2015年10月23日 | カテゴリー:「rabbit on the run」 netherland dwarf,ライターコラム
タグ: プログレ新鋭
本連載では「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことに重点を置き、フランスのプログレッシブ・ロックレーベルMusea Recordsからシンフォニック・ロックアルバムでデビューを果たしたnetherland dwarfが、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を、幅広くご紹介します。「ミュージシャンの視点」とは言っても、各コラムは平易な文章で構成されていますので、楽器が弾けない、専門用語は分からないという場合でも、心配せずにご覧下さい。
インドネシアなどの東南アジア諸国やイスラエルなどの中東諸国と並んで、南米の国々から登場するプログレッシブ・ロック・グループたちを「辺境プログレッシブ・ロック」として捉えることがあります。そもそも、辺境カテゴリー自体にそこまで明確な規定があるわけではありませんが、南米の場合にはブラジルやアルゼンチンといったプログレッシブ・ロックの重要国よりも、プログレッシブ・ロックに関するニュースをあまり聞くことがないボリビアやウルグアイなどに対して、その呼称が用いられることが多いイメージがあるでしょう。プログレッシブ・ロックがほとんど存在しないと考えられていたロック後進国から登場するグループたちにはマニアックなファンからの特別な注目が集まり、いくつかのグループたちは現在でもヨーロッパ勢に負けず劣らずの活躍を見せながらシーンの活性化に貢献していますが、新世紀以降の南米でも、例えばキューバのANIMA MUNDIやコロンビアのJAEN KIEFといったグループの本格的なサウンドが多くのファンを驚かせました。今回は、やはりプログレッシブ・ロックに馴染みのない国のひとつであるペルーで結成されたグループを取り上げます。
特に1960年代から70年代におけるロック後進国の作品の中には、プログレッシブ・ロックとして紹介されながら実際にはサイケデリック・ロックやハード・ロック、あるいはブルース・ロックなどの音楽的色合いが強く、結果的にシンフォニック・ロックやジャズ・ロックといった「王道」を期待するファンを落胆させてしまうケースが少なくありませんが、それはペルーのプログレッシブ・ロック・シーンにおいても例外ではありません。音楽文化全体としては「コンドルは飛んでいく」をはじめとするアンデスのフォルクローレが広く一般に認知されている同国ではありますが、プログレッシブ・ロックに関しては、81年にデビューし、イタリアン・シンフォニック・ロックを彷彿とさせるアプローチを提示したFRAGILが唯一のプログレッシブ・ロック・グループとして挙げられる以外は、ほとんど注目されることがありませんでした。そうした長い停滞期を収束させ辺境プログレッシブ・ロック・ファンから熱い視線を浴びたのが、2005年にアルバム・デビューを果たしたFLOR DE LOTOです。
スペイン語で「蓮華」を意味するワードをグループ名に置き98年にペルーの首都リマで結成されたFLOR DE LOTOは、ギター・トリオにフルート奏者を加えた4人編成で、アンデスのフォルクローレ・スピリットとプログレッシブ・ロックを融合させた音作りを携え、シーンに名乗りを上げました。初期のスタイルは、サイケデリック・ロックの質感を漂わせながら、ケーナ(木製の縦笛)やサンポーニャ(パンパイプ)、チャランゴ(5コース10弦の弦楽器)といったアンデス音楽に欠かすことの出来ない楽器群を取り入れたへヴィー・ロックであり、例えばインドネシアのプログレッシブ・ロックにおけるガムラン音楽との結びつきなどと同様の異国情緒を味わい深く伝えていましたが、その後、グループはリリースを重ねるごとにメンバーを補強し、サウンド・プロダクションの向上と共に自らの作風を鋭角的にブラッシュ・アップさせ、へヴィー・メタルの重厚なサウンドを纏ったグループへと変貌していくことになります。
さて、FLOR DE LOTOはデビュー・アルバムから一貫して自らのルーツ、例えばフルート・ロックの代名詞であるイギリスのJETHLO TULLや、フォルクローレ・ロックの古典的グループであるチリのLOS JAIVASなどからの影響をダイレクトに楽曲製作に生かしてきましたが、そこにへヴィー・メタルのサウンド・メイクが混ぜ合わされ「過剰演出」になっていく傾向は、他の多くの辺境プログレッシブ・ロック作品にも当てはまるものでしょう。過去作から選曲された楽曲の再レコーディング・アルバムを挟み、通算6作目のスタジオ・アルバムとして2014年にリリースされた本作『Nuevo Mesias』もまたその例に漏れることなく、パワフルなバンド・セクションとアンデスの民族楽器との鬩ぎ合いがスリリングなフォルクローレ・ロックを収録しています。特にメタリックな音使いへの傾倒が顕著になって以降、ヴォーカル・パートに比重を置いた楽曲構成へとグループが舵を切ったことは、バックグラウンド・ヴォーカルを担当する女性メンバーの新加入からも明らかですが、普遍的且つ洗練されたサウンドを目指すグループの意図によるものなのでしょう。その一方で、辺境プログレッシブ・ロックの視点で言えば、相対的にインストゥルメンタル・セクションが減少することになるわけですから、デビュー当時のフルート・ロック・グループとしての個性が失われてしまうことを危惧するところですが、本作でもフルートや前述のサンポーニャが要所要所で存在感を示し、さらにフルート奏者は楽曲によってサックスの演奏も披露するなど、新たな展開も見受けられます。
辺境プログレッシブ・ロック作品に耳を傾ける場合には、ヨーロッパ勢やアメリカ勢とは異なる「垢抜けなさ」や「素朴な味わい」など、ロック後進国であるということをハンディではなく個性として好意的に捉えるのが一般的でしょう。FLOR DE LOTOは垢抜けた作風を目指し、自身のサウンドを巧みに更新しながら活動してきたわけですが、その根底には、爆発的なバンド・サウンドにも埋もれることのないアンデス音楽の逞しさが内包されています。
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00年代以降の南米ヘヴィ・プログレを代表するペルーのグループが2018年に行なったライヴの模様を収録。彼の地の伝統を感じさせる哀愁溢れる旋律を紡ぐアンデスの伝統笛楽器、メタリックなヘヴィネスを纏いゴリゴリ疾走するギターとそこに絡む熱量みなぎるシンセ、テンション高く畳み掛けるリズム隊らが紡いでいく、南米民族音楽&フォルクローレとプログレッシヴ・ロックを融合させた唯一無二のスタイルは、ライヴで一層エネルギッシュにパワーアップしています。プロデュースは、ブルース・ディッキンソンとの仕事やラテン・ハード・ロック・バンドTRIBE OF GYPSIESで有名な敏腕ROY Zが担当!
ペルーのヘヴィー・シンフォニック・ロック・グループ、FLOR DE LOTOの2023年作。グループの結成25周年に当たる記念すべき年にリリースされた本作は、タイトルが示す通り「ナスカの地上絵」をテーマにしたロマンあふれるコンセプト・アルバムとなっています。FLOR DE LOTOの音楽性は、切れ味の鋭いメタリックなバンド・サウンドにアンデスの民族楽器であるケーナが加わるという非常に個性的なものであり、その方向性は本作においても変わりません。JETHRO TULL、あるいはイタリアン・プログレッシヴ・ロックの唾飛ばしフルートを彷彿とさせるケーナ専任奏者のダイナミックなプレイ・スタイルは、プログレッシヴ・ロック・ファンにはたまらないものでしょう。また異国情緒という点においても、ヘヴィーなバンド・サウンドの下地にアンデスのフォルクローレの息遣いを確かに感じます。なお、本作にはIRON MAIDENの「Afraid To Shoot Strangers」のカバーが収められています。辺境プログレッシヴ・ロック・リスナー必聴の1枚です!
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