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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第47回 SETI / Bold Travels (Chile / 2016)

本連載では「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことに重点を置き、フランスのプログレッシブ・ロックレーベルMusea Recordsからシンフォニック・ロックアルバムでデビューを果たしたnetherland dwarfが、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を、幅広くご紹介します。「ミュージシャンの視点」とは言っても、各コラムは平易な文章で構成されていますので、楽器が弾けない、専門用語は分からないという場合でも、心配せずにご覧下さい。

第47回 SETI / Bold Travels (Chile / 2016)

1990年代中盤のチリで結成されたのが、シンフォニック・ロック・グループSUBTERRAです。ネオ・プログレッシブ・ロックの象徴的な存在として高い人気を誇るイギリスのMARILLIONのトリビュート・グループを前身に持つSUBTERRAは、2001年にデビュー・アルバム『Sombras De Invierno』、2005年にセカンド・アルバム『Cautiverio』、そして2007年にライブ・アルバム『Abrir La Herida』を発表し活動を終了。その後、中心人物のキーボーディストClaudio Mombergは、「地球外知的生命体探査」を意味する「Search For Extra-Terrestrial Intelligence」をグループ名に置いた後述のSETIや、マルチ・プレイヤーの強みを生かしたソロ・ユニットTAURUS名義などでアルバム・リリースを重ね、その一方で、やはりネオ・プログレッシブ・ロックの代表格グループであるイギリスのPENDRAGONやARENAでの活躍が知られるClive Nolanによる2013年作『Alchemy』や、Clive Nolanと女性ヴォーカリストAgnieszka SwitaによるCAAMORAへの参加でも実績を残しました。2000年代のチリと言えば、へヴィー・シンフォニック・ロック・グループENTRANCEのキーボーディストJaime Rosasの活躍が大きく取り上げられてきましたが、Claudio Mombergもまた、同国を代表するプログレッシブ・ロック・アーティストとして存在感を放っています。

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さて、2005年に『Life Signs』でアルバム・デビューを果たしたSETIは、元々はSUBTERRAのサイド・プロジェクトとして発足したグループですが、2007年にSUBTERRAが活動を停止して以降はClaudio Mombergのメイン・プロジェクトとなっています。彼は2010年、SETIのセカンド・アルバム『Discoveries』を発表し、2010年から2014年までにTAURUS名義で4枚ものスタジオ・アルバムを送り出しました。また、エレクトロ・ミュージックの色合いを持つQUARKSのメンバーとしても、2013年にデビュー・アルバム『Elemental』をリリースしています。そして2016年、SETIとしては6年ぶりとなるスタジオ・アルバムがプログレッシブ・ロック・ファンに届けられました。

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SETIによる2016年のサード・アルバム『Bold Travels』は、過去2作と同様にチリのプログレッシブ・ロック専門レーベルMylodon Recordsからリリースされました。オープニングを飾る「The Hidden Messenger」は、雨音や野鳥の鳴き声といった環境音、そして近未来的なシンセサイザーの効果音がシネマティックな世界観を演出し、重厚なエレキ・ギターとアナログ・ライクなシンセサイザー・リード、そしてメロトロン・サウンドによるへヴィー・シンフォニック・ロックへと繋ぎます。こういったアグレッシブなサウンド・メイクは、南米のプログレッシブ・ロック・グループには珍しくないものでしょう。本楽曲を含め、本作にはCAAMORAからの盟友Clive Nolanがゲスト・キーボーディストとして参加し、技巧的なソロ・フレーズを奏でています。2曲目の「Children」は、ヴォーカリストJaime Scalpelloによるセンチメンタルなメロディーとへヴィーなバンド・サウンドがコントラストを描くミドル・テンポの楽曲。Jaime Scalpelloは上記のJaime Rosas率いるENTRANCEにも参加し、また2008年にはClaudio Mombergを含むMylodon Records人脈を動員したソロ・アルバム『El Rugido De Los Dioses』も発表しています。続く3曲目に収められた「Cascade Of Changes」では、へヴィーな音楽性から一転、女性ヴォーカリストPaula Vilchesが登場し、艶やかな歌声を響かせます。Claudio Mombergはアコースティック・ギターやメロトロン・サウンドを操り、本作屈指と言える叙情的なメロディーに寄り添うデリケートな音作りを展開。そして、4曲目の「Divine Decision」では、70年代のプログレッシブ・ロック・シーンでは知る人ぞ知る名機とされながら、現在ではあまり見かけなくなった「ベース・ペダル・シンセサイザー」の音色が存在感を放ちます。プログレッシブ・ロック・ファンには、GENESISのベーシストMike Rutherfordがダブルネック・ギターをプレイしながら、足元にセットされたベース・ペダルを操る姿が知られているでしょう。思い返してみれば、Claudio Mombergが大きな影響を受けたMARILLIONにもベース・ペダルを用いた楽曲(85年作『Misplaced Childhood』収録の「Pseudo Silk Kimono」や「Kayleight」など)が存在します。こういった部分からもClaudio Mombergのマニアックなサウンド・メイクを垣間見ることが出来るでしょう。

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4曲目の「Divine Decision」、加えて5曲目に収録された「The Third Gate」にはイギリスのプログレッシブ・メタル・グループTHRESHOLDからDamian Wilsonがゲスト・ヴォーカリストとして参加しています。なお、Damian WilsonはClaudio Mombergと共に、前述のClive Nolanによる『Alchemy』にも名を連ねていました。また、Clive Nolanは本楽曲でもキーボード・ソロを披露しています。「The Third Gate」の楽曲構造は鋭角的なエレキ・ギターを中心とするメタリックなものであり、アルバム中盤の混沌を巧みに演出。続く6曲目の「Them」にもその重々しいサウンドが受け継がれ、Claudio Mombergのキーボード・オーケストレーションによって徐々にシンフォニック性を取り戻していく内容となっています。そして、Claudio Mombergのサイエンス・フィクション志向が如実に表れるのが、7曲目の「Evolution」でしょう。MARILLIONのギタリストSteve Rotheryが参加した10分に迫る本楽曲は、アルバム冒頭と同様の環境音や電子音などによる、瞑想的とすら表現出来るようなアンビエント・ミュージックとなっています。通常のロック・グループの場合には、こういった楽曲に長い収録時間を割くということはあまり行われないはずですが、上記のTAURUSやQUARKSの音楽性との共通点を考えれば理解出来ることでしょう。曲間を空けずにピアノ・サウンドがフェード・インし、8曲目の「The Great Conflict」へと繋がります。上記「Evolution」の電子音楽から音像が一変し、ネオ・プログレッシブ・ロックのパワフルな音楽性が再び登場しますが、他の楽曲と異なり本楽曲はインストゥルメンタル楽曲であるため、より一層ミュージシャンたちのダイナミック且つスリリングなプレイが際立ちます。Clive Nolanの技巧に勝るとも劣らないClaudio Mombergによるシンセサイザー・リードがハイライトを演出し、やはり曲間を空けずに本作のラストを飾る9曲目の「Anguish」へと繋ぎます。最終楽曲は、Steve Rotheryのメロディアスなギター・ソロをフューチャーしたバラードとなっており、Claudio Mombergはシンセサイザー・パッドの柔らかな音色を中心に、Steve Rotheryを引き立たせるアンサンブルを展開。楽曲はギター・ソロと共にフェード・アウトし、アルバムは幕を閉じます。本作『Bold Travels』は、緩急を巧みに使い分けた楽曲配置から女性ヴォーカリストを含めたゲスト・ミュージシャンの効果的な起用に至るまで、全曲の作詞作曲を担当するClaudio Mombergのプロデュースが行き届いた作品となっています。

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最後に、SETIが製作に取り入れた「ベース・ペダル・シンセサイザー」についてまとめていきます。プログレッシブ・ロックにおける有名なベース・ペダル・ユーザーと言えば、上記の通りGENESISのMike Rutherfordが思い浮かぶでしょう。Mike Rutherford はデュートロン社のミスター・ベースマン(Dewtron Mister Bassman)を70年代初頭から導入し、70年代中盤からはモーグ社のタウラス(Moog Taurus 1)を使用。ちなみにGENESIS関連では、ギタリストSteve Hackettによる79年作『Spectral Mornings』収録の「Clocks」が外せません。「Clocks」を収めたライブ映像作品(78年に撮影された『The Bremen Broadcast – Musikladen 8th November 1978』や90年に撮影された『Access All Areas』など)では、足を使った演奏を前提にデザインされたベース・ペダルを、サポート・メンバーが握り拳で演奏しています。また、やはり熱心なユーザーとして知られるのがカナディアン・プログレッシブ・ロック・グループRUSHのベーシストGeddy Leeでしょう。RUSHによる78年作『Hemispheres』収録の「The Trees」や、81年作『Moving Pictures』収録の「Tom Sawyer」などにベース・ペダルが使用されており、2010年にモーグ社が上記のタウラスを復刻(Moog Taurus 3)させた際には、Geddy Leeが製品プロモーション映像に登場しました。さらに、2017年に惜しまれつつこの世を去ったKING CRIMSONのベーシストJohn Wettonも、U.K.やASIAでベース・ペダルを使用し続けていました。U.K.による78年のライブ・アルバム『Night After Night』に使用されたステージ写真では、John Wettonの足元にベース・ペダルを確認することが出来ます。


「netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』連動 ネオ・プログレッシブ・ロックの旗手 Clive Nolan関連作」を読む




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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第12回 SETNA / Guerison (France / 2013)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第13回 FLOR DE LOTO / Nuevo Mesias (Peru / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第14回 TRANSATLANTIC / The Whirlwind (Multi-National / 2009)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第15回 KARFAGEN / Lost Symphony (Ukraine / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第16回 SENSE / Going Home (Canada / 2007)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第17回 ARANIS / Roqueforte (Belgium / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第18回  SIKUS BOLIVIA / E.C.L.I.P.S.E. (Bolivia / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第19回  LITTLE TRAGEDIES / At Nights (Russia / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第20回  NUCLEUS TORN / Neon Light Eternal (Switzerland / 2015)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第21回  MERRY GO ROUND / Merry Go Round (Italy / 2015)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第22回  WOBBLER / Afterglow (Norway / 2009)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第23回  MEDIABANDA / Siendo Perro (Chile / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第24回  FIVE-STOREY ENSEMBLE / Not That City (Belarus / 2013)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第25回  GLASS HAMMER / If (USA / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第26回  SEIN / La Flor Y La Mierda (Argentina / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第27回  CICCADA / A Child In The Mirror (Greece / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第28回  CAST / Originallis (Mexico / 2008)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第29回  AFTER CRYING / Creatura (Hungary / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第30回  MARTIGAN / Vision (Germany / 2009)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第31回  ROBERT REED / Sanctuary (UK / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第32回 DEWA BUDJANA / Zentuary (Indonesia / 2016)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第33回 HOSTSONATEN / Summereve (Italy / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第34回  PAMPA TRASH / Ya Fue (Argentina / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第35回  ANIMA MORTE / The Nightmare Becomes Reality (Sweden / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第36回  LOST WORLD BAND / Solar Power (Russia / 2013)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第37回  SUPAY / Senales (Peru / 2013)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第38回  THE PROG WORLD ORCHESTRA / A Proggy Christmas (USA / 2012)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第39回  NOSTRADAMUS / Testament (Hungary / 2008)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第40回  TEMPUS FUGIT / Chessboard (Brazil / 2008)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第41回  DRUCKFARBEN / Druckfarben (Canada / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第44回  KOTEBEL / Concerto For Piano And Electric Ensemble (Spain / 2012)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第45回  HONOKA SAKAI / On The Way Home (Japan / 2013)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第46回 QUANTUM FANTAY / Dancing In Limbo (Belgium / 2015)

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    チリ出身、スペイシーな音響的プレイと幾重にも優美に折り重なるシンフォ然としたプレイを使い分け雄大な世界観を形作るシンセワークが素晴らしい劇的なシンフォニック・ロック、16年作

    チリ出身のシンフォ・バンド、16年作。神秘性溢れるスペイシーな音響的プレイと、さざ波のように幾重にも優美に折り重なるシンフォ然としたプレイを使い分け雄大な世界観を形作るシンセワークが素晴らしいシンフォニック・ロック。メタリックなギターが主役のナンバーもあるものの重苦しさはくあくまでメロディアスに聴かせるバランスの良さは特筆です。またヴォーカルも大変良くて、英詞で歌う深みある美声男性ヴォーカルが作品の魅力に大きく貢献しています。ヴォーカルナンバーでの南米らしい外へ向いた開放的なサウンドと、スペイシーなシンセが描く深遠なサウンドが劇的なコントラストを成しているのも見事。

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