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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第ニ回 ELEND 『WEEPING NIGHT』 (フランス)

ELENDのデビュー作『LECONS DE TENEBRES』(94年)は衝撃的だった。霧煙るようなシンセサイザー、エレクトリック・ヴァイオリンがゴシックかつ冷ややかな音を鳴らす中、女性ソプラノとぶつかるようにして突如叫び出すデス・ヴォイス。通常のバンド編成とも違うし、ロックとも言い難いけど、聴くものを底知れない場所へズリズリと引きずり込んでいくような不思議な魅力を持っていた。

ウィキペディア英語版では、ELENDのことをダーク・アンビエント、ネオクラシカルとカテゴライズしている。どちらにもなるほどと思える部分があるけど、でもそう言い切るのはどうかな?というところもある。既存のジャンルに押し込められない独自性が強くて、それこそ真のプログレッシヴ・ロックではないか?と思ったりも。

ELENDが結成されたのは93年のフランス。ともにヴァイオリン、キーボードを操るフランス人のアレクサンドル・イスカンダルとオーストリア人のレナウト・チルナーが中心となったユニットとしてスタートする。女性ソプラノ歌手のイヴ・ガブリエル・シスキンドを加えた三人で、94年にデビュー作『LECONS DE TENEBRES』を発表。ミルトンの『失楽園』をテーマにした三部作(“OFFICIUM TENEBRARUM”)の一作目として発表された。そんなコンセプチュアルな姿勢もプログレ・ファンから評価されたし、(クラシック・ロック+ゴシック・ロック)×デス・ヴォイス=エレンドという、よくわからないけど「異なもの」感は絶大だった。

彼らはデビュー当初からジャケットのヴィジュアル・アートに対するセンスも良かった。デビュー作では、ヴィクトル・ユゴーの「Le Burg A La Croix」(十字架のある城)を水平方向に反転したものを使用している。

96年には『失楽園』3部作の2作目に当たる『LES TENEBRES DU DEHORS』を発表。ジャケットには、レオナルド・ダ・ヴィンチ「岩窟の聖母」に描かれた天使が配されていた。ブックレットには、『失楽園』の中でもっとも有名なギュスターヴ・ドレの挿絵を使用していたりと、同作のジャケットにも彼らの美意識が強く表れていた。

音楽的にはシンセの音色が前作よりもふくよかに。ソプラノにはイヴ・ガブリエル・シスキンドとナタリー・バーバリーが参加。二人のソプラノ歌手とデス・ヴォイス、ゴシックかつクラシカルなサウンドとのコントラストが、より強烈に打ち出された濃密な作品に仕上がっていた。

今回紹介したいのは、2作目に続いて97年に発表された『WEEPING NIGHTS』である。実はこれ、『失楽園』3部作のスピンオフといえる企画もの。イヴ・ガブリエル・シスキンドが抜け、ナタリー・バーバリーとのトリオ編成で録音された本作は、9曲中6曲が前作『LES TENEBRES DU DEHORS』収録曲のリメイクとなっている。2曲はヘンリー・パーセルのクラシック曲のアレンジ、新曲はタイトル曲1曲のみという内容だった。何が『WEEPING NIGHT』の目玉かと言うと、「あれっ、デス・ヴォイスがない!」ということで、ソプラノ一本で表現されている。

Weeping Night

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そうなると、これはもうロックの範疇ではない、それこそネオクラシックとかモダン・クラシカルというジャンルの作品ということになる。幽玄的な美だけで貫かれた荘厳なる音世界。刺激はないけれど、スーパーで買ってきた三食団子を食べながら、原稿を書いているこの和室も、『WEEPING NIGHTS』を流せば、ひとたびバロック建築の聖堂へと姿を変えてしまう。

そんな『WEEPING NIGHTS』のジャケットに使用されているのが、「A Man Seated Reading At A Table In A Lofty Room」という絵画作品。簡単に訳せば、「高い部屋のテーブルに座って読書する男」となるだろうか。これは、フォロワー・オブ・レンブラントの作品とクレジットされている。えっ、それってレンブラントとはどう違うの?

レンブラントといえば、美術の教科書にも載っていた「夜警」が有名だろう。光と影のコントラストを巧みに使った画面構成が特徴的な美術史に残る名画家である。『WEEPING NIGHTS』に使われたこの絵画作品も、差し込んでくる光、室内の壁に映し出された窓の模様の影、光を背から受けて暗がりの中で読書をしている男と、光と影のコントラストが印象的だ。

しかし、この絵画作品、レンブラントのものではない。フォロワー・オブ・レンブラント、つまり、レンブラントと同時代に活躍したフォロワーの作品とみなされているのだ。1968年にオランダでレンブラント・リサーチ・プロジェクトが発足し、レンブラント作品とされてきたもの、また弟子の作品とされてきたものを調査し、多くの作品の真贋が判断されている。レンブラントの傑作とされていたものが実は真作ではなかったりと、なかなかに美術界を揺るがす出来事であった。

そこで『WEEPING NIGHTS』のジャケットに使われた「A Man Seated Reading At A Table In A Lofty Room」だが、これもレンブラントの作品ではないだろうということになっている。でも、『WEEPING NIGHTS』の静謐とした音楽世界、ELENDの光と闇の音楽性を表すのにピッタリの絵画作品であり、本作のジャケットにこれを選んだELENDのセンスは見事だと思う。

ELENDは『WEEPING NIGHTS』で、「ただ美しいというところで止めとこうと思ったらできるんやで」ということを証明しておいて、98年に『失楽園』三部作の最後を飾る『THE UMBERSUN』を発表。混声合唱団を迎えて、より凶暴なまでの静と動、光と闇のコントラストが織りなす世界を音楽化し、ダーク・シンフォの金字塔作品を作り上げた。ジャケットもかなり怪しげなものになってしまっているが、個人的には初期作の美術の名作シリーズの方が良かったかな?

それ以降のELENDはというと、しばらく沈黙した後の2003年に『WINDS DEVOURING MEN』を発表。これは、“WINDS CYCLE”という3部作の1作目として発表された。音楽的にはチェンバー・ロック寄りのものになっていたが、04年に『SUNWAR THE DEAD』、07年に『A WORLD THEIR SCREAMS』と、ゴシック、ダーク・シンフォ系の良作を発表している。“WINDS CYCLE”三部作以降の作品発表は途絶えているが、ユニットが解散したわけではないようだ。

それでは、また世界のジャケ写からお会いしましょう。


舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第一回 IN SPE 『IN SPE』 (エストニア)

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コラム「そしてロックで泣け!」が好評だった音楽ライター舩曳将仁氏による、新連載コラム「世界のジャケ写から」がスタート!世界のプログレ作品より魅力的なジャケットを取り上げ、アーティストと作品、楽曲の魅力に迫ってまいります。



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