2018年4月13日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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大阪の万博記念公園に建つ太陽の塔。3月19日から、その内部が約50年ぶりにリニューアル公開されている。オープン前日には、太陽の塔の前でDREAMS COME TRUEがライヴを行うなど、大阪ではかなり大きな話題としてとり上げられていたが、その他の地域ではどうなんでしょうか? 現代芸術の巨匠、岡本太郎が手掛けた異形のモニュメント。通天閣と並ぶ大阪のシンボリック・イメージだから、大阪に住む僕としては内部も見てみたいと思うけど予約がいっぱいみたい。
この太陽の塔、実は裏側にも顔があって、なかなかのホラーなデザインになっている。それはもうKING CRIMSON的な光と闇の世界感。今のご時世、インターネットで「太陽の塔 裏側」と検索したらすぐに画像が出てきて、「ああ、こんな感じね」とわかってしまう。でもやはり「どうなってんねやろ?」というワクワク感と、実際目にした時の「こうなってんのかー!」という感動が大事なんじゃないかと。それってジャケ買いのおもしろさにも通じるものだと思うんだけど。
それで、息子たちを連れて万博記念公園へ行ってきました。まだ10歳未満の息子たち、太陽の塔の巨大さ、視覚的インパクトの強さに圧倒され、その裏側を目にした時には「こわー!」と絶叫。イイ感じで感動していましたが、KING CRIMSONとジャケ買いの話は、もちろんしていません。
さて、この万博記念公園の片隅に、自然観察学習館という施設がひっそりと建っている。公園内にいる生き物の生体や標本が展示されていて、まったり過ごすにはいいところ。そこで僕の目を惹いたのが、トンボの幼虫であるヤゴ。それもオニヤンマのヤゴ。これが親指ぐらいの大きさがあって、その視覚的インパクトたるや! ここから手のひら大のオニヤンマがニュッと出てくるんだから、実際に目にしたらビックリするだろう。
トンボは英語でdragonflyという。ドラゴン? トンボのドラゴン感はよくわからないなぁ?トンボの頭部はどちらかというとハエを思わせる。節のある腹部がドラゴン感あるかといわれてもどうかなあ? 僕が地球上の生き物の中で最もドラゴン感があると思っているのはタツノオトシゴ。その姿かたちは、かなりのドラゴン感があると思うんだけど、こちらは英語ではseahorseという。海の馬? 馬に見える?
勘のいい人はお察しのように、今回はこの流れでスイスのDRAGONFLY『DRAGONFLY』を紹介したい。なんとトンボの頭部が、どアップで描かれている。トンボのなかで最もハエ感の強い部分を、なぜアップに? トンボの美しい部分といえば、透き通った羽と細い体だろう。トンボのジャケットとして有名なSTARWBS『DRAGONGLY』でも、羽が中央にくるようなデザインになっている。それなのにスイスのDRAGONFLYは頭部のアップ。目の丸みに妙なリアル感があるが、なぜか足は針金のようにデフォルメされて描かれている。この不思議なイラスト、DRAGONFLYのシンガー、Rene Buhlerの友達だという画家のGeorg Kozakによるもので、バンド名に触発されてこのイラストを描いたという。
視覚的インパクトいう点では、太陽の塔ほどではないけども強烈なものがあって、一度見たら忘れられないものになっている。狙いはそこかな? プログレ・ファンなら、DRAGONFLY『DRAGONFLY』のジャケットを目にしたことがあるという人も多いだろう。ただ、どこかグロテスクなデザインのため、実際に聴いたことがないという人も多いのでは?
DRAGONFLYの中心は、Markus HusiとMarcel Egeの二人。Markusは幼少期からピアノを習い、10代になってからBEATLESを知り、やがてELP、GENTLE GIANT、GENESISなどを聴くようになる、74年にHELVETIAというロック・バンドに参加するが、一年ほどしか続かなかった。Markusは新たなバンドに参加。ギタリストが必要になったことから、かねてより知っていたMarcel Egeに声をかける。彼はLED ZEPPELINやDEEP PURPLEに影響を受けてギターを始め、のちにYESなども好んで聴いていたことから、Markus Husiと気の合う友達になったようだ。
75年にはMarkus Husi(kbd)、Marcel Ege(g)、Stephan Kraushaar(b)、Erich Isler(kbd)、Martin Weiss(ds)の5人編成となり、MarkusとMarcelで曲作りを開始する。Stephan Kraushaarが脱退し、Klaus Monnigが加入。KlausのガールフレンドのBrigitta Fischerが詩作をしていたことから、彼らのインストゥルメンタル曲に歌詞をつけ、さらにバンド名としてDRAGONFLYを提案したという。
彼らは共同生活をしながらバンド活動を進めていくが、77年以降はメンバーの出入りが激しくなる。まずはErich IslerとMartin Weissが脱退。オーディションでドラムのRene Buhlerが参加。続いてKlaus Monnigが脱退。ベースのPatrick Baumgartnerが加入と、78年には四人編成となっている。
78年3月、彼らは「Humdinger」「Overture」「The Rhyme To Carry On」という3曲のデモをレコーディング。78年5月からは本格的なライヴ活動も開始する。これまでReneがドラムとシンガーを務めていたが、専任シンガー探しを開始。ISLANDのBenjamin Jagerにも声をかけたというが加入はかなわず、結局Reneを専任シンガーにして、新たなドラマーとしてBeat Bosigerを迎え入れた。またかつて在籍したベースのKlaus Monnigが復帰し、Patrick Baumgartnerは脱退する。
80年ごろには共同生活をやめるが、DRAGONFLYとしての活動は積極さを増し、ライヴやデモの録音などを行っている。バンド脱退後も親交のあったPatrick Baumgartnerの尽力でGeorg Kurtenというマネージャーが付き、81年1月には地元のチューリッヒを離れ、ドイツのベルリンでもライヴを行っている。
81年8月、彼らはチューリッヒにあるプラチナム・ワン・スタジオでアルバムのレコーディングを開始。81年12月にはベルリンのサイナス・スタジオでミックスを行い、ついに『DRAGONFLY』を完成させた。ところがリリースを請け負ってくれるレコード会社が見つからなかった。結局は自主製作盤として2,000枚をプレスして、81年4月にリリースされている。以降もライヴ活動を続けているが、メンバー間で音楽志向の違いが出始め、83年9月には解散してしまう。
彼らが残した唯一の作品が、このトンボのどアップ・ジャケ『DRAGONFLY』ということになる。95年にフランスのムゼアからのものが、恐らく最初の再発CD化。ここに紹介したバイオグラフィーもそこに掲載されていたものを参考にしている。それ以降は、日本でも何度か発売されてきた。ジャケットを見るとダークなイメージを想像するかもしれないが、音楽は非常にあか抜けている。キャッチ-な歌メロ、爽やかなアレンジ、軽やかな演奏と、アメリカ産かと思ってしまうほど親しみやすいサウンドになっている。GENESISとYESからアクを抜いたような感じ。やはり聴いてほしいのは、アナログB面を占めていた約18分の組曲「Dragonfly」で、これが実に爽快かつ温かみのある曲に仕上がっている。良い意味でジャケットのイメージを裏切るシンフォ系の良作なので、昆虫が苦手な人も、ぜひ聴いてみてください。
それでは、また世界のジャケ写からお会いしましょう。
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スイスのグループ、81年の唯一作。YESやGENESISからの影響が感じられるシンフォ・プログレ。柔らかい音色のリリカルなキーボード、歌心溢れるメロディアスなギターを中心とするファンタスティックなアンサンブルが聴き所。PILOTやKLAATUなどブリティッシュ・ポップに通ずる哀愁溢れるキャッチーなメロディも魅力的です。歌詞も英語で、言われなければスイス産とは全く思わない、ブリティッシュの薫り漂う作品。ジャケのイメージとは違い、ENGLAND「GARDEN SHED」あたりと同スタイルの愛すべき名作。
直輸入盤(帯・解説付仕様)、ボーナス・トラック2曲、定価2500+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯無
帯無、ホチキス錆・軽微な汚れあり
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