2020年11月7日 | カテゴリー:Column the Reflection 後藤秀樹,ライターコラム
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2009年、過去の遺産になったと思われたマンダラバンドの名前が甦ったのはまさに驚きであった。
時は既に21世紀となり、『魔石ウェンダーの伝説』から30年、『曼陀羅組曲』からは既に35年の年月が流れていた。
◎画像① Mandalaband III;IVのメンバー
何よりもアルバム・ジャケットには『Mandalaband III』と記されており、間違いなく復活作であることを確認した。タイトルは『BC Ancestors』、つまり「紀元前、祖先」という意味になる。壮大な歴史物語であることは想像できる。レコーディングは2007年から2009年の2年をかけて、スペインの小さなスタジオを中心に各地で行われたことが記されていた。
マンダラバンドを名乗るだけに、中心人物はデヴィッド・ロール(David Rohl)その人。唐突に彼の名前が浮かび上がった。
彼は78年に『魔石ウェンダーの伝説』を出すが、その前後にBJH(バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト)のアルバムの制作に関わり、ウーリー(Woolly Wolstenholme)の同バンドからの脱退と共に、彼のソロ・アルバム『Maestoso』にも参加する。その後、ウーリーと共にTV番組の音楽の制作に関わったり、ポップバンドのプロデュースを手がけたりしていたのだが、80年代半ばでその名が途切れていた。
◎画像② Woollyのソロ『Maestoso』制作に関わったD.RohlとマンダラバンドIIのメンバー
彼はその時期音楽業界から一度手を引き、何と大学で古代史を学んでいた。
UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)で87年から90年までエジプト学を学び学位を取得、その後91年から96年まで大学院で古代史の研究を進めた。小さい頃からエジプトに魅せられていたことは『曼陀羅組曲』時代のバイオグラフィーにも明らかにされていたが、向学心に燃え完全に専門家になってしまった。その後、97年から2005年までシリアでの発掘作業を始め、エジプトの東部砂漠調査の中心となって働いていた。そのかたわら、大学の学際科学研究所所長、古代年誌フォーラムの編集者として研究成果を本に著わし、多くのTVドキュメンタリーの制作や講演も行っている。そんな彼の姿を英国の新聞では「リアル・インディ・ジョーンズ」と紹介されていた。
普通、こんなことはなかなか明らかにならないのだが、音楽畑でも注目されていた経歴があるだけにその足跡は詳細に伝わってくるのが面白いところ。彼の考古学的古代史の著作は幾つも見つかるし、TVのヒストリー・チャンネルをチェックすると彼が出演する番組も見つかるに違いない。
◎画像③ リアル・インディ・ジョーンズ=デヴィッド・ローズ
彼は2003年にスペインに住居を移し、地中海を見下ろす山の上にレコーディング・スタジオを作る。古代史と同時に音楽に対しての情熱が再び甦った。彼自身の音楽人生を「未完成のビジネス」としてとらえていたからだ。そしてマンダラバンドの新たな構想にとりかかりレコーディングを始めた。そんな折、まったく偶然に元BJHのウーリーと彼のバンド、マエストソ(Maestoso)のドラマーキム・ターナーから連絡があった(2人とも『魔石ウェンダーの伝説』に参加していた)。 そして『曼陀羅組曲』でギターを弾いていたアシュリー・マルフォオードも新たなマンダラバンドの構想に興味を示し、旧メンバーが中心となって具体的な形が出来上がっていくことになる。
そこでデヴィッド・ロールは、バンドに魔法を加えることを望み、新たなメンバーをインターネットで探し出していった。オーケストレーション担当にホセ・マニウェル・メディナ、ヴォーカルのマーク・アトキンソン、ケルティック・パイプとホイッスルを演奏するトロイ・ドノックリーにたどり着く。
『曼陀羅組曲』のマンダラバンドIのメンバーは、彼が担当していたスタジオのミュージシャンの引き抜くことで始まった。『魔石ウェンダーの伝説』では新たなメンバーを発掘して基本布陣としながらも、彼ゆかりの地元マンチェスターの仲間を中心に総勢40名のマンダラバンドIIになっていった。
そう考えていくと、彼にとっては音楽も考古学の発掘作業に似た作業を経ていることが感じられてじつに興味深い。ただ、この新たなマンダラバンドIIIの新たなメンバーはインターネット上での選択だったところが今日的かも知れない。
★音源資料A Mandalaband III / Beautiful babylon (York Rehersals)
さらに言えば、基本的なレコーディングはロールの新たなスペインのスタジオで行うことになる。しかしメンバーがそのスタジオに集まることの難しさから、ロール自身がメンバーの元に出向いて録音したり、インターネットで作成した音源を送りそこにダビングして送り返したり、かなり手間のかかる作業を繰り返していった。最終段階に基本メンバーが集まりリハーサルができたという。
こうして書くだけでもかなり気の遠くなるようなレコーディングなのだが、これを取りまとめるロールはかつてのエンジニアとしての仕事はもちろんだが、考古学の仕事でも培った地道な根気良さが生かされたのだろう。
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ここで余談だが、イエス(Yes)の『危機(Close To The Edge)』のそれこそ鬼気迫るレコーディングのエピソードを思い出す。今では知らぬ者がいない72年の超名盤だが、そのタイトル曲の構成がもの凄い。複雑な断片をつなぎ合わせて20分近い大作に仕上がったものだが、そこにはメンバーの力量はもちろん、プロデューサーのエディ・オフォード(Eddy Offord)の鬼のような編集力が大きかったと言える。
当時はそのことが話題として大きく伝えられたが、ビッグネームとなった彼らの歴史の中で、数多いバイオ本の中では今ではレコーディングにまつわるメンバー間の確執ばかりが浮かび上がって紹介されるようになってしまった。確かに神経質で緊張感に溢れた唯一無二の音世界は、簡単に生まれたものではない。断片の「つなぎ」となる何秒かの部分を何度も取り直し、プレイバックして満足出来るものになるまでさらに繰り返す様子は精神的に参ってしまうことは容易に想像が出来る。結局ビル・ブルフォード(Bill Brufford)が脱退することになることもひとつの大きなエピソードではある。
新譜としてアルバムがリリースされ最初に聞いた時に、私はそれまで味わったことのない興奮状態となり夢中になった。その後何度聞いたか分からない。CDの時代となりリマスターを繰り返す度に新たな発見があり、最初に聞いた時の感動を今に至るまで味わえる希有な作品のひとつである。同じ思いで聞き続けている人は多いことだろう。
他にも、ジェスロ・タル(Jethro Tull)の『パッション・プレイ(A Paasion Play)』はLP両面にわたる40分近い組曲でやはり複雑な展開もあるのだが、スムーズに聞けてしまうところがすごい作品だと思う。そこにはメンバーを統率するイアン・アンダーソン(Ian Anderson)のメンバーと楽曲掌握の確かさと凄さを感じたものだった。
マンダラバンドが壮大な世界を描きながら、さらにはレコーディングの際しての苦労もありながらも散漫に感じられないのは、やはりデヴィッド・ロールの頭の中にあるものが明確で統率力のあるものだからということが浮かび上がってくる。
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◎画像④ Mandalaband III『BC Ancestors』
そうして完成し届けられたのがマンダラバンドIIIの『BC Ancestors』ということになる。紀元前の伝説的な英雄にまつわる出来事が綴られていく。録音は2007年から2009年までの2年間にわたる。
エコーがかったミステリアスな雰囲気の中でトロイ(Troy Donockley)が吹くウィリアン・パイプから始まる。彼の仕事は、ケルト風味を全体に散りばめていて新たなマンダラバンドIIIの姿を際立たせている。しかし、ドラマチックな構成も展開も、元となる素材があることから全体に『魔石ウェンダーの伝説』からつながっていて、ヴォーカル・ナンバー、そして女性ヴォーカルが入るとメロディ的にも続編的な印象がある。
★音源資料B Mandalaband III / ‘Eden’ from BC-Ancestors’ album
最初に立ち止まって耳をそばだてて聞いてしまうのは3曲目の「旅路の果て(Nimrod~Journey’s End)」。
ウーリーの手による作品で、彼らしいヴォーカルとオーケストレーションを久し振りに聞いた気がして嬉しくなった。驚きはヴィオラをキャラバン(Caravan)のメンバーとしてお馴染みのジェフリー・リチャードソン(Geoffrey Richardson)が参加していたこと。また全編を通じてのことだが、アシュレー・マルフォードのギター・ソロも素晴らしい。
4曲目の冒頭はロールが古代エジプトの呪文の暗唱している。ここもモチーフとしては『曼陀羅組曲』と同じだ。7曲目の「アナクの息子たち(The Sons Of Anak)」のタイトルのAnakは、もともとエジプトに関心をもっていたロールが最初に組んだバンドの名前としてつけたものであることは前々回に触れたが、この言葉は『旧約聖書』の中で使われていたもの。
驚いたのは8曲目「太陽の讃美歌(Aten)」で、曲の前半に聞くことができるロールのヴォーカルもオーケストレーションもウーリーの世界観そのものであること。改めてクレジットを見てみるのだが、この曲にはウーリーは参加していない。続く9曲目「オジマンディアス(Ozymandias)」はラムセス大王の若き日の名前だが、この曲の歌詞の中には「太陽神Ra」も登場し、それはBJHの『妖精王(Octoberon)』の中のウーリーの作品「Ra」を思い起こさせる。
12曲目の『Elissa』は、女性ヴォーカルのバーバラ・マカナス(Barbara Macanas)とロールのツイン・リード・ヴォーカルの美しい曲。バーバラはもう一人の女性ヴォーカル、ブリオニー・マカナス(Briony Macanas)と一緒にアルバム全体ではコーラスを中心に参加している。
そして最終の「Roots」は再びウーリー作のクラシカルな感性の曲。BJH時代の「The Poet」を思い起こさせる静寂に溢れた荘厳さが特徴で、アルバムのそれまでの曲調から見ると異色に感じられるかも知れない。しかしロールがマンダラバンドの一員としてウーリーに全幅の信頼を置いてラストを任せたことは疑いない。
また、ブックレットの最後のページには、マンダラバンドII「魔石ウェンダー」に参加していたリッチー・クローズ、ポール・ヤング、フィル・チャップマン、そしてメル・プリチャード(BJH)の死を伝え、彼らにアルバムが捧げられていることが記されていた。
ここでウーリーがBJHを脱退した1978年以降についても振り返っておきたいが、80年に最初のソロ・アルバムとなる『Maestoso』を発表。プロデュースはデヴィッド・ロールとウーリーの共同で、ロールはエンジニアも担当。参加メンバーのドラムスのキム・ターナー、ギターのスティーヴ・ブルームヘッドは、『魔石ウェンダーの伝説』でのマンダラバンドIIの演奏を支えた基本メンバーだった二人だ。
そう考えると、結局マンダラバンドを引き継いだのはウーリーのMaestosoだったという見方も出来ないことではない。(Maestosoという名はアルバムタイトルに過ぎなかったが、そのままバンド名に移行した形だ。) アルバムにはロールを含めたMaestosoの4人の姿も収められていた。
画像⑤ Maestosoのアルバム① 『Maestoso』(+告知広告)と『Black Box』(‘94)
Maestosoはベースのテディ・グラディ(Terry Grady)を加え、ジュディ・ツーク(Judie Tzuke)をサポートしてUKツアーもこなす。すぐに2枚目となる『Black Box』を制作したのだが、Polydorから発売拒否を伝えられお蔵入りしてしまう。その理由はよく分からないが、ウーリーの落胆は想像できる。彼はそのことから一度音楽界から身を退き、農場暮らしをすることになる。有機農法について研究し農園の経営にあたっていた。(結局その『Black Box』は94年に英Voiceprintが『Maestoso』を加えた2イン1の形で『Song From Black Box』として発売しようやく陽の目を見る。制作から発表まで13年近くかかってしまったことになる。)その中の1曲を2004年のライヴで聞いていただきたい。
★音源資料C Woolly Wolstenholme / Deceivers All 2004
1998年になってジョン・リーズ(John Lees)と再会したことから音楽界に復帰、2つに分かれたBJHのジョン・リーズ側のツアーとアルバム制作に参加するようになった。『Nexus(Through The Eyes Of John Lees)』(‘99)『Rivival Live 1999』(2000)『Legacy:Live A Shepherds Bush Empire 2006』(’07)といったアルバムを残している。(BJH分裂後のもう一方はLes Holroyd名義で活動を続けている。)
◎画像⑥ John Lees‘ Barclay James HarvestのWoolly参加アルバム
2004年からはMaestosoとしての活動も再開、2007年までの間に『One Drop In A Dry World~Second Splash』(‘04) 『Fiddling Meanly(Live)』(‘05)『Grim』(’05)『Caterwauling』(‘07)をと発表し続けた。
◎画像⑦ Maestosoのアルバム②
ターナーとブルームヘッドは80年のウーリーの最初のソロ・アルバム以来不変のメンバーで、ベースのクレイグ・フレッチャー(Craig Fletcher)、キーボードのジェフ・リーチ(Jeff Leach)はBJH Through The Eyes Of John Leesからのメンバーだ。
その後2007年にデヴィッド・ロールと久々に連絡を取ったことでマンダラバンドIIIのアルバム作成に参加することになるわけだ。
振り返ってみたときに、ウーリーも完全に音楽シーンから姿を消す期間が16年間ほどあったことになる。ロールは考古学に向かったわけだが、ほぼ同じくらいの年月、音楽シーンでの空白があるわけだ。
時間をおいて音楽を見つめ直すという部分に於いても、2人の間にはどこか共通項が見られるようで興味深い。ウーリーのMaestoso関連の音源は2年前に英Esotericから7枚組ボックス『Strange Worlds』としてまとめられたのでとても便利だ。Maestoso名義では通算6種のアルバムが既発音源だが、残りの1枚は完全未発表音源でこれも貴重だ。
◎画像⑧ Woolly Wolstenholme(& Maestoso) /Strange Worlds(7CD box)+Uneasy Listening(2CD Comp)
『BC Ancestors』発表の翌2010年、同じLegendレーベルから2枚組アルバム『Resurrection』が発売される。これは前々回に紹介したが、『曼陀羅組曲』と『魔石ウェンダーの伝説』のリミックス・バージョンとデモ音源を中心にしたボーナストラックが収録された編集盤。何せそれらは70年代の2枚の作品だったわけで、新たなマンダラバンドIIIが始動したタイミングで発売されたことには意味があると思われる。
ただ、前にも触れたようにここで出来上がったリミックスには違和感があった。特に『曼陀羅組曲』ではその違いが際立ちすぎて、やはりオリジナル・ミックスで聞きたいという思いが強かった。しかし、ボーナスとして収録された『曼陀羅組曲』のデモとオーディション・テープは聞く価値は大きい。そしてブックレットの詳細な資料も貴重なので、マンダラバンドに興味を持ったなら手に入れておいたらいいだろう。
◎画像⑨ Mandalaband IV『AD Sangreal』
マンダラバンドの4作目『AD Sangreal』は、その歴史上はじめて前作『BC Ancestors』の翌年に発表された。タイトルからも分かるように、前作の続編にあたる内容で、キリストの最後の晩餐にまつわる聖杯伝説がモチーフとなっている。時代が新しくなった分、収録された曲自体がモダン・ポップに感じられる部分も多い。
構成する基本メンバーは前作と同じだが、新たに『曼陀羅組曲』でヴォーカリストだったデイヴ・デュラントが1曲「アラゴンの王国(The Kingdom Of Aragon)」に参加しているのが興味深く嬉しい。ロールは彼のヴォーカルの素晴らしさを改めて絶賛していたのだが、ロック界にあっては珍しいテナー・ヴォイスの持ち主だった。ここに至るまでの彼の経歴はやはり不明だが、歌い手としてはかなりの経験を積んでいたものと思われる。
★音源資料D Mandalaband IV / The Kingdom Of Aragon
そして、前作の制作にあたって新たな魔法を生むためにとケルティック・ホイッスルとウィリアン・パイプスを担当するトロイを参加させたことは大きな意味があった。本作でもヨーロッパ全域の歴史にケルト文化が通奏低音のように見え隠れしていることを考えると、風が吹くように流れるその音色は時代を超えて古の風景を甦らせているような気がする。
さらに、ヴォーカル・スタイルもソロから、デュエット、コーラスもグレゴリアン・チャントのような荘厳さを感じさせるものも配されていて興味深い。
クレジットを見ると、録音は2007年から2011年までと、前作の録音開始と同じだがさらに2年間長期に及んでいるだけに、当初から紀元前、紀元後を想定して制作していったことがわかる。
ブックレット中に「悲しいことに、私たちはキーボード・プレイヤー、シンガー、作曲者、オーケストレイターだったウーリー・ウォルステンホルムを失った。」と追悼の言葉が載せられている。録音の最中2010年12月13日にウーリーが亡くなった。長いこと(ジョン・リーズのHPによると2003年から)精神を病みうつ病と闘っていたが、ついに自ら命を絶ってしまった。関係者はもちろん、多くのファンにとっても非常にショックなことだった。私もネットでそのニュースを知り、しばらく呆然とした。BJHのドラマーのメルが2004年に亡くなった時もショックだったが、ウーリーの死はさらに大きな衝撃だった。
このマンダラバンドIVの『AD Sangreal』への参加が彼の最後のアルバムになったが、そこには最高の形でボーナストラックが用意された。BJH時代の「Galadriel」をマンダラバンドのメンバー・ヴァージョンで収録されていた。『このアルバム(AD Sangreal)をウーリーの思い出に捧げる。彼が先頭に立って残してきた音楽の中で、その炎は明るく輝き続ける。R.I.P』という言葉と共に。
最後にマンダラバンドにも、ジョン・リーズのBJHにも参加した状態でいられたことは、ウーリーにとっても私たちにとっても幸いだったと思う。
★音源資料E Mandalaband IV / AD Sangreal(Galadriel)Woolly Wolstenholme
彼はBJHの結成から参加したが、もともとキーボードが弾けたわけではなかった。美術大学に通ったことから分野的には写真や詩に関して興味が深かったが、経験のある楽器はテナー・バンジョーとギターだけだった。曲に合せてキーボードを覚えていこうと考え、最初に触れた鍵盤はメロトロンだった。BJHのデヴュー曲の「Early Morning」は全編メロトロンだがそんな状況の中で生まれた曲だった。その後、オルガンを、ピアノを・・・というように鍵盤楽器を順番に独学で覚えていった。もともとクラシックへの関心も強かったために、曲の構成等も学んでいった。
ヴォーカルも上手なわけではないが、自作曲ばかりでなくBJHのメンバーが作った曲のリード・ヴォーカルを幾つも担当した。名曲「Mockingbird」や「Poet/After The Day」等。そんな中でBJHのセカンド・アルバム『Once Again』に収録されていたジョン・リーズの作品「Galadriel」がマンダラバンドとして録音していた事実にも驚いたが、その仕上がりの素晴らしさに涙が出る思いだ。年齢的にはデヴィッド・ロールよりウーリーが3歳上だった。ロールがウーリーを悼む気持ちがそのまま表れたトラックになっている。
ウーリーは基本の活動をジョン・リーズのBJH とMaestosoに置いていたが、間違いなくマンダラバンドの構成メンバーとして、できる限りデヴィッド・ロールに協力しようと考えていたに違いない。IIIでは7曲にクレジットを残したウーリーだったが、IVではボーナス曲「Galadriel」を含めて3曲のみの参加にとどまっている。
マンダラバンドは『AD Sangreal』を発表してからデヴィッド・ロールの音楽面での活動は伝わってこなかった。しかし来年2021年が10年目にあたる。70歳を超えたところの彼が、再びマンダラバンドとして甦ることを期待したい。
そう言えば、映画の「インディ・ジョーンズ」シリーズの『最後の聖戦』で父親役を演じたショーン・コネリーの姿はデヴィッド・ロールにずいぶんと似ている。そのショーン・コネリーも亡くなってしまった。
『曼陀羅組曲』がロックの歴史の中で多くの人に聞き続けられ、その素晴らしい世界観が長く語り継がれたらいいなという思いの中で、3回にわたってマンダラバンドをウーリーと関連づけて書いてきた。タイトルを「Many faces Of David Rohl」として、エンジニア、プロデューサー、写真家、古代史研究家、そして間違いなくミュージシャン・・・と明らかにしてきたつもりだが、さらに重要なのは「ウーリーの友人という顔」だったかも知れないと改めて思う。
その名前がユニット名として続くウーリーの80年のソロ・アルバム『Maestoso』のインナーには、ウーリーとロールが一緒に写っていた。(画像②参照)
今回この原稿を書くにあたって二人の写真を探したが、並んで写ったものは他には見つからなかった。しかし、ウーリーが音楽的な根底の部分に持っていたクラシカルでシンフォニックな音楽性にロールはその影響を間違いなく受けたと思われる。
そしてロールがマンダラバンドのIIIとIVを組み立てていくにあたって、自分がそのコンセプトを創りあげ、音楽的な部分ではシンフォニックな役割にウーリーの持つ感性を必要としたのだと私は信じている。(レコーディングに関してロールとのやり取りの一部がウーリーのHPに掲載されている。)
マンダラバンドを標題に置きながら、締めくくりをウーリーにするのもちょっと気が引けるのだが、2010年7月にポルトガルでBJHとして行ったコンサートでの「In Easrch Of England」の映像があるのでご覧いただきたい。ウーリー生前最後のライヴということだ。
★音源資料F Barclay James Harvest / In Search Of England Gaia -Portugal 2010
終わりに短いが、彼の優しい歌声で締めたいと思う。
★音源資料G Woolly Wolstenholme / Why Remain
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スタジオ・ミュージシャンを中心に結成されたイギリスのプログレッシブ・ロックバンドの78年2nd。今回はDavid Rohlの空想絵巻をコンセプトとして製作されており、デビュー作に参加していたメンバーは残っておらず、BARCLAY JAMES HARVEST、THE MOODY BLUES、10ccなどのメンバーが参加した企画ありきのスタイルを取っています。その内容は荘厳なオーケストラを従えた、デビュー作と並ぶシンフォニック・ロックの名盤であり、THE MOODY BLUESのJustin HaywardやSTEELEYE SPANのMaddy Priorのボーカルが存在感を示します。10ccが全員参加している点も特筆すべきでしょう。
デジパック仕様、2枚組、デジタル・リマスター&リミックス、ボーナス・トラック6曲
盤質:傷あり
状態:並
スレ・圧痕あり、若干汚れあり
71年発表の第三作「And Other Short Stories」。劇的なチェロの調べで幕を開ける本作は、アコースティックなサウンドを主体にさまざまな曲想の作品が並んでいます。 前二作での試みは着実に結果を生み、オーケストラを完全に楽器の一つとして使いこなしたシンフォニックなアレンジは、これまでで最高。 タイトル通り、比較的短い曲を集めており、曲数も今までで最も多いです。 オーケストラ・アレンジはMARTYN FORDに交代。 プロデュースはウォーリー・アレンとグループ。 管弦によるアレンジ含め、アコースティックな音を活かしたフォーク風のファンタジックな楽曲で充実した作品。 オーケストラはアレンジの手段として的確かつ集中的に使用されるようなっており、 特に最終曲はすばらしいでき映え。 また、メンバーのStuart Woolly WolstenholmeやLes Holroydの作品がいかにもこのグループらしい優美なメロディック・サウンドであるのに対して、リーズは積極的に様々な方向へとアプローチしてそれぞれに質の高い作品を生んでいます。 それでいながら全体に散漫な印象を与えないのは、アコースティックな美しさを強調した幻想的なサウンドという通奏低音があるせいでしょうか。 どこを取っても美しいメロディとパストラルなアンサンブル。 オーケストラ嫌いの方でも、このアルバムのサウンドの湛える淡い情感には魅せられることでしょう!
英国ロックのナイーブな叙情性とメロディアスで牧歌的なフォーク・ロック的メロディー・メイク、そして、オーケストラを加えた大掛かりな編成でダイナミズムとシンフォニック・ロック然とした音楽性を打ち出した、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック史に残る名グループの71年作2nd。初期の傑作とされる本作は非常に繊細で優しげなサウンドが心地良い名作であり、特にメロトロンを中心に幻想的に聴かせる手法など、前作からよりファンタジックな叙情を感じさせるサウンドへと変化。一方で後にTHE ENIDを率いるRobert John Godfreyのアレンジによるオーケストラはダイナミックにシンフォニックな彩りを放っており、彼らの個性が花開いた1枚となっています。
72年にHarvestより発表された4thアルバム。傑作2nd、3rdの延長線上にある、叙情的かつ重厚なサウンドが素晴らしい名作。「Moonwater」は、よりクラシック然としたサウンドが素晴らしい名曲。
英国ロックのナイーブな叙情性とメロディアスで牧歌的なフォーク・ロック的メロディー・メイク、そして、オーケストラを加えた大掛かりな編成でダイナミズムとシンフォニック・ロック然とした音楽性を打ち出した、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック史に残る名グループの75年作7th。POLYDORへ移籍第3弾である本作は、POLYDOR移籍後の彼らのバンド・サウンドの成果が結実した名盤であり、ポップ・シンフォニック期の彼らの代表作と言えるでしょう。適度にアメリカン・ロック的な雰囲気も覗かせますが、淡い幻想性を持ったサウンドはやはり英国的な甘みを持っています。
英国ロックのナイーブな叙情性とメロディアスで牧歌的なフォーク・ロック的メロディーメイク、そして、オーケストラを加えた大掛かりな編成でダイナミズムとシンフォニック・ロック然とした音楽性を打ち出した、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック史に残る名グループによる76年作8th。HARVESTレーベルを離れPOLYDORへ移籍後は生オーケストラを封印しシンセサイザーによってシンフォニックなドラマ性を演出するアプローチを取った彼らですが、本作では再びオーケストラを起用、加えて混声合唱も導入したスケール大きく神秘的な音作りを行なっています。持ち前のポップ・フィーリングは相変わらずのクオリティを誇りますが、楽曲の展開などには非常にプログレッシブ・ロック然とした雄大な流れが伺える名作です。
英国叙情派プログレ屈指の名バンド。77年に発表された通算10枚目で、ジャケットのイメージどおりの陰影豊かな叙情と幻想性に満ちた佳曲がつまった名盤であり代表作。オープニングを飾る代表曲のひとつ「Hymn」から彼ららしい優美で穏やかで詩情豊かな音世界が広がります。アコースティックで柔らかな冒頭からキーボード、そしてストリングスと被さってきて壮大にフィナーレを迎える展開が実に感動的です。ある評論家が彼らのことを「Poor Man’s Moody Blues」と揶揄したことに反発して作った楽曲も粋で、ムーディーズの代表曲「サテンの夜」に似せつつもバークレイならではの美しさがつまった名曲に仕上げていてあっぱれ。その他の曲もアコースティックな温かみとメロトロンやオーケストラの壮大さ、英国ならではのメロディがとけあった佳曲が続きます。英国叙情派プログレの傑作です。
78年発表の12枚目。より洗練を極めたクラシカルで美しいポップ・ナンバーが揃った名盤
廃盤、紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、ミニポスター付仕様、定価2039+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
若干色褪せあり、帯中央部分に色褪せあり
英国叙情派プログレを代表する名グループ。93年作。しっとりとメロディアスなギター、幻想的にたなびくキーボード、優しく紡がれる英国らしい叙情的なメロディと親しみやすいヴォーカル。変わらぬ美旋律を飾らず誠実に響かせる職人芸の名品です。
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