黒人によるブルース、ヨーロッパから移植した白人が歌い継いだ民謡。
白人・黒人という人種を越えてそれらの歌が混ざりあい、熟成を繰り返しながら育まれたR&B、ゴスペル、カントリーといった米ルーツ・ミュージック。
ベトナム戦争の泥沼化、公民権運動とともに、愛と平和の幻想が夢と消え、サイケデリック・ムーヴメントが終焉した60年代末〜70年代はじめ。古き良きアメリカ文化への回帰や内省へと時代が流れていく中で、ルーツ・ミュージックに根ざした芳醇なロック・ミュージックが奏でられました。
今回の特集は、そんな虚無感の中で力強く鳴らされた魂のロック「スワンプ・ロック/ルーツ・ロック」の魅力に迫ります。
第一章では、南部、LA、ウッドストックの3つの地域にフォーカスし、地域ごとの魅力に迫りながら、ルーツ・ロックの名盤・定番を紹介。第二章では、テーマやサウンドの特徴によってマイナーながら良質な作品をピックアップし、ルーツ・ロックをディープに掘り下げていきます。
人種のるつぼであり広大な土地を持つアメリカだからこそ生まれたサウンドをどうぞお楽しみください。
60年代から南部アラバマはマッスル・ショールズのフェイム・スタジオでソングライター&プロデューサーとして活躍した、言わずと知れた名ミュージシャンによる73年作の1stソロ。生涯の一枚だなぁ。
マッスル・ショールズで活躍した名ピアニスト&オルガン奏者で、あのダン・ペンとのソングライター・コンビとしても知られる名ミュージシャンによる72年作1stソロ!
憂いあるしゃがれ声がたまらんですね。サザン・ソウルの名門スタックスを支えた名セッション・グループ、ブッカー・T&MGSのギタリスト、スティーヴ・クロッパーなど、腕利きが参加したコクのある演奏も最高!
米南部のデュオ。71年作。哀愁いっぱいのオルガンと鼻にかかったアーシーかつ憂いのある歌声が胸に染みるなぁ。
ザ・バンドのメンバーとつながりがあるケイト兄弟によるデュオ。73年にMETROMEDIAよりリリースされた2nd。ザ・バンドにゴージャスな女性コーラスやホーン・セクションを加えたようなサウンドは、前作の延長線上ですが、より骨太でスワンピーになった印象。演奏はボトムがズシリと重い、強力にうねるスワンプなんですが、ヴォーカルはサザン・ソウル的に洗練されているのが特徴。これはかな〜りカッコ良いです!
南部アラバマで録音された72年の唯一作で、カントリー、フォーク、ソウルなどルーツ・ミュージックの芳醇なエッセンスを濃縮した傑作!マイナーですが、ダン・ペンの名作にも比肩!
グラム・パーソンズのバーズ時代の名曲「ヒッコリー・ウィンド」からカントリー色を薄め、ニール・ヤング『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』の陰影を加えたようなサウンド!?
BOONDOGGLE & BALDERDASHの片割れによるソロ。レオン・ラッセルほどじゃないけど、これぞスワンプ・ロック声と言えるダミ声!ピアノと女性コーラスが哀愁を放つエネルギッシュかつコクのある米スワンプ・ロック傑作です。
マッスル・ショールズにDan Pennが居るなら、ナッシュビルにはこの男が居るさ!DIXIE FLYERSをバックに、72年に録音された唯一のソロ作、染みるなぁ。
ダグ・サームのサー・ダグラス・クインテットのKey奏者の70年作ソロなんですが、これがもう、スタックス産サザン・ソウルやダン・ペンのソロが好みの方はグッとくること間違いなしな名作っ!
フィル・スペクターの元を離れ、一人、アラバマはマッスル・ショールズに赴いた男による確かな記録であり、さすがはマッスル・ショールズ産とうなる名作!
78年とは思えない温かなサウンドに包まれたザ・バンド直系の南部のグループ。前作はカプリコーンということで、哀愁のツイン・リードもキまっててグッとくるな〜。ザ・バンドのファンは是非!
テキサス出身のシンガーによる72年作4th。メンフィス録音で、スティーヴ・クロッパーが全面参加!さすが、しなるようなトーンで歌心いっぱいのフレーズがたまらない!トニー・ジョー・ホワイトも一曲でゲスト参加!
名ソングライターのジェリー・ウィリアムス率いるグループ。男性版キャロル・キングと言えるようなアーシーかつ洗練された歌唱がたまらないなぁ。
なんと感動的なメロウ・スワンプだろう(涙)。エリック・クラプトンやデイヴ・メイスンにも曲を提供したいぶし銀のSSWによる72年作ソロ。ニッキー・ホプキンスのピアノも泣ける。
アラバマ出身のシンガーBEN ATKINSが名門レーベルSTAX傘下のENTERPRISEからリリースした71年作。マッスルショールズ・リズム・セクション、さらにデヴィッド・フッド、ドナルド・ダック・ダン、アル・ジャクソンらメンフィスの面々がバックを務めています。グルーヴィーな演奏に哀愁滲むソウルフルなヴォーカルがのるスワンプロック名作!
この夫婦が居なければ、デレク&ザ・ドミノス『レイラ』もジョージ・ハリスン『オール・シングス・マスト・パス』もデイヴ・メイスン『アローン・トゥゲザー』も生まれていなかった!
デラニー&ボニーは、サザン・ソウルの名門STAXでレコーディングしたはじめての白人ミュージシャン。乾いてるんだけど陰影のあるグルーヴ。これぞサザン・ソウルと言えるホーン・セクションがたまらん。
デラニー&ボニーがLAスワンプ〜英スワンプ渦巻きの中心ですが、それを裏で仕切っていた親分が、レオン・ラッセル!強烈なグルーヴと圧倒的なメロウネス!
デラニー&ボニーに目を付けた最初の英ミュージシャンがジョージ・ハリスンですね。LAスワンプ人脈を起用した一大傑作がこちらの1stソロ!スワンプがロック・シーンの最前線に躍り出た瞬間。
トラフィックを脱退し、いち早くLAに渡り、デラニー&ボニー人脈と作り上げた1stソロがこちら。このオープニング・ナンバーのカッコ良さときたら!イントロ一発で悶絶必至っ!
デラニー&ボニー&フレンズのリード・ギタリストになるほどに惚れ込んだエリック・クラプトン。レオン・ラッセルなどLAスワンプ人脈を起用して作られた1stソロがこちら!
クラプトンがLAスワンプ人脈と組んだバンドと言えば? 名曲「いとしのレイラ」が霞んじゃうぐらいの名曲の数々。英米ロックが、ルーツ・ミュージックによってつながったロック史上に残る金字塔。
レオン・ラッセルのプロデュースの元、LAスワンプ人脈総動員で録音されたのが、ジョー・コッカーのこちらの名作。
ジョー・コッカーを元々サポートしていたグループと言えば? LAスワンプ・オールスターにも負けない、タメの効いたグルーヴと溢れるコク。音と音の「間」の雄弁なこと!
レオン・ラッセルと同郷で、彼の薦めでLAに来て活躍したミュージシャンズ・ミュージシャンと言えるいぶし銀ギタリストと言えば?冴え渡るスライド、哀愁とコクのある歌声とメロディ。ウルル〜。
ジェシ・エド・デイヴィスのプロデュースによる71年の唯一作ですね。絶妙な「間」を聴かせるタイト&ルーズなアンサンブル、憂いと陰りのあるエモーショナルなヴォーカルは絶品の味わい。
LAスワンプの中でも屈指の傑作。クラレンス・ホワイト、ジェシ・エド・デイヴィス、カール・レイドル、ジム・ケルトナーなどによる演奏もさすがの味わい。
レオン・ラッセルやジェシ・エド・デイヴィスと同じオクラホマ出身。クラプトンがカバーした「アフター・ミッドナイト」の原曲収録ですね。30代前半とは思えない「年輪」を感じさせる歌声は、元祖レイドバック!
LAスワンプのマニアから高く評価される名作。レオン・ラッセルから渋みをとって、ザ・バンドのリチャード・マニュエル的繊細なリリシズムを加えた感じ!?
LAのトップ・セッション・ギタリストが放つ、アーシー&メロウなスワンプ/SSW傑作だって? な〜るほど、流麗なペダル・スティールも艶のあるメロウなギターも良いし、スモーキーなヴォーカルも最高じゃない!
ジェシ・ウィンチェスター、ケニー・ロギンス、ジェシ・コリン・ヤングなど名ソングライターが曲を提供し、バックもウェストコーストの名手ばかり。そりゃエネルギッシュで哀愁いっぱいのスワンプ名作にきまってます!
男女混成ヴォーカルのマイナーな米スワンプ・グループですが、ジム・ゴードン、ジム・ケルトナーが参加していて、内容はピカイチ。隠れたLAスワンプ名作。
ウッドストックと言えば、「ウッドストック・フェスティヴァル」?
ほとんどのロック・ファンにとってそうかと思いますが、ここで紹介するのは、米SSW/フォーク・ファンにとってお馴染みの「ウッドストック人脈」。
ウッドストックは、ニューヨーク州アルスター郡にある人口5000人にも満たない小さな町。
19世紀に、都会に疲れた画家たちが自然豊かで長閑な風景に魅せられてコミュニティを形成したのをはじまりに、数多くのアーティストがこの町に居を移しました。
ロック界では、ボブ・ディランのマネージャーだったアルバート・グロスマンが移住したのをきっかけに、60年代の半ば過ぎ、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジやボストン〜ケンブリッジ周辺のフォークやブルーグラス系ミュージシャンがこの町に移り住みました。
都市に対する田園、市場主義に対する伝統の再発見。そんな考えを持ったミュージシャンたちが集まり、1920年〜30年代の古き良きアメリカのグッド・ミュージックを再発見しながら、サイケデリック・ミューヴメントが終わった後の「内省」や「伝統回帰」へと向かった音楽シーンとも呼応し、数々の愛すべき名作が生まれました。
ザ・バンドのメンバーをはじめ、ジェフ・マルダーやハッピー&アーティのトラウム兄弟など東海岸のフォーク・シーンで活躍したミュージシャンたち。ボビー・チャールズやジェシ・ウィンチェスターなど南部R&Bシーンで活躍した後に縁あってこの地にたどりついたSSWたち。名バンジョー奏者ビル・キースやテレキャスターの名手エイモス・ギャレットなど名うてのセッションマンたち。
そんなアメリカン・ロックの良心たちが奏でる、愛すべきグッド・ミュージックをここに特集します。
デュオの名前からしてほんわかしてますが、サウンドもウッドストック人脈が紡ぐハートウォームなルーラル・フォーキー・ロックですね。さすがブラックホーク99選の一枚。
ハッピー&アーティ兄弟、エリック・カズ、ジョン・ヘラルド、ビル・キース、マリア・マルダーなど愛すべきウッドストックの良心たちによる気ままなセッション作。72年の第一弾。
ウッドストック人脈による気ままなセッション作、77年の第二弾。渋谷道玄坂のブラックホークがセレクトしたアルバム99選のうちの一枚。
ザ・バンドの1st、2ndを手がけた名プロデューサーによるソロ作だって!?ウッドストック人脈やLAスワンプ人脈が集結した、ドリーミー&アーシーな米ロック傑作だって!?
本作のサウンド・コンセプトは、「木の温もりのある、ズシンとくる音」。まさに言い得て妙。数十年という時を刻んだ木だけが出せる芳醇な温もりを見事に感じさせてくれます。69年2nd。
陽光溢れる極上のルーラル・ロックですね。ザ・バンドのメンバーをはじめウッドストック人脈の他、ドクター・ジョンも参加。名曲「Small Town Talk」の柔らかな土の香り。いいなぁ。
ウッドストック系SSWの人気作。まるでグラム・パーソンズを夢見心地にしたようなヴォーカル!? ほのぼのとした米カントリー・ロックの愛すべき作品ですね。エイモス・ギャレットのスライドがたまらない☆
西海岸にデラニー&ボニーがいるなら、東海岸にはこの夫婦デュオがいるさ!エイモス・ギャレットのギター、ポール・バターフィールドのハープも絶品の味わい。
R&Bやカントリー・ブルース、オールド・ヒルビリー等々の名曲群を和やかな雰囲気で悠々と歌うアメリカン・ルーツ・ミュージックの避けては通れない大名品!
ジェフとの夫婦デュオを解消した後にリリースした73年のソロ。大ヒットした彼女の代表曲で、ここでのエイモス・ギャレットのギターは、彼の一世一代の名演!
男勝りのスライド・ギターの名手でもある女性SSW。ウッドストック人脈のサポートのもと、ご機嫌なアンサンブルを繰り広げる米女性SSWの傑作!
ウッドストック系SSW屈指の傑作。南部出身のSSWがカナダへたどり着き、ザ・バンドのロビー・ロバートソンと知り合い、彼のプロデュースの元、ウッドストックで録音されたルーラルな逸品。
ウッドストックに住んでいてディランとも親交のあったSSW。ナッシュビルに渡り、エリア・コード615をバックに制作したフォーキー&メロウな傑作で、「ブラックホーク99選」の一枚。69年作。
ラリー・カールトン、ジョー・オズボーン、マイク・ディージー、ラリー・ブラウン等が参加し、南部音楽とも相性のよい、カントリー・フレイヴァー溢れるハート・ウォーミングな名品です。71年作。
ベアズヴィルから71年作で、録音はナッシュビル、エンジニアにはトッド・ラングレンも参加!ということで、熱いスワンプをやっても、「気品」や「陰影」を感じさせるんですよね〜。ウッドストック名盤!
ウッドストック系ならではの「たおやかさ」の中にブルース探求の果ての妙味がつまりまくったコクのあるサウンドは絶品の一言。一生をかけて味わい尽くしたい、そんな米ロック屈指の傑作!
【第二章】米スワンプ・ロック/ルーツ・ロック・ジュークボックスへ。
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