2023年10月24日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
近年、世界各国から新鋭プログレ・バンドが続々と登場し、大いに活気づいているプログレッシヴ・ロック・シーンですが、シーンを盛り上げているのは新鋭バンドばかりではありません。
「若い者には負けちゃいられんっ!」とばかりに往年のベテランたちが精力的にニューアルバムをリリースしているのも、現プログレ・シーンの活況を支える大きな要因となっていることは間違いないでしょう。
というわけで、各国のベテラン・アーティストたちによる18~23年リリース作品を、厳選してご紹介してまいります!
まずは直近リリースの作品からご紹介しましょう。英国ネオ・プログレの名バンドが放った23年作☆
PENDRAGON、IQらと共に英ネオ・プログレの隆盛を担った名グループ、23年作。
GENESISを核に据えたファンタジックなシンフォニック・ロックにエレクトロなビート感を溶け込ませた、00年代以降彼らが模索してきたスタイルの集大成と言える一枚に仕上がっています。
1曲目はBIG BIG TRAIN好きにも聴いてほしいメロディアスなモダン・プログレ・チューン!↓
往年の名グループの動きが活発なのがイタリア。ベテラン・アーティストの4作品をご紹介!
PFMでも活躍した名ヴォーカル、ベルナルド・ランゼッティの健在ぶりに嬉しくなる23年作!
近年加入メンバーによる色彩に富んだキーボードワークもかなり素晴らしくって、往年の伊プログレが持っていたエネルギーと溢れる浪漫をたっぷりと堪能できる会心作に仕上がっています。
試聴は下記ページで可能です!
https://maracashrecords.bandcamp.com/album/moving-fragments
伊ロック史上の名グループによる22年オーケストラ共演作。
メロトロンを中心とした神秘的ながら牧歌的温かさも宿したシンフォニック・サウンドに、オーケストラが加わり一層色彩豊かに輝きを放つような演奏は、一曲目から感動しちゃうこと間違いなし!
76年のクラシカル・ロック名作『VOCI』で知られるヴェネチア出身のキーボーディスト、23年作。
クラシックの高い素養を感じるソロ・ピアノ曲&宮廷音楽のように華麗な室内楽ナンバーで構成された素晴らしい逸品です。
ソロ・ピアノ曲は、聴いていて個人的にリック・ウェイクマンのソロ・ピアノ名品『Country Airs』を思い起こしました。
イタリアン・ロック史上の傑作として愛される72年1stで知られるバンドの22年作!
モダンなメロディアス・ロックを軸としながらも、持ち味のたおやかで幻想的な演奏は往年を彷彿させる素晴らしさですなぁ。
エモーショナルかつシアトリカルな厳かさも隠し持った伊語女性ヴォーカルも良い~。
ポーランドからは、あの人気グループによるまさかの新作が届きました♪
90年代ポーランドを代表する活躍を見せたシンフォ・バンドが、前作『SAFE』から27年を経てついにリリースした6thアルバム!
まるでFISH期MARILLIONにエレクトロ要素と絢爛なストリングスkeyを加えたようなスタイルで、往年に劣らずドラマティックに盛り上がります。
ゲスト参加のスティーヴ・ロザリーによる渾身のギターもフィーチャー!
22年の年間ベストセラーではTOP10入りを果たしたこの作品もベテランによる会心作!
フランスが誇るプログレ名バンドPULSARのkey&gによって結成されたバンドの22年3rd。
これはCAMELやPINK FLOYDのファン、そしてPULSARの傑作『Halloween』が好きな方に是非体験して欲しい、叙情的にして夢想的な音世界が素晴らしい絶品シンフォニック・ロック!
元KAIPAのレジェンド・ギタリストRoine Stolt率いる人気グループもナイスな22年作をリリース。
どこまでもファンタジックでスケール大きなTFKサウンドに、ジャケの雰囲気からも読み取れるパーカスやアコーディオンが織りなす異国情緒が豊かな色彩を付与しています。
揺るぎないTFK節と飽くなき探求心が一体となった雄姿に敬服するしかない22年作!
22年作と言えば、P.F.Mのオリジナル・ギタリストがリリースしたこの新譜も円熟の出来栄えでしたね。
地中海の風をまとった美しいアコギの調べと、語りかけるような味わい深さを持つ歌声。
穏やかながらもイマジネーション豊かに響くサウンドが絶え間なく胸を打ちます。
P.F.Mを長年支えた名ギタリストによる22年作!
P.F.M関連作と来ればBANCOからも出したいところ。というわけで素晴らしき22年作をどうぞ♪
P.F.Mと並ぶイタリアン・ロックの雄による22年作!
1~2曲目へのこの流れ、誰もが『Darwin!』や『Io Sono Nato Libero』を思い浮かべるでしょう。
往年にも匹敵するテンションとロマン溢れ出すパフォーマンスに感動がこみ上げる一枚!
もう一枚、イタリアからベテランによる22年作をご紹介!
CELESTEのリーダーによる22年ソロ。
ゆったり敷き詰められていくシンセに、川のせせらぎや雨音も交えほんのりファンタジックに浮遊する音像が最高に心地いい。
明確なメロディはほとんど提示されないのに、どこか「歌心」を感じさせる音作りはさすがイタリアですなぁ。
2021年にもイタリアからは往年のアーティストによる新作が多数リリースされました。
黄色い便器のジャケットでお馴染み、72年作『ジョバンナに捧ぐ』で知られるイタリアのキーボーディスト/シンガーが、なななんと49年ぶりに2ndをリリース!
冒頭からハードなエッジ感を持つアグレッシヴなキーボード・シンフォに驚きますが、合間で聴けるロマンティックでポップな曲調は往年のままで、こりゃ愛すべきだなぁ~。
特に1stに入っていてもおかしくない感動的な歌ものの8曲目は全伊ロック・ファン必聴!
イタリアン・プログレの雄NEW TROLLSのオリジナル・メンバーNico Di PaloとGianni Bellenoが主導するバンドの21年作。
エッジの立ったギター&Gianniのパワフルなドラミングが光るソリッド&リズミカルなプログレ・ハード調が軸の新曲、そして過去名曲の感動的な再録。
本家を食わんばかりのエネルギーとキレの良さに痺れる~~!
21年2月に元メンバーのダニーロ・ルスティチが死去。伊ロックを象徴するレジェンドがまた一人この世を去ったのは悲しい事ですが、彼が残したOSANNAというバンドが歩みを止めることはありません。
物悲しいギターのリフレインとリリカルなフルートが紡ぐメランコリックな演奏に、Linoのエモーションを内に秘めたイタリア語ヴォーカルが歌う「静」の展開から一転、ギターがハードに唸りを上げヴォーカルもエネルギッシュに歌い上げる「動」の展開へ。
そうそうこれこれ、これぞOSANNA!
「前衛」と「伝統」を名に冠したイタリアン・プログレ・グループ、なんと21年作!
1stと変わらぬ俯き加減でメランコリックに奏でるクラシカルなピアノと、初期に比べオペラ的な表現力を高めたフィメール・ヴォーカルが織りなす芸術的世界観はやはり孤高の一言です…。
もちろん、イタリア勢に負けじと各国からベテランによる力作が届けられていますよ~!
カンタベリー・ロックの生ける伝説、21年作!
1曲目冒頭から、CARAVAN節全開の張りがあって弾けんばかりにフレッシュな演奏に、「Golf Girl」を初めて聴いた時のような感覚がこみ上げてきて「おぉっ」となりましたよ…!
PyeのアコギにゲストのJimmy Hastingによる愛らしいフルートが寄り添う兄弟の共演パートも涙ものだし、Richardsonのヴィオラをフィーチャーした最終曲はWOLFの「悲しみのマクドナルド」ばりの名演だしで、聴き所満載。
デビューから53年目(!)、衰え知らずの溌溂としたCARAVANサウンドが味わえる快作です!
言わずと知れた古楽プログレの代表格ですね。彼ら本来の中世/トラッド・エッセンスにユーモアに富んだポップ・センスも注入した渾身の2020年作!
かつて2枚の名作を残した仏シンフォ・グループが、奇跡の3rdをリリース!
クラシカルなオルガンと悲哀を帯びたトーンのギター、妖艶なフルート、憂いを秘めたヴォーカル…。
すべてが往年のまま繰り広げられるサウンドに冒頭から早くも胸が熱くなります。
ハンガリー・シンフォの雄による、99年作『NOSTRADAMUS』の続編19年作!持ち味である哀愁たっぷりのフルートやシンセを伴った、この終始力みっぱなしの生真面目なまでに厳粛なサウンド、相変わらずでほんっと素晴らしい!!
次はイタリアより、往年のバンド&ミュージシャンたちによる怒涛の19年作をご紹介!1作目は、PFMと並ぶあのイタリアン・ロック・バンドがついにリリースした新作からまいりましょう♪
四半世紀ぶりに届けられた19年スタジオ作も、最新アルバムに劣らず素晴らしい内容でした。
モダンに洗練されたサウンドに、初期を彷彿させるミステリアスな音使いがちゃんと生かされていて素晴らしいです♪
唯一のオリジナル・メンバー、ヴィットーリオ・ノチェンツィによる格調高いキーボードのプレイが流石!
イタリア屈指の名バンドLOCANDA DELLE FATEのkey奏者による19年ソロ・アルバム!
この1曲目、LDFの1stオープニングナンバーを思い出さずにはいられない、気品と情熱がとめどなく溢れ出す大名曲!
ドラムには現クリムゾンのGavin Harrisonも参加してるし、ずばり力作。オススメです!
78年に名作を残したアルゼンチンのグループから40年ぶりに届けられた2nd!ギター、サックス、ヴァイオリン、フルートらが紡ぐ、重厚にして妖しげな魅力を纏った彼らならではの音世界が広がってきて、1曲目から感動!1st全曲を手がけた専任コンポーザー/アレンジャーが中心となっているので、音楽性にブレがないのが素晴らしい!
名盤『GARDEN SHED』で知られるグループによる、09年リリースEPの4曲に初披露楽曲など6曲を加えた18年作!ちょっとポップになりましたが、英国叙情たっぷりのファンタスティックなサウンドは相変わらず。往年のメンバー4人が揃ったナンバーも収録!
ノルウェー最古のプログレ・バンドJUNIPHER GREENEのメンバーにより結成され、77年に唯一作を残したファンク・ジャズ・ロック・グループ。彼らがなんと41年ぶりに新作をリリース!相変わらずファンキー&グルーヴィーかつ、さらに円熟味の増したサウンドが楽しめる注目の逸品です☆
ベテラン・バンド達の尽きることなきエネルギーを感じていただけたでしょうか。
今後も往年の名バンドの新作が届けられ次第、こちらの記事でご紹介していきたいと思います!
イタリアが誇る名シンフォ・グループLOCANDA DELLE FATEのキーボーディスト/ピアニストによる19年ソロ作!ドラムはKING CRIMSONの技巧派Gavin Harrisonが務めます。オープニング・ナンバーから、LDF1stの1曲目「A Volte Un Istante Di Quiete」を現代的な重厚さと共に蘇らせたような怒涛の名曲で驚愕!ダイナミックでタイトに刻むリズムに乗って、気品に満ちたピアノと優美に高鳴るシンセ、エモーションたっぷりのギターが一糸乱れず躍動するクラシカル・プログレ・チューンで、この1曲だけでもLDF1stを愛する方なら感動に満たされることでしょう。特に情熱的にしてリリシズムにも溢れたあのピアノのタッチに少しも衰えは感じられません。伸びやかな英語ヴォーカルが映えるキャッチ―な2曲目も素晴らしく、中盤で聴けるキーボードのオスティナートがさざ波のように押し寄せる演奏はまさにLDFを彷彿させます。これはイタリアン・シンフォニック・ロックの新たな傑作と言って問題ない逸品!!おすすめです。
アルゼンチン・プログレの名作の一つに数えられる78年の唯一作で著名なグループによる、前作より40年ぶりとなる18年作2nd。16年にリリースされたダウンロード販売限定EPに収録された3曲を含むフルアルバムとなっています。78年作で全曲のコンポーズとアレンジを務めたDaniel Andreoliを除き演奏メンバーは全員入れ替わっているのですが、荘厳な女性コーラスを伴って重くダークなトーンのギターと渋くむせぶテナーサックスがジャジーに疾走する冒頭、そして時に優雅に時に狂おしいばかりに激しく鳴らされるヴァイオリンと、まさしくあのBUBUの音世界が広がってきて一曲目から圧倒的。ギター&サックスを軸とする重厚にして底知れぬ妖しさを漂わせたクリムゾンばりのヘヴィ・アンサンブルと、リリカルで優美なフルート&ヴァイオリンが織りなす初期PFMにも迫る美しい叙情パートを行き来しながら描き出されていくサウンドがひたすら感動的に響きます。特にエモーショナルに歌いこむ男声ヴォーカルが映える叙情的なパートは、往年よりさらに情感豊かになっていて聴きどころです。名バンドの復活作というと往年から大きく様変わりしているケースもありますが、彼らは驚くほどに当時に近い音楽性を維持していて、前作が愛聴盤の方であれば聴きながらニンマリとしてしまうはず。これはずばり前作に劣らぬ傑作!
名実ともにハンガリー・プログレを代表するバンドと言える彼らの2019年作。99年にリリースされた『NOSTRADAMUS』の続編となっています。いやはや今作も怒涛の熱量とスケール!!女性ヴォーカルも伴ってエネルギッシュに渦巻くコーラスが全編に配された壮大なサウンドで聴き手を飲み込むようなスタイルは99年作そのまま。終始力みっぱなしで生真面目なまでに厳粛なサウンドにもかかわらず、テーマも反映してかどこかMAGMAにも通じる呪術的な世界観が形成されていくサウンドが印象的です。デビュー作『MARSBELI KRONIKAK』からの持ち味である尺八のように鳴らされる激しいフルートと太くうねりのあるシンセサイザーのコンビネーションももちろん冴えわたっておりやはり素晴らしい。冒頭34分の大作が圧巻ですが、哀愁を帯びたメロディアスなギターも活躍する他の曲も魅力的です。有無を言わせぬ迫力で押し寄せてくる、唯一無二のSOLARISワールドを堪能できるシンフォニック・ロック傑作です。おすすめ!
トルコ系フランス人メンバー達によって結成され、79年と81年に名作を残したシンフォ・グループが、約40年を経てリリースした2020年作3rdアルバム!1曲目「Deadline of a Lifetime」からもう言葉を失います。クラシカルなオルガンをバックにベース、ギター、フルートが残響のようにフレーズを繰り返す幻想的なオープニング。そこから力強いリズムを得て、オルガンと悲哀を帯びたトーンのギターが一気に疾走を始めるアンサンブル。シンセとギターが短いソロを交換すると、満を持して歌い出すあの低く落ち着いたヴォーカル…。すべてが往年のまま繰り広げられるシンフォニック・ロックに冒頭から胸がグッと熱くなります。「妖艶」という表現がぴったりな少しエキゾチックなフルートも端正なアンサンブルを表情豊かに彩っていてとにかく素晴らしい。終始薄霧に包まれているような幻想的で浮遊感に満ちたサウンド・プロダクションも、このバンドの叙情美を引き出す効果を上げていて見事です。復活作に多い現代的に洗練された音はほぼ登場せず、まさに2ndアルバムの続きといった趣。ですので当時の2枚が愛聴盤という方なら、これは感動すること間違いなしでしょう。ずばり傑作!
メロトロン溢れる76年の名作で知られ、2019年にリリースされた2ndアルバム以降、精力的に活動を続けるイタリアン・ロックの人気グループ、初となるオーケストラとの共演で制作された22年作!オーケストラは本作のため編成された、ヴァイオリン/ヴィオラ/チェロ/オーボエ/クラリネット/ファゴット/トロンボーンなど総勢10名以上からなるCELESTIAL SYMPHONY ORCHESTRAです。デビュー時から変わらぬメロトロンを中心とした神秘的ながら牧歌的温かさも感じさせるシンフォニック・サウンドに、オーケストラが加わって一層色彩豊かに輝きを放つような演奏は、CELESTEファンなら一曲目から感動がこみ上げて来ること間違いなし。オケとの共演作と言えばとかくスケールが大きくなりがちですが、本作ではあくまでバンド・アンサンブルの一員としてCELESTE本来のリリカルなサウンドをメロトロンやピアノと一緒に作り上げていっており、そのバンドとオケの一体感がとにかく素晴らしい。もちろん最大の聴きモノはメロトロンで、1stそのままの繊細で浮遊感溢れるあまりに優美なメロトロンのプレイは、やはり唯一無二の魅力を感じさせてくれます。零れ落ちるような情緒を宿すアコースティック・ギター、気品あるクラシカルな佇まいのピアノ、数曲で歌う男女のイタリア語ヴォーカルもいつもながら絶品です。CELESTEがオーケストラと一緒にやる、という事の魅力が最大限に引き出された傑作と言っていいでしょう!カケレコメンド!
70sフレンチ・シンフォの代表格PULSARのキーボーディストJacques RomanとギタリストGilbert Gandilによって結成されたバンドの22年3rdアルバム。PULSARやラティマー主導による80年代後半以降のCAMELに通じる叙情的ながらもシリアスな手触りを持つサウンドに、実にフレンチ・プログレらしいアーティスティックで夢想的なタッチを加えた、イマジネーション溢れるシンフォニック・ロックに心奪われること必至。「幽玄」というワードがぴったり来る霧の奥から響くように儚げなキーボード、そしてラティマーやS.ロザリーばりにエモーショナルな音運びのエレキ&物悲しいタッチのアコギを折り重ね幻想的に聴かせるギター。そこに温かく味わいある男性ヴォーカルと美声の女性ヴォーカルが繊細に歌を乗せていきます。シンセがメランコリックにたなびくヒンヤリとしたトーンのナンバーは往年のPINK FLOYDも彷彿。CAMELファン、PINK FLOYDファン、そしてPULSAR『Halloween』がお気に入りという方には是非体験して欲しい音世界です。
言わずと知れたカンタベリー・ロックの名グループ、2013年の『Paradise Filter』から8年を経ての21年スタジオ・アルバム!Pye Hastings、Geoffrey Richardson、Jan Schelhaasらお馴染みのメンバーに、2010年代から在籍のドラマーMark Walker、ゲストのベーシストとして腕利きLee Pomeroyという5人を中心とする編成。もう1曲目冒頭から、張りがあって弾けんばかりにフレッシュな演奏に「おお!」となります。楽しげに弾むリズム、瑞々しいギターカッティング、優雅に飛翔するヴィオラ、芳醇に湧き上がるオルガン。満を持してPyeがRichard Sinclairみたいに低くなった味の滲む声で歌い出すと、「Golf Girl」を初めて聴いた時のような感覚がこみ上げてきて思わずグッと来てしまいました。Pyeのアコギに、ゲストのJimmy Hastingによる愛らしいフルートが寄り添う兄弟共演のパートも涙ものだし、Richardsonのヴィオラが主役の最終曲はWOLF「悲しみのマクドナルド」ばりの名演だしで、さすが聴き所満載。デビューから53年目(!)、衰え知らずのCARAVANサウンドが全編で味わえる快作です!
90年代のポーランド・シンフォ・シーンを代表するバンドとして活躍し、03年に解散。13年に再結成して活動を続けていた彼らが、前作『SAFE』から27年を経てついにリリースした6thアルバム!現メンバーはキーボードのKrzysztof Palczewski、ベーシストPiotr Witkowski、ドラマーWojtek Szadkowskiという往年からのメンバーに、QUIDAMでも活躍したヴォーカリストBartek Kossowicz、ドラマー/パーカッショニストとしても活動する才人ギタリストMichal Kirmucの5人です。いきなりバンド史上最長21分の大曲からスタート。エレクトロニクスと虚ろなヴォーカルが漂う薄暗い展開から、ハケット調のファンタジックかつ気品あるギター&輝かしいシンセが溢れ出しGENESIS/MARILLION憧憬の音世界が広がる冒頭部で、COLLAGEの健在ぶりに嬉しくなります。ヴォーカルはガブリエル・リスペクトを示しつつも熱く歌い上げるFISHに近いスタイルで、FISH期MARILLION彷彿のシンフォにエレクトロ要素と絢爛なストリングス・キーボードを加えたようなサウンドでひたすらドラマティックに盛り上がっていきます。ラストの1曲ではゲスト参加のSteve Rotheryが入魂のソロをたっぷりと聴かせていてこれがまた大変に感動的。MILLENIUMを中心に活況を見せるポーランド・シンフォ・シーンに堂々帰還したベテランによる必聴傑作!
CELESTEのリーダーとしても知られるイタリアのキーボーディスト、完全自作自演の22年ソロ作。12分〜14分台の全6曲で構成された作品で、どこかCELESTEにも通じる柔らかく神秘的な音世界が広がる情感豊かなアンビエント・ミュージック。ゆったりと敷き詰められていくシンセを主体に、川のせせらぎや雨音のSEも交えてほんのりファンタジックにたゆたうサウンドは、まるで桃源郷にいるのような最高の心地よさをもたらしてくれます。明確なメロディはほとんど提示されないのですが、どこか「歌心」を感じさせる音作りはさすがイタリアで、他国の同系統作品とは一味違う温もりがこもっているような印象。イーノなどのアンビエント本流がお好きな方、またTANGERINE DREAMのエレクトロ感が強くないドリーミーな楽曲がお好きな方にも一度味わってみて欲しい作品です。
PFMと共にイタリアン・ロックを象徴する名バンドが放った22年作!ピアノとアコギが寂しげに鳴らされ、哀愁と艶やかさを兼ね備えた素晴らしいヴォーカルが歌い上げる叙情的1曲目から一転、重厚なリズムとギター、ピアノ、オルガンがダイナミックに絡み合ってアーティスティックに突き進んでいく2曲目へと至る、このスリリングさと来たら!誰もが2nd『Darwin!』や3rd『Io Sono Nato Libero』を思い浮かべるであろうテンションのパフォーマンスに感動がこみ上げます。FINISTERREやUNREAL CITY、LA MASCHERA DI CERAなどの新鋭に接近したモダンさを見せつつも、往年のBANCOが持っていたロマンほとばしるようなイタリア臭は健在なのが最高に嬉しいです。前19年作もかなりの力作でしたが、初期BANCOを彷彿させるという点では、今作はジャコモ時代のBANCOファンにも是非オススメしたい傑作!
72年の唯一作『Dedicato A Giovanna G.(ジョバンナに捧ぐ)』がイタリアン・キーボード・シンフォの名作として高い人気を誇る、HUNKA MUNKAことキーボーディスト/ヴォーカリストRoberto Carlotto。彼がなんと49年ぶりにHUNKA MUNKA名義でリリースした21年2ndアルバム!ポップな歌もの+壮大なキーボード・サウンドという作風だった1stでしたが、本作ではハードなエッジ感を持つアグレッシヴなキーボード・シンフォへとスタイルを新たにしています。1曲目、ヴィンテージ・トーンで力強く湧き上がるオルガン、クラシカルなフレーズを疾走感満点に弾きまくるシンセを軸に、各種キーボードが波状攻撃のように畳みかける厚みあるアンサンブルは、これぞイタリアン・シンフォというダイナミズムに富んでいて爽快。一方その演奏に乗る本人の歌には72年作と変わらぬ優しげな表情が滲んでいるのが何とも愛すべきところです。往年の面影を残したサウンドもいたるところで聴くことができ、3曲目や6曲目のデリケートでロマンティックな表情のインスト、1stに入っていてもおかしくない感動的な歌ものの8曲目あたりは、往年のイタリアン・ロック・ファンなら堪らないはず。全体にモダンな音作りとなりましたが、やはりHUNNKA MUNKA以外では聴けない味わいがたっぷりの好盤です。
イタリアン・ロック史上の傑作として名高い72年のデビュー作で知られるグループが、4年ぶりにリリースした22年作。デビュー当時からのメンバーはギタリストPericle Sponzilliのみですが、柔らかく幻想的なタッチで綴る彼らならではのシンフォニック・ロックは健在と言っていいでしょう。前作より参加する女性ヴォーカルがエモーショナルな伊語で歌う洗練されたモダン・メロディアス・ロックを軸としながらも、たおやかに響くクラシカルなピアノや淡く揺らぐオルガン、そして瑞々しいアコギ&歌心あるフレーズを紡ぐエレキと、演奏陣のプレイは70年代より活動するイタリアン・ロック・バンドらしい味わいがたっぷりで感動を呼び込みます。後半にはイタリアン・ポップス・テイストが強い楽曲も入ってきますが、どこかシアトリカルな厳かさを持った女性ヴォーカルの存在によって軽い感じになっていないのが好印象。21世紀の作品としてのモダンな音使いとヴィンテージなサウンドとのバランス感覚が素晴らしい一枚です。
ノルウェー最初期のプログレ・バンドJUNIPHER GREENEのメンバーを中心に結成され、77年に1枚のアルバムを残して姿を消したジャズ・ロック・グループ、前作から41年ぶりとなる18年復活作!その内容は新曲+77年に2ndアルバム用に録音されたもののお蔵入りとなっていた楽曲のリメイクからなり、1stの流れを汲むファンキーかつ軽やかに洗練されたジャズ・ロック・サウンドを聴かせています。前作と比べるとエネルギッシュなブラスの要素が減り、フュージョンAOR寄りの落ち着いたサウンドに変化した印象ですが、それでもソウルフルで叙情的なヴォーカル&コーラスやエッジの効いたギターが熱く切り込むソロ・パートなど、当時と変わらぬ魅力も健在。グルーヴィーなリズムを取り入れた体揺れるナンバーから幻想的なキーボードをフィーチャーしたスペーシーなナンバーまで、彼らの円熟した演奏が楽しめる逸品です。
70年代中期にPFMのヴォーカリストとして活躍したBrnardo Lanzettiを中心とするイタリアン・プログレ・グループ。17年の復活作3rdから6年ぶりとなった23年4thアルバム!B. Lanzettiとリズム隊のオリジナル・メンバー3人に近年加入のギタリストとキーボーディストという、70年代当時と同じ5人編成での制作です。神秘的に鳴り響くシンセをバックに、慈愛をもって語りかけるように歌い始めるヴォーカル。メロトロンやアコギが幻想美を添えピアノがリリカルに鳴らされると、さすがのスケール大きくファンタジックな音世界が広がります。ベテラン然とした貫禄と共に瑞々しさもいっぱいのサウンドは、英詞ヴォーカルながらこれぞイタリアという浪漫を放っていて冒頭からグッと来てしまいます。ソリッドなギターとオルガンがリードする2曲目では一気にギアが上がり、得意のシアトリカルな表現も交えたハイトーン・ヴォーカルが炸裂。御年74歳にしてこの存在感みなぎるパフォーマンスにはただただ驚くほかなし。ゲスト参加のDavid Jacksonによる重厚なサックスが活躍するVDGGばりにヘヴィ・プログレな6曲目も素晴らしいし、一部楽曲で聴けるB. Lanzettiの熱いヴォーカルと対比する哀愁を秘めた女性ヴォーカルも良いです。もちろん緩急自在ながらどっしりと安定感抜群のベテラン・リズム隊にも注目。Brnardo Lanzettiの変わらぬ力強いヴォーカルと色彩に富んだキーボードワークを軸に、密度の高いイタリアン・プログレを聴かせる力作!
試聴は下記ページで可能です!
https://maracashrecords.bandcamp.com/album/moving-fragments
76年のクラシカル・ロック名作『VOCI』で知られるヴェネチア出身のキーボーディストによる23年作。前半はほぼソロ・ピアノ曲で構成されており、クラシック並々ならぬ素養を感じさせる繊細なタッチで紡がれる気品高くも物悲しい美旋律に息をのんで聴き入ってしまいます。個人的にはRick Wakemanのソロ・ピアノ名品『Country Airs』を思い出しました。後半にはフルート奏者&ヴァイオリン奏者が参加して、本格的な室内楽アンサンブルを展開。ヴァイオリンの緩急自在で華のあるプレイがまるで宮廷音楽のような格式を醸し出していて、それに触発されるように情感を乗せて波打つようにピアノが躍動。華麗で起伏に富んだ演奏はチェンバー・ロック好きにもアピールすると思います。出番は多くないものの、美しさと愛らしさを行き来するフルートの音色も素敵です。かなり純クラシック寄りのサウンドですが、クラシカル系のシンフォやチェンバー・ロックのファンに聴いていただきたい一枚となっています。
85年結成、IQ、PENDRAGONらと英国ネオ・プログレの一角を担った名グループによる23年作。メロディアスなシンフォニック・ロックにエレクトロニックな要素を導入してスタイリッシュな聴き心地に仕上げたサウンドは近年の作風と路線を同じくするもの。1曲目はエレクトロ要素を持ったBIG BIG TRAINと言えそうなキャッチーかつスケール大きな一曲で、冒頭からシンフォ・ファンのハートを鷲掴みにしてきます。GENESISを核に据えたファンタジックなシンフォニック・ロックにエレクトロなビート感を溶け込ませる手腕は従来に増して冴え渡っており、00年代以降彼らが模索してきたスタイルの集大成と言えるかもしれません。力作です。
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