2021年9月25日 | カテゴリー:Column the Reflection 後藤秀樹,ライターコラム
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「ブラス・ロック」の3回目は、BS&Tやシカゴの成功の前後に世界中からブラス・セクションを売りにしたバンドが次々と出て来たので、その辺りを振り返っておきたい。
時代的に見ると、60年代のサイケデリック・ロック・ムーヴメントの流れを受け、ロックの中にジャズやクラシックといった様々なジャンルを取り入れたものと言える。そして、その時期に貪欲な吸収力を持ったロック・ミュージックは、ラテン、アフリカ音楽を含めあらゆる方面にまでその触手を広げ、理想的な混沌状態を示すようになる。
大雑把にとらえてしまえば、楽器に関しても従来のギターを中心にベース、ドラムス(+オルガン、ピアノ)という基本の編成に、ブラスが加わったもの、ストリングスを入れたものが登場してくる。客演としての参加形態はそれまでもあったものの、正式なメンバー構成の中にそれらの楽器を含んでいることが特徴的で、続々と新たなバンドが登場してきた。
今回は、当時日本でも紹介されたブラス・ロック・バンドについて触れていきたい。
前回までBS&Tを(ブラス・ロックの萌芽)、シカゴを(ブラス・ロックの浸透)ととらえてきたが、歴史的に見るとまだ色々とある。例えば「ロックの歴史」的に見ていくと68年のエレクトリック・フラッグ(The Electiric Flag)の『A Long Time Comin’』が『ブラス・ロック』の創始者とされることもよくある。でも、私はこのアルバムのジャケットもその名前も知ってはいたものの、実際に聞いたのはBS&Tやシカゴを聞いていた時期より後のことだった。
◎画像1 Electric Flag / A Long Time Comin’ + The Buckinghams
初めて聞いた時に、今述べた基準で言えば、4人が正式メンバーとしてブラス・セクションに在籍し、ギターはマイク・ブルームフィールドだし、ドラムスは大好きなバディー・マイルスということでポイントは高く、なるほどと思ったことは確か。しかしその参加メンバーゆえにセッション・グループのように聞こえたことも事実。『ブラス・ロック』としての新鮮さ、衝撃度は残念ながらもうひとつだった。
同様に、BS&Tとシカゴを大成功に導いたJ.W.ガルシオが67年の2作目以降を手がけたバッキンガムス(The Buckinghams)も『ブラス・ロック』の創始者的に言われる。確かに、こちらもクールでスマートなブラスを導入した広がりのあるポップなサウンドが心地よい。しかし、ポップ・グループのバックにブラスを大きく取り上げたサウンドというイメージが強く、『ブラス・ロック』というラインでは語るのはどうだろうか・・・とずっと思っていた。
そうした考えを持っていただけに、日本で紙ジャケのシリーズ「血湧き肉躍る!ブラス・ロック名作選」(Sony Music Japan)として2012年に『Sax & Brass Magazin』が監修したラインナップを見て、その中にエレクトリック・フラッグやバッキンガムスが含まれていたことにちょっと驚いてしまった。
そのシリーズのラインナップを挙げておくと、
<第2回発売 2012年10月10日>
⑨BS&T『ニュー・ブラッド』(‘72)
⑩BS&T『イン・コンサート』(’76)
⑪バッキンガムス『タイム&チャージ』(‘67)
⑫エレクトリック・フラッグ『ア・ロング・タイム・カミン』(’67)
⑬メイナード・ファーガソン『征服者~ロッキーのテーマ』(‘77)
⑭ライトハウス『ワン・ファイン・モーニング』(’71)
『ブラス・ロック名作選』という名称も新鮮ではあったが(私が知る限り『ブラス・ロックを冠にしたレコード時代を含めて最初のシリーズと思われる)、第1回のセレクトはともかく、第2回は年代のばらつきも有りちょっと苦しかったかなという印象を持った。
そんな中で一番嬉しかったのは、ライトハウス『ワン・ファイン・モーニング』の紙ジャケ化だった。
ブラス・ロック的なバンドとして日本でいち早くリリースされたもののひとつは、カナダのライトハウスだった。1969年後半にファースト・アルム『ライトハウス(Lighthouse)』が日本で出された。彼らは何と13人編成で、リード・ヴォーカルとキーボードを加えた基本の5人に、4人のブラス・セクション、そして何と4人のストリングスも加わった大編成だ。当時米国では「ロック・オーケストラ」と紹介され、RCAレコードはColumbiaレコードのBS&Tに対して「RCAからColumbiaへの回答」と称して大々的なプロモートを行っていた。彼らは69年3月にトロントの「Rock Pile」コンサートでデヴューし、続けざまにボストンのポップ・フェスティバルで米国に登場する。その後5月にはカーネギー・ホールでのコンサート、7月にはニュー・ポート・ジャズ・フェスティバルにも登場している。
★音源A Lighthouse/Every Day I Am Reminded
中心はドラマーのスキップ・プロコップ(Skip Prokop)だが、彼は元ポーパーズ(Paupers)のメンバーとして2枚のアルバム(67,68年)を発表し、68年のアル・クーパーの『スーパー・セッション』に参加した実力派ドラマーとして知られていた。伝説的セッションの中で、スキップはアルのBS&Tの構想の話を聞いて思いを同じにしたのかもしれないと想像をふくらませると楽しい。因みにスキップはポーパーズ以前にデヴィッド・クレイトン・トーマス(D.C.Thomas)とも共演していて、後に彼をBS&Tのボビー・コロンビーに紹介することでBS&Tのリード・ヴォーカリストとしての加入につながっていく。
◎画像2 Lighthouse album
ライトハウスはRCAから3枚『ライトハウス』(‘69)『スイート・フィーリング(Suite Feeling)』(’69)『平和組曲(Peacing It All Together)』(‘70)をコンスタントにリリース。70年に開催された大阪万博(Expo’70)に来日し、お祭り広場で共演した日本のFTB(フラワー・トラヴェリン・バンド)と親しくなり、12月にFTBはカナダに遠征。71年のライトハウスのコンサートでオープニングアクトを務め、FTBとしてアルバム『Made In Japan』を創りあげるというエピソードも有名だ。ここで中心的な役割を果たしたのがライトハウスのキーボード・プレイヤーでプロデューサーでもあるポール・ホファート(Paul Hoffert)だった。
彼らの音楽の特徴はダイナミックな編成から生み出される暖色系の明るいサウンド。歴代のヴォーカリストの声質も明るく、コーラス・ワークも見事に決めている。バーズの「霧の8マイル(Eight Miles High)」、ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」、リッチー・へヴンズの「ノー・オポチュニティー・ネセサリー」といったカバーもあるが基本的にはオリジナル中心。
★音源B Lighthouse/One Fine Morning
71年にGRT(米ではEvolution)に移籍して発表した『ある晴れた朝(One Fine Morning)』が日本でもヒットしたことで、BS&T、シカゴと並んで「ブラス・ロック」の一派として認知されその人気も高まった。その後に発表された『ソーツ・オブ・ムーヴィン・オン(Thoughts Of Movin’On)』、『サニー・デイズ(Sunny Days)』、2枚組の『ライヴ(Live)』までは国内盤も発売されたが、『Can You Feel It』『Good Day』・・・と続いていくその後のリリースも好作品だ。
個人的には『ある晴れた朝』と『サニー・デイズ』が現在に至るまで愛聴盤で、各曲の出来の良さに加えコーラス・ワークも見事で、アレンジも洗練されていて、青空の下の爽快な疾走感を思わせる傑作だと思われる。間にはさまった『ソーツ・オブ・ムーヴィン・オン』は「ちょっと小さくまとまってしまったかな・・」という最初の印象を今も引きずっている。
なお、『ある晴れた朝』と『ソーツ・オブ・ムーヴィン・オン』は英国では何故かVertigoからロジャー・ディーンの手によるジャケットでリリースされたことからコレクター人気が高く、今も異様な高値がつけられていて驚かされる。(ただし、気をつけたいのは英Vertigo盤の『ある晴れた朝』と日Philips盤の『ソーツ・オブ・ムーヴィン・オン』がロジャー・ディーンの同デザインであること。アルバム名を確かめなくてはわかりにくいところ。)
◎画像3 One Fine Morning + Thoughts Of Movin’On
じつは、カナダ出身のブラス・ロック・グループはけっこうあって、日本でも70年に発売されていた。
ひとつは日本ビクター/MCAからの7人編成のジェリーロール(Jellyroll)、もうひとつは日本コロンビア/Janusから出た9人編成のイラストレーション(Illustration)というバンドだった。
◎画像4 Jerryroll + Illustration
ジェリーロールのジャケットは16世紀の奇想の画家と呼ばれるアンチンボルドの絵画を現代的にしたような印象的なもの。イラストレーションのほうは幻想的に仄かに浮かび上がるメンバーが描かれている。
共通点は2つのグループ共にリード・ヴォーカルがBS&TのD.C.トーマスにそっくりなこと。特にジェリーロールのヴォーカリスト、ロジャー・トロイ(Roger Troy)は76年にRCAからソロ・アルバムを出すほどの実力者。マイク・ブルームフィールドやエルヴィン・ビショップのアルバムでもその名を見ることができるし、エレクトリック・フラッグの74年の「ザ・バンド・ケプト・プレイング」ではベーシストとして参加している。
このジェリーロールのアルバムは全体にコンパクトにまとまった曲が多く聞きやすい。プロデューサーのリチャード・ポドラー(Richard Podolor)はアレンジも手がけているが、彼はスリー・ドッグ・ナイト、ステッペンウルフ、アイアン・バタフライのプロデュースも担当し、人懐っこい典型的な米国ロックを送り出すことが得意なので、この作品も聞く機会に恵まれていたならもう少し注目を集めたように思われる。
イラストレーションは曲によっては優しげな女性ヴォーカルも入れて、より繊細さをアピールして幾分ポップでソフトな面が強調されている。ジャケットの印象の重厚なイメージと実際の音楽のポップさとのギャップで損をしたように思える。
2つのグループともに期待を受けて紹介されたものの、結果的にはアルバム1枚で消えてしまった。今ではニッチな存在ではあるが、逆にそれゆえに愛おしい作品。ジェリーロールはロジャー・トロイのソロとともにBig PinkからCD化されているが、イラストレーションは未だCD化されていないのが残念。
★音源C Jellyroll/Strange
★音源D Illustration/Upon The Earth
BS&Tとシカゴをヒットさせた日本のCBS/Sonyグループが新たに米Epicを獲得し、最初にリリースした71年のチェイス(Chase)も忘れられない。
◎画像5 Chaseの3作品
何よりその編成、トランペット4本という完全に高音域主体の音楽で、メンバーは9人組。大ヒット曲になった「黒い炎(Get It On)」もその編成をいかしたダイナミックなナンバーだが、デヴュー・アルバムの1曲目「オープン・アップ・ワイド」が衝撃だった。
★音源E Chase/Open Up Wide
トランペット・ソロから徐々に音が重なっていくスリリングさは見事で、当時STV(札幌テレビ放送)ラジオの「ロック・トゥモロウ」という番組のテーマ曲にも使われていて、地元では馴染みのナンバーにもなった。
さらに、ちょうど日本では4チャンネル・ステレオが発売されたところで、そのSonyからはSQ4チャンネル・レコードでも出されていた。(CDの中で特に国内コンピレーションに収められた「黒い炎」の中には、4チャンネル・リミックスが施された音源が使用されたために全体に音が広がりすぎて聞きにくいものがあるので注意が必要だ。)
★音源F Chase/Get It On チェイス/黒い炎
リーダーのビル・チェイスは、メイナード・ファーガソン、ドン・エリス、スタン・ケントン、ウディ・ハーマンといったビッグ・バンドを渡り歩いた猛者だった。
セカンド『ギリシアの神々(Enna)』(72年2月米発売)からも「光ある世界へ(So Many People)」、「ウーマン・オブ・ザ・ダーク」というヒットも生まれ、トランペットの持つ迫力をリスナーに植え付けた。
72年4月にはその2作目をひっさげて日本武道館で日本公演も果たし、人気もうなぎ登りといった感じだったが、メンバー脱退が相次ぎ、消えてしまったかと思われた。
ちょうど『ギリシアの神々』がリリースされた頃、アサからウキウキしている友人がいて、どうしたのかと聞いてみると、「今日帰ったらチェイスの新しいアルバムを買いに行く。」と満面の笑みを湛えて答えてくれた。中学時代は自分ではじめて買うレコードの思い出が一番多い頃だと思うが、彼にとっても最初の1枚だったのだ。翌日からその友人は、アルバムの気に入ったところを私に語ってくれた。彼は「1曲目が特にいい」と言い、私もその意見に同意した。その「スワニー川」はアルバム冒頭の佳曲なのだが、シングルにもなっていないし現在では目立たない曲だ。それでも自分だけの「お気に入り」を持つ楽しみを見つけたことは素晴らしいことだと、今久し振りに思い出した。
消えてしまったと思われたチェイスは74年に3作目『復活(Pure Music)』を発表し、新たなメンバーを伴って文字通り復活した。アルバムはその後のフュージョンにつながっていくような洗練された曲が多く好意的に受けとめられた。しかし、その年の8月に飛行機事故でビル・チェイスを含むメンバー4人が亡くなってしまった。当時そのニュースを聞いた時には、何ともやるせない気持ちになってしまった。
★音源G Chase / Run Back To Mama
『ビークル』のヒットでその名が日本でも知られるアイズ・オブ・マーチ(Ides Of March)も忘れられない。しかし、そのヒットが大きすぎたのと、所属したWarner Bros.レコードが日本では東芝から、新たに設立されたワーナー・パイオニアに移籍するという谷間にあって、アルバムを聞く機会を逃してしまった印象が強い。ファースト・アルバム『ビークル』は東芝から70年4月に発売され、セカンド『コモン・ボンド(Common Bond)』はパイオニアから71年の8月に出されていた。
◎画像6 Ides Of March アルバム
アイズ・オブ・マーチは66年頃から活動し、当初ブラス・セクションはなかった。コーラスを活かした幾分ソフトなサイケ・ポップ・グループという印象だった。3年間に米Parrotから5枚のシングルと米Kappから1枚のシングルを発表しているが、68年頃からブラスも取り入れはじめ、69年にワーナーへの移籍を契機にブラスを加えた大型グループとなった。その時の彼らは7人組。そしてワーナーに移籍して2枚目のシングル「ビークル」が3月に発売され5月には全米6位の大ヒットとなったわけだ。
★音源H Ides Of March/Vehicle
これも最初にラジオから聞いた時にはぶっ飛んだ。イントロからブラスのアレンジがカッコいいのだ。ヴォーカルの迫力も負けていない。まさに「キラー・チューン」と呼べる1曲だ。ただ、彼らには一発屋的な感覚があったのも確かだった。私がアルバムを聞いたのは後になってのことになるが、なかなかよく出来ていて今聞いても面白い。ファーストではCSN&Yやジェスロ・タル、そして「エリナー・リグビー」のシンフォニック・カバーと聞き所は確かに多いしよく出来ている。セカンドは、すべてジム・ペトリックのオリジナルというところが今考えてみると驚かされる。シングルにもなった「スーパー・マン」も間違いなく「ビークル」を意識していてキャッチーで魅力的だ。やはり無視できない作品だ。
リーダーでリード・ヴォーカルとギター担当はジム・ペトリック。彼は、アイズ・オブ・マーチがRCAから72年、73年に2枚のアルバムを出した後に、チェイスの『復活』で2曲ヴォーカルを担当している。そのうちの一曲はアルバム中でも印象的な「ラン・バック・トゥ・ママ」だった。(音源G)
ジムは「アイズ・オブ・タイガー」(81年)の大ヒット曲を持つサバイバー(Survivor)を79年に結成するのだが、そのデヴュー・アルバムにはチェイスの初期のリズム・セクションの2人が参加していた。まさに事故を契機に消えたチェイスの生き残り(サバイバー)というイメージが浮かんでくる。
そのジムは90年代に入ってアイズ・オブ・マーチを復活させ、以来近年まで元気に活躍している。
「女性ヴォーカルを擁した大型ロック・バンド」のテン・ホイール・ドライヴ(Ten Wheel Drive→TWD)はポリドールから発売されていた。米本国では69年の作品ファースト・アルバム『コンストラクション#1』が日本では70年7月に発売されている。ヴォーカルは70年代にGoldieの名前でガール・ポップ・シンガーとして歌っていたジェニア・レイヴァン(Genya Ravan)。彼女はシャウトも出来るが、バラードもこなす実力派。バンドはブラス・セクション5人を加えた10人組としてのデヴューとなる。
◎画像7 Ten Wheel Drive アルバム
バンド名は正確にはTen Wheel Drive with Genya Ravanであり、ジェニアは別格扱いだった。ギターのアラム・シェフリン(Aram Schefrin)、キーボードのマイク・ゼイガー(Mike Zager)の二人がほとんどの曲作りとサウンド作りを担当(つまりバンドの方向性を決定)している。
★音源I Ten Wheel Drive / Eye Of The Needle
セカンド『ブリーフ・リプライズ』は70年12月に発売されているが、レイヴァンとシェフリン、ゼイガー、そしてトロンボーンのデニス・パリシ以外のメンバーが総入れ替えになっている。中でも新たなサックス・プレイヤーのデイヴ・リーブマン(Dave Leibman)だが、彼はその後マイルスとの共演を含め、ECMからの作品でも有名なジャズの第一線で活躍する実力者だった。
3作目は71年5月に米発売(日本では10月)となる『大車輪(Peculiar Friends)』だが、ここでも主要な3人(レイヴァンとシェフリン、ゼイガー)以外すべてのメンバーが入れ替わっての作品となる。
私が最初に聞いたのがこの3作目のLPになるのだが、アルバムのオープニングから驚かされた。そして何度も聞いた。CD化される前にAmazonのデジタル・ダウンロードを見つけて購入したのだが、ヒスノイズが多くて唖然としたのだが、圧倒的な迫力の演奏はそれを軽く凌駕した。ここでの「音源J」もそこから取られたものと思われるが最初のノイズを我慢していただければありがたい。聞く部分の多い好作品である。
★音源J Ten Wheel Drive / No Next Time
TWDはブレインとなるメンバーの方向性が明確であれば、結果に表われてくるという好例のひとつだと思う。特にブラスを導入するという方法論を持ちながらも、その音楽性が中途半端になってしまったバンドもじつは多数存在しているだけに、TWDは現在聞いてもその完璧さを堪能できる。近年Big Pinkから3枚ともにCD化されてありがたかったが、もっと早く出ていても良かったと思う。
TWDはその後、ジェニア・レイヴァンがソロに転向するため脱退したが、新たな女性シンガー、アン・サットン(Ann E.Sutton)を加えて4作目『TWD』を73年にCapitolから出している。(こちらは未CD化のまま。それまでの3作とは作風が異なってプレAOR的な雰囲気もあるのだが、なかなかいい作品なので今後のCD化を期待したい。)
マイク・ゼイガーはその後の活動も積極的だった。特に印象的なのは78年のディスコ・ナンバー「Let’s All Chant」のヒット。日本でも「レッツ・オール・チャンタ~チャンタでいこう!」というタイトルで出されたことが大きな話題となったことを思い出す。TWDと全く違う音楽性であることは言うまでもないことだが。
それ以外にも日本で発売されたブラス・ロックのグループはまだたくさんある。当然、日本では未発売のものもあるのだが、特徴的なのはアフロ・ロック系のバンドがブラスを伴って多く登場したこと。特に有名なのはトニー・ヴィスコンティのプロデュースでデヴューしたオシビサ(Oshibisa)で、MCAから71年~72年にかけて出された初期作品はロジャー・ディーンのジャケットだったこともあり、注目された。他にもマンドリル(Mandrill)、アサガイ(Assagai)、デモン・ファズ(Demon Fuzz)等が、70~71年に日本でも紹介されていた。(アフロ・ロックについては次回以降取り上げたい。)
もうひとつはラテン・ロックで、代表格のサンタナが70年2枚目のアルバム『天の守護神(Abraxas)』から「ブラック・マジック・ウーマン」が大ヒットしたことで日本でも「ラテン・ロック」という言葉が一般に使われるようになった。しかし、彼らはブラスを売りにしてはいなかったのだが、71年3作目の『Santana III』からカットされた「新しい世界(Everybody’s Everything)」のブラス・サウンドを加えたダイナミックな演奏が聞き手の度肝を抜いた。
★音源K Santana / Everybody’s Everything
これはダンス・ナンバーなのだが、大々的にブラスが導入されたことで、サンタナがまた違った魅力を聞かせるようになったと評価された。そのブラス担当がゲスト参加のタワー・オブ・パワー(Tower Of Power→TOP)のホーン・セクションだった。その頃TOPは聞いたことのない名前だったが、70年に『East Bay Grease』(San Franciscoレーベル:当時日本では未発売)を出していたバンドと知ったのは後のことだった。彼らも10人組でスタートしている。
◎画像8 Tower Of Power アルバム
そのTOPは、72年に日本でも『Bump City』が発売され、その後ブラス・ロックの代表格として長く知られる存在となる。特にホーン・セクション5人(!)はバンドとは独立しても活動し、引く手あまたとなった。エルトン・ジョン、リンダ・ルイス、アル・クーパー(!)、リトル・フィート等多数のライヴやレコーディングに参加していくことになる。
TOP自体はファンク・R&B色が強いのだが、ブラス・ロックの醍醐味であるダイナミックな演奏にはやはり魅力を覚える。初期作品はずいぶんと聞いた。やはり、個人的にはノリのいいナンバーよりもメロディーを活かした曲が好きだ。
◎画像9 Cold Blood アルバム
やはりファンク、ソウルよりのバンドに68年結成のコールド・ブラッド(Cold Blood)がいる。ブラス以上に女性シンガーのリディア・ペンス(Lydia Pense)のソウルフルなヴォーカルが売りだった。彼らは9人組だ。日本ではセカンドの『Sisyphus』(72年)(ワーナー・San Francisco)、『悪の極地(First Taste Of Sin)』(72年)、『スリラー(Thriller!)』(73年)、『Lydia』(74年)(以上ワーナー・Reprise)、『リディア・ペンス&コールド・ブラッド』(76年)(abc)とリリースしている。TOPにも似た気持ちよくブラス・ロックらしいアンサンブルもかなりあるのだが、やはりヴォーカルに好き嫌いが出てくるのではないかと思われる。
★音源L Cold Blood / Funky On My Back
私はその昔読んだアルベール・カミュの小説「シーシュポスの神話」に出てくる「永遠に続く苦行」を想起させて、どこか重苦しさを持った『Sisyuphus』、そして『悪の極地』が好きなのだが。
◎画像10 Azteca , Malo アルバム
ラテン・ロックでは、最初に紹介した「血湧き肉躍る!ブラス・ロック名作選」(Sony Music Japan)でリリースされたアステカ(Azteca)はサンタナの弟分(IIIに参加したCoke Escovedoつながり)として72年にデヴューしたが、これがまた大編成でダイナミックな演奏を聴かせた素晴らしいバンドだった。ステージでは17人編成にもなったという。アステカは古代メキシコ帝国の名前だが、参加したメンバーはやはりジャズの素養を持っており、コールド・ブラッドやマロとの共演経験を持っていて、やはりブラス・ロックとラテン・ロックのつながりが見えてきて興味深い。そしてサンタナの4作目『キャラバンサライ』のホーン・セクションとしても揃って参加している。アステカは2年間に2枚のアルバムを出していた。
★音源M Azteca / Whatcha Gonna Do(Single-Edit)
同傾向には72年にデヴューしたマロ(Malo)もいた。74年までにワーナーから『Malo』『Dos』『Evolution』『Ascencion』の4枚をリリース。その後80年代以降も時折思い出したようにアルバムを出している。ラテンは打楽器も重要で、複数のパーカッション・プレイヤーも抱えることからやはり大所帯のバンド編成となるが、それゆえ迫力のある魅力的な演奏を聴かせている。
◎画像11 Hot Menu’73
昔、国内でワーナー・パイオニアから出た『HOT MENU ‘73』という伝説のLP2枚組廉価盤サンプラー・アルバムがあった。同世代の方であれば、きっとその安さと内容の充実さゆえに買った方が多いと思う。海外では廉価のサンプラーは山のようにあるのだが、ここ日本では珍しいことだった。そこには私にとってはじめて聞くバンドが次々と登場し、その面白さに感激した。(Warner Bros.とAtlanticの当時の国内発売されていた洋楽の主要どころが惜しみなく28曲も収録されていた。それで980円!)
特に印象に残って繰り返し聞いたのがタワー・オブ・パワーの「Down to the Nightclub」、そしてマロの「Momotombo」だった。その後、マロは特に気に入ってLPも中古で次々と入手し、CDは2001年にRhino Handmadeとして出された4枚組(Paper Sleeve)の高価なBoxまで買ってしまった。
今回の最後はその2曲、「Down to the Nightclub」「Momotombo」で締めくくろう。
★音源N Tower Of Power / Down to the Nightclub
★音源O Malo / Momotombo
今回はここまでとするのだが、70年代初期に日本で紹介されたブラス・ロックはまだたくさんある。コラム1回分でそれらを紹介するのは、はじめから無理ということは分かっていたので、今回の後半は(少しメジャーな)派生して関連するラテン・ロック系について少し触れておいた。
次回以降は、実験的にクラシックやジャズとの関連性を強くしたもの、その後のプログレとの関わりを持つような音楽性を感じさせるものも取り上げていこうと考えている。
ブラス・ロックは確かに70年代初頭の流行のひとつの形だった。その流れはバンドがその編成にホーン・セクションを組み込むだけでなく、ソロ活動を続けるミュージシャンもその流れに敏感に反応する。文中でも触れたが、Tower Of Power のHorn Sectionも独立した形で多くのミュージシャンのバックとして参加するようになり、その音楽の幅を広げていったと言える。
ただ、歴史の断面としてのブラス・ロックの流行はその勢いが衰えていくのも早かったと思われる。
チェイスの「黒い炎(Get It On)」のヒットとほぼ同時期にT.Rexも同名異曲のシングル「ゲット・イット・オン(Get It On)」をリリースした。その時に、T.Rexをリリースした米Repriseレコードは混乱を恐れ「Bang A Gong」と曲名を変えることをアナウンスした。70年にそれまでのTyrannosaurus RexはT.Rexと短く改名したところだったが、会社側はその頃のチェイスの勢いに配慮したような印象を受けてしまう。日本では邦題があったこともあり、大きな問題とはならなかった。
英国ではT.Rexの周知度と人気で問題なしととらえたのだろうが、逆にチェイスのシングルのほうが「Get It On In The Morning」というタイトルに変えられていた。結局、米国とカナダのみでシングルの表記が「Bang A Gong(Get It On)」となっただけだった。
ブラス・ロックが一時の流行で終了し、その後の世のポピュラー音楽界を席巻していくグラム・ロックをより印象づけるようなエピソードに思えてしまう。
ブラス・ロックはその姿(形)を変え、特にジャズ・ロックやフュージョンの中で新たな展開を迎えることになり、現在でも間違いなく息づいているのは言うまでもないことだ。その前提で、それ以前の70年代初期の流行期の姿を次回も展開していきたい。
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今年(2021年)の夏・・・
コロナ禍での開催に関して賛否渦巻く中で開催された「東京オリンピック2020」の閉会式で東京スカパラダイスオーケストラが大々的にフューチャーされていた。ブラス・ロック好きの私にとって彼らの演奏を見ているのは至福の瞬間だった。ホーンを大々的に取り入れたバンドには「華」があり、見ているだけで気分が高揚した。
また、何とか開催された高校野球では、ある高校の吹奏楽部が「21世紀の精神異常者」を応援歌のひとつとして演奏していて、それもまた驚きだった。きっと皆さんはもうご存知だろう。
様々な音楽の形態があって我々の生活を潤いのあるものにしてくれるのだが、次回もまた私の中で高揚感を誘い、元気を与えてくれたブラス・ロックを紹介していこうと考えている。
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カナダはトロントで結成されたブラス・ロック・グループ、69年2nd。同年1stに引き続き、ヴァイオリンやチェロ奏者を含む13名の大所帯から繰り出される賑やかなアンサンブルは端正かつ迫力満点!壮大なスケールのTHE BAND「Chest Fever」ブラス・ロック・カヴァーに幕を開け、キャッチーで愛くるしいオリジナル曲「Feel So Good」に続いたかと思えば、3曲目では11分にも及ぶ流麗かつスリリングなジャズ・ロック・セッションが展開されたりと、ジャンルの垣根を越えた豊富なアイディア、緻密で多彩なアレンジも見事。華やかなポップ・ソングからアヴァンギャルドな実験性までを自在に行き来する、プログレッシヴ・ブラス・ロックの傑作です。
総勢13名の大所帯からなるカナダの名ブラス・ロック・グループ。69年の1st、2ndに続いて70年にリリースされた3rd。過去作と同様、キレのあるブラス・セクションやロマンティックな弦楽器が織り成す緻密かつ華やかなアンサンブルは文句なしの素晴らしさ。さらに本作は日本でもヒットした「The Chant」を軸としたトータル・アルバム的な作りになっており、ポップな中にメッセージ性も感じさせるより味わい深いサウンドに仕上がっています。ロックやクラシックやジャズを織り交ぜつつ、アメリカのルーツ・ミュージックやウェストコースト・ロック、さらには西海岸サイケなど、「古き良きピースフルな時代」を想起させる要素を巧みに散りばめたアレンジも魅力的。思わずウキウキと心弾むような楽曲が揃い踏みの傑作です。
紙ジャケット仕様、内袋付仕様、リーフレット付仕様
盤質:傷あり
状態:良好
帯有、若干折れあり、軽微な汚れあり
68年にカナダはトロントで結成されたブラス・ロック・バンド。英VERTIGOレーベルから英国でリリースされた他、米ビルボードでも80位を記録するなどバンドの代表作とも言える71年作4th。強烈にうねるリズム隊、ブイブイと力強く吹かれるホーン・セクション、疾走感いっぱいのギター・カッティング、そして、本作より新たに加入したBob McBrideのエネルギッシュ&ソウルフルなヴォーカル。名曲「One Fine Morning」をはじめ、BS&Tやシカゴなど、ブラス・ロックの名グループに一歩も引けをとらない圧巻のサウンドで聴き手を飲み込みます。これはしびれます。名作!
BLOOD SWEAT & TEARS、CHICAGOと並ぶ米ブラス・ロック代表バンドの一つ!1st/2nd/3rdの3in2CD、71-74年作!!どこまでも熱くたぎるブラス・セクションとリズム・セクションのせめぎ合うようなサウンドの塊が、猛烈な勢いで突進してゆく様は、さすがです!ファンキーかつグルーヴィーなヴォーカル・パフォーマンスも力強く、アメリカが誇るブラス・ロック・サウンドの最良のエッセンスを全て併せ持った力強いサウンド・パフォーマンスを是非、ご堪能下さい…!フリー・ソウル・ファンやCURTIS MAYFIELDファンなんかにも大推薦なワウ・ギターも最高!
盤質:傷あり
状態:良好
スリップケースに小さい圧痕あり
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