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「世界のジャケ写から」 第三回 ISLAND『PICTURES』 (スイス)





僕がまだピュアな少年だった80年代中ごろ、いや、その少し前から世は空前のSFブームだった。映画でいえば『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』、アニメでは『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』『機動戦士ガンダム』などが火付け役になり、小説や音楽などにもSFものが溢れていた。僕の四つ上の兄がSFファンで、家にはSF系の雑誌やヴィジュアル・ブックがたくさんあった。僕もアナザー・ワールドの物語にドキドキしながら、食い入るように読んだ。

その中でもグッときたのが、映画『エイリアン』だった。ストーリーをものすごく簡単に説明すると、宇宙船で遭遇したエイリアンと宇宙船の乗組員が戦うという話。僕が惹かれたのは、登場するエイリアンの造形。グロテスクなんだけどカッコいい、グロ・カッコいい系なのだ。

最初は繭の中に潜んでいて、人間が近づくと顔に張りつき、エイリアンの胎児を人間に寄生させるフェイスハガー。人間の体内で成長して胸を破って出てくるチェストバスター、そして成体のビッグチャップへと成長する。ネットで画像を検索してもらいたいが、どのフォルムにも独特のグロ・カッコいい魅力がある。

このエイリアンのデザインを手がけたのが、スイスのアーティストH・R・ギーガー。響きがいいよね、「ギーガー!」って。小学生だった僕の頭にも彼の名前がビシッとインプットされた。

そんなある日、某百貨店でジグソーパズルの販売会があり、両親が「なんかひとつ買ってやる」というので選んだのが、ギーガー『Li Ⅱ』のジグソーパズル。家に帰ってすぐに組み立て。水ノリを塗って固め、額に入れて部屋に飾る。「俺の部屋をギーガー仕様にしてやったぜ!」と意気揚々。だけど母は渋い顔で、「もっと明るい絵を飾りなさい!」と。まあ小学校高学年で、部屋にギーガーだもんな。親からしたら心配だったんだろう。

そのうち中学生になって、すると性に関する知識もついてきて、それで改めて『LiⅡ』を見た時に驚愕した。『LiⅡ』の画面には、男性と女性の性器、その結合している様が描かれていたのだ。これって多感な中学生にはたまらんですよ。そりゃあ親は「その絵外せ」と言うわけだ!

そんなことがあったので、しばらくH・R・ギーガーから離れていたが、大人になるとすっかりピュアではなくなってしまい、そのエロティックさにも素直に接することが出来るようになった。改めて画集を買ったりもしたが、まだ小さい息子たちには見せられません。

ようやく本題。まさに異能といえるスイス人アーティストのH・R・ギーガー、彼はアルバム・ジャケットも手掛けている、というのはカケレコ・ユーザーならご存じだろう。EL&P『BRAIN SALAD SURGERY』が有名だけど、他にもMAGMA『ATTAHK』、デボラ・ハリー『KOO KOO』、X JAPANのHIDEのソロ作『HIDE YOUR FACE』、DANZIGやCELTIC FROSTといったへヴィ・メタル系アーティストのものなど、その数は多い。

ギーガーは、2014年5月12日に他界。イギリスの音楽サイト「FACT Magazine」が、追悼の意を込めてギーガーの手掛けたアルバム・ジャケット20選をアップしている。現在も閲覧できるので紹介しておこう。
http://www.factmag.com/2014/05/13/the-20-best-h-r-giger-record-sleeves/

さて、ここではH・R・ギーガーが残したアルバム・ジャケットの中から、ギーガーと同郷であるスイスのバンド、ISLAND『PICTURES』をとりあげたい。まずはISLANDのメンバーGuge Jurg Meierのインタビュー(『ユーロ・ロック・プレス』Vol.34に掲載)などを参考に、彼らの歴史を紹介しよう。

ISLANDの出発点はSHIVERということになる。SHIVERは69年に『WALPURGIS』を発表したアート・ロック風バンドで、同作のジャケットもH・R・ギーガーが担当している。こちらのジャケットはかなりグロテスク度が高い。

SHIVERは『WALPURGIS』発表後に解散し、ギターのDany RuhleとキーボードのJelly Pastoriniが中心となってDEAFを結成。ベースにBert Buchmann、ドラムにGuge Jurg Meier、フルートにJack Conradというメンバーだった。DEAFが70年から72年に録音した音源が、94年に500枚限定で『ALPHA』として発売されている。それを聴くと、SHIVERの流れにあるサイケデリック・ロックをやっていたことがわかる。

DEAFからBert BuchmannとJelly Pastoriniが抜け、72年にはカエルのジャケットで有名なTOAD『TOAD』に参加していたシンガーのBenjamin JagerとベースのWerner Frohlichが加入。バンドはDEAFからISLANDと改名した。

73年にはサックス奏者のBryn Collinsonを加えた編成で、スイスのロック・バンドによるオムニバス・アルバム『HEAVENLY AND HEAVY』に「Silent Majority」を提供している。二人の管楽器奏者Jack ConradとBryn Collinsonが脱退。Werner FrohlichがTOADに復帰し、後任にEgon Egglerが加入。新たにキーボード奏者のPeter Schererが加わった。この新しい編成でのホーム・レコーディング音源が、05年に発表されたISLAND『PYRRHO』に収録されている。同CDのジャケットもギーガーのデザインだけど、刺激には乏しい。

この編成も長くは続かなかったようで、Egon Egglerが脱退。ちなみにEgon Egglerは、後にISLANDのJack ConradらとSTEPSを結成し、83年に『TIGHT-ROPE DANCER』を発表している。Egon Egglerの後任として、ISLANDにAlfio Saccoが加入。しかし、初期メンバーだったDany Ruhleが脱退してしまう。ISLANDは新たに管楽器奏者のRene Fischを加えたギター・レス編成で、曲作りとライヴ活動を続けていく。

ちょっとややこしいので、ここで整理しておくと、76年の春の時点で、メンバーはBenjamin Jager(vo,per)、Guge Jurg Meier(ds)、Peter Scherer(key)、Alfio Sacco(b)、Rene Fisch(sax,flute,etc.)の編成になっていた。同編成で76年4月12日に行われたライヴ音源が、先に紹介した『PYRRHO』に収録されている。

ようやくISLANDにアルバム制作のチャンスが訪れる。録音はイタリアのリコルディ・スタジオ、プロデュースにはクラウディオ・ファビが起用された。PFMとツアーに出る計画があったことから実現したものだという。レコーディングは77年7月24日から8月3日までの約10日間で行われたが、Alfio Saccoが脱退していて、レコーディングはギター&ベース・レスという変則的な編成で行われた。音楽的にもPeter Schererが作曲の中心になっていたことから、初期のアート・ロック色は薄れ、どちらかというと暗黒系チェンバー・ロックといえる音楽性へと接近している。

Introduction – Zero

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さて、ここでアルバム・ジャケットをどうするかという話になり、『PICTURES』のスペシャル・サンクス欄に名前があるTino Zerbiniのガール・フレンドだったミシェルを通じて、H・R・ギーガーとコンタクトを取る。ギーガーは快くジャケットの絵の提供に応じたということだが、最初からあった絵に、バンド名の書かれた道路標識のようなものを足して完成させたのだという。

本作のジャケットと映画『エイリアン』との関係性はないそうだけど、ここに描かれている異形の生物とエイリアンのビッグチャップはよく似ている。その口を開いて、今にも襲い掛かってきそうな感じがする。SHIVERのアルバムではジャケットと音楽性がミスマッチな感じもあるが、ISLANDのKING CRIMSON的なダークさとギーガーの世界観は不思議とマッチしているように思える。

ISLANDは本作発表の翌年に活動を停止。Peter Schererは80年代中ごろにニューヨークへ渡り、アート・リンゼイとAMBITIOUS LOVERSを結成。メジャー・シーンで活動を続けていく。

それでは、また世界のジャケ写からお会いしましょう。



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  • ISLAND / PYRRHO

    77年唯一作『PICTURES』で知られるスイスのプログレ・グループ、唯一作リリース前の発掘音源!

    77年の唯一作『PICTURES』で知られるスイスのプログレ・グループ。唯一作リリース前の75年にホームレコーディングされた音源(約39分)をDISC 1に、76年地元スイスでのライヴ音源(約45分)をDISC 2に収録した発掘音源集。07年に配信用音源として公開された音源のCD化。まずは、スタジオ・デモから。キース・エマーソンの外連味とトニー・バンクスのファンタジーとをブレンドしたような魅力的なキーボードと、イエスを彷彿とさせるゴリゴリと疾走感いっぱいのベースを中心とするめくるめくダイナミックでアグレッシヴなアンサンブルが印象的。唯一作でのアヴァンギャルドなテイストはなく、正統派のファンタスティック・プログレ。これを聴いてグッとこない70年代プログレ・ファンはいないでしょう!音質も素晴らしい。続いてライヴ音源。サックス奏者が加わり、ジャズ・ロック/アヴァン・ロックなテイストが強まり、伊ロックに通ずる手数多くダイナミックでテクニカルな演奏が堪能できます。この後、P.F.M.やACQUA FRAGILEのプロデューサーの元、作品を残すのも納得の実力。素晴らしい!

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