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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第1回 netherland dwarf / tortoise walks forever (Japan / 2014)

本日からプログレッシブ・ロックミュージシャンnetherland dwarfによる新しいコラムがスタートします。

本連載では「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことに重点を置き、フランスのプログレッシブ・ロックレーベルMusea Recordsからシンフォニック・ロックアルバムでデビューを果たしたnetherland dwarfが、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を、幅広くご紹介します。

「ミュージシャンの視点」とは言っても、各コラムは平易な文章で構成されていますので、楽器が弾けない、専門用語は分からないという場合でも、心配せずにご覧下さい。

第1回 netherland dwarf / tortoise walks forever (Japan / 2014)

主に1990年代以降から現在に至る数多くの「新世代」プログレッシブ・ロックグループに着目し、一般的なディスク・レビューとは少し異なるミュージシャン的な視点を織り交ぜながら彼らの音楽を考察していく、というオーダーでこのコラムを担当させていただくことになったものの、これはなかなか難しい論題と言えます。

なぜなら、高尚なコンセプトを掲げ、アカデミックな音楽理論と一流の演奏技術、難解な歌詞の世界観らによって成立してきたプログレッシブ・ロックという音楽が、聴き手にも相応の深い理解力や広い見識を要求するということはひとつの真実であり魅力だと感じる一方で、そういった専門知識を持つ者とそうでない者を「玄人と素人」に区別した上で「素人」に対する知性のひけらかしや「玄人」による理解度の競い合いに辿り着くことが、必ずしも全ての音楽に対する姿勢として健全とは限らないためです。

しかし、彼らの音楽的な下地を掘り起こし、作品に注意深く踏み込み、楽器を扱うミュージシャンには同時代を生きるプログレッシブ・ロックアーティストたちがどのように映っていて、彼らの作品から何を考え、何を聴いているのかということを書き残すことで、本コラムで取り上げるアーティストたちや、プログレッシブ・ロックという音楽ジャンルの周知に微力ながらも貢献出来るのであれば、それは無意味ではないと考えています。

netherland dwarfは2011年、プログレッシブ・ロックの老舗レーベルであるMusea Recordsからアルバム「moi moi」でデビューし、近年は玩具音楽(トイ・ミュージック)に傾倒していたためしばらくの間プログレッシブ・ロックから離れていましたが、これを機に、また素晴らしい作品との出会いがあればと思っています。

今回はコラム初回ということで、netherland dwarfの玩具音楽ミニ・アルバムである2014年作「tortoise walks forever」をプログレッシブ・ロック的な話題も挟みつつ取り上げることで、自己紹介にかえさせていただきます。

玩具音楽は、70年代の全盛期から衰退期を経て徐々にインディーズ産業として復興するようになってきたプログレッシブ・ロックよりもさらにマイナーな音楽ジャンルであり、「飛び道具」的に採用されるのが一般的な使われ方のため、それだけを専門に演奏するアーティストも少ないのが現状でしょう。

著名なアーティストがフランスに多いためかシュールな音楽性を持った作品が多いことも特徴であり、子供向けのチャイルド・ミュージックとしての愛らしいサウンドの奥に一筋縄ではいかないアヴァンギャルドな精神を持ち合わせているという二面性が、非常にアーティスティックな魅力を放っています。

Pascal ComeladeやKlimpereiといった代表的なアーティストはその前衛的な作風とミュージシャン人脈からプログレッシブ・ロックに分類されることもあるため、名前に聞き覚えのあるプログレッシブ・ロックファンは少なくないことでしょう。

玩具音楽を製作する場合その作り方や使用する楽器は人それぞれですが、一般的にはトイ・ピアノ、シロフォン、グロッケンシュピール、ミニ・ギター、アコーディオンやメロディオンといった楽器が多く使用されるほか、カシオトーンに代表されるチープなデジタル・キーボードをはじめとした電子玩具が使用されることもあります。

また、食器やテープルなど身の回りにある生活用品を叩いたり、フィールド・レコーディングされた環境音を使用したりと、あらゆるものを音源にしてしまうようなユニークなアプローチにもフィットすることから、非常に自由度の高い表現が可能な音楽ジャンルである一方で、その自由度の高さによって他の音楽ジャンルとの境界線が融解しがちであるため、独立したジャンルとして成立しにくいというジレンマも抱えています。

netherland dwarfの2014年作「tortoise walks forever」は、2012年作「may the piper」に続くミニ・アルバムとなっており、トラディショナルなフォーク・ミュージックにシタールをはじめとした民族楽器を混ぜ合わせたり、独特のサイケデリックな浮遊感を融合させたアーティストなどが「プログレッシブ・フォーク」と称され親しまれていることや、「ジャーマン・エレクトロ」に分類されるシンセサイザー・ミュージックのパイオニアたちの作品を参考に、プログレッシブな要素を持った玩具音楽ということを意識した作風となっています。

具体的には、シンフォニックなトイ・ポップ路線の前作に比べ、反復を用いて楽曲構成をストイックに絞ることで一般的なプログレッシブ・ロックとは真逆の「展開しない」ことに重点を置き、加えて、各楽曲はミニ・アルバムの体裁を保つために比較的コンパクトなサイズで収録してあるものの、このまま「終わらない」という選択肢も取ることが出来る、明確なフィナーレに辿り着かないように製作されています。

音源の大半がプログレッシブ・ロックの代名詞であるメロトロン音色で占められており変拍子を用いていることから、プログレッシブ・ロックのパーツをミニマル・ミュージックで再構成し、玩具音楽のフォーマットで表現した作品と言うことも出来るでしょう。

持てる知識と経験を注ぎ込んだ深いコンセプトを元に、高度な音楽理論と演奏技術で編み上げた大曲によって非日常を創造するプログレッシブ・ロックに対して、玩具音楽はあまり大袈裟なコンセプトや劇的な展開といったダイナミズムを作らず、あえてシンプルな楽曲構成とたどたどしい子供のようなサウンド・メイクで日常に溶け込む箱庭を工作していくのがベーシックなスタイルですが、そのさじ加減を誤ると、子供らしさを売りにしたあざとさが露見してしまうため非常に作り手のバランス感覚を問われ、いかにその点を回避するかに個性が表れる音楽と言えます。

本作はその回避手段としてミニマリズムによる酩酊感と変拍子による独特のグルーヴ、メロトロンのローファイでノスタルジックな響きを中心に置いた、あくまでも「日常のための音楽」というアンビエント・ミュージック的なテーマを持ちつつもその中に浮世離れした白昼夢の世界を内包させた「プログレッシブ・トイ・ポップ」作品となっています。

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