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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第八十七回:COLLAGE『MOONSHINE』


息苦しいと思うことが多い。いや「生き苦しい」と書いた方がいいか。人と感性や考え方がちょっと違っているというのは、それはもう仕方がない。流行りものには興味がないし、だから今もプログレやらヘヴィ・メタルやら、クラシック・ロックなんかを好んで聴いている。そんなこと自慢にも何にもならないけど。つまり世の中についていけなくても気にしない。でも、それでわずらわしいと思うことが多くなってきた。その最大の理由がスマホ。便利なのはよくわかっているけれど、なんか面倒くさいなあと思うことも多くないですか? 「当店のアプリをダウンロードして登録してもらったら5%割引があります」とか。なんかそのために個人情報を登録したり、宣伝がひっきりなしに送られてきたり、あれやこれやを小さな画面に向かってセコセコやらなあかんのが、もう「あーっ!」ってなる。

今は子供の学校の便りもスマホで見ないといけない。情報が更新されているかどうか、こまめにチェックする。明日の時間割りもスマホでチェック。我が子から「明日の用意するからチェックして」とせがまれて、スマホを見るけど何らかの理由で更新されてないとかで「いーっ!」ってなったり。わら半紙のプリントによる学校の便りは、もう前時代の遺物ですか?冷蔵庫にマグネットで貼ったりしたけどな。

例を挙げたらキリがないけど、何でもかんでもスマホを介してというのが本当にわずらわしくなってきた。僕はもうスマホの機能は電話とラインで十分です。それも場所や時間に関係なくつかまえられる感が好きになれない。スマホのおかげで何かと便利になった。でも便利になればなるほど、行動の自由が奪われているようで、息苦しい、生き苦しい。

そんな息苦しい心象風景を表現したようなアルバム・ジャケットとして思い出すのが、COLLAGEの『MOONSHINE』だ。このジャケットのイラストを手掛けたのは、COLLAGEの同郷であるポーランドの画家ズジスワフ・ベクシンスキー。荒廃した大地。寒々しく薄暗い空。傾いて立つ奇妙なデザインのイス。そこに赤い服を着て、背中を丸めて座るのは、生きている人間なのかどうか。イスから垂れ下がる二本の足を見ると骨のごとき細さだ。孤独や絶望、現実世界で直面する不条理、どうしようもなく荒んだ心の状況を表しているかのよう。ということで、今回はポーランドの叙情プログレ・バンドCOLLAGEです。

COLLAGEが結成されたのは1984年。ポーランドの首都ワルシャワで、ギターのミレク・ギルとドラムのヴォイチェフ・シャコフスキを中心として活動を開始。曲作りやデモの録音などを行なう。それらの音源は、1995年に発表された『CHANGES』に収録されるが、MARILLIONやIQ、PENDRAGONといった、ポンプ・ロック/ネオ・プログレッシヴ・ロックの影響が色濃く感じられる。

1989年、COLLAGEはデビュー・アルバム『BASNIE』をレコーディング。メンバーはミレク・ギル(g)とヴォイチェフ・シャコフスキ(ds)の二人に、トマス・ルジスキ(vo)、プルゼメク・ザヴァスキ(b)の四人。キーボードとしてヤチェク・コルセニオフスキがゲストとして参加している。どうでもいいけど、メンバー名、舌を噛みそう。

『BASNIE』は1990年にポーランドでリリースされた。ピエロが描かれたジャケット。「ははーん、MARILLIONフォロワーだな」と思わせる。それがもう答えといえる音楽性。曲はすべてポーランド語。新生シンフォ・プログレ・バンド誕生!として注目を集めた。ちなみに、日本では1996年にリリースされる。

『BASNIE』発表後にトマス・ルジスキが脱退。新たにズビグニェフ・ビエニアクが加入する。ライヴを通じてポーランド国内での人気が高まるが、メンバーは固まらなかった。1993年にはジョン・レノンの曲のカヴァー・アルバム『NINE SONGS OF JOHN LENNON』を発表する。ミレク・ギルとヴォイチェフ・シャコフスキは不動。ベースはピョートル・ヴォトコフスキ、キーボードにクシシュトフ・パルセフスキ、シンガーにはロベルト・アミリアンというメンバーだった。ああ、舌を噛みそう。

1994年には2作目『MOONSHINE』を発表する。翌年には3作目『SAFE』を発表。2作目に続いてズジスワフ・ベクシンスキーの作品をジャケットに使用。プログレ・マインドもたっぷりの内容だったが、活動を停止してしまう。

ミレク・ギルはソロとしてMR.GIL名義で1998年に『ALONE』を発表。ピョートル・ヴォトコフスキとクシシュトフ・パルセフスキも参加している。さらにミレク・ギルは、SWEET JOY、TABOOといった女性アイドル・グループをプロデュース。これにもピョートル・ヴォトコフスキとクシシュトフ・パルセフスキが関わっていた。やはりプログレでは食べていけなかったのかも?ミレク・ギルとピョートル・ヴォトコフスキは、後にポーランドで人気タレントになるゴーシャ・コシチェルニャックという女性をフロントにしたANANKEを結成。数枚のシングルを発表している。

2002年に音楽ジャーナリストの追悼コンサートでCOLLAGEとしてステージに出演。それをきっかけとしてか、ヴォイチェフ・シャコフスキを中心にSATELITEが結成される。ヴォーカルにはロベルト・アミリアン、ギターにミレク・ギル、ベースにプルゼメク・ザヴァスキ、キーボードにクシシュトフ・パルセフスキと、COLLAGE新旧メンバーが参加して、2003年に『A STREET BETWEEN SUNRISE AND SUNSET』を発表。ジャケットはMARILLIONの初期作品を手掛けたマーク・ウィルキンソンが担当した。SATELITEは、『EVENING GAMES』(2005年)、『INTO THE NIGHT』(2007年)、『NOSTALGIA』(2009年)と発表している。

SATELITEに触発されたのか、ミレク・ギルは2004年にプログレ・バンドのBELIEVEを結成。トマス・ルジスキ、プルゼメク・ザヴァスキという初期COLLAGEメンバーにサトミという日本人ヴァイオリニストらが参加していた。2006年に『HOPE TO SEE ANOTHER DAY』でデビュー。『YESTERDAY IS A FRIEND』(2008年)、『THIS BREAD IS MINE』(2009年)、『WORLD IS ROUND』(2010年)、『THE WARMEST SUN IN WINTER』(2013年)、『SEVEN WIDOWS』(2017年)と、アルバムを発表している。

2013年、ついにCOLLAGEが再結成されて、ライヴを中心に活動を再開。ミレク・ギルは脱退するが、2022年に新作『OVER AND OUT』を発表する。メンバーはヴォイチェフ・シャコフスキ(ds)、ピョートル・ヴォトコフスキ(b)、クシシュトフ・パルセフスキ(kbd)という元メンバーに加え、ヴォーカルにQUIDAMのバルテク・コソヴィッツ、ギターにはミカル・キルミチというメンバー。ジャケットにはズジスワフ・ベクシンスキーの作品を使用。冒頭から20分を超える大作タイトル曲を収録した力作だった。

さて、COLLAGE『MOONSHINE』です。実は再発されるたびにバンドのロゴやジャケット・デザインが微妙に変化している。先日国内再発されたCDはオリジナルを踏襲していた。このイラストを手掛けたズジスワフ・ベクシンスキーは、退廃的、グロテスク、死のイメージが漂う作品で知られ、「終焉の画家」とも呼ばれている。彼自身も数奇にして悲劇的な運命をたどっているので、興味のある人はスマホで調べてみてください。スマホ……ああ、わずらわしい!。

ジャケットは沈鬱な雰囲気を漂わせる『MOONSHINE』だが、前作に比べてサウンド・プロダクションが向上し、彼らの叙情的な世界観が、より豊かに表現されたアルバムになっている。COLLAGEの代表作といえば本作だろう。MARILLIONやIQなどが好きなら絶対に気に入るはず。ここでは10分越えの大作タイトル曲「Moonshine」を聴いていただきましょう。荒んだ心へメロディが静かに流れ込んできて、じんわりと癒してくれる一曲です。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

Moonshine

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    ポーランドを代表するグループ。94年作の2nd。基本的なサウンドは1stと同傾向ですが、表現力が増し、持ち味の「幻想的な優美さ」には磨きが掛かっています。キーボード、ギター、ピアノは、すべてのフレーズが伸びやかで流麗。包み込むようにしっとり歌い上げるヴォーカルも格段に魅力が増しています。全体的に柔らかい音色で、深めにエコーを掛けたサウンド・プロダクションも印象的で、バンドの持つ神秘性を最大限に引き出しています。アートワークは「終焉の画家」と呼ばれるZdzislaw Beksinski。

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