2017年12月22日 | カテゴリー:「rabbit on the run」 netherland dwarf,ライターコラム
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本連載では「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことに重点を置き、フランスのプログレッシブ・ロックレーベルMusea Recordsからシンフォニック・ロックアルバムでデビューを果たしたnetherland dwarfが、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を、幅広くご紹介します。「ミュージシャンの視点」とは言っても、各コラムは平易な文章で構成されていますので、楽器が弾けない、専門用語は分からないという場合でも、心配せずにご覧下さい。
今回はまず、1980年代中盤のプログレッシブ・ロック・シーンについての考察から始まります。70年代後半の衰退期を経て80年代を迎えると、プログレッシブ・ロック・シーンには「ポンプ・ロック」の潮流が形成されていきました。「ポンプ・ロック」の音楽性を纏ったMARILLIONやPENDRAGONなどのグループたちは、70年代プログレッシブ・ロックの精神性を所々に引き継ぎつつ、時代を反映したスタイリッシュなサウンドを提示していったのです。しかし、そんな80年代にあって「ポンプ・ロック」からの影響を感じさせないプログレッシブ・ロック・アルバムを作り上げたアーティストたちも存在しています。
MARILLIONに続いてPENDRAGONやPALLASがメジャー・デビューを果たした84年、ハンガリーでは後述するSOLARISによる『Marsbeli Kronikak(The Martian Chronicles)』が発表されました。サイエンス・フィクションの色合いを持ったシンセサイザー・サウンドとメタリックなギター・サウンド、そしてフルートが織り成す硬質なシンフォニック・ロックは、垢抜けないながらも強烈な個性を感じさせます。そして85年に入ると、ブラジルからヴァイオリン奏者Marcus Viana率いるSAGRADO CORACAO DA TERRAが登場します。ラテン・テイストを滲ませた生命力溢れる彼らのシンフォニック・ロック・サウンドは、イギリスの「ポンプ・ロック」との共通項を持たず、70年代プログレッシブ・ロックの文脈に近いアプローチによって作り上げられていました。さらに「ポンプ・ロック」の勢いが限界を見せ始める中でIT BITESがデビューを飾った86年、オランダのCODAがデビュー・アルバム『Sound Of Passion』をリリース。彼らが奏でるデリケート且つロマンティックなシンフォニック・ロックの音世界もまた、大仰な「ポンプ・ロック」とは一線を画すものだったのです。なお、この時期にロシア(ソビエト連邦)の作曲家Edward Artemievによる強烈なシンフォニック・ロック作品として有名な84年作『Three Odes』や85年作『Warmth Of Earth』がリリースされていることも、忘れてはならないでしょう。
さて、ハンガリーのSOLARISはEASTと並び、同国を代表するプログレッシブ・ロック・グループとして知られています。前述のように、SOLARISは84年にデビュー・アルバム『Marsbeli Kronikak(The Martian Chronicles)』をリリースしますが、本国では4万枚という異例のセールスを記録。彼らはNAPOLEON BOULEVARDと名義を改め、80年代から90年代のポップ・ミュージック・シーンにも足跡を残します。SOLARIS名義での次なるリリースは、蔵出し音源や過去のライブ音源などによって構成された90年作『Solaris 1990』であり、ギタリストIstvan Cziglanの死去を経た99年には世紀末をコンセプトに置いたサード・アルバム『Nostradamus / Book Of Prophecies』を送り出しました。この間の特筆すべき出来事は95年に実現した、アメリカの有名プログレッシブ・ロック・フェスティバルであるProgfestへの出演でしょう。同国では2000年代以降でこそAFTER CRYINGやFUGATO ORCHESTRAといったグループたちのイメージが強いかもしれませんが、同フェスティバルではSOLARISが東欧プログレッシブ・ロックの代表格としてステージに登場し、イギリスのPENDRAGONやアメリカのSPOCK’S BEARDらに勝るとも劣らないパフォーマンスを披露したのです。同フェスティバルでの熱演は96年発表の『Live In Los Angeles』に収められ、2010年には映像作品としてもリリースされました。
2000年以降のSOLARISはライブを中心に活動を継続するも、作品リリースとしては編集盤などの製作に留まり、その他はフルート奏者Attila Kollarらによるソロ・マテリアルなどが散見される程度でした。しかし、活動スタイルの相違を発端としてベーシストTamas PocsとドラマーLaszlo Gomorが新プロジェクトSOLARIS FUSIONを結成し、2007年にシングル『Mystica』を製作。さらにSOLARIS FUSIONはNOSTRADAMUSへと発展し、2008年に本作『Testament』をリリースしたのです。SOLARIS関連作品の中でも見落とされがちな本作ではありますが、そのサウンド・クオリティーは本家に決して劣りません。上記のように、SOLARIS FUSION、そしてNOSTRADAMUSが結成された背景には、SOLARISの活動に関する考え方の違いがあったようですが、それは音楽性の相違ではなかったということが分かるでしょう。鋭角的なプレイを聴かせるギタリストとSOLARISのリズム・セクションによるスリリングなバンド・アンサンブルは、本家SOLARISをさらにデフォルメしたようなアグレッシブなサウンドを創出し、女性キーボーディストValeria Barcsikの手によるシンフォニックな楽曲群に強烈な一癖を加えています。加えて、本家SOLARISではフルート奏者Attila Kollarが存在感を放っていたように、NOSTRADAMUSにはフルート奏者Peter Foldesiが参加し、SOLARISを想起させるに充分なプレイを聴かせています。本作は、SOLARISのベーシストとドラマーがSOLARISサウンドの核心を改めて証明して見せたアルバムと捉えることが出来るのではないでしょうか。
本作をリリース後に、ベーシストTamas Pocsはフルート奏者を擁した新たなグループTOMPOXを結成し、2012年にファースト・アルバム『Hungarian Eclectic』を発表しています。一方のドラマーLaszlo Gomorは、本家SOLARISに合流しました。そして2014年、SOLARISはデビュー・アルバムの続編的作品である『Marsbeli Kronikak II』を作り上げ、世界中のプログレッシブ・ロック・ファンに30年前の衝撃を思い出させることになるのです。
「netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』連動 ハンガリーのプログレッシブ・ロックを束ねるPeriferic Records特集」 を読む
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ハンガリーを代表するシンフォ・グループSOLARISのドラムとベースを中心とするグループ。08年作。スピーディーに畳みかけるリズム隊、幾重にも重なった分厚いキーボード、躍動するフルート、ザクザクとダイナミズムを注入するギター。重厚かつ荘厳なシンフォニック絵巻は、いかにもSOLARIS。ドラマティックなシンフォとして文句無しの傑作
ハンガリーを代表するプログレッシヴ・ロック・グループ。04年のメキシコでのライヴを収録したCD+DVD。
ハンガリーを代表するシンフォニック・ロック・バンド。ユーロ・ロック屈指の傑作と言えるデビュー作『火星年代記』をメインにした2014年のライヴ音源。2014年リリースの『火星年代記』の続編『II』からも演奏しています。オリジナル・メンバーのRobert Erdescによるクラシカルなピアノやスペーシーで荘厳なキーボード、そしてAttila Kollarによるエキゾチックかつメランコリックなフルート。東欧らしい奥ゆかしさと重厚さと民族舞踏音楽的な躍動感とが混ざり合ったマジカルなサウンドが明瞭な音質で時を超えて蘇っています。『火星年代記』のファンは必聴の逸品です。
名実ともにハンガリー・プログレを代表するバンドと言える彼らの2019年作。99年にリリースされた『NOSTRADAMUS』の続編となっています。いやはや今作も怒涛の熱量とスケール!!女性ヴォーカルも伴ってエネルギッシュに渦巻くコーラスが全編に配された壮大なサウンドで聴き手を飲み込むようなスタイルは99年作そのまま。終始力みっぱなしで生真面目なまでに厳粛なサウンドにもかかわらず、テーマも反映してかどこかMAGMAにも通じる呪術的な世界観が形成されていくサウンドが印象的です。デビュー作『MARSBELI KRONIKAK』からの持ち味である尺八のように鳴らされる激しいフルートと太くうねりのあるシンセサイザーのコンビネーションももちろん冴えわたっておりやはり素晴らしい。冒頭34分の大作が圧巻ですが、哀愁を帯びたメロディアスなギターも活躍する他の曲も魅力的です。有無を言わせぬ迫力で押し寄せてくる、唯一無二のSOLARISワールドを堪能できるシンフォニック・ロック傑作です。おすすめ!
ご存じ名実ともにハンガリー・プログレを代表するバンド。彼らの代表作である『火星年代記』の続編的楽曲「Marsbeli Kronikak III」を収録した22年リリース4曲EP。19年作『NOSTRADAMUS 2.0』を聴いた時にも思いましたが、約40年を経ても彼らは脇目も振らず全力でSOLARISたろうとしているのだな、と思わせてくれるサウンドが詰まっています。哀切極まるフルート、アグレッシヴに疾走するオルガン、ここぞで炸裂する泣きのギター、そしてドラマティックに押し寄せるシンセ!どこまでも荘厳で張り詰めたSOLARIS節とも表現すべきパフォーマンスを本作でもブレることなく展開。その生真面目なまでのプロフェッショナル精神に、感動やら微笑ましさやらが入り混じった思いがこみ上げてきます。中でもやはりM4「Marsbeli Kronikak III」は素晴らしく、アコースティック・ギターを効果的に用いた民族フレイヴァー香る序盤の展開から、多声コーラス&ハンドクラップが沸き起こる圧倒的な終盤の展開まで、12分弱というのが信じられないほどに濃密な一曲となっていて必聴です!
彼らのライヴで配布された特典DVD。残念ながらフルのライヴ映像ではなく、90年代のライヴ映像やヴィデオ・クリップなどをダイジェスト編集した16分強の映像集です。コアなSOLARISファン向け。
80年代から活躍するハンガリーを代表するプログレッシヴ・ロック・グループ。95年のLAでの「PROGFEST」出演時、名作『火星年代記』の楽曲を中心とする熱狂のライヴDVD。バンド結成30周年を記念してのバンド自主制作によるオフィシャル・ブートレッグ。全14曲、90分を越えるフル収録。
80年代から活躍するハンガリーを代表するプログレッシヴ・ロック・グループ。95年のLAでの「PROGFEST」出演時のライヴ音源。
SMP004/5(SOLARIS MUSIC PRODUCTIONS)
2枚組、デジタル・リマスター、街と青空のジャケット(オリジナル盤とはジャケット違い)
レーベル管理上、盤にキズが多めにある場合・ジャケットに若干折れが場合がございます。ご了承ください。
東欧のみならずユーロ屈指と言えるシンフォニック・ロック傑作『火星年代記』を84年に残したハンガリーの名グループによる、『火星年代記』の続編として制作された2014年作。オリジナル・メンバーのRobert Erdesz(Key)、Attila Kollar(Flute)、Laszlo Gomor(Dr)を中心に録音されていて、深淵なトーンで荘厳に鳴り響くシンセ、時に幻想的に流れ、時に躍動するフルートなど、往年の重厚なるサウンドが見事に蘇っています。力強くタイトなリズム隊、伸びやかに奏でられるギターなどによるモダンなサウンドとのバランスも絶妙。スラヴ的なエキゾチズムも盛り込みつつ、これでもかとドラマティック&エネルギッシュに展開していく壮大なシンフォニック絵巻が圧巻なさすがの傑作と言えるでしょう。
ハンガリーを代表するシンフォニック・ロック・バンド。ユーロ・ロック屈指の傑作と言えるデビュー作『火星年代記』をメインにした2014年のライヴ映像。2014年リリースの『火星年代記』の続編『II』からも演奏しています。オリジナル・メンバーのRobert Erdescによるクラシカルなピアノやスペーシーで荘厳なキーボード、そしてAttila Kollarによるエキゾチックかつメランコリックなフルート。東欧らしい奥ゆかしさと重厚さと民族舞踏音楽的な躍動感とが混ざり合ったマジカルなサウンドが明瞭な音質で時を超えて蘇っています。『火星年代記』のファンは必聴の逸品です。
5998272703307(SOLARIS PRODUKCIOS)
DVD、PAL方式、リージョン記載なし、ブックレット元から無し
レーベル管理上の問題により、盤面にキズが多めについております。予めご了承ください。
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