2019年10月15日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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キンモクセイの甘い香りがする季節になりました。このキンモクセイの香り、僕と同じ40代、またそれ以上の年齢の人たちには、トイレのニオイとしてイメージされることも多いはず。それにはちゃんと理由がある。その昔、水洗トイレが普及する以前の汲み取り式だった頃、臭いを緩和するためにトイレの側に強く甘い香りを発するキンモクセイを植えることが好まれたという。それもあって、トイレの芳香剤が発売された当初はキンモクセイの香りのものが多かったのだそうだ。それがキンモクセイ=トイレというイメージを強めることになってしまったのだとか。と、このように、直接は全く関係のない二つのものが、「香り」を通じて一つのイメージにとらえられてしまうことがある。
なんでこんな話を書いているかというと、実は僕には、「おっさん」をイメージさせるある香りがある。加齢臭とは違って、柑橘系の香り。ただ爽やかさよりも深みのある香り。イヤな香りではないけれど、エレベーターや電車の中で、その香りは必ず40~50代のおっさんから漂ってくるのだ。なので「謎の香り=おっさん」としてひとつになってしまった。これはいったい何の香りなのか?その謎は間もなく解けた。某育毛剤の香りだったのだ。
薄毛が気になってくると使い始める育毛剤。そうか、だからお年寄りではなく、40~50代のおっさんから、この香りがしていたのか、と納得。なぜ謎が解けたのかって?そう、僕がその育毛剤を使い始めたからだ。
これまでは薄くなってきたら丸坊主にするわ、などと周りに言っていたのだが、いざその崖っぷちに立ってしまうと、「うーん、少し抵抗してみるか」という気に。そこで初めて、いかにも育毛に成功しそうな商品名の育毛剤を購入。フロ上がりに頭へシュッとスプレーした瞬間、「あっ、この香り!おっさんの香りやんか!」と。改めて自分がおっさんであることを認識させられました。
ということで、イタリアのUNO『UNO』を紹介します。もう本当に見事にピカッと輝いているが、これは頭が光っているのではない。男のかぶっている帽子のようなものに鏡と思われるものが貼り付けられていて、それが光を反射してピカッと輝いているのだ。いっそのこと、これぐらい光る頭に剃ってしまおうかという気にさせてくれる……いや、そこまでは思わないけど、この奇妙な人物のインパクトはかなりのもの。デザインを手掛けたのは、かのヒプノシス。男はチェック柄のマントを着ているが、よく見ると白でない部分は向こうの景色が透けている。このアイディアは、CARAVAN『CUNNING STUNTS』でも使われていた。しかし、杖を両手に持って丘に立ち、頭を光らせて彼方を見ているこの男は、何を思っているのだろうか。イマジネーションを激しく刺激するデザインだ。
ところが、このヒプノシスが手掛けた『UNO』のジャケットは、フランスとドイツのみでリリースされた英語詞盤で、イタリア語で歌われた本国盤のデザインは全く異なっている。イタリア盤は細胞のような奇妙な塊がつながっていて、手前の塊からヒビが割れて、手が出てきているというイラスト作品になっている。これを手掛けたのはOSANNAのマッシモ・グアリィーノだ。日本で『UNO』が再発された時はイタリア盤が採用され、英語詞盤はいまだに再発されていない、はず。実はフランス盤とドイツ盤でもレタリングのデザインなどが違っていたりする。
さて、UNOについてだが、簡単に言うとOSANNAから派生したグループ。だが、その歴史は複雑なので、この機会にサラッとまとめておきたい。ちなみに、わかりやすいように名前の頭に丸数字を入れておきます。
そもそもはCITTA FRONTALEというグループにまでさかのぼる。メンバーは①リノ・ヴァイレッティ(vo)、②ダニーロ・ルスティッチ(g)、③マッシモ・グアリィーノ(ds)、④レロ・ブランディ(b)、⑤ジャンニ・レオーネ(kbd)という五人編成。彼らはナポリを中心に活動を始める。1970年代の末にジャンニ・レオーネが脱退してIL BALLETTO DI BRONZOの結成に向かう。残されたCITTA FRONTALEに加入したのが、THE SHOWMENの管楽器奏者⑥エリオ・ダンナだった。
1971年、彼らはCITTA FRONTALEからOSANNAへと名前を変え、デビュー・アルバム『L’UOMO』を発表する。起伏の激しい展開にヘヴィなギター、それと相反する美しいメロディなど、特異な音楽的世界観を主張。風変わりなコスチュームに身を包み、顔にペインティングを施して行われるシアトリカルなライヴ・パフォーマンスは、あのGENESISにも影響を与えたと言われている。
1972年には『PRELUDIO TEMA VARIAZIONI CANZONA』を発表。それに続く1973年発表の『PALEPOLI』は、叙情と激情渦巻く大作志向とメロトロンなどを導入した重厚なサウンドを持ったイタリアン・ロックの傑作として知られている。
ところが、4作目となる『LANDSCAPE OF LIFE』(1974年)制作中に、音楽的方向性を巡ってメンバー間に対立が生じてしまう。①リノ・ヴァイレッティと③マッシモ・グアリィーノの二人は、かつてのバンド名を用いたCITTA FRONTALEを結成して、『EL TOR』(1975年)を発表する。②ダニーロ・ルスティッチと④エリオ・ダンナの二人は、トニー・エスポジート(ds)を起用してUNOを結成。つまり、①~⑥のOSANNAから分裂して、①③のCITTA FRONTALEと、②④のUNOに分かれたということ。
さて、そのUNOだが、いざレコーディングするという直前で、トニー・エスポジートがエンゾ・ヴァッリチェッリに交代。UNOはイギリスのロンドンに渡り、トライデント・スタジオで『UNO』をレコーディングする。
こうしてリリースされたのが『UNO』だ。イタリア盤のジャケットを手掛けたのは③マッシモ・グアリィーノ、インナーの写真を手掛けたのは①リノ・ヴァイレッティとCITTA FRONTALE組が協力している。音楽性が異なって分裂したとはいえ、人間関係は良好だったそうだ。
UNOはワールドワイドな成功を目指していたのだろう、同作の歌詞を英語に置き換えた英語詞盤もレコーディング。これがヒプノシスによるジャケット・デザインの『UNO』なのだが、フランスとドイツのみでの発売となった。
『UNO』発表後、ダニーロ・ルスティッチの弟で、CERVELLOのメンバーだった⑦コラード・ルスティッチが加入するが、活動は長続きしなかった。そこで新たに、②ダニーロ・ルスティッチ、⑥エリオ・ダンナ、⑦コラード・ルスティッチのUNO組を中心にNOVAを結成。1975年に『BLINK』でデビューする。②ダニーロ・ルスティッチはOSANNAの再結成に向かってNOVAから離脱。NOVAは⑥エリオ・ダンナ、⑦コラード・ルスティッチとレナート・ロセット(kbd)のトリオ編成となる。1976年には、BRAND Xのパーシー・ジョーンズやフィル・コリンズ、ナラダ・マイケル・ウォルデンらが参加した2作目『VIMANA』を発表。続けて、1977年『WINGS OF LOVE』、1978年『SUN CITY』と発表するが、NOVAも解散してしまう。⑦コラード・ルスティッチはナラダ・マイケル・ウォルデンに誘われてアメリカへ渡り、セッション活動を続けていく。⑥エリオ・ダンナもアメリカへ渡ったが、音楽業界を離れてレストランの経営で成功したとか。
1999年には①リノ・ヴァイレッティと②ダニーロ・ルスティッチを中心にOSANNAが再結成される。後にダニーロは脱退しているが、OSANNAは元VAN DER GRAAF GENERATORのデヴィッド・ジャクソンなどを加えて現在も活動している。できるだけわかりやすく説明したつもりだけど、やっぱりややこしいな。
UNOの唯一作となってしまった『UNO』だが、海外での成功を目指していたこともあってか、OSANNAより親しみやすい作風になっている。演奏もたおやかで、耳にスッと入り込んでくる。イタリアン・ロックに対して敷居の高さ、なんとなく難しそうという先入観をお持ちの人にこそおススメです。ということで、ここでは『UNO』の冒頭に収録された「Right Place」を聴いていただきましょう。
それでは、また世界のジャケ写からお会いしましょう。
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OSANNAのDanilo RusticiとElio D’AnnaがOSANNA分裂期に結成したイタリアン・プログレッシブ・ロックグループの74年作。残ったOSANNAメンバーMassimo GuarinoとLino VairettiはCITTA FRONTALEを結成し、やはり牧歌的な名盤を生み出していますが、こちらはイギリス録音によりブリティッシュナイズされた作風を取り、PINK FLOYDの作詞が有名なN.J.Sedgwick、GONGなどの作品が有名なDennis Mackayのプロデュース、そしてPINK FLOYDの名作「Dark Side Of The Moon」に参加したLiza Strikeがボーカル参加するなど、力のこもった作品となっています。OSANNAの呪術性は控え、ブリティッシュ・ハード・ロックを基調にしたブルージーなサウンドであり、バンドはこの後ジャズ・ロック色を押し出し、NOVAへと発展していきます。
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