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グラム・ロック特集

グラム・ロック特集 – 70年代前半のイギリスを彩った華やかなムーヴメント

  • 芹沢さんこんにちは。あれ、ずいぶん派手…じゃなくて、素敵なサテンのスーツですね。
  • 今日は、70年代前半のイギリスでのグラム・ロックシーンを紹介しようと思って、グラム・ファッションで決めてみたんだよ。似合うかな?
  • は、はい!…え~っと芹沢さん、僕はグラム・ロックというと派手な衣装と化粧のイメージしかないんです。
  • そう、グラム・ロックの「グラム」は、グラマラスという単語から来ていて、派手な衣装や化粧が特徴だね。音楽的にもキャッチーなロックンロールという特徴があるんだよ。早速グラムロックが生まれた背景から、詳しく紹介していこうか。
  • お願いします!

1章:グラムロック誕生

ロックンロールの復活からグラム・ロックへ

60年末のサイケデリック・ロックから発展したプログレッシヴ・ロック。1969年キング・クリムゾンの1st、『クリムゾン・キングの宮殿』により幕を開け、70年代になるとプログレの名作が次々と発表された。
  • 高い演奏力や複雑な構成など、ロックがアート志向を深めていく一方で、シンプルさを求める動きもあったんだ。50年代ロックンロールが再評価され、67年ころからロックンロールショーが行われるようになり、イギリスでは72年に「ロンドン・ロックンロール・フェスティバル」が行われているんだよ。
  • へ~。
  • そんな中、ロックンロールのブギのリズムをベースに、歪んだエレキをかき鳴らすT・レックスが登場したんだ。
  • マーク・ボランですね!声も容姿も妖艶ですよね~。
  • そうだね。きらびやかで中性的なファッションとアイメイクをした彼は、グラムロックのファッションスタイルを形作ったといえるよね。実は、マーク・ボランは60年代末にはサイケデリックなフォークを演奏するフラワーチャイルドで、アンダーグランドで人気を集めていたんだよ。
  • へ~。けど、自然なものを求めるヒッピー文化と派手なファッションはずいぶん違う気がするなぁ。
  • ところがそうでもないんだよ。ジェンダーフリーやフェニミズムといった思想がヒッピー文化の中で発展し、60年代末には中性的で華やかなファッションが流行っていたんだ。
  • そうか、マーク・ボランのファッションはその延長にあったんですね。
  • そうだね。世間に広く認められたいと試行錯誤していた彼は、音楽のスタイルをフォークからエレキサウンドへ変えていき、70年に発表したシングル「Ride A White Swan」で、グラムロックの先駆け的存在になったんだ。

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T.REX/ELECTRIC WARRIOR

71年発表、グラム・ロック大名盤!リック・ウェイクマン/イアン・マクドナルドら参加

豪華絢爛、中性的なセクシャリティとド派手なルックスに身を纏った、「グラム・ロック」の申し子、MARC BOLANのキャラクターを決定付けたT.REXの傑作セカンド・アルバム。シンプルなスリーコードによるロックンロールの可能性を無限に広げることに成功した本作は、「ボラン・ブギー」とよばれるサウンド・スタイルが最も端的に表現されており、夢幻的な歌詞世界と共に、後のパンク・ロック、ニュー・ウェーヴ勢にも多大な影響を与えて続けています。このアルバムから「GET IT ON」で全英1位、「JEEPSTER」で同2位を記録。また、「GET IT ON」はアメリカで「BANG A GONG」のタイトルでリリースされ、全米10位まで上昇しました。ベースのイントロが印象的なこの曲は、T.REXの代表曲であり、日本のCM等でも頻繁に使われている名曲。T.REXの曲全般にも当てはまる事ですが、ボランならではの妖しいムード漂うこれらの曲は、今聴いても古さを感じさせないばかりか、もしろ現在未来のロック・スターが持つ、普遍的なクール感覚を示唆し続けていと言えるでしょう。

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  • ポップでファンキーで、思わず踊りたくなりますね!
  • カケレコ君、その通り。この曲はまさに、ロックシーンから取り残されていたイギリスのティーン達が待っていた、踊りたくなる曲だったんだ。さらに、マーク・ボランを売り出そうと奮闘していた彼の恋人や女性スタッフは、彼にきらびやかな女性ものの衣装を着せ、彼自身もより自分を魅力的に見せるために化粧をしたんだ。刺激的なものに飢えていたティーン達は、この姿に熱狂したんだよ。
  • そうか、イギリスのティーン達は、刺激的なロック・スターの登場を待っていたんですね。
  • その通り。ではカケレコ君、他にグラム・ロックを代表するミュージシャンを知っているかな?
  • 僕が知っているのは、デヴィッド・ボウイですね。だけどきらびやかというより、奇抜なファッションですよね…。
  • そう、彼は様々なアートの要素を取り入れ、グラムロックをアーティスティックなものにしたんだよ。では、次はデヴィッド・ボウイを紹介していこう。
  • はい、お願いします!

グラム・ロックとNYアンダーグラウンドの融合

  • カケレコ君、デヴィッド・ボウイも60年代半ばからフォークスタイルで活動していたのだけれど、なかなか売れずにいたんだ。
  • へ~。マーク・ボランと同じですね!
  • 共通点はそれだけじゃないんだ。2人とも、名プロデューサー、トニー・ヴィスコンティがプロデュースしていたんだ。
  • へ~、そうだったんですか!
  • 2人は友人であり良きライバルだったんだ。69年にはT.REXの前身バンド、ティラノザウルス・レックスの前座として、デヴィッド・ボウイがパントマイムをしたり、70年にはデヴィッド・ボウイの曲でマーク・ボランがギターを弾いているよ。

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  • デヴィッド・ボウイはパントマイムをやっていたんですか?!
  • そう、彼は68年にパントマイムを勉強していたんだ。デヴィッド・ボウイは音楽だけではなく、文学、演劇、絵画など幅広い分野に興味を持っていたんだよ。彼のアーティスティックな志向はグラム・ロックを大きく飛躍させたんだ。
  • へ~。奇抜な衣装もアートの一環だったんですか?
  • 元々デヴィッド・ボウイが持っていたアート的な美意識があったし、派手好きで好奇心旺盛な妻アンジーのアドバイスも大きかったんだ。もう1つ重要なことは、71年にアメリカに行き、アンディ・ウォーホルを中心とするNYアンダーグラウンドの人々と会ったことだね。派手な衣装や化粧のドラッグ・クイーンを始め、イギリスとは違う退廃的な文化にも刺激を受けたんだ。
  • そうして出来たのが、『ジギー・スターダスト』なんですね!

DAVID BOWIE/ZIGGY STARDUST

72年発表の第5作、「地球に落ちてきた男」ジギーを渾身のパフォーマンスで演じきった、ロック史に燦然と輝く大名盤!

72年5th。地球にやって来た異星人「ジギー」がロック・スターとして成功し、やがて没落していくストーリーを描いたロック・ミュージカル風の作品。SF的コンセプトを彩る楽曲全てが素晴らしく、実にキャッチーでドラマティック。厳かなピアノとシアトリカルなヴォーカルで、架空の世界に一気に引き込まれるオープニングの「Five Years」、アコギのイントロ、控えめなヴォーカルからメロディアスなサビで盛り上がる「Star Man」、軽快なロックンロール・ナンバー「Hang On To Yourself」、ミック・ロンソンの力強いギター・リフがドラマティックな「Ziggy Stardust」と、ボウイの抜群のメロディーセンスが全編に発揮されています。グラム・ロックの頂点に立ち、ロック史においても燦然と輝く名盤。

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  • グラム・ロックの頂点ともいえる作品だね。奇抜な衣装や化粧で「社会に対する反抗」や「人間の暗部」を表現し、Ziggyというキャラクターを演じたんだ。当時なくなっていた「ヴィジュアルでの衝撃」を世間に与えたんだね。
  • そうだったのか~。芹沢さん、他にはどんなミュージシャンがいたんですか?
  • では、代表的なグラム・バンドを紹介していくよ。

ROXY MUSIC – 少し大人のグラム・バンド

ポップな曲がティーンの心をつかんだグラム・ロックの中で、少し異色だったのが、ロキシー・ミュージックだった。ブライアン・フェリーのダンディな衣装やブライアン・イーノの奇抜な衣装はまさにグラムファッションだけれど、彼らはグラム・ロックを客観的に見、音楽的な試みとして取り入れた。アヴァンギャルドとポップを融合したサウンドは唯一無二。

ROXY MUSIC/ROXY MUSIC

グラム・ロックを代表する名バンド、エキセントリックかつポップ、記念すべき72年デビュー作!

ブライアン・フェリー(Vo)、ブライアン・イーノ(Key)を中心に、フィル・マンザネラ(G)、アンディ・マッケイ(Sax)など、後に英ロック・シーンを引っ張っていく名ミュージシャン達により結成された名グループ。グラム・ロック全盛の71年にリリースされたデビュー作。プロデュースは、キング・クリムゾンでお馴染みのピート・シンフィールド。オープニング・ナンバーからテンション全開で、吹き荒れるアンディ・マッケイのサックス、叩きつけるようなノイジーなフィル・マンザネラのギター、四方八方から飛び込んでくるブライアン・イーノのシンセが左右チャンネルをエネルギッシュに駆け回ります。極めつけは、ブライアン・フェリーのわざとらしいヴィヴラート・ヴォーカル!個性がぶっ飛んだメンバーが全速力でぶつかりあったサウンドは、グラム・ロックのカテゴリーに収まらない破天荒さでいっぱい。ロックンロールやドゥ・ワップなどオールド・タイムな音楽を詰め込みつつ、圧倒的にアヴァンギャルドに、かつおもちゃ箱をひっくり返したようにポップに聴かせる、英ロック史上に残る傑作です。

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SLADE – イギリスで根強い人気を誇るバンド

60年代なかばから活動するも売れずにいたバーミンガム出身の4人組。チャス・チャンドラーのアドヴァイスで、ポップなサウンドとグラムな衣装を取り入れて人気を獲得。

SLADE/SLAYED ?

自国で国民的人気を博した英グラム・ハード・ロック・バンド、72年作4th

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MOTT THE HOOPLE – デヴィッド・ボウイのプロデュースによりスターダムへ

60年代末にデビューするも売れずに解散を決意。バンドのファンだったデヴィッド・ボウイがその話を聞き、72年5thの『ALL THE YOUNG DUDES すべての若き野郎ども』をプロデュース。この作品がヒットしグラム・バンドとして成功した。

MOTT THE HOOPLE/ALL THE YOUNG DUDES

デヴィッド・ボウイ提供の代表曲「All The Young Dude(すべての若き野郎ども)」収録の72年作

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COCKNEY REBEL

73年にデビューしたバンドで、スティーヴ・ハーレーのシアトリカルなヴォカールがデヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックのような美意識を感じさせる。1st、2ndとも高い評価を得る。

COCKNEY REBEL/HUMAN MENAGERIE

スティーヴ・ハーリー率いる英グラム・ロック/モダン・ポップの名グループ、74年デビュー作

デヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーを引き継ぐシアトリカルヴォーカルとひねくれたポップ・センスを持つスティーブ・ハーレイが中心の5人組。74年のデビュー。後にアラン・パーソンズ・プロジェクトに関わったり、ケイト・ブッシュのプロデュースで知られるアンドリュー・パウエルがオーケストラアレンジを担当。ギターがメインではなく、ヴァイオリンがフィーチャーされているのが特徴で、本作からヒットした「SEBASTIAN〜セバスチャン」は、スティーヴ・ハーレイの哀愁たっぷりのヴォーカルとオーケストラがドラマティックに盛り上がる名曲。アルバム通しては、英国トラッド風だったりボードヴィル風の曲だったりと、バラエティに富んだ英ポップの傑作です。

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2章:エンターテインメント化したグラム・ロック

T.REXやデヴィッド・ボウイによって起こったグラム・ブーム。音楽業界も加わり、グラム・ロックはエンターテインメント化していく。
  • グラム・バンドは華やかでTV映えするからTV局も喜んだんだ。そして、アルバム志向になっていたロックだったけど、ティーンを中心としたグラムブームだったこともあり、シングル盤が復活したんだよ。ところで、カケレコ君、この人は知っているかな?

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  • し…知らないです。何というかギラギラですね…。
  • この人はグラム・ロックの代名詞ともいえる存在で、その名もゲイリー・グリッターというんだ。グラム・ロックはグリッター・ロックとも言われ、彼の名前から来ているんだよ。
  • え!そうなんですか!けどマーク・ボランやデヴィッド・ボウイとはだいぶイメージが違いますね。
  • 彼は元々は売れないポップ歌手だったんだ。べテランプロデューサーの元、グラム路線に変更してスターダムにのし上がったんだ。60年代半ば~終わりに活動を始め、売れずにグラムブームに便乗して成功したバンドは沢山いるんだよ。
  • そうなんですか!グラム人気の力は凄かったんですね。
  • そう、この成功にはベテランのプロデューサーや作曲家の力があったんだ。ロックミュージシャンが自分たちで曲を作り、セルフプロデュースするようになったために仕事がなくなってしまったプロデューサーや作曲家たち。彼らがグラムブームでリヴェンジを果たしたんだ。代表的なのが、スウィートの曲を作っていた、ニッキー・チン&マイク・チャップマンで、彼らはスージー・クアトロの曲も手掛けてヒットさせているよ。

SWEET

60年末から活動するも売れずにいたバンドがニッキー・チン&マイク・チャップマンと組み、シングルヒットを連発。痛快なパワー・ポップ。

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SUZI QUATRO

黒いレザーのジャンプスーツがトレードマークの米出身のスージー・クワトロ。衣装とは裏腹なかわいい声で元気にシャウト。キャッチーな曲を盛り上げます。

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BAY CITY ROLLERS

71年にデビューし、作曲家マーティン&コールターが作り出す曲で74年からヒットを連発。見た目はグラムらしくないけれど、リズムのいいキャッチーな曲はグラム・ロックの特徴を引き継いでいる。

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3章:グラム・ブームの終わり

こうしてイギリスを華やかに彩ったグラム・ブーム。いつしかヴィジュアル面だけが先行するシーンに、オリジネイター達は嫌気がさして離れていく。
  • デヴィッド・ボウイはイメージが肥大化した「ジギー」というキャラクターを、引退という形で73年に封印したんだよ。そしてこの年にデヴィッド・ボウイもブライアン・フェリーも原点回帰と言えるカヴァーアルバムを発表し、新しい方向に進み始めたんだ。
  • マーク・ボランはどうだったんですか?
  • 74年のアルバムでブラック・ミュージックを取り入れてはいるものの、ドラッグに溺れていた彼は新しい方向に進むまでには至らず、77年に事故で29歳という若さで亡くなってしまったんだ。
  • そうなんですか、なんだか寂しいですね。でも、グラム・ロックの華やかさやキャッチーな曲には、今でもワクワクする魅力がありますよね!芹沢さんありがとうございました!

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