウンドが味わえる快作です!
言わずと知れた古楽プログレの代表格ですね。彼ら本来の中世/トラッド・エッセンスにユーモアに富んだポップ・センスも注入した渾身の2020年作!
かつて2枚の名作を残した仏シンフォ・グループが、奇跡の3rdをリリース!
クラシカルなオルガンと悲哀を帯びたトーンのギター、妖艶なフルート、憂いを秘めたヴォーカル…。
すべてが往年のまま繰り広げられるサウンドに冒頭から早くも胸が熱くなります。
ハンガリー・シンフォの雄による、99年作『NOSTRADAMUS』の続編19年作!持ち味である哀愁たっぷりのフルートやシンセを伴った、この終始力みっぱなしの生真面目なまでに厳粛なサウンド、相変わらずでほんっと素晴らしい!!
次はイタリアより、往年のバンド&ミュージシャンたちによる怒涛の19年作をご紹介!1作目は、PFMと並ぶあのイタリアン・ロック・バンドがついにリリースした新作からまいりましょう♪
四半世紀ぶりに届けられた19年スタジオ作も、最新アルバムに劣らず素晴らしい内容でした。
モダンに洗練されたサウンドに、初期を彷彿させるミステリアスな音使いがちゃんと生かされていて素晴らしいです♪
唯一のオリジナル・メンバー、ヴィットーリオ・ノチェンツィによる格調高いキーボードのプレイが流石!
イタリア屈指の名バンドLOCANDA DELLE FATEのkey奏者による19年ソロ・アルバム!
この1曲目、LDFの1stオープニングナンバーを思い出さずにはいられない、気品と情熱がとめどなく溢れ出す大名曲!
ドラムには現クリムゾンのGavin Harrisonも参加してるし、ずばり力作。オススメです!
78年に名作を残したアルゼンチンのグループから40年ぶりに届けられた2nd!ギター、サックス、ヴァイオリン、フルートらが紡ぐ、重厚にして妖しげな魅力を纏った彼らならではの音世界が広がってきて、1曲目から感動!1st全曲を手がけた専任コンポーザー/アレンジャーが中心となっているので、音楽性にブレがないのが素晴らしい!
名盤『GARDEN SHED』で知られるグループによる、09年リリースEPの4曲に初披露楽曲など6曲を加えた18年作!ちょっとポップになりましたが、英国叙情たっぷりのファンタスティックなサウンドは相変わらず。往年のメンバー4人が揃ったナンバーも収録!
ノルウェー最古のプログレ・バンドJUNIPHER GREENEのメンバーにより結成され、77年に唯一作を残したファンク・ジャズ・ロック・グループ。彼らがなんと41年ぶりに新作をリリース!相変わらずファンキー&グルーヴィーかつ、さらに円熟味の増したサウンドが楽しめる注目の逸品です☆
ベテラン・バンド達の尽きることなきエネルギーを感じていただけたでしょうか。
今後も往年の名バンドの新作が届けられ次第、こちらの記事でご紹介していきたいと思います!
イタリアが誇る名シンフォ・グループLOCANDA DELLE FATEのキーボーディスト/ピアニストによる19年ソロ作!ドラムはKING CRIMSONの技巧派Gavin Harrisonが務めます。オープニング・ナンバーから、LDF1stの1曲目「A Volte Un Istante Di Quiete」を現代的な重厚さと共に蘇らせたような怒涛の名曲で驚愕!ダイナミックでタイトに刻むリズムに乗って、気品に満ちたピアノと優美に高鳴るシンセ、エモーションたっぷりのギターが一糸乱れず躍動するクラシカル・プログレ・チューンで、この1曲だけでもLDF1stを愛する方なら感動に満たされることでしょう。特に情熱的にしてリリシズムにも溢れたあのピアノのタッチに少しも衰えは感じられません。伸びやかな英語ヴォーカルが映えるキャッチ―な2曲目も素晴らしく、中盤で聴けるキーボードのオスティナートがさざ波のように押し寄せる演奏はまさにLDFを彷彿させます。これはイタリアン・シンフォニック・ロックの新たな傑作と言って問題ない逸品!!おすすめです。
トルコ系フランス人メンバー達によって結成され、79年と81年に名作を残したシンフォ・グループが、約40年を経てリリースした2020年作3rdアルバム!1曲目「Deadline of a Lifetime」からもう言葉を失います。クラシカルなオルガンをバックにベース、ギター、フルートが残響のようにフレーズを繰り返す幻想的なオープニング。そこから力強いリズムを得て、オルガンと悲哀を帯びたトーンのギターが一気に疾走を始めるアンサンブル。シンセとギターが短いソロを交換すると、満を持して歌い出すあの低く落ち着いたヴォーカル…。すべてが往年のまま繰り広げられるシンフォニック・ロックに冒頭から胸がグッと熱くなります。「妖艶」という表現がぴったりな少しエキゾチックなフルートも端正なアンサンブルを表情豊かに彩っていてとにかく素晴らしい。終始薄霧に包まれているような幻想的で浮遊感に満ちたサウンド・プロダクションも、このバンドの叙情美を引き出す効果を上げていて見事です。復活作に多い現代的に洗練された音はほぼ登場せず、まさに2ndアルバムの続きといった趣。ですので当時の2枚が愛聴盤という方なら、これは感動すること間違いなしでしょう。ずばり傑作!
紙ジャケット仕様、SHM-CD、定価3000+税
盤質:傷あり
状態:並
帯有
解説に小さい折れあり、若干カビあり
名実ともにハンガリー・プログレを代表するバンドと言える彼らの2019年作。99年にリリースされた『NOSTRADAMUS』の続編となっています。いやはや今作も怒涛の熱量とスケール!!女性ヴォーカルも伴ってエネルギッシュに渦巻くコーラスが全編に配された壮大なサウンドで聴き手を飲み込むようなスタイルは99年作そのまま。終始力みっぱなしで生真面目なまでに厳粛なサウンドにもかかわらず、テーマも反映してかどこかMAGMAにも通じる呪術的な世界観が形成されていくサウンドが印象的です。デビュー作『MARSBELI KRONIKAK』からの持ち味である尺八のように鳴らされる激しいフルートと太くうねりのあるシンセサイザーのコンビネーションももちろん冴えわたっておりやはり素晴らしい。冒頭34分の大作が圧巻ですが、哀愁を帯びたメロディアスなギターも活躍する他の曲も魅力的です。有無を言わせぬ迫力で押し寄せてくる、唯一無二のSOLARISワールドを堪能できるシンフォニック・ロック傑作です。おすすめ!
英国プログレ史上に輝く名盤『GARDEN SHED』で知られるグループ。90年代末より制作が開始、2009年に限定リリースされた4曲入りの同名EPを経て、ついにフルアルバムとして完成した18年作!あの『GARDEN SHED』当時のメンバー4人が揃っている楽曲を含んでおり、美しすぎる男女ヴォーカル・ハーモニーが胸に迫る壮麗な3曲目、ややポップながらも彼ららしい芳醇なメロディが溢れ出す5曲目、奥ゆかしいメロトロンの調べをバックにリリカルかつドラマチックに歌われる8曲目などなど、各曲からバンド名通りの香り高き英国叙情がこれでもかと漂ってきて感激。もちろん、中心メンバーRobert Webbによるピアノ、メロトロン、ムーグ・シンセサイザーなどを自在に駆使した魔法のようなキーボード・ワークも全編で楽しめます。また、Robert Webbとの共演で知られる女性シンガーJenny Darrenの深みあるヴォーカルも、新たな魅力を加えていて特筆。全体としてはちょっとポップな色合いがあるものの、随所でキラリと光るENGLANDらしさに往年のファンなら感慨深く聴き入ってしまう一枚でしょう。
ご存じ、PFMと共にイタリアン・ロックを代表する名バンドによる「シベリア鉄道」を題材にした2019年作!スタジオ・アルバムとしては94年作『IL 13』以来実に25年ぶりとなります。唯一のオリジナル・メンバーであるキーボード名手Vittorio Nocenzi、近年のMetamorfosiにも在籍するドラマーFabio Moresco、DORACORで活動するギタリストNicola Di Gia、そして14年に急逝したヴォーカリストFrancesco Di Giacomo氏の後任という大役を務めるTony D’Alessioら6人編成で制作された本作、ずばり傑作!凛と格調高いタッチのピアノと一音一音に存在感のこもったオルガン、キレのあるプレイでスピード感をもたらすギター、そして熱く歌いこむドラマチックな表情と優雅で繊細な表情とを自在に行き来するヴォーカル。さすがの洗練されたモダン・イタリアン・ロックを聴かせてくれます。でもそれで終わらないのが素晴らしいところで、最初期バンコに漂っていた少し前衛的でミステリアスな雰囲気が全編をうっすら覆っている感じが堪りません。その質感をもたらしているのは勿論キーボード。現代的な重量感あるロック・サウンドを繰り出す演奏陣の中で、クラシックに根差した息をのむようにアーティスティックな音運びが冴えわたっており、衰えは一切感じません。ヴォーカルは、ジャコモ氏とは全く異なるタイプながら、イタリアン・ロック然とした堂々たる歌唱を聴かせていて感動的。FINISTERREやUNREAL CITYといった新鋭の音に接近しながらも、バンコらしい芸術性の高さは遺憾なく発揮された一枚となっています。
ノルウェー最初期のプログレ・バンドJUNIPHER GREENEのメンバーを中心に結成され、77年に1枚のアルバムを残して姿を消したジャズ・ロック・グループ、前作から41年ぶりとなる18年復活作!その内容は新曲+77年に2ndアルバム用に録音されたもののお蔵入りとなっていた楽曲のリメイクからなり、1stの流れを汲むファンキーかつ軽やかに洗練されたジャズ・ロック・サウンドを聴かせています。前作と比べるとエネルギッシュなブラスの要素が減り、フュージョンAOR寄りの落ち着いたサウンドに変化した印象ですが、それでもソウルフルで叙情的なヴォーカル&コーラスやエッジの効いたギターが熱く切り込むソロ・パートなど、当時と変わらぬ魅力も健在。グルーヴィーなリズムを取り入れた体揺れるナンバーから幻想的なキーボードをフィーチャーしたスペーシーなナンバーまで、彼らの円熟した演奏が楽しめる逸品です。
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