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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第7回 AMOEBA SPLIT / Dance Of The Goodbyes (Spain / 2010)

本連載では「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことに重点を置き、フランスのプログレッシブ・ロックレーベルMusea Recordsからシンフォニック・ロックアルバムでデビューを果たしたnetherland dwarfが、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を、幅広くご紹介します。「ミュージシャンの視点」とは言っても、各コラムは平易な文章で構成されていますので、楽器が弾けない、専門用語は分からないという場合でも、心配せずにご覧下さい。

第7回 AMOEBA SPLIT / Dance Of The Goodbyes (Spain / 2010)

イギリスのケント州に位置する古都カンタベリーは、14世紀の詩人ジェフリー・チョーサーによる英文学の傑作「カンタベリー物語」の舞台に取り上げられるなど古くからキリスト教の巡礼地として知られてきましたが、プログレッシブ・ロックにおいても非常に重要な意味を持っていることから、多くのファンに馴染みの深い地域として注目されてきました。ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックの潮流の中にあって、その個性豊かな作風と複雑なミュージシャン相関図によってユニークな発展を遂げた「カンタベリー・ロック」と称される音楽性は、文字通りカンタベリー出身アーティストたちを中心に産声を上げ、現在ではイギリスのみならず世界各国のプログレッシブ・ロックシーンに影響を与えながら、多くのファンを獲得するに至っています。

カンタベリー・ロックの音楽的特徴を紐解くのは非常に難しいものの、話題に上ることの多いポイントを整理していくと、1960年代中盤を駆け抜けたサイケデリック・ロックグループTHE WILDE FLOWERSが母体となり、後に代表格グループへと成長するSOFT MACHINEとCARAVANに分派したことを起源にしていることから「サイケデリック・ロックの強い影響」を受けていることに加え、技巧的なインプロヴィゼーションを多く含んだ「複雑な楽曲構成」を用いて、ジャズ・ロックとの曖昧な境界線の上に微妙なニュアンスの違いによって成立していること、しかしその一方で、その出音は非常に「ポップな印象とマイルドな空気感」を放っているため耳に馴染みやすい、といった点を挙げることが出来るでしょう。また楽器や音色に関しては、特に「サックスやフルート」といった管楽器を取り入れたアプローチが多用されるほか、シーンを代表するキーボード奏者たちが巧みに操る「ファズ・エフェクトを施したオルガン・サウンド」が、カンタベリー・ロックを代表する音色のひとつとして多くの名盤に録音されてきました。

カンタベリー・ロックは、その呼称が特定の地名から取られていることもあって、カンタベリーから共通の方向性を提示するグループたちが同時多発的に登場したことによって成立したと思われがちですが、実際のスタイルは上記に挙げた以上にバラエティーに富み、さらに枝葉となるいくつかのグループを構成するメンバーが互いに重複し合っていることから、ジャンルとして解釈することに対する疑問の声が多く、グループの垣根を越え新しい音楽を求めてセッションに明け暮れたミュージシャンたちによって、多くの関連グループ(HATFIELD AND THE NORTH / MATCHING MOLE / NATIONAL HEALTHなど)が誕生していった軌跡として、現在ではTHE WILDE FLOWERSを始点とするファミリー・ツリー的に、人脈の側面から解釈する向きが一般的となっています。また、カンタベリー・ロックに属する全てのアーティストが必ずしもカンタベリー出身ではないことなどを理由に、そのネーミングや分類に対してもファンや当事者のミュージシャンたちから各々の主張が展開されており、やはりその定義をひとつに定めるのは難しいところがあると言えるでしょう。

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そういったカンタベリー・ロックの名グループたちから大きな影響を受け、2001年にスペインはガリシア州の都市ア・コルーニャにて結成されたAMOEBA SPLITは、2003年のデモ・レコーディングを経て、2007年から3年をかけ本2010年作『Dance Of The Goodbyes』を製作し、デビューを果たしました。現在のプログレッシブ・ロックシーンにおいてカンタベリー・ロックに通じる音楽性を持つアーティストたちは、カンタベリー・ロックの象徴的なアプローチを楽曲のアクセントとして反映させる方法論を選択する傾向が強く、結果的に「カンタベリー・テイストを持ったグループ」という評価に落ち着くケースをしばしば目にすることになりますが、その点においてAMOEBA SPLITは本格であり、確かに本作の音楽的なクオリティーに貢献しているのは専任サックス奏者やフルートを操る女性ヴォーカリスト、そしてヴィンテージな音色を扱うキーボーディストの存在といったカンタベリー・ロックらしいアプローチにあることは間違いないものの、最も注目すべきは彼らがサイケデリック・ロックグループを前身として結成されている点にあると言えるでしょう。楽器編成や音楽的なアプローチに対する影響だけでは補完することが難しく、しかしカンタベリー・ロックのサウンド・メイクには不可欠なサイケデリック・ロックの質感を自らのルーツとしてあらかじめ持ち合わせた上でグループが結成されているアドヴァンテージは、作品全体のカラーに大きく影響し本作の完成度を確固たるものにしています。また本作には20分を超える大曲が収録され、クールなソロ・フレーズを奏でるサックスと軽やかなフルートのコントラスト、シンフォニック・ロックに通じる広がりを持つメロトロン・ストリングス、そして女性ヴォーカリストの艶やかさなど、先人たちからの影響の中に独自の個性の芽生えを感じることも出来るでしょう。

本作がプログレッシブ・ロックファンから高い評価を受けたことで、グループはスペインのロック・フェスティバルFinisterrae Festivalに出演し、シーンを代表する有名アーティストたちと同じステージで堂々と演奏を披露したようです。その定義の難しさとポイントを捉えにくい音楽性の振れ幅によって、カンタベリー・ロックはフォロワーたちに深い理解力と高い演奏技術を要求してきましたが、新世紀のスペインに登場したAMOEBA SPLITは70年代カンタベリー・ロックの核心に迫る作品を生み出した数少ない好例のひとつとして、プログレッシブ・ロックの歴史にその名を刻みました。


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