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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第8回 MAGENTA / The Twenty Seven Club (UK / 2013)

本連載では「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことに重点を置き、フランスのプログレッシブ・ロックレーベルMusea Recordsからシンフォニック・ロックアルバムでデビューを果たしたnetherland dwarfが、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を、幅広くご紹介します。「ミュージシャンの視点」とは言っても、各コラムは平易な文章で構成されていますので、楽器が弾けない、専門用語は分からないという場合でも、心配せずにご覧下さい。

第8回 MAGENTA / The Twenty Seven Club (UK / 2013)

男性メンバーによってグループが編成されることの多いプログレッシブ・ロックの中で、その希少さから、ひとつの個性として注目を集めてきたのが「女性ヴォーカリスト」を擁するグループたちです。メンバーの中で「紅一点」の存在である彼女たちの歌声は、時にシンフォニック・ロックの優雅な響きに寄り添い、また時にトラディショナル・フォークの素朴な味わいと結びつき、それぞれの個性を発揮してきました。1970年代のブリティッシュ・プログレッシブ・ロックにおいてはCURVED AIRのSonja Kristinaをはじめ、AFFINITYのLinda Hoyle、FAIRPORT CONVENTIONのSandy Denny、STEELEYE SPANのMaddy Prior、THE SALLYANGIEのSally Oldfield、SPIROGYRAのBarbara Gaskinなどの女性ヴォーカリストたちが素晴らしい歌声を響かせてきましたが、その中でも「女性ヴォーカリスト」の代名詞と言えば、やはりRENAISSANCEのAnnie Haslamの名前が挙がるでしょう。

女性ヴォーカリストを擁するプログレッシブ・ロックグループの代表格であるRENAISSANCEは、名グループTHE YARDBIRDSのKeith RelfとJim McCartyを中心に活動していた時期を「第1期」とし、第1期にゲスト参加していたMichael Dunfordが中心となり、Annie Haslamを擁した体制で72年に再デビューを果たしてからを「第2期」と考えますが、一般的にRENAISSANCEと言えば、不動のメンバーで世界的な成功を収めた第2期の印象が強く残ります。5オクターブの声域を誇る「クリスタル・ヴォイス」と評されるAnnie Haslamのソプラノ・ヴォーカルをフューチャーし、オーケストラを大胆に導入したクラシカルな色艶と、エレキ・ギターを廃したアコースティックな叙情性を併せ持った彼らの音楽性は、シンフォニック・ロックの理想形のひとつとして多くのファンに支持されました。また、その世界観を築く上で重要な役割を担った作詞家Betty Thatcherやオーケストラ・アレンジの名手たちの存在など、それぞれの突出した才能が完璧な調和を見せることによって素晴らしい作品が生み出されてきたのです。70年代中盤に全盛期を迎えた彼らは80年代に解散、いくつかの時代を経て2000年に再始動作、翌2001年に来日公演のライブ作、2011年には往年の名盤の再現公演を収録したライブ作をリリースしますが、2012年のツアー直後にMichael Dunfordが急逝、翌2013年に発表された新作『Grandine il Vento』が彼の遺作となりました。

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さて、ヴォーカリストAnnie Haslamはソロ・アーティストとしても優れた作品を残しており、加えて他のミュージシャン作品へのゲスト参加も行ってきましたが、Annie Haslamとのコラボレーションにより2006年にEP『Night And Day』をリリースしたのがイギリスの新世代グループMAGENTAです。

MAGENTAは、メロディック・ロックバンドCYANのメンバーとして90年代前半に登場し、97年にはFYREWORKSとしてもアルバムを残したキーボーディストRob Reedと、女性ヴォーカリストChristina BoothによりTRIPPAというユニットを経て99年に結成され、YESなど往年のプログレッシブ・ロックグループからの影響を感じさせるタイトなバンド・サウンドと、ネオ・プログレッシブ・ロック世代のポピュラリティーに富んだメロディー・センスによって、新世紀のプログレッシブ・ロックシーンを代表する女性ヴォーカル・グループとしての地位を確立しました。近年では、Rob Reedはケルティックな質感を押し出した壮大なサイド・プロジェクトKOMPENDIUMを発足させ、Christina Boothはソロ・アーティストとしても作品を発表するなど、MAGENTAでの安定感のある活動を土台としながらその活躍の場を広げています。

MAGENTAの6枚目のスタジオ・アルバムである本2013年作『The Twenty Seven Club』は、そのタイトルの通り27歳で生涯を閉じた6人のミュージシャンたち(収録曲順にJim Morrison / Jimi Hendrix / Janis Joplin / Brian Jones / Kurt Cobain / Robert Johnson)をコンセプトに製作されており、MAGENTAの最高傑作との呼び声も高い注目作となりました。交響曲第9番を作曲した作曲家は死ぬ、という「第九の呪い」と並んで音楽関連の有名な「死のジンクス」である「27クラブ」ですが、この大きなテーマをコンセプトに掲げるということは比較的最近の具体的なミュージシャンを取り上げるということであり、若くして亡くなったそれぞれのミュージシャンに対する深い考察が不可欠であることは言うまでもありません。本作にはその重厚なコンセプトに基づいた、鎮魂の祈りを感じさせるようなシンフォニック且つドラマティックな楽曲が収録されており、彼らの音楽的特色である構築の美しさと硬質なバンド・アンサンブルが全編を通して強い緊張感を張り巡らせていますが、その堂々としたパフォーマンスからはベテラン・グループに匹敵する風格すら感じることが出来るでしょう。また、オーケストレーションを取り入れたシンフォニック・サウンドのダイナミズムと、切々と奏でられるアコースティック・サウンドのセンチメンタリズムが10分を超える長尺楽曲の中で絶妙なコントラストを放ち、YESやRENAISSANCEが作り上げたシンフォニック・ロックのスタイルをさらに推し進めた彼らが、ついに孤高の領域へと足を踏み入れたことを伺わせます。

「27クラブ」のロック・スターたちの生き様を強烈に描き出した本作は、プログレッシブ・ロックの大きな魅力のひとつである「コンセプト性」が発揮された名盤であり、6曲のタイトルには上記の6名を象徴するワードが用いられ、またジャケット・アートにはそれぞれの姿と、その死因を想起させるアイテムが描かれています。比較的コンパクトな印象のあった前2011年作『Chameleon』と比べると、プログレッシブ・ロックらしい振る舞いが再び舞い戻った、MAGENTAの更なる飛躍を予感させる重要作となっています。


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MAGENTA他、関連作在庫

  • MAGENTA / GATHERING

    現英国を代表するシンフォ・グループ、05年のライヴ映像

  • ROBERT REED / SANCTUARY II

    MAGENTAの中心人物による16年作ソロ、マイク・オールドフィールドへのオマージュに溢れたシンフォニック&トラディショナルな逸品

    00年代以降のイギリスを代表するシンフォ・バンドMAGENTAのブレイン、Robert Reedによる16年作ソロ。14年作のEPに続き、トム・ニューマンのプロデュースで、ドラムには名手サイモン・フィリップス、ヴォーカルにはKOMPENDIUMでもおなじみの女性Angharad Brinnが参加。初期マイク・オールドフィールドを彷彿させるシンフォニック&トラディショナルなサウンドが魅力的です。まるでマイク・オールドフィールドとアンソニー・フィリップスがブレンドされたような繊細なタッチの幻想的なギター、ニューエイジ色とシンフォニック色とが絶妙にバランスしたキーボードから溢れ出る英国ならではの気品。マイク・オールドフィールドも好きで、ジェネシスも好きなら、このサウンドはきっとたまらないはず。ハンドメイドなタッチのサウンド・プロダクションも良い感じです。

    • TMRCD0616TIGERMOTH PRODUCTIONS

      ペーパーケース仕様、CD2枚+DVD1枚の3枚組、CD2にはシングル音源や別バージョンや別ミックス音源を収録、DVDにはタイトルトラックの5.1サラウンド音源とプロモ映像を収録しています、DVDはNTSC方式・リージョンフリー

  • ROBERT REED / RINGMASTER PART ONE

    MAGENTAをはじめ数々のバンド/ユニットを率いるマルチ・プレイヤー、過去作同様Mike Oldfieldへの憧憬に溢れたサウンドを繰り広げる21年作、Simon Phillips/Tom Newman参加!

    マジェンタのリーダー、ロバート・リードによる21年作。初期マイク・オールドフィールドへのオマージュを捧げたような「サンクチュアリ」シリーズ同様、オールドフィールド直系のサウンドを、今回は一人多重を軸に、サイモン・フィリップス、トム・ニューマンなど、オールドフィールドとの縁も深いゲスト・プレイヤー多数や女性ヴォーカル、合唱も交えて制作。パイプやリコーダーもフィーチャーした、オールドフィールド初期三部作のトラッド風味と「呪文」のミニマル色を合体させた、正にファンタジックで壮大な仕上がりの大傑作!

  • MAGENTA / WHITE WITCH – A SYMPHONIC TRILOGY

    名実ともに現英国をリードするシンフォ・グループ、本格的なオーケストレーションが全編を彩る22年作9thアルバム!

    現英国シーンをリードするシンフォ・グループと言える彼らの22年作9thアルバム。デビュー作『REVOLUTIONS』収録の「The White Witch」、04年作『SEVEN』収録の「Lust」のオーケストラル・アレンジ・バージョンに1曲の新曲を加え、全3曲50分の新たな作品として甦らせた一枚です。リーダーRobert Reedがアレンジ含め単独で作り上げた生オーケストラかと思うほどの本格的なオーケストレーションを主役に、女性ヴォーカルのChristina Booth、ギタリストChris Fry(クラシック・ギター)、『Ommadawn』への参加で知られるLes Pennings(語り)の3人+フルートとオーボエのソロ奏者をフィーチャー。とにかくオーケストレーションの完成度が素晴らしく、瑞々しいChristinaのヴォーカルと相性抜群なのは言うに及ばず、流麗なクラシック・ギターやオーボエ&フルートのリリカルな響きとも相まって、スケール大きくもどこまでも繊細な息をのむ音世界が生み出されています。従来のMAGENTAからすると異色作と言えますが、これは単純にクラシカル・シンフォとして極上の出来栄え。RENAISSANCEファンなら堪らないでしょう。必聴作!

  • MAGENTA / LIVE AT THE POINT 2007(DVD)

    イギリス国内での07年ライヴ映像

  • MAGENTA / MASTERS OF ILLUSION

    00年代以降の英国を代表するシンフォ・グループによる20年作8th、カルト/ホラー映画の名優6人を題材にしたコンセプト作

    現英国シーンをリードするシンフォ・グループ、20年作8thアルバム。ドラキュラ俳優として著名なベラ・ルゴシをはじめとする50〜60年代カルト/ホラー映画の名優6人をテーマにしたコンセプト作となります。とはいえテーマから想像されるようなダークでおどろどろしい雰囲気はなく、MAGENTAらしい英国的な気品に満ち満ちたドラマチックなシンフォニック・ロックが眼前に広がります。タイトで抜けのいい打音のドラムと伸びやかに躍動するベース、滑らかに疾走するシンセにクラシカルでデリケートなタッチのピアノが描く、ダイナミズムとしなやかさが調和したアンサンブル。そこに乗るのがChristina Boothの美声voとヴィンテージ・テイストを大事にした入魂のリード・ギターです。艶のある美声でスタイリッシュに歌うvoはもはや言わずもがなの素晴らしさ。ギターも見事で、もう一人のリード・ヴォーカルと呼びたくなるほどに歌心溢れる抒情フレーズを次々と紡ぎ、美声voと絡み合うサウンドが感動的に響きます。キャリア20年の貫禄とそうとは思えぬ音の瑞々しさがバランスした傑作!

  • ROBERT REED / SANCTUARY III

    18年リリース、MAGENTAのギタリスト/コンポーザーによる、『TUBULAR BELLS』へのオマージュ・シリーズ第3作目、初期マイクを愛するすべての方への贈り物と言える素晴らしき名品!

    現在の英プログレ・シーンを牽引するバンドMAGENTAのギタリスト/コンポーザーである彼が、敬愛するマイク・オールドフィールドの名作『TUBULAR BELLS』へのオマージュを込めて制作する一人多重録音アルバム・シリーズ「SANCTUARY」の第3作目となる2018年作。本人と見紛うほどにマイクの音色とプレイを研究し尽くした瑞々しくも緊張感を帯びたギター・サウンドを軸に、緻密かつクリアに織り上げられていく音のタペストリーは、前2作を楽しんだ方はもちろん、初期マイクのファンなら必ずや感動がこみ上げてくるはず。「OMMADAWN」で演奏したリコーダー奏者Les Pennings、名手Simon Phillips、そしてプロデュースには前作に引き続き『TUBULAR BELLS』を手がけたTom Newmanを起用しており、脇を固めるメンツからも本気度が伝わってきます。草原を吹き抜ける風のように凛とした美声を提供する女性ヴォーカリストAngharad Brinnも相変わらず素晴らしい。前2作同様、初期マイクを愛するすべての方への贈り物と言える名品に仕上がっています。

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文・市川哲史

文・深民淳

文・舩曳将仁

文・netherland dwarf

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