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COLUMN THE REFLECTION 第3回 「スカイライン・ピジョン」のメロディーにのせて ~Deep Feeling の正規再発を祝し~ 文・後藤秀樹

第3回 「スカイライン・ピジョン」のメロディーにのせて ~Deep Feeling の正規再発を祝し~

プログレの世界に魅せられた者にとって、その音楽の何が自分を引き寄せているのだろう。そんなことを考える必要はない、理屈ではないという声が聞こえてきそうだ。理屈抜きに楽しめる音楽であればそれはそれで素敵なことなのだが、私にとってはどれだけ風景や情景を見せてくれるかがこれまで一番大切な要素だと考えてきた。物語のような構成や緩急をつけたスリリングな曲展開も私を夢中にさせてくれたし、楽器のテクニックも重要だ。しかし、やはりそこに奏でられるメロディーがどれだけ心に響いてくるかを中心に置いているのは前回の冒頭で書いたとおりだ。どんな音楽でもテレビやラジオから、そして街角から聞こえてくる音楽、昔聞いたメロディーを思い出すときに、自分の中で今まで以上にジャンルにこだわらなくなってきていることをより感じるようになってきた。

エルトン・ジョンの1969年のDJMからのファーストアルバム『エンプティ・スカイ(Empty Sky)』に収録された「スカイライン・ピジョン(Skyline Pigeon)」を聞いたことがあるだろうか。彼がハープシコードを弾きながら一人で歌う素敵なメロディーを持った曲だ。彼は、ご存知の通り70年の「僕の歌は君の歌(Your Song)」の大ヒットで世界的なシンガーソングライターとなり、たくさんのヒットを飛ばすことになるが、アルバムの中にも珠玉と言えるような名曲がたくさんある。私にとってエルトン・ジョンは昔から今でもフェイバリット・アーティストの一人であり、初期・中期のLP、シングル、CDともに生涯大切にしたいと思っている。

中でも「スカイライン・ピジョン」は自分の中において今まで聴いてきた曲の中で最重要な位置を占める素敵な曲だ。嬉しいことにエルトン自身にとっても大切な曲らしく、72年にシングル「ダニエル」のB面に再度収録している。「ダニエル」そのものも、メロトロンが全面を覆うポップ・ナンバーで大ヒットとなるが、驚いたのはそこでの「スカイライン・ピジョン」が全くの別バージョンだったことだ。ピアノを弾きながらリズム・セクションを加えオーケストラにのせて歌っており、もうまるでスタンダードナンバーのような風格をあわせ持っていた。もちろんそちらも甲乙つけがたいほどに素晴らしい出来となっている。

(*1)Elton John / Skyline Pigeon (original version)

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(*2)Elton John / Skyline Pigeon (piano version)

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英国ロックのディープ・フィーリングのDJMから発表された唯一のアルバムは人気も高く優れた作品であることに間違いないだろう。私にとっても思い出深く、今も大好きな作品だ。その唯一作が英Grapefruitから13曲を追加して再発されるという情報を聞いたのは今年の始めだっただろうか? 久しぶりにリリースを楽しみに待つ気分を味わった。その理由は13曲も収録されるというボーナストラックにあったわけで、未発表曲やシングル曲が収録されることになると考えたからだ。特に、シングルとして今述べてきたエルトン・ジョンの「スカイライン・ピジョン」をリリースしている事実があるので、それも間違いなく収録されることを確信していた。

ディープ・フィーリングは英DJMからセルフ・タイトルのアルバムをリリースしたのは71年10月のことだ。当時、東芝から日本盤としてLPが発売される予定もあったようだが結局実現はしなかった(その前にシングル「フー・ドゥ・ユー・ラヴ」が日本盤として発売されていた・・後述)。70年代後半になって、プログレを中心にした雑誌「Fool’s Mate」に掲載された「聞いておきたい名盤100選」に選ばれていて、印象的なジャケットもあり聞いてみたいもののひとつとしてマークしていた。幸運にもそれから程なく馴染みのレコード店で(何と!)新品が入荷したので飛びついた。それから時間が経ち90年代も半ばを過ぎた頃、国内盤として世界初のCDが登場してみると、そのジャケットはとてもチープに見えて、ただの地味なデザインに思えて残念だった。
初めて原盤を手にしたときには、ざらついた紙質の中に表裏ともに同様に右下にギロチンが描かれていて、そこにどこかドラマ、物語性を感じてわくわくしたことを思い出す。レコードの取り出しは見開きの真ん中から行うカンガルー・ポケット。そしてその見開きには左に歌詞、右には5人のメンバーの首イラスト。さすがにこの意匠は、表のギロチンのイラストと、収録曲にも「ギロチン」があったこともあり、ちょっと不気味さを感じはしたが・・・

当時の私の知識の中では、プロデューサーのデス・チャンプ(Des Champ)とロジャー・イースタビー(Roger Easterby)は、「しあわせの朝」「夜明けのヒッチハイク」のヴァニティ・フェア(Vanity Fare)のプロデューサーとして共通していることが分かって、ポップさを持った英国らしいロックが聞けるのだろうと予想していた。

『ディープ・フィーリング』のアルバムは、何度も書いてきたように現在までにけっこう好意的に語られることが多い作品の一枚となっている。確かに演奏内容に関しては一級品だと思う。しかし、その頃の私にとってはその収録された選曲にどこか違和感があったことを白状しなければならない。

「ウェルカム・フォー・ア・ソルジャー」「ギロチン」を中心に彼らのオリジナル4曲はよくできている。前者は戦争、後者は革命というドラマの中にどちらも生と死の狭間の心の動きを音楽で表現している。全体に緩急を取り混ぜ、静かな部分を十分に活かし、オルガンを中心にしながらもギターもコーラスも炸裂する名曲と判断できる。「ギロチン」の中間部のオルガン・ソロは完全にレクイエムとなっている。「クラシカル・ガス」はキーボード主体のベガーズ・オペラのカバーと比較してしまう(ベガーズの方はプログレ・インストのお手本のように感じる)が、オリジナルのメイソン・ウィリアムズ同様にギターを中心としたアンサンブルが聞き物のひとつだろう。演奏半ばの静寂を感じさせる部分からのジャージーなギターとピアノからオルガン・パートに移る部分にかけては時代の雰囲気を存分に感じる。静かなる高揚感といった趣だ。アルバムの評価を高めるにふさわしい。

(*3)Deep Feeling / Welcome For A Soldier

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(*4)Deep Feeling / Classical Gas

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(*5)Deep Feeling / Guillotine(映像はスペイン盤LPジャケット)

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そしてAB両面の中間のフォーク、カントリーロック系の曲。「オールド・ピープルズ・ホーム」はスパニッシュ・ギター風のイントロからCSN&Y直系と言えるハーモニー。質感として古いモノクロ・フィルムの田園風景の一場面が浮かんでくる。もう片方の「カントリー・ヘア」の曲展開は妙に凝っていて一筋縄ではいかない。もろにカントリー風のスティールギターにはじまり、間奏のフルートを挟んで、後半はボッサ・テイスト。最後はシカゴの「ビギニングス」のようにパーカッションのみで終了する。

当時の英国ロック・バンドはアルバムの中にバラードとともにカントリー風の曲を持ってくることでバリエーションをつけたものが多いので、私の違和感はそこにあったわけではない。

私が当初抱いた違和感の最大の理由は最終曲「ルシール」だった。これはロックン・ロールの超有名曲で、頭の中にリトル・リチャードの姿がうかんでしまい、アルバム全体を聞き通し、そして改めてクレジットを見た時点でどうもしっくりこなかったのだ。

(*6)Deep Feeling / Old People’s Home

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(*7)Deep Feeling / Country Heir

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そうなってくると、ディープ・フィーリングが一体どんな歴史を持つバンドなのかが、気になってしまう私のクセだ。が、当時は全くお手上げ。まだ70年代後半のことだ。現在のようなネットもない時代だ。国内盤が出ていればもう少し、視野が広がるはずだがそれもないとなると、かなり難しかった時代だ。

やっとの思いで探っていくと、トラフィックのジム・キャパルディがいたバンドとの資料を見つける。それも調べてみたもののメンバーにはポリ・パルマーや、ルーサー・グロスヴナーまでいて、G.ゴメルスキーのマーマレード・レーベルからシングルを出しているが、さすがにそれは別のディープ・フィーリングなのだろうと一度は挫折することになる。(そちらの音源も今では簡単に入手できるので隔世の感がある。)

その後何年もかかって英国のレーベルシングル・リストを入手し、そこにディープ・フィーリングがページ・ワンとDJMでシングルを複数リリースしていることが判明した。そのうちの一曲があの「スカイライン・ピジョン」であることがわかり、何とかして聞いてみたいという思いに駆られた。その一方で70年には日本盤シングル「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー / ムーヴ・オン」が出ていることも判明したが、私は未だに入手は出来ていない。

肝心の「スカイライン・ピジョン」は、68年のうちにエルトン・ジョンとバーニー・トーピンがデヴュー前に二人で曲作りを多々行った中の1曲で、最初にレコーディングしたのは、ロジャー・(ジェームス)・クックだった。今ではYouTubeでもCDでも聞くことが出来るが、その事実が判明したときには感慨深いものがあった。また、ジーン・ピットニーが75年に英Bronzeレーベルから出した『ピットニー‘76』というアルバムがあるのだが、そこでもカバーされている。このアルバムはかつてロックン・ロール系ソングライターであり、シンガーであった彼が12曲全てをカバーで歌う作品なのだが、これもとても心が和む作品だ。

(*8)Roger (James) Cook / Skyline Pigeon

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ディープ・フィーリングの「スカイライン・ピジョン」は2枚目のシングルとして英国で70年7月に発売されていた。これは、DJMの廉価レーベルSilverlineのサンプラー・アルバム『Pick Of The Tops Volume1』にもファーストシングル「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」、サードシングル「ドゥ・ユー・ウォナ・ダンス」と、3枚のシングルA面が収録されている。このアルバムは昨年入手できたし、さらにはシングル本体も手に入れることが出来た。素直に嬉しかった。

(*9)Deep Feeling / Skyline Pigeon(1970)

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で、今回Grapefruitから発売された『Deep Feeling』(CRSEG044)なのだが、本当に嬉しい再発となった。詳細なライナーもこれまでのGrapefruitリリースと同様でありがたい。日本でも『Deep Feeling Anthology』と的確と思われるタイトルがつけられて国内流通されている。
私の中で一番のポイントは、「スカイライン・ピジョン」をはじめとしてシングルではポップ・ソングを中心にリリースしていた彼らの音楽が、何故アルバムではプログレッシブな内容になったのかということ。さらにはどうしてアルバムラストでは「ルシール」なのか。

(*10)Deep Feeling / Lucille

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ディープ・フィーリングのメンバーは、ジョン・スワイルJohn Swail(ヴォーカル);マーティン・ジェンナーMartin Jenner(ギター)、デイヴ・グリーン Dave Green(ベース)、デイヴ・クレア Dave Clare→グラハム・ジャーヴィスGraham Jarvis(ドラムス)、デレク・エルソンDerek Elson(キーボード)の5人。1969年にザ・ガイ・ダレル・シンディケイト(The Guy Darrell Syndicate)というバンド名をディープ・フィーリングに改めるところに始まる。

シングルは、
①Do You Love Me? / Move On (Page One POF 165) Feb.1970
②Skyline Pigeon / We’ve Thrown It All Away (Page One POFS 177) Jul.1970
③Do You Wanna Dance / The Day My Lady Cried (DJM DJS 231) Nov.1970
④Sweet Dust And Red Wine / Turn Around (DJM DJS 237) Feb.1971
⑤Country Hair / We’ve Thrown It All Away (DJM DJS 257) Oct.1971

アルバムは、
Deep Feeling /Deep Feeling (DJM DJLPS 419)Nov.1971
  
収録曲は、
Side A 1.Welcome For A Soldier 2.Old People’s Home 3.Classical Gas
Side B 1.Guillotine 2.Country Heir 3.Lucille

さらに、アルバム発表後にはシングル
⑥Sunday Morning Leaving / Why,Lady Why? (Philips 6006 246) Oct 1972
⑦Let’s Spend The Night Together / Avalon (Santa Ponsa PNS 12) Mar.1974

このように、アルバム発表以前に約2年の中で5枚のシングルと1枚のアルバム。さらに、アルバム発表後には、所属を変えて2枚のシングルを発表する。⑤のシングル「カントリー・へア」は、シングル中唯一のアルバム収録曲だが、短縮バージョンとなっている。アルバム先行シングルとしても意外な曲の選択で完全にシングルとアルバムとを別物と考えて発表したような印象がある。あまりにもアルバム・ジャケットの印象に引っ張られてしまうことも仕方ないが、音楽業界全体がアルバム単位に移行し、よりプログレッシブな姿勢が時代の趨勢になってきたという時代の雰囲気が、メンバーの力量と想像力を後押ししたイメージのアルバムと言うしかない。

⑥⑦のシングルのポップス路線も⑦Aのストーンズ・カバー以外は、マーティン・ジェンナーとデイヴ・グリーンの共作である。ちなみに、最初の①「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」は英チャートに70年4月から5週間チャートインし、最高位34位となっている。

ここに、YouTubeでも公開されている72年のBBCでのライブ映像がある。それは、どちらかといえば、アルバム中の「ルシール」路線のロックン・ロール系のハードな音だ。彼らはライブもかなりこなしていて、その音楽性はYesやZeppelinのような路線だったというから、シングルのポップ、アルバムのプログレ、ライブのハードとその形を区別していたのかも知れない。演奏力が並みのバンドであれば出来る技ではない。

ここで演奏されている曲は、ヘッズ・ハンズ&フィートの「ウォーミング・アップ・ザ・バンド」

(*11)Deep Feeling /Warming Up The Band

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ここでじつは注意しておかなければならないことがある。ザ・ガイ・ダレル・シンディケイトという前身バンドについてだ。ガイ・ダレルとは、ディープ・フィーリングのヴォーカリストのジョン・スワイル(本名)のことで、芸名としてガイ・ダレルを名乗っていた。ガイ・ダレル&ザ・ミッドナイターズで64年のデヴューから2枚のシングル、ガイ・ダレル&ウィンド・オブ・チェンジズで1枚のシングル、ガイ・ダレルの名の下に10枚のシングル、ガイ・ダレル・シンディケイトとして1枚のシングルを出している。つまりディープ・フィーリング結成までに既に長いキャリアを持っているのだ。

ガイはそれまでの活動の中で68年にはソロとして「スカイライン・ピジョン」をA面に発表している。先に紹介したロジャー・ジェームス・グリーナウェイと前後してシングルに取り上げている事実は私にとって発見であり、驚きでもあった。(Pye 7N17566)さらに、翌69年にはディープ・フィーリングに向けた移籍(?)でソロとして2枚、シンディケイトとして1枚をページ・ワン・レーベルに残している(「スカイライン・ピジョン」に続くシングルも、エルトン・ジョンとバーニー・トーピンの「ターン・トゥ・ミー(Turn To Me)」・・・これもいい曲で、同じページ・ワン・レーベルのプラスチック・ペニーも取り上げている)。ディープ・フィーリングとしても③「スカイライン・ピジョン」をシングルとして発表しているわけで、ガイ・ダレル(ジョン・スワイル)は2度同じ曲をシングルとしてレコーディングしたことになる。

英ポップシーンでは知られた存在であったガイ・ダレルがあえてその名を隠し(当時ディープ・フィーリング結成にあたり、本当に自分がガイ・ダレルであることを明らかにはしなかった)、本名のジョン・スワイルとしてメンバーに加わったことで、より芸術性の高い作品を作り上げたという経緯はディープ・フィーリングの唯一のアルバムの存在をよりドラマチックにしているのではないだろうか。

こうして彼のそれまでの経歴と音楽性をさかのぼってみると、私が当初違和感を持っていたアルバムのラストに収録されている「ルシール」の存在がじつに違ったものとして聞こえてきた。つまり、それまでのロックン・ロール、ポップを時代の雰囲気に合わせてリスペクトした上での再構成の結果と考えられるのである。

実際、ガイ・ダレル・シンディケイトが名前をディープ・フィーリングに変えた時点では、ガイ自身は自分のバックバンドと考えていたようだが、アルバム発表時点では、その名前をジョン・スワイルに変更したのは、彼自身と言うよりロジャー・イースタベリーとデス・チャンプのプロデューサーの考えなのかもしれない。

今回再発のGrapefruit盤の中に、アルバム発売時のDJMのプレス・シートが掲載されていて興味深い。そこには71年10月に出るアルバム『ディープ・フィーリング』について詳しく紹介している。そこには、「アルバムはこれまでのシングルとは違った姿が現れている。」ことと、「そのためにこれまでの3ヶ月を曲作りとレコーディングを行ってきた。」こと。そして、2人のプロデューサー・チームが同時発売のシングルを「カントリー・ヘア」の編集バージョンに決めたことが記載されている。シートのどこにもガイ・ダレルという名前は見つからない。(そして、シングル・カットとして選択したのもプロデューサーだった。それまでのポップ路線からの転換を意識づけるためとは大胆と思ったが、ボーナストラックとして収録されたシングル群を聞くと、「カントリー・ヘア」は確かに異色だ。)

改めて聞き直してみると、「ルシール」も(当時の言葉で言えば)ニューロック風味に仕上げていてなかなかカッコいい。後半のオルガンはいかにもの60年代からつながるモッズ・スタイルだし、延々と続くファズ・ギターのリフもだんだん心地よささえ感じるようになる。バンド名のディープ・フィーリングも、じつはチャック・ベリーの曲から取ったという話も何だか分かるようになってきた。

ディープ・フィーリングのアルバムを、今回の大量ボーナスを含めた再発として改めて聴いた時に、彼らに対して今まで感じていた以上のシンパシーを思い描いた次第である。

そして「スカイライン・ピジョン」に込めた、当時未だ無名のソングライターチームであったエルトン・ジョンとバーニー・トーピンへのエールも感じられた。当時のポピュラー音楽界の深い部分を改めて思い知らされた気がする。

最後に記しておきたいのは、やはりコーラス・ハーモニーのことだ。

今回調べてみて、ガイ・ダレルの66年のソロ・シングル曲「アイヴ・ビーン・ハート(I’ve Been Hurt)」が映像で残っていて、曲の頭から彼の伸ばす歌声は結構長い。16拍続く。このコラムの1回目で、「ウェルカム・フォー・ア・ソルジャー」での中間のア・カペラでの声が長く続くことへの驚きを記した。ひょっとしたらガイ・ダレル(ジョン・スワイル)にはロングブレスは得意技なのか? 紹介する映像は73年のものであり、ガイ・ダレル名義のものとして紹介されているがバックはディープ・フィーリングのメンバーに、ホーンセクションが加わったもので興味深い。「アイヴ・ビーン・ハート」はもともと66年にガイのソロ名義のシングルとしてCBSから発表したものだが、73年にSanta Ponsaから再発され最高位12位と彼の経歴上最大のヒット曲となっている。

(*12)Guy Durrell / I’ve Been Hurt

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アルバム中のコーラスについては触れてきたので、ポップなシングル曲の方に目を向けてみたい。最初の①「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」や⑦「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トウギャザー」はどちらもあまりに有名なカバー曲だが、どちらも原曲より遙かにスローでメロウになっていて、オーケストレーションにも絡んで大甘なハーモニーになっている。④「スウェット・ダスト・アンド・レッド・ワイン」は、同じ英国のチッコリー(Chicory Tip)も取り上げるポップス。③「ドゥ・ユー・ウォナ・ダンス」の後半は中々堂に入っている。どのシングルもプログレとしての唯一のアルバムと比べると無視されてしまいそうだが、当時のポップスも大好物な私としてはじつに面白く聞ける。

ひいき目になってしまうのを承知で書くと、「スカイライン・ピジョン」は原曲の良さが際立つと同時に、多くのカバーがある中で、ハーモニー・ポップ、コーラス・ナンバーに仕上げてしまうディープ・フィーリングのもうひとつの個性として許容してしまえるのである。もうひとつ大きな収穫は③B「ザ・デイ・マイ・レディ・クライド」は初めて聞いたが、これもなかなかいい曲だった。見つけもの。

今回の再発で残念だったのは、未発表曲やデモ、ライブが入っていなかったこと。きっとアルバム用に録音されたプログレッシブな音源も他にありそうな気がするのだが。

そして、1枚のCDの中に彼らのプログレッシブなアルバムと、ポップなシングル群と二つの側面をぎゅうぎゅうに詰め込んでしまうことに、きっと(私が感じたものとは違った)違和感を持つ人も多いのだろうなと、ちょっと複雑な思いになってしまったのも事実だ。

ガイ・ダレルその人に興味を持った方は、英RPMから昨年「Guy Darrell/I’ve Been Hurt~The Complete1960s Recordings」(RPM Retro 984)がリリースされているので手に取ってみたらと思う。そちらの方には、ディープ・フィーリングのメンバーのデイヴ・グリーンの言葉が載せられていて、「それまでのポップバンドがプログレッシヴ・ロックを演奏したものだから、10代のファンは混乱していたよ。結局僕らは、空中分解した形かな。」と語っている。これもまた、当時の状況を表した言葉なのだろうと思う。結局、メンバーは各々様々なセッション・ワークに向かうことになる。

最後にしつこいと言われそうだが、エルトン・ジョン71年の東京公演での「スカイライン・ピジョン」をどうぞ。ここでは、ブレイク直後の素直なピアノの弾き語りという形で物静かな世界を堪能できる。

そして、おまけとして「クラシカル・ガス」のベガーズ・オペラのものと、もうひとつ面白いバージョンを紹介したい。作者のメイソン・ウィリアムズがハープ奏者のデボラ・ヘンソンと共演しているものだ。メイソンのオリジナルも1968年に「フォノグラフ・レコード」とタイトルされた作品に収録されているが、これも機会があれば触れてみて欲しい。

(*13)Elton John / Skyline Pigeon (1971 Tokyo)

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(*14)Beggars Opera / Classical Gas

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(*15)Mason Williams & Deborah Henson / Classical Gas

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