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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第28回 CAST / Originallis (Mexico / 2008)

本連載では「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことに重点を置き、フランスのプログレッシブ・ロックレーベルMusea Recordsからシンフォニック・ロックアルバムでデビューを果たしたnetherland dwarfが、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を、幅広くご紹介します。「ミュージシャンの視点」とは言っても、各コラムは平易な文章で構成されていますので、楽器が弾けない、専門用語は分からないという場合でも、心配せずにご覧下さい。

第28回 CAST / Originallis (Mexico / 2008)

コンサートの臨場感を閉じ込めたライブ・アルバムや、ファンからの人気が高い楽曲を網羅したベスト・アルバムをリリースする場合には、「2枚組」や「3枚組」といった複数枚のディスクを用いたスタイルを選択することが少なくありません。あるいは昨今では、未発表音源を集めたボーナス・ディスクを付属させることでボリュームを演出するなどの手法も見受けられます。しかし、スケールの大きなコンセプトを掲げ、アルバムを通してひとつのストーリーを築き上げる特徴を持つプログレッシブ・ロックでは、しばしば「複数枚のディスクを用いたスタジオ・アルバム」も登場することがあります。1970年代のブリティッシュ・プログレッシブ・ロック・シーンでは、大作主義の極みのような作風が賛否両論を巻き起こしたYESの73年作『Tales From Topographic Oceans』、マンハッタンを舞台に難解な精神世界を描いたGENESISの74年作『The Lamb Lies Down On Broadway』、オーケストラを大きく取り入れたEMERSON, LAKE & PALMERの77年作『Works Volume 1』、そして2枚組のスタジオ・アルバムとして世界一の売り上げ(3000万枚)を記録することになったPINK FLOYDの79年作『The Wall』などが代表的な例でしょう。

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そもそも、複数枚のディスクを用いるということは、作り手であるミュージシャンたちにどのようなメリットをもたらすのでしょうか。恐らく、収録時間の限界をディスクの枚数分だけ引き延ばすことが出来るということが、最も大きな利点として挙げられるのでしょう。しかし、それは複数枚のディスクを用いなければ収め切れないほどの創造力と、通常よりも長い再生時間を飽きずに聴かせられるだけの作曲力を前提としていることを忘れてはなりません。例えば上記のYESによる『Tales From Topographic Oceans』は、ヒンドゥー教の教典に着想を得たという重厚なコンセプトを掲げ、2枚組レコードの各面に平均20分の大曲を1曲ずつ配置した全4曲構成で製作されていますが、その「ノルマ」を達成するために無理のある展開で再生時間を消費しているようにも映ってしまったことから評価が分かれ、そうした作風に異論を唱えたキーボーディストRick Wakemanがグループから脱退する引き金にもなったのでした。プログレッシブ・ロックのトップ・グループたちですら、複数枚のディスクを用いるメリットを生かした創作を行うことは非常に難しいパフォーマンスなのだということが分かります。その一方で、EMERSON, LAKE & PALMERの『Works Volume 1』はユニークな構成で製作されています。彼らの場合は合理的であり、2枚組レコードの各面を3人のメンバーそれぞれのソロ・アルバムのように機能させ、最終面(ディスク2のB面)にグループ名義の楽曲を収録しました。

さて、新世紀以降のプログレッシブ・ロック・シーンでも「複数枚のディスクを用いたスタジオ・アルバム」が数多く誕生していますが、そんな中から今回はメキシコのプログレッシブ・ロック・グループCASTによる2008年作『Originallis』を取り上げます。キーボーディストAlfonso Vidalesを中心に活動を開始した彼らは、94年にアルバム・デビューを果たすと、怒涛のリリース・ラッシュで存在をアピールし、ブラジルのTEMPUS FUGITやアルゼンチンのNEXUS、チリのENTRANCEなどと並び新世紀を代表するグループへと成長を遂げました。また彼らは、有名プログレッシブ・ロック・フェスティバルであるBaja Progをオーガナイズし、世界中のミュージシャンたちと交流を持ちながらプログレッシブ・ロック・シーンの活性化にも多大なる貢献をしています。

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2枚組のボリュームで2008年にリリースされた本作『Originallis』は16枚目のスタジオ・アルバムということですから、いかにCASTが多作グループであるかが分かります。本作はグループにとって、前述のYESによる『Tales From Topographic Oceans』のような位置にある作品なのかもしれません。というのも、2007年作『Com.Union』が高い評価を獲得し、彼らに対して今までにない注目が集まる中でのリリースとなったためです。その期待に応える形で90分に及ぶニュー・アルバムを作り上げたと推測することも出来ますが、彼らの場合には、多作であることに加えて2003年作『Al-Bandaluz』や2006年作『Mosaique』で既に2枚組アルバムの製作を経験していることから、もはや特別なことではないような印象も持ちます。彼らはイギリスのMARILLIONやPENDRAGONに代表されるネオ・プログレッシブ・ロックの流れを汲んだ作風を纏いながら活動を展開してきたわけですが、メロディアスなスペイン語のヴォーカルと慌ただしいバンド・アンサンブルで駆け抜けるシンフォニック・ロックという方向性は本作でも揺らぐことがありません。イタリアン・ロックを彷彿とさせる華麗な音作りを用い、濃厚なサウンドに仕上げられています。また、サックスやフルートを扱う管楽器奏者を生かしたアレンジ、女性ヴォーカリストのアクセント、あるいはラテン・テイストを滲ませた哀愁のバラードなどによって、押しの一辺倒に陥りがちな作風に絶妙なコントラストを作り出すなど、複数のパートから成る大曲を含めた90分をドラマティックに聴かせています。

作り手の創造力が試される「複数枚のディスクを用いたスタジオ・アルバム」ですが、そのスタイルは聴き手に対しても負担を強いるものです。収録時間が長くなるということはレコーディング費用に影響し、ディスクの枚数が増えるということはプレス費用に影響するわけですから、最終的に販売価格にまで影響が出てしまうケースが少なくないことでしょう。リスナーの立場からすれば、通常よりも高価格で作品を購入し長時間をリスニングのために拘束されるわけですから、いつも以上に期待を裏切らない内容を求めてしまうのは当然のことです。一般的なスタジオ・アルバムよりもセールスしにくく、しかも一般的なスタジオ・アルバムよりも厳しい基準で評価を受けなければならない、というような難易度の高さが、「複数枚のディスクを用いたスタジオ・アルバム」にはあるのかもしれません。


netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第1回 netherland dwarf / tortoise walks forever (Japan / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第2回 CHRIS / Snow Stories (Holland / 2012)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第3回 GRENDEL / The Helpless (Poland / 2008)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第4回 ANUBIS / Hitchhiking To Byzantium (Australia / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第5回 AGUSA / Hogtid (Sweden / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第6回 SANHEDRIN / Ever After (Israel / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第7回 AMOEBA SPLIT / Dance Of The Goodbyes (Spain / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第8回 MAGENTA / The Twenty Seven Club (UK / 2013)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第9回 TOHPATI ETHNOMISSION / Save The Planet (Indonesia / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第10回 HIDRIA SPACEFOLK / Astronautica (Finland / 2012)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第11回 QUATERNA REQUIEM / O Arquiteto (Brazil / 2012)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第12回 SETNA / Guerison (France / 2013)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第13回 FLOR DE LOTO / Nuevo Mesias (Peru / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第14回 TRANSATLANTIC / The Whirlwind (Multi-National / 2009)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第15回 KARFAGEN / Lost Symphony (Ukraine / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第16回 SENSE / Going Home (Canada / 2007)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第17回 ARANIS / Roqueforte (Belgium / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第18回  SIKUS BOLIVIA / E.C.L.I.P.S.E. (Bolivia / 2011)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第19回  LITTLE TRAGEDIES / At Nights (Russia / 2014)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第20回  NUCLEUS TORN / Neon Light Eternal (Switzerland / 2015)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第21回  MERRY GO ROUND / Merry Go Round (Italy / 2015)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第22回  WOBBLER / Afterglow (Norway / 2009)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第23回  MEDIABANDA / Siendo Perro (Chile / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第24回  FIVE-STOREY ENSEMBLE / Not That City (Belarus / 2013)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第25回  GLASS HAMMER / If (USA / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第26回  SEIN / La Flor Y La Mierda (Argentina / 2010)

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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第27回  CICCADA / A Child In The Mirror (Greece / 2010)

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CASTの在庫

  • CAST / LEGACY

    メキシコが誇るシンフォニック・ロックの名グループ、00年作10th、リリシズムとダイナミズムが融合した絶品シンフォ!

    70年代末に結成され、94年に自主制作にてデビューしたメキシコのシンフォ・グループ。前作に引き続きMUSEAより世界に向けてリリースされた00年作の10thアルバム。2曲目「Legacy’s Executor」から、テクニカルなキレとキーボードの色彩感でスピーディーに畳み掛けるCAST節が炸裂!流麗なピアノとフルートをフィーチャーした清涼感あるパートも良いし、祈るように敬虔なハイ・トーンのヴォーカルによる「歌」が溢れるパートも心奪われるし、「ファンタスティックさ」や「クラシカルさ」がこれまでにないほど出ていて、なんだかグリーンスレイドを思い出す感じ。でもグリーンスレイドのようなクリアさや綺羅びやかさはなく、「愛すべき野暮ったさ」とでも言うべきバンドみんなが汗を飛ばしながら幻想サウンドを鳴らしている思わず拳を握りしめます。クリムゾンが頭に浮かぶほどヘヴィに沈むパートや、多声コーラスやハモンド・オルガンが宗教的な音を鳴らすパートや、北欧のバンドみたいなリリカルでハートウォームなパートや、80年代の東欧のバンドみたいにシンセが荘厳に鳴り響くパートを織り交ぜた、まるでコンセプト・アルバムのようなスケールの大きな構成も特筆です。幕が開いた2000年代プログレ・シーンにおいて、中南米のの旗手となるべく実力を高らかに証明した傑作。

  • CAST / CASTALIA

    メキシコを代表するシンフォ・グループ、01年リリースのライヴ・アルバム

    70年代に結成され、94年にデビューしたメキシコのシンフォ・グループ。傑作『LEGACY』の後にリリースされたライヴ盤。

  • CAST / AL-BANDALUZ

    メキシコ出身、90年代以降屈指と言えるシンフォ・ロック・バンド、モダンに進化した03年作11th

    70年代末に結成され、94年に自主制作にてデビューしたメキシコのシンフォ・グループ。03年作の11thアルバム。Key奏者Alfonso VidalesとギタリストFrancisco Hernandez以外のメンバーが交代。Francisco Hernandezはヴォーカリストとなり、ギター、ドラム、ベースが新加入。サウンドは、ジェネシスからの影響が濃いネオ・プログレから一気にモダンなシンフォニック・ロックへと進化していて、ずばりフラワー・キングスやトランスアトランティックへのメキシコからの回答といった感じ。リズム隊がそっくり変わっているのでまず注目すると硬質でタイト!変わったギタリストはというとザクザクとメタリック!かなりモダンなシンフォニックになっていて、ジェネシスではなくクリムゾンやEL&Pのエッセンスを感じます。その点では、ハンガリーのAFTER CRYINGも彷彿。そんな緊張感みなぎるハードな「暗」のパートとの対比により、これまでのクラシカルでファンタスティックな「陽」のパートがより一層ドラマティックに聴こえます。専任のヴォーカルDino Carlo Brasseaが抜けたため、インスト重視になりましたが、ヴォーカル・ナンバーも収録していて、なんとはじめてスペイン語で歌われています。これまでギターだったFrancisco Hernandezの歌声もなかなか良い感じ。ゲストも特筆で、特にスペインのシンフォ・バンドOMNIの作品にも参加するサックス/フルート奏者Pepe Torresの演奏が素晴らしく、フルートはもちろん、サックスのリードはバンドの新たな魅力と言えるでしょう。新生CASTによる傑作です。

  • CAST / NIMBUS

    78年結成、メキシコのベテラン・シンフォニック・バンド、04年作

    メキシコのみならず今や有無を言わせぬ世界基準となったベテランシンフォニックバンドの04年作。本作では、CASTの個性であるファンタジック且つ重厚なシンフォニックサウンドはそのままに、アルバムコンセプトも伴ってかなり閉塞感のあるアグレッシブな内容となっています。Mylodonレーベルへの移籍によって音楽性に変化が見られ、むしろ楽曲によってはメタリックとすら言えるような硬質な雰囲気へ。いわゆる南米独特の哀愁と言うものは意図的に隠された洗練されたへヴィーシンフォニックロックと言えますが、元々彼らの持っていた攻撃性が絶妙に融合し畳み掛ける様はやはりCASTの音であり、圧巻の一言。引き出しの多さを見せ付けられます。このアルバムをさらに進化させた作品が07年の名盤「Com.Union」だということを考えると記念すべきターニングポイントな1枚と言えますが、決して過渡期的な印象を与えない高水準なへヴィーシンフォニックロックは、さすがCASTです。

  • CAST / COM.UNION

    メキシコを代表するシンフォ・グループ、07年作、これがシンフォニック・ロックの最新形!必聴の名作!

    メキシコを代表するシンフォ・グループ。07年作。それにしても1曲目からもの凄いテンション。煌びやかな音色のキーボードとメタリックなギターが一体となって畳みかけるパートのダイナミズムは圧巻の一言。凶暴と言えるほどの硬質なテンションを保ちながらも、どこか柔和な感触も残していてたいへんメロディアス。往年のシンフォニック・ロックの幻想的な部分はそのままに、現代的なヘヴィネスやビビッドな音像を違和感無く取り入れたサウンドは見事と言うしかありません。ベテラン恐るべし。シンフォ・ファン必聴の名作!

  • CAST / ENDLESS SIGNS

    メキシコを代表するシンフォ・バンド、95年作5th

    結成は70年代に遡るメキシコのシンフォ・グループ。95年作の5th。序盤は、『トリック・オブ・ザ・テイル』あたりのジェネシスを彷彿させるメロディアスなシンフォニック・ロックを聞かせ、後半に向かって、前作で加わったEL&P的な攻撃性を織り交ぜつつ、ダイナミックなプログレを聴かせます。きらびやかなトーンで重層的に鳴らされるシンセの魅力はそのままに、ギターがより前面に出ている印象で、歪みつつも抑制されたハケット譲りのトーンで繊細かつ伸びやかにリリカルなフレーズを奏でています。クラシカルなピアノもより効果的で、最終曲は、イタリアのLOCANDA DELLE FATEも思い出しました。その最終曲は、GENESIS、EL&P、LOCANDA DELLEあたりのエッセンスを詰め込んだようなダイナミックな名曲。手数多く爆走するドラムも特筆です。GENESISやEL&Pなど往年のプログレのDNAを受け継いだネオ・プログレとして、一つの完成形と言える名作です。

  • CAST / FOUR ACES

    メキシコを代表するシンフォ・グループ、95年リリースの4th

    結成は70年代に遡るメキシコのシンフォ・グループ。95年作の4th。前作までに比べ、アンサンブルが洗練され、ダイナミズムも増した印象。トニー・バンクス直系の幻想的なトーンを軸にしつつ、キース・エマーソンを彷彿させる攻撃的なトーン、管弦楽器風の広がりあるトーンなど音色が多彩になったとともに、アコースティック・ピアノによるクラシカルなピアノも印象的で、表現の幅がグッと広がりました。リズム隊もまるでカール・パーマーばりに空間を埋め尽くすようなドラムをここぞで盛り込み、「静」と「動」の対比が鮮やかになってダイナミズムが増しました。オープニング・ナンバーの間奏では、低く立ち込めるようなリズムの中、ちょっぴり東洋的なフレイヴァーとともに変調したムーグが鳴り響き、ハンガリーあたりの東欧のバンドに通じる荘厳さを聴かせます。中期ジェネシス直系の美しくリリカルなメロディ・ラインは相変わらずというか、さらに磨きがかかっている印象。初期マリリオンに通じるネオ・プログレから一歩抜け出して飛躍した快作です。

  • CAST / BEYOND REALITY

    メキシコが世界に誇るシンフォ・グループ、96年作6th、ジェネシス・ファン歓喜の傑作

    94年にデビュー以降、怒涛のリリースで、メキシコが世界へと誇るシンフォニック・ロック・バンドへと上り詰めたバンド。96年作の6thアルバム。繊細かつキラキラしたトーンのアルペジオ、ハードかつ神経質なタッチで紡がれるリードともにスティーヴ・ハケット直系と言えるエレキ・ギター、90年代とは思えない幻想性溢れるトーンのキーボード。リズム隊は硬質さがあってポンプ・ロック以降のバンドからの影響も感じさせます。運動性たっぷりにドラマティックに畳み掛けるキメのパートもまたジェネシスのDNAに満ちています。そして、全編を通してフィーチャーされる優美なフルートがまた絶品。オープニング・ナンバーからジェネシス・ファンは歓喜と言える名曲で、いきなりトップ・ギアで聴き手を飲み込みます。ヴォーカル・ナンバーでは、南米らしい詩情あるメロディとハイ・トーンのエモーショナルなヴォーカルも良いし、これはドラマティック&メロディアスなプログレのファンは必聴。傑作です。

  • CAST / IMAGINARY WINDOW

    メキシコを代表するシンフォ・グループ、ついに世界のプログレ・シーンのトップへと躍り出た99年の名作!

    70年代末に結成され、94年に自主制作にてデビューしたメキシコのシンフォ・グループ。いよいよフランスのレーベルMUSEAと契約し、世界に向けてリリースされた出世作となった99年の9thアルバム。変拍子を巧みに織り交ぜて瑞々しく躍動するリズム、その上をリリカルなキーボードとハード・エッジかつ歌心いっぱいのギターが色彩豊かな音世界を描き、フルートがこれぞ南米と言える詩情を加える。テクニカルなアンサンブルが生むダイナミズムと色彩感豊かなサウンドを同居させたサウンドを完成させた前作『ANGELS AND DEMONS』を元に、再びフルートをフィーチャーして、しっとりとリリカルな「引き」のパートを織り交ぜているのが印象的です。幻想性が前作以上に浮かび上がるとともに、ラテン的なリリシズムが心に残ります。LOCANDA DELLE FATEを彷彿させますが、「氷」に包まれたLOCANDA DELLE FATEに対し、「太陽」に照らされたCASTと言った感じで、今まで以上にCASTならではのアイデンティティを感じます。音の一つ一つは繊細に紡がれているのに、その一音一音には確かにパッションがある、そんな気がします。中南米はメキシコから高らかに鳴らされた渾身のシンフォニック・ロック・アンサンブル。力強くそして包み込むように歌い上げるハイトーンのエモーショナルなヴォーカル、ジェネシスからの影響を土台にラテン的な詩情を乗せたメロディも絶品です。これは傑作!

  • CAST / ANGELS AND DEMONS

    メキシコが世界に誇るシンフォ・グループ、97年作7th、世界のジェネシス・フォロワーの中で屈指と言える傑作

    94年にデビュー以降、怒涛のリリースで、メキシコが世界へと誇るシンフォニック・ロック・バンドへと上り詰めたバンド。97年作の7thアルバム。プロダクションが向上した印象で、楽器の音の艶、瑞々しさ、色彩感が増し、アンサンブルがクリアでダイナミックになり、彼らの持つ構築美、テクニックがよりダイレクトに伝わってきます。ハケット直系のメロディアスかつ緊張感みなぎるギター、清涼感たっぷりにたなびくバッキングから狂おしいばかりに畳み掛けるピアノやムーグのリードまで相変わらずセンス抜群のキーボード、そして、タイトさとキレ味を増したリズム隊。1曲目のインスト・ナンバー「Initiation」から凄まじいほどにドラマティック。前作で印象的だったフルートを排除し、ギター、キーボード、リズム隊による運動性能抜群のアンサンブルにフォーカスし、彼らのテクニックとアレンジ力を120%活かしきった「静」と「動」の対比鮮やかなアンサンブルが印象的です。切なさに満ちたハイ・トーンのエモーショナルなヴォーカルと英詩による流れるようなメロディ(ジェネシスの「Cinema Show」を思い出します)も素晴らしいし、この時点で、世界屈指のジェネシス・フォロワーへと上り詰めたと言って過言ではないでしょう。ジャケットの雰囲気にピンときたシンフォ・ファンは間違いなく気に入る傑作です。

  • CAST / ARSIS

    70年代から活躍するメキシコを代表するシンフォニック・ロック・グループ、2014年作、ベテランとは思えない鮮烈なダイナミズム溢れるシンフォ傑作

    70年代から活躍するメキシコを代表するシンフォニック・ロック・グループ、2014年作。煌びやかなピアノが華麗に流れていくオープニング。ピアノが不穏なフレーズへと移行していくと、ザクザクとヘヴィ・メタリックなギターが炸裂し、一気に動き出すアンサンブル。ここぞでは視界が開けたように透き通った鋭角なトーンのギターやヴィンテージなハモンド・オルガンやフルートがファンタスティックなフレーズを高らかに奏でます。フルートとザクザク・ギターとのユニゾンあり、ピアノとギターによるクラシカルな高速フレーズが一閃したり、それを支えるリズム隊のキレ味も特筆だし、70年代的な幻想性と現代的な明瞭さやダイナミズムが見事に融合したアンサンブルは、まさに「鮮烈」という言葉がぴったり。それにしても、ベテランとは思えない突き抜けたエナジー。これはモダン・シンフォニック・ロックの傑作です!

  • CAST / ART

    メキシコを代表するグループ、2011年作、圧倒的にドラマティックな「鮮烈」なシンフォ傑作!

    結成は70年代に遡るメキシコを代表するシンフォ・グループ、2011年作の17th!翳りのあるシンセとエッジの立った早弾きギターが疾走するドラマティックなパートを軸に、フルートがむせぶリリカルなパート、畳みかける変拍子の中をジャジーなサックスがむせぶクリムゾン的なパート、ストリングスがたおやかに広がるクラシカルなパートなどを織り込みながら、「静」と「動」を対比させたダイナミックな展開で駆け抜けます。オープニング・ナンバーからシンフォ・ファン号泣間違いなしなインスト・ナンバーで、めくるめく展開は「鮮烈」の一言。2曲目からはヴォーカルも入り、伸びやかな歌声とシアトリカルな歌い回しがこれまたドラマティック!ギターはザクザクとしていますが、どこか南米プログレらしい「奥ゆかしさ」があるのが特徴。現代的なヘヴィネスを古色蒼然とした温かなトーンで包み込んだサウンドも絶品。もう聴いていて「うおぉぉ」とうなりっぱなしで、次々にこちらの「泣きとドラマのツボ」を押しまくる展開には笑みがとまりません。ここにきて最高傑作か!と思ってしまう、ベテランらしさ皆無の瑞々しい傑作!

  • CAST / MOSAIQUE 2006

    メキシコを代表するシンフォ・グループ、2枚組の06年作14thアルバム

    94年にデビュー以降、怒涛のリリースで、メキシコが世界へと誇るシンフォニック・ロック・バンドへと上り詰めたバンド。2枚組となった06年作の14thアルバム。デビュー以来、ジェネシスのDNAを継いだネオ・プログレ・サウンドを極めていき、MUSEAからリリースされた03年作の11th『Al-Bandaluz』で、中心メンバーのKey奏者Alfonso VidalesとヴォーカルのFrancisco Hernandez以外のメンバーを変え、より往年の香りとともに、よりスタイリッシュでモダンに引き締まったダイナミックなシンフォニック・ロックへとさらに階段を登りました。本作は、メンバー・チェンジ後では3作目で、ヴォーカルのFrancisco Hernandezはゲスト扱いとなり、他のヴォーカリスト(女性Voも!)もゲストに加えて制作されています。サウンドは、GENESISやEL&PのDNAを継ぐヴィンテージな香りたっぷりの多彩なキーボードを軸に、『Al-Bandaluz』以降のフルート、サックス、モダンでハード・エッジなギターが織りなすスリリングでいてイマジネーションにも満ちたシンフォニック・ロックが印象的です。ロマンティシズム溢れる流麗なピアノ、夢想的で優美なフルートではじまる2枚目のオープニング・ナンバーは、イタリアのLocanda Delle Fateも彷彿させる美麗さ。そこから一気にヘヴィなギターとムーグによるダイナミックなパートへと展開し、ジェネシス直系のドラマティックなキメや、HR/HM的な硬質なパートなどを織り交ぜながら、「静」と「動」、「硬」と「軟」自在に上り詰めていく展開は見事。これまた傑作です。

  • CAST / POWER AND OUTCOME

    今やメキシコのみならず中南米シーンを代表するグループとなった彼らの17年作、相変わらずのスケール大きくエネルギッシュなシンフォニック・ロックが素晴らしすぎ!

    70年代末結成、90年代初頭にデビューして以降コンスタントに高品質な作品をリリースし続け、今やメキシコのみならず中南米シーンを代表するグループとなった彼らの17年作!ピアノ、オルガン、シンセを縦横に駆使してアンサンブルを形作るクラシックの素養みなぎるキーボード、天を駆けるように格調高い音色から深みある芳醇な音色までを操る表現力抜群のヴァイオリン、そしてゴリッと硬質なリフワークとエネルギッシュな速弾きでCASTのヘヴィネスを一手に担うギター。安定感抜群のリズム・セクションの上を、三者が複雑に絡み合いながら織り上げていくスケールの大きなシンフォニック・ロック・サウンドは、もはや興奮を通り越して感動すら覚える素晴らしさ。全編にわたり瑞々しくファンタジックな躍動感に満ちながらも、同時に一音一音には確かな重量感のあるという、一分の隙なく構築されたサウンドはもはや貫禄と言う以外にはない威風堂々な出で立ちです。特に素晴らしいのが前作より正式メンバーとして活躍するヴァイオリニストRoberto Izzoのプレイ。ソロもたっぷりフィーチャーされており、清廉なクラシカル・シンフォの色合いが強まっているのが特徴です。これは、スウェーデンのTHE FLOWER KINGSとブラジルのSAGRADO CORACAO DA TERRAを合体させたかのような凄まじさと言ってしまおう!傑作!

  • CAST / SANDS OF TIME: LIVE

    名実ともに現メキシコを代表するプログレ・バンドによる、16年4月に行われた母国メキシコでのライヴ映像を収録!

    名実ともに現メキシコを代表するプログレ・バンドによる、16年4月に行われた母国メキシコでのライヴを収録した映像作品。16年リリースの新作『VIDA』からの4曲、11年作『ART』より2曲、14年作『ARSIS』の1曲に、ドラムソロ、メドレーを加えた全9曲を演奏。抜群のテクニックを誇るバンドだけに、スタジオ盤と遜色ないダイナミックにして緻密なアンサンブルが冒頭から炸裂していて興奮必至。屋外ステージでの夜の公演ながら、ステージ上が全体的に明るく演奏しているメンバーの姿がよく見えるのも好印象です。

    • CASTBR001CAST

      ブルーレイディスク、NTSC方式、リージョンフリー

      南米からの輸入盤という関係上、パッケージ等のコンディションが良くないものがございます。ご了承ください。

  • CAST / VIDA

    メキシコが世界に誇るシンフォニック・ロック・バンド、2015年作、イタリア人の気鋭ヴァイオリン奏者を迎えた壮麗かつダイナミックな傑作

    90年代はじめのデビュー以降コンスタントに作品をリリースし続けているメキシコが誇るシンフォニック・ロック・バンド。前作から早くも1年で届けられた2015年作。特筆は、近年のニュー・トロルスのライヴへの参加や、管弦楽器隊によるプログレ・トリビュート・バンドGNU QUARTETでの活躍で知られるヴァイオリン奏者Roberto Izzoがコンスタントなメンバーとして参加していること。ゲストとして、他のGNU QUARTETの管弦楽器奏者も参加していて、瑞々しく艶やかなトーンのストリングスが躍動するクリアで明朗なサウンドが印象的。ソロとしても活躍している若き男性ヴォーカリストBobby VidalesによるカナダのRUSHを彷彿させるハイ・トーンの歌声もそんなサウンドに見事にマッチしています。ジェネシスのDNAが息づく多彩なキーボードによるヴィンテージな色合い、ザクザクとメタリックなリフや流麗な速弾きで硬質なダイナミズムを生むギターのアクセントも良いし、圧倒的に目の覚めるようなアンサンブル!今までの作品以上に「プログレ・ハード」と言えるキャッチーさと突き抜けるような明快さを軸に、管弦楽器による美麗さが加わっていて、そこに持ち前のテクニカルなエッジも効いていて、これはずばりシンフォニック・ロックのファンは必聴でしょう。ジャケットのデザインは、ジェネシスでお馴染みのポール・ホワイトヘッド!

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