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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第十一回 ANALOGY『ANALOGY』(ドイツ)

昨年末、某コンビニエンスストアが成人向け雑誌コーナーを店舗に設置しないと決めたことがニュースになっていた。子を持つ親としては、ありがたい話である。つい先日も、小学校低学年の息子と一緒にコンビニへジュースを買いに行ったら、誤って成人向け雑誌コーナーの前を通ってしまった。しかもよりによってエロ全開の表紙がこっち向けになって置かれていたので、さすがの息子も気がついてしまった。大阪の子は何でも口にするから……。

「なあなあ、お父ちゃん、何なんあの本?!」
「あれは、まあ、その……」
「なんで、あんな本売ってるん?」
「なんでって、あれは、その、女の人の裸が見たいっていう男の人向けにあるんやんか……」
「ええっ? お父ちゃんは、女の人の裸とか見たいん?」
「見たいっていうか、まあ男やから、嫌いというわけではないけども……」
「じゃあ買ったことあるん?」
「買ったことなんかないよ!……と言えばウソになるけど。平均的な男性に比べると、買っていないと言っていいレベルの……まあ、ジュース買おうや!」

と、しどろもどろに。店舗に置くな!とまではいわないけれど、子どもたちの目に触れないような、そんな工夫はされてもいいように思う。でも、コンビニを利用している年齢層の広さからすれば、置かないという選択の方がいいのかな?

当然のことながら、小さい子がいるわが家には、そういった成人向けの本などは存在しない。いや、まあそう言い切るのもなんだけど、子どもが見えるところにはない。しかし、よくよく考えてみると、ハード・ロックやヘヴィ・メタル系のアルバム・ジャケットには、女性の裸やら水着姿やらが描かれているものも多く、それらは子供たちの手の届くところに置いてある。ジョンとヨーコのもあかんかな?あれはアート?うーん難しい問題だ。

それで思い出したのが、ANALOGY『ANALOGY』というアルバム。プログレど真ん中というよりは、サイケからプログレへの移行期といえる音楽性が魅力的な同作は、ヌード・ジャケットということでも有名な一枚。オリジナル・アナログ盤はレア盤として知られているが、今では再発CD化されている。今回は、このANALOGYを紹介したい。

ANALOGYの中心メンバーはドイツ出身のMartin Thurnで、彼は1968年にドイツのボンでNO.SIXというバンドを結成する。ところがイタリア北部に引っ越ししてしまう。そこでインターナショナル・スクールに通った彼は、彼と同じくドイツ出身のクラスメイトのWolfgang Schoene(vo,g)、後にPELL MELLに参加するThomas Schmidt(b)、Martin Thurnの彼女だったJutta Nienhaus(vo)とSONS OF GIOVEを結成する。約1年間活動するが、1969年には解散してしまう。

MartinとJuttaはデュオとして活動を続けていたが、1970年にJuttaの弟のHermann Jurgen Nienhaus(ds)、イタリア人のMauro Rattaggi(b)というメンバーとともにJOICEを結成する。やがてSONS OF GIOVEのバンドメイトだったWolfgang Schoene、キーボード奏者のNicola Pankoffが加わった。JOICEは、1971年にデビュー・シングル「Sold Out / God’s Own Land」を発表するが、そのジャケットでバンド名をYOICEと誤記されてしまう。

Mauro Rattaggiが脱退。ベースはWolfgang Schoeneが担当することになり、1972年にデビュー・アルバムのレコーディングを開始する。この頃に収録曲名からとって、バンド名をANALOGYに変更している。

そのデビュー作『ANALOGY』のジャケットが、このボディ・ペインティングされたメンバーが写るヌード・ジャケット。この写真を『ANALOGY』で使用することは、同作のプロデューサーであるAldo Paganiらの推薦で決められたらしい。実はこの写真、YOICEのシングルのジャケットと同じフォト・セッションで撮影されたものだった。YOICEのジャケットではメンバーが服を着ているが、よく見ると同じボディ・ペインティングが施されている。

問題はANALOGYでレコーディングする前に脱退したMauro Rattaggiが写真に写りこんでいたこと。そこで考え出された策が、バンド・ロゴの書かれた青い帯をグルっとかけたようにデザインして彼を隠すことだった。それでもヌード・ジャケットを店頭に並べるのに抵抗があったことから、全体をポスターで隠して発売されたようだ。

もはやサイケデリックの時代は過ぎていたが、青空の下にヌード&ボディ・ペインティングで写るメンバー・ショットは、かなり鮮烈な印象を与えてくれる。どうしても目を惹くのはJuttaだ。後にボディ・ペインティング前、しかもJuttaがフロントで立つ写真も明らかになっているが、当時20代前半にあった彼女のヌードはあまりにも眩しい。実際にアルバムを聴いてみると、ドスのきいたパワフルな声でビックリするけど。

さて、無事にデビュー・アルバムを発表したANALOGYだったが、今度はキーボード奏者のNicola Pankoffが脱退し、フルート奏者のRocco Abateが加わる。この頃には「The Suite」という大作を完成させ、ライヴでも披露されていたというが、1973年にANALOGYとしての活動は停止してしまう。

Jutta NienhausはFranco Battiatoが1973年に発表した『SULLE CORDE DI ARIES』に参加した後、Martin Thurnとのフォーク・デュオで活動する。1974年にはJuttaとMartin、Hermann Jurgen Nienhaus、Mauro Rattaggi、JUMBOのキーボード奏者Sergio Conteとバンド活動を目指すが、これもうまくいかなかった。

活動の場をイギリスに移したJuttaとMartinは、EARTHBOUNDなるバンドを結成し、1979年にシングル「The Robot」と12シンチ・シングル「Liberated Lady」(シングル「The Robot」AB面曲+1曲)を発表する。ANALOGYに比べるとスッキリとしたサウンドで、いずれもノリのいいハード・ロック・ナンバーだったが、翌年には解散してしまう。MartinはANALOGY時代に作っていた「The Suite」をJuttaはじめとするEARTHBOUNDのメンバーと録音するがお蔵入りに。Martinはドイツに戻って活動を続けることになる。

1990年、イタリアのVinyl Magicが『ANALOGY』の世界初となる再発CD化を実現する。1993年には幻の音源『The Suite』が発掘リリースされ、1996年には過去の未発表曲などを含む『25 YEARS LATER』が発表された。

2003年にはJuttaの50歳の誕生日を記念してANALOGYの再結成ライヴが行なわれるも、コンスタントな復活には至らなかった。2009年にYOICE~ANALOGY~EARTHBOUNDのオフィシャル音源と未発表音源を詰め込んだ『THE COMPLETE WORKS』が発表されたことも契機となって、2010年2月にJutta、Martin、Mauro Rattaggi、Rocco AbateらによるANALOGYの復活ライヴが行われた。また、2012年4月14日に行われたライヴが『KONZERT』として発売されるなど、90年の『ANALOGY』再発CD化以降、関連アイテムのリリースや単発ながらライヴなどで話題を提供し続けている。2012年前後のライヴ映像がYou Tubeにアップされていて、すっかり貫禄のある体形になったJuttaを見ることができる。70年代の映像とか出てこないかなぁ?

とにかくヌード・ジャケットの話題が先行する『ANALOGY』だが、もちろん音楽に魅力があったからこそ、こうして現在まで聴かれ続けているわけだ。彼らにもその自信があったから、『ANALOGY』のジャケットにヌード写真という選択をしたに違いない。Juttaの堂々とした立ち姿には、そんな自信のほどが表れているように思う。エロとはまた異なるポジティヴな意志を、『ANALOGY』から感じられないだろうか。なんてことをいっても、子どもにはわからないと思うので、ジャケットは表向きにして置かないようにしているけど……。

それでは、また世界のジャケ写からお会いしましょう。

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