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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第十回 NOVALIS『BRANDUNG』(ドイツ)

あけましておめでとうございます。皆さまは年末年始をどのように過ごされましたでしょうか?

僕はというと、気がついたら2018年になっていた、という感じだった。ちょっと振り返ってみると、2017年12月は、『レコードコレクターズ』のKING CRIMSON原稿に追われていた。『IN THE WAKE OF POSEIDON』と『EARTHBOUND』の全曲解説という骨のある依頼。年末に向かって昼間の仕事も忙しくなり、ヘトヘトで帰宅。子どもたちを寝かせてから、深夜に『EARTHBOUND』期ラインナップのライヴ音源をひたすら聴く。それを半月ほど続けていると、もう少しでダークサイドへ落ちそうだった。そういえば『スターウォーズ 最後のジェダイ』も見に行ってないなぁ。

さらに紙ジャケ再発されるNWOBHMバンド、SAMSONのライナー締め切りが12月31日という設定だったこともあって、なだれ込むように2018年を迎えたというわけです。そんな時、ふと頭に浮かんだのが、ドイツの叙情派プログレを代表するNOVALIS『BRANDUNG』のジャケット。で、新年一発目の「世界のジャケ写から」はこれにしようと。

NOVALISのアルバムは、ほぼすべての作品が日本でもリアルタイムで発売されていた。日本のプログレ・ファンにもおなじみのバンドで、これまでに何度か再発CD化もされているが、今はそんなにもメジャーという感じがしない。やっぱりまとまった形での再発とかがされないと再評価って難しいのかな?と思っていたら去年だったかな、過去作すべてのCDとボーナスCD&DVDをつめこんだボックス・セットが限定発売された。自分へのお年玉として買うか?バラで紙ジャケ化されるのを待つか?悩むわ~。

NOVALISがドイツのハンブルグで結成されたのは71年秋のこと。シンガー兼ギターのJurgen Wenzel、キーボード奏者のLutz Rahn、ベースのHeino Schunzel、ドラムのHartwig Biereichelの四人編成でスタートしている。NOVALISというのは、ゲオルク・フィリップ・フリードリヒ・フライヘア・フォン・ハルデンベルグという寿限無みたいな長い名前の、ドイツ・ロマン主義の詩人、作家のペンネーム。それをバンド名にするぐらいだから、当初からロマンチシズム溢れる音楽を目指していたことがわかる。

IKARUSやRANDY PIEのほか、プロデューサーとしても活躍するJochen PetersonがNOVALISのライヴを目にし、ブレイン・レーベルの傘下に設立されたメトロノームとの契約をとりつけた。73年にデビュー・アルバム『BANISHED BRIDGE』を発表。白地に文字が配されただけのシンプルなジャケットに面白みはないが、すでにNOVALISらしいソフトかつメロディアスな音楽性は出来上がっている。日本では77年に『夢幻のかけ橋』という邦題で発売されている。NOVALISは邦題が素敵なんです、どれも。

Jurgen Wenzelが脱退。新たにDetlef Job 、TOMORROW’S GIFTのCarlo Kargesという二人のギタリストが加入し、75年に『NOVALIS』を発表。見開きジャケットも美しい同作は、日本でも『銀河飛行』の邦題で発売され、日本の叙情メロディ愛好家からも注目される。

Carlo Kargesが脱退するが、NOVALISはメンバーを補充せず76年に『SOMMERABEND』を発表。タイトル組曲をはじめとする楽曲はもちろん、アメリカのイラストレーター、マックスフィールド・パリッシュが描いたジャケットも美麗で、彼らの代表作となった。日本では『過ぎ去りし夏の幻影』という、これまた雰囲気抜群の邦題で発売されている。

専任シンガーのFred Muhlbockを加えて77年に発表したのが『BRANDUNG』だが、ひとまず彼らのヒストリーを進めていこう。

NOVALISはドイツ本国でも人気バンドとなり、77年に初ライヴ盤『KONZERTE』を発表。「Sommerabend」のライヴ・テイクも収録されていて、彼らのライヴ・アクトとしての実力を伝える内容に仕上がっている。

まさに黄金期を迎えていた78年に『VIELLEICHT BIST DU EIN CLOWN?』を発表。邦題は『夢譚』です。音楽的には文句なしの叙情的名作といえるが、ヒプノシスのジャケットがユーモラスだけど音楽とマッチしていないように感じる。たまにやらかすヒプノシス。

NOVALISは、『BRANDUNG』からプロデュースを担当しているAchm Reichelが設立したアーホルンに移籍し、79年に『FLOSSENENGEL』を発表(邦題『凍てついた天使』)。クジラが描かれたジャケットで、捕鯨問題や動物保護をテーマにしたアルバムとなっていた。ラストにクジラの鳴き声を模した音が入っている。

80年の『AUGENBLICKE』では、アレンジやシンセの音が80年だなと思わせる部分もあるが、メロディや曲展開など、ますますCAMELに近づいていった良作。モノクロの猫ジャケもいい感じ。邦題は『時の交差』です。

長らくメンバー・チェンジがなかったが、ベースのHeino Schunzelが脱退。Heinz Frohlingがサポートで参加して、82年に『NEUMOND』、83年に『STERNTAUCHER』をヴァーティゴ・レーベルから発表。かなりシンセの音が出てきてはいるが、柔らかかつ泣かせるメロディ・センスは健在だ。

84年『BUMERANG』、85年『NACH UNS DIE FLUT』と緩やかにコマーシャルな方向性へシフトしていったところで活動を停止。それ以降は再結成もしていないはず。潔いけど惜しいなぁ。ちなみにDetlef Jobは日本人女性と結婚して日本に移り住んでいる。日本のプログレ・バンドNEGASPHEREのライヴに参加したことがあり、その時の音源をNEGASPHERE『1985-1986』で聴くことができる。

さてNOVALIS『BRANDUNG』の話。けっこうハードな年末だったから、癒されたいという気持ちが同作のことを思い出させたのかと思ったが、ヒントはKING CRIMSON『IN THE WAKE OF POSEIDON』にあった。そう、『BRANDUNG』のジャケットの右上に描かれているのは、誰あろう海の神ネプチューン(ポセイドン)なのだ。

『BRANDUNG』のジャケットに使われたのは、ウォルター・クレインというイギリスの画家によって描かれた「ネプチューンの馬」という作品。ウォルター・クレインは、子供向け本の挿絵などを数多く手がけたことでも有名で、17年には日本でも彼の展覧会が開催されていた。この作品は挿絵のかわいらしいタッチとは異なるもので、ネプチューンが白波を白馬に変えて疾駆する様子を描き出している。何かドラマチックな物語が起こりそうな予感を伝える力強い作品だ。この絵を選んだのは、本作のプロデュースを担当したAchim Reichelだったとか。アルバム・タイトルの『BRANDUNG』がドイツ語で「波」のことを表すので、それに関連してウォルター・クレインの作品をチョイスしたんだろう。本作のドラマチックな音楽とも絶妙にマッチしていて、前作『SOMMERABEND』と並び、内容的にもジャケット的にも傑作となっている。

前作『SOMMERABEND』制作中には音楽以外に職を持っていたメンバーもいて、いうなれば彼らはセミ・プロ・バンドだった。『SOMMERABEND』がヒットしたことを受け、ようやくプロのミュージシャンとなり、77年夏に本作の制作に入っている。「生活かかってるねん、売れなあかん!」という気合の入り方も相当だったはずだ。ゆえに、前作以上にポップなノリ、コマーシャル性の高いメロディが増えている。彼ら初のシングルとなった1曲目の「Irgendwo, Irgendwamn」、緩急のきいた構成の「Astralis」など、かなり親しみやすいものになっている。

かといって、本来持っていたロマンチシズムは少しも薄れていない。それを証明するのが、アナログB面に収録された組曲“Sonnewende”である。大海原の光景を描いたかのようなインスト「Brandung」、一転してハードな展開もみせる「Feuer Bricht In die Zeit」、メロウに聴かせる
「Sonnenfinsternis」、新加入のシンガーFred Muhlbockの魂のこもった絶唱が聴ける「Dammerung」からなる4部構成で、初期の彼らの傑作曲といっても過言ではないだろう。実はこの組曲のライヴ映像があるので、こちらを見ていただきたい。演奏はスタジオ盤をほぼ忠実に再現。ラストにおけるFred Muhlbockの絶唱パートも、振り絞るようにして歌い切っている。

それでは、また世界のジャケ写からお会いしましょう。

Sonnewende(live)

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    ジャーマン・シンフォの名グループ、76年作

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