2024年6月6日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
スタッフ佐藤です。
前回お送りした「民族音楽とプログレ【新鋭編】」はお楽しみいただけたでしょうか。
今回は世界各国より、民族音楽を取り込んだサウンドを楽しませてくれる【70年代】のバンド達をご紹介していきたいと思います。
各国の伝統音楽/民族音楽と結びついた、エキゾチックなサウンドをどうぞお楽しみください☆
ロック×民族音楽を代表する一枚と言えば、この作品で間違いないでしょう。ワールドツアーを成功させ絶頂期を迎えていたPFMを脱退した彼が、地中海沿岸の伝統音楽と真摯に向き合う中で作り上げた、芳醇なエキゾチズムが匂い立つ大傑作。
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アラビック・オーボエ、竹笛、フルート、ピッコロ、サックス、クラリネット、モロッカン・ボンゴ、アフリカン・ドラム、タブラ。アフリカや中近東の楽器を用いて本格的なオリエンタル感を演出するサウンドは、まずイタリアのバンドによるものとは思えません。そこにエンブリヨやポポロ・ヴーに通じるサイケデリックな酩酊感も加わった無国籍プログレの名品。
エンブリオの名前が挙がったので、23年にめでたくリイシューされた彼らの77年作もピックアップ!
エスノ・テイストを特徴とするジャーマン・ジャズ・ロック・バンドと言えばEMBRYOですよね。
インド最高峰の女性声楽家Shobha Gurtuとその息子でマクラフリンのバンドでも活躍する打楽器奏者Trilok Gurtuが参加した、14分の大作がオリエンタルかつファンタジックな大名曲!
各曲完成度高いですが、正直この最終曲を聴くだけでも価値のある作品です。
ネパールの高級ホテルのディナーショーで腕を磨いた異色のドイツ人ギタリストと言えば?
はらたいらさんでも倍率20倍クラスの難問!(古い!)
79年作ソロなんですが、「オリエンタル meets コズミック」な孤高の名作!
ジャケも最高だが、音もカッコ良すぎる…。これはハットフィールド&ザ・ノースの1stやヘンリー・カウのファンは間違いなく気に入るでしょう。テクニカルで硬質なジャズ・ロックとカタルーニャの民族舞踏サルダーナを違和感なく融合させたセンス抜群の逸品!
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フランコ独裁政権からの抑圧から解放されたカタルーニャ人の喜びとともに、あらためてルーツを振り返り、高らかにカタルーニャ文化に根ざしたサウンドを鳴らしたのが本作。族舞踏サルダーナとジャズ、ロックが完璧に融合したサウンドは、名づけてカタルーニャ舞踏ロック!
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70年代にスペインでおこったロック・ムーヴメント「Musica Laietana ライエターナ・ミュージック」を特集!
XIRULAにGOXOAK…。マイナーすぎて読み方すらわからない多種の民族楽器を用いた、幻想的な世界観が魅力的。バスク・フォーク奥深し…。
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一日一枚ユーロロックの名盤をピックアップしてご紹介する「ユーロロック周遊日記」。本日は、スペインのプログレ秘境バスクの民族色豊かなフォーク・プログレ名品IZUKAITZの78年1st「IZUKAITZ」をピックアップいたしましょう。
ユダヤ人メンバーを擁したボストンのグループなのですが、これはヤバいです。ヴァイオリン、サックス、フルートをフィーチャーし、ユダヤの伝統音楽も取り入れながらめくるめくしなやかに展開。ユーロ/辺境プログレ・ファンに是非お聴きいただきたい大傑作!
こ、これはとんでもない辺境ジャズ・ロック発掘モノ!ヴァイオリンやサックスがユニゾンで紡ぐ中央アジアらしいエキゾチックで哀愁ほとばしるフレーズが堪らなすぎる、驚異のテクニカル・ジャズ・ロック!!
小気味よいパーカッションも絡めつつドシドシと怒涛の手数で攻め立てるドラムを軸にブラス/ヴァイオリンも交えた快速アンサンブル+妖艶かつ濃厚な中央アジア伝統音楽!トルクメニスタンの怪物ドラマー率いるバンドの84年作!
トルコの伝統音楽とロックの融合=アナドル・ポップを率いた名バンドの76年作。土着的なパーカッションが生み出すリズムに乗って、トルコの伝統楽器とエレキギター、オルガンが溶け合うサウンドが幻惑的な、ターキッシュ・サイケ・プログレ名盤!
西にトルコ、東にカスピ海、南にイランと接する東欧アルメニア生まれのプログレかぁ…。ペルシア地方伝統の民族楽器であるKEMATCHA(弦楽器)とSANTOUR(打楽器)を用いた、エスニック色濃厚なサウンドが印象的。う~ん、これぞ辺境プログレの醍醐味!
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グリーンランドのロック・シーンを築いた名バンドのデビュー作。辺境臭ぷんぷんのジャケは何ともオドロオドロしいですが、サウンドはというと、民族音楽ドラムダンスとパブロックが結びついたような愛すべきサウンド!
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ケーナ、ロンダドール、タルカ…。アンデス地方の笛楽器が彩る、魅惑のフォルクローレ・ロックを聴かせます。と思ったら管弦が優美に交差する格調高いチェンバー・ロック展開も挿入されて、これは一筋縄ではいかない好バンド!
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本場アルゼンチンでも指折りの実力と云われるバンドネオン奏者による、タンゴ・プログレの最高峰!柔らかなタッチながらどこか緊張感を伴った独特の音で紡がれる、哀愁のサウンドに胸打たれます。
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時に繊細にたゆたい、時にキレ味鋭いフレーズでテンションを増幅させるギター。淡く叙情的なハモンド・オルガン。そして、流れるように美しくアイロニーやユーモアもたっぷりな愛すべきメロディとヴォーカル。そんなハットフィールドに通じる作品を世界中からピックアップ!
いかがだったでしょうか。
気になる作品が見つかれば幸いです!
元PFMのヴァイオリン/フルート奏者。77年にPFMを脱退した後は、自身の音楽的ルーツを求め、地中海の民族音楽を探求。その成果として制作された79年作の1stソロ。イスラム文明とキリスト教文明とが幾重にも重なった地中海で育まれた地中海音楽と、ロックやジャズとを結びつけた地中海ロックの頂点に君臨する一枚。マウロは、ヴァイオリン、フルートの他、ギター、オルガン、ピアノ、ピッコロ、ブズーキ、ウード、サズを操るなど、マルチ・インストゥルメンタル奏者としての才能を見事に開花。そこに、AREAやPFMのメンバー、地中海プログレの名グループCANZONIERE DEL LAZIOのメンバーが加わり、アラビックな旋律が渦巻くエキゾチズムとロックのダイナミズムとがぶつかりあった芳醇かつ強靱なサウンドが生み出されています。特にアレアが参加したオープニング・ナンバーは、ヴァイオリンと民族弦楽器とのユニゾンによるこぶしを効かせたようにウネる旋律を軸に、強靱なジャズ・ロック・パート、CANZONIERE〜のメンバーのパーカッションが北アフリカの祝祭に紛れ込んでしまったような土着フレイヴァーを奏でるパートとを対比させながら展開するスケールの大きな名曲。PFMのメンバーが参加したクラシックとジャズと地中海音楽の豊かなフュージョンの豊かなフュージョンを聴かせる4曲目や、デメトリオ・ストラトスの超絶スキャット、マハビシュヌばりのソロの応酬が凄まじい5曲目もまた必聴。様々な時代・地域・民族が交差し溶け込んだコスモポリタン・ロックと言える傑作です!
スペインはバルセロナで興った「ライエターナ・ミュージック」屈指の傑作と言われる76年唯一作。メンバーの中心は、現在までプレイヤー/コンポーザーとして活躍するサックス/テノーラ奏者のJoan Josep Blay。他、ジャズ・ピアノの名手でORQUESTRA MIRASOLでも活躍するKey奏者Victor Ammannと、トランペット奏者、トロンボーン奏者、リズム隊による6人編成。Joan Josep Blayによるテノーラ(スペインの民族木管楽器)のチャルメラ風フレーズを軸に、トランペットとトロンボーンがたおやかにむせぶ地中海フレイヴァーたっぷりのサウンドを聴かせます。ビシバシと切れ味鋭いドラムとメロディアスに動きまくるベースによるリズム隊も鉄壁。Key奏者のVictor Ammannもさすがで、ギルガメッシュのAlan Gowenにも比肩する緻密で煌びやかなピアノ&エレピが印象的です。ハットフィールドやギルガメッシュなどカンタベリーの名作と比べても何ら遜色ないクオリティ。これはユーロ・ジャズ/アヴァン・ロック屈指の傑作です。
アルメニア出身のプログレ・バンド、79年唯一作。アルメニアというと、西にトルコ、東にカスピ海、南にイランと接する東欧の国。ペルシア地方伝統の民族楽器であるKEMATCHA(弦楽器)とSANTOUR(打楽器)の他、フォルクローレ調の管楽器をフィーチャーしたエスニック色濃厚なサウンドが印象的。ファンキーとはまた違うノリながらよく動きまわるベース、スペーシーというか何ともほの暗いトーンのエレキ・ギターは、フランスのバンドに通じる味わい。辺境プログレの逸品です。
バスク出身のフォーク・グループが78年にリリースした1stアルバム。フルート、フィドル、タブラ、アコースティック/エレクトリック・ギターによる流れるようなアンサンブルと、女性・男性ヴォーカルによる包み込むようなヴォーカル、ハーモニーが印象的。トラッド臭は無く、幻想的な雰囲気がたまらない一枚。名作。
69年に結成されたジャーマン・ジャズ・ロックの名バンドによる77年作。エスニック・テイストを纏ったジャズ・ロック/フュージョン・スタイルを特徴とする彼ら、本作でもマリンバをはじめとする打楽器の心地よい響きをフィーチャーした、テクニカルな歌ものフュージョンを聴かせてくれます。PIERRE MOERLENS GONGに歌とファンキーさを加えたようなサウンドとも言えそうです。聴きモノがラストに待ち受ける14分の大作で、ここではインド最高峰の女性声楽家Shobha Gurtu(ヴォーカル/タンブーラ)と息子Trilok Gurtu(パーカッション)が参加。Trilokは後にJohn McLaughlinのバンドに参加するなど活躍します。民族弦楽器とマリンバが織りなすオリエンタルな導入から雰囲気抜群。そのままマリンバがリードするヴォーカル・パートへと移り、GONGやS.Hillageばりの浮遊感あるギターが素晴らしい音空間を潜り抜けていきます。後半はShobha Gurtuの神秘的なスキャット&インド語ヴォーカルとTrilokのタブラが主役となり、一気にインド音楽の世界が広がっていき、そのまま彼岸の境地へと聴き手を連れていきます。このオリエンタルでありながら聴きにくさはなくファンタジックですらある一曲、間違いなく名曲と言えるでしょう。各曲完成度高いですが、最終曲を聴くだけでも価値のある作品です。
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