久しぶりにみっちり詰まった数週間になっており、ちょっと焦っております。しかも今月は締め切りがなんとなく早い感じです。これを書いている木曜、夜の段階では、台風がじんわり接近中。世の中の連休を妨害し日本列島を縦断しそうな雰囲気。月曜日には札幌にMR. BIG御一行が入ってくるので、それとぶつかると面倒なことになって嫌だなぁ、などとツラツラ考えながら、時間が過ぎていき、先に進まない! まずい雰囲気でござる。
そもそもこうなったのは、MR. BIGのJAPAN・ツアーの準備もあるのだけれど、KING CRIMSONの『ライヴ・イン・ウィーン2016+ライヴ・イン・ジャパン2015』発売が若干ゴタゴタしたことからだったように思います。
元々、『ライヴ・イン・ウィーン2016』は今年の5月のレコード・ストア・デイに合わせてEP『ヒーローズ』を発表して、6月の北米ツアー1stレグの開始に合わせコレクターズ・クラブのスペシャル版として軽く発売する予定だったのが、聴き直したら思いの外内容が良かったため、正規のライヴ・アルバム(てぇのも変な表現ですが・・・)しようとRFが画策し、発売が9月に延びていたわけです。北米ツアー1stレグ終了後、集中して作業をおこない完成というスケジュールを立て、実際その通り『ライヴ・イン・ウィーン2016』を完成させたのですが、その作業中に1stレグのシカゴ公演を聴いたら、これも良いので、だったら今年のシカゴから出しちゃおうか、という話に突然言いだしたため、大混乱。これが7月の終わりくらいのこと。
7月の終わりですから、当初9月の中旬発売予定だった『ライヴ・イン・ウィーン2016+ライヴ・イン・ジャパン2015』は既に受注開始。いきなり2017年シカゴ公演音源に切り替えることは不可能で何を考えているんだDGMってことになり、協議の結果、日本は予定どおり9月に『ライヴ・イン・ウィーン2016+ライヴ・イン・ジャパン2015』を発売し、海外は先に2017年シカゴ公演音源を発売という変則リリースになったのですが、これが結構難航し、夏の暑さも重なりぐったり。
確かに内容は良いと思います。『ラディカル・アクション』が誕生した2015年ツアーは完成度が極めて高い公演連発のKING CRIMSONの歴史に残るツアーだったと思うのですが、今回発売の『ライヴ・イン・ウィーン2016』部分を聴くと、スクラップ&ビルトですか?てぇくらいに荒さが目立つわけです。2016年のツアーの時にはRFはビル・リーフリンが休養明けで戻って来ることを前提にドラム4人体制を2017年ツアーから実施することを決めており、翌年からはバンドのエンジン部分であるリズム隊が大幅に出力を増すことを念頭に置いて、ステージでは後列壇上に並ぶ弦・管楽器隊のパワーアップを図ろうとしていたようですね。演奏のテンションは2015年以上です。弦楽器はともかく、管楽器担当のメル・コリンズがこんな調子で毎晩やっていたら、演奏中に倒れるのではないかと思うほど凄いことになっております。
で、まぁ、すった、もんだ、あったものの、なんとか9月26日に発売出来る運びになったと思った矢先に、今年のボックスの大まかな内容が発表されちゃったわけです。まぁ、こちらのボックス、作業が難航していたのを知っていたのであまり責められませんが、『ライヴ・イン・ウィーン2016+ライヴ・イン・ジャパン2015』の作業中にインフォ出してくれれば、商品内に告知入れられたじゃん!っていうのもあり、どよ〜ん、となりましたな。
今年のボックスは『ISLANDS』期の音源を集めたものになることは皆さん既にご存知かと思いますが、CDとDVDオーディオのコンボ商品である40周年記念シリーズで『Islands』は既に発売済みなので、恒例のボックスと同時発売40周年記念シリーズはないだろうと思っていました。まさか、『Earthbound』はやらないだろう、と思っていたら、やっちゃいましたDGM! 『Earthbound 40th Anniversary Edition』出すそうです。
RF、今怖いもの無し状態。いやもしかするとトーヤは怖いのかもしれないけれど、こと商品のほうは完全に無敵状態。凄いねぇ。1972年に『Earthbound』を出したこと自体かなり無謀であったと思いますが、45年後にさらなる恐怖が待っているとは思わないよねぇ。というわけで、最初は『Earthbound』です。
音悪ぃなこのレコード、というのが最初の印象。このレコード、発売直後は結構買うの大変なアイテムでした。アイランド・レーベルの廉価盤規格であるHELPシリーズって、メインの規格と比べ製造枚数自体多くなかったのかもしれませんが、当時の音楽雑誌に広告を出していた輸入盤販売店はこぞって写真入りでこの作品を広告に載っけていたのですが、クリムゾンのライヴ盤ということで、どこの店でも入荷数より欲しがる人間のほうが多く、思い切り品切れの店が多かったです。僕もなかなか現物にたどり着かず、はっきりとどの店だったか記憶しているわけではないのですが、多分、新宿レコードで、新入荷分の発売開始日に店の前に並んで買った記憶があります。今となってはライヴ音源だらけのクリムゾンですが、この時代はアナログ・ブートだって稀な時代ですから、初のライヴ盤に対する期待は相当大きかったのです。
しかし、内容はといえば会場のサウンドボードから直接2chで録音されたものを元にしていることもあり、印象はかなり複雑なものがありました。オリジナルは5曲で、発売当初は英国盤のみ、アメリカのアトランティックは発売見送り、その後、日本は’80年代にEGのカタログがポリドールに移籍したのち、初めて国内盤として発表され、以降、他のカタログと一緒になりましたが、’70年代は結構、レア・アイテムとして珍重されていました。
僕としてはこの作品は40周年記念シリーズにはならないだろうと思い、昨年K2HDマスタリングHQCD仕様で発売してしまったわけです。意味があるのかないのかイマイチ分かりかねる感がありましたが、他のタイトルをK2HDマスタリングHQCD仕様でリリースしていたため、そこに合わせる意味もありました。まぁ、半分シャレのつもりで出したのですが、マニアの皆さんからは思い切りバカ扱いされました。どうもありがとうございます。
というわけで、この作品に関して最もアホなフォーマットで出したのは僕だろう、と自負していたら、本家DGMに軽く一蹴されてしまいました。まず、今回の40周年記念シリーズはオリジナルの5曲から13曲に拡張されています。『Earthbound』は1972年2月11日デラウェア州ウィルミントン、2月16日フロリダ州ジャクソンヴィル、2月27日フロリダ州オーランド、3月10日のペオリアの4公演からの音源が使用されていますが、この音源は既にコレクターズ・クラブCDやダウンロードで全長版が出ており、今回は当時のライヴの進行を再現する形の拡張と思われます。この『Earthbound』2017年フォーマットは当然のことながら、最新リマスター音源となります。(元が2chの音源ですからリミックスはしようがないかと思います)
ここまでは、「へぇ〜」って話なのですが、40周年記念シリーズの目玉であるDVD(音声のみ、今回はDVDオーディオではなく音楽DVDだそうです。『USA』の時と同様ですね)が無茶! まず、その『Earthbound』2017年音源を24/96のハイレゾで収録だそうで・・・。僕はK2HDマスタリングHQCD化してバカ扱いを受けましたが、そんなもん、可愛いもんじゃん!というまさかのハイレゾ。クリムゾン、オフィシャル・リリース史上最強のローファイ音源がハイレゾ化。一体どうなっているのでしょうか? なぜ『Earthbound』に今回、こんなにこだわっているのかといえば、ローファイのハイレゾなのだ、てぇのを考えていると夜も眠れないからなのでした。
また、DVD部分にはこの1972年のUSツアー時に収録された唯一のマルチ・トラック音源であるサミット・スタジオでのスタジオ・ライヴを新たに4chミックスにしたものも収録されるそうで、コレクターズ・クラブ音源の1972年ツアー時のものの中でも安定した音源として知られるこのサミット・スタジオ音源のサラウンド化はちょっとそそられますね。その他、DGMのデヴィッド・シングルトンがこの時期の「21世紀のスキッツォイド・マン」のインプロヴィゼーション部分を編集して再構成した『Ladies Of The Road』収録の「スキッツォイド・マン」コラージュやオリジナル・アナログからの板起こし音源などが追加収録されるそうです。
僕は怖いもの見たさでかなり期待しています。だってさぁ、『Earthbound』だよ。普通これをハイレゾ収録しようとは思わんでしょう。個人的に気になって仕方がないことのお知らせでした。
さて、去年の10月のトピックは確か『鉄道の日』だったと思います。十五夜もやってしまいました。こうなるとパッと思いつくのはハロウィーンですね。万聖節(11月1日、Hallowmass=カトリック諸聖人の日)の前夜に行われる祭りで、起源はヨーロッパ。万聖節は日本のお盆に近く、亡くなった人々の霊が親族を訪れる日だそうで、そのイブであるハロウィーンはその年の収穫を祝い、悪霊を追い出す行事ってことなのですが、昨今はその宗教的な部分はすっ飛ばされ、世界同時多発大仮装大会となっていますね。
ハロウィーンのスペシャルというと、僕はまず、PHISHを思い出します。正規盤やライヴ・アーカイヴ・シリーズでハロウィーン・ギグが発売になっているかどうかは定かではありませんが、過去PHISHはハロウィーン・ギグでアルバム丸ごと再現シリーズを定番としており、VELVET UNDERGROUND『Loaded』、BEATLES『White Album』、THE WHO『Quadrophenia』、PINK FLOYD『The Dark Side Of The Moon』などを取り上げています。
ウォーレン・ヘインズのGOV’T MULEもハロウィーン・ライヴに燃える人らしく、こちらは正規盤(私家盤に近いかね)で幾つかリリースされています。まずは2007年のハロウィーン、ミネソタ州セント・ポール公演。『Holy Haunted House』というタイトルで2008年6月に発売されています。タイトルからもなんとなく判るように、この年はLED ZEPPELINの『Houses Of Holly』の再現ライヴになっています。GOV’T MULEはオリジナル曲の他、カヴァーもかなり多く様々なアーティストの楽曲を取り上げており、そのカヴァー形態は原曲重視パターンと完全にアレンジ・パターンの両方がありますが、ここでは原曲重視パターン。「The Song Remains The Same」から「The Ocean」までマット・アブツのドラム・ソロが途中挟み込まれていますが原作の曲順通りに演奏されています。ウォーレン・ヘインズがZEPPELINをやったということで当時話題になり、現在では完売状態になっています。
ま、確かにそそられるプログラムではあるのですが、ちょっとリハーサル不足というか、珍しく演奏がよれる箇所もあり、100%完全燃焼には至っていません。だいたい、ウォーレン・ヘインズとロバート・プラントの声域が違うというのがそもそもあり、しかも、そこかしこにキメのフレーズや、普通に聴いていると難易度が計りかねるけど、実は結構難しいブレークなどが多く、若干無謀な感じもありました。ただ、「Over The Hills And Far Away」のイントロ部分のコードストロークとアルペジオの組み合わせのようなフレーズを弾かせると、元々THE ALLMAN BROTHERSもGOV’T MULEもこの手の曲が多いバンドなのでLED ZEPPELINのライヴ盤でジミー・ペイジ本人が弾く、ちょっと引っかかりがある演奏に比べ妙に滑らかな印象を受けますし、「The Crunge」や「The Ocean」などは『Houses Of Holly』をカヴァーしても他ではあまり取り上げられない曲なので頑張ってはいますが、正直、全体は雑です。
逆に収まりがいいなぁ、と思ったのは2014年発売の「Dark Side Of The Mule」。こちらもタイトルからなんとなく判るかと思います。PINK FLOYDトリビュートです。2013年のハロウィーン・ギグのライヴだったと思います。こちらはアルバム全曲再現ではなく「One Of These Days」から始まり、『Meddle』、『The Dark Side Of The Moon』、『Wish You Were Here』から抜粋プラス「Pigs On The Wings pt. 2」、「Comfortably Numb」追加という構成。体質的に合っているというのもあるのでしょうがZEPPELINの時と比べると完成度が高くなっています。ウォーレン・ヘインズ独特の滑らかな歪みのトーンで再現される「Shine On Your Crazy Diamond」のソロはオリジナルとは異なる興奮があり、強く印象に残りますし、『Meddle』からの選曲としてあまりカヴァーされることのない「Fearless」も演奏されており、これがまたとても良い雰囲気! またトリビュートではない前半の自分たちのナンバーを演奏するSet 1も、定番曲「Bad Little Doggie」から「Brand New Angel」へのメドレーがやたらカッコ良かったりと数あるGOV’T MULEのライヴ盤の中にあっても印象に残る一枚かと思います。
PULSAR『Halloween』も忘れてはならない1枚ですね。PULSARはフランスのバンドでしたが、たかみひろし先生が『The Strands Of The Future』(1976年)を紹介したことで日本でも一部で盛り上がり話題となりました。この『Halloween』は翌’77年発表作ですが、これも当時日本で入手するのが結構困難な作品でした。幾つかの輸入盤店は定期的に入荷させていたのですが、重要と供給のバランスが悪かったのでしょう、当時、入手するのに数ヶ月かかった思い出があります。
PINK FLOYD的なサウンド指向の中、ヘヴィなKING CRIMSON的アプローチが盛り込まれた作風、オリジナルはLPなのでパート1&2に分けられているものの全1曲の大作ということもあり、当時、プログレ・ファンからは大変珍重された作品ですし、今聴いてもこの作品が持つそのミステリアスな雰囲気は変わりませんね。「ロンドンデリーの歌」というか「ダニーボーイ」の旋律から始まり、ドラマティックな展開を見せるその構成力は今も不滅です。
今月はバタバタですいませんでした。来月はもう少し落ち着きを取り戻していることでしょう。現在、9月15日の14:30。東京・赤坂は多少曇ってはいるものの、雨はまだ降っていません。しかしながら、しっかり台風は迫ってきています。MR. BIGは月曜日に無事に札幌にたどり着くことができるのでしょうか? 原稿の締め切りは来る、台風はじわじわ迫ってくる。なにか落ち着きませんね。真夏の時期にバタバタしていたのでいつの間にか朝夕の空気がひんやりしてきたことにも気付かずもう、9月も後半です。
今月の1枚は、今年も秋なんだなぁ、というのをなぜかこのアルバムを聞いて思ってしまったHUMBLE PIE『Eat It』。一般的にHUMBLE PIEの代表作はピーター・フランプトン在籍時の『Performance: Rockin’ The Fillmore』か『Smokin’』ってことになるのでしょうが、結局、このバンド、中心人物のスティーヴ・マリオットが天才肌のアーティストだったこともあり、鉄板の代表作は実はないんじゃないかと思います。曲作り、演奏、唱法は最高クラスでもそれをプロデュースする才に若干欠けており、周りにもそれを補える人間がいなかった。そんな感じがあります。作りっぱなしというのでしょうかね。そういう印象を強く受けます。ま、今となってはこのあまりガチガチに作りこまれていないどこか隙のあるサウンドが良かったりするわけですが・・・。
で、今週、通勤中に『Eat It』を聴いていたわけです。オリジナルはLP2枚組で、A面ロック、B面R&Bカヴァー集、C面アコースティック、D面ライヴという構成でしたが4面合計でも70分にも満たないのでCDは1枚に収まっています。一般的にはA、D面の人気が高く、B面R&Bカヴァー集もスティーヴ・マリオットというアーティストの個性からすると魅力的。問題はC面のアコースティック。昔から飛ばして聴いていましたが、ボーッと聴いていたら、気がつけばアコースティック・パートに突入しており、昔から飛ばし聴きしていたけど、曲は良いんだよね、とか思いつつ聴き進むと、「Oh, Bella (That’s All Hers)」で思い切りハマりましたて・・・。いきなりもう秋だなぁ、というわけの解らない感傷が沸き上がり・・・。感傷的なメロディが黄昏ロック感満載でしてね。ただ黄昏感だけなら、聴き流していたのでしょうが、そんな中にあってベースのグレッグ・リドレーだけが黄昏ておらず、ひとりいつもの調子でブリブリしたトーンのベースをブッ込んでおりましてね。これがカウンター状態というか当て色というか、餡子は塩加減が決め手といいますか、良い味出していて、黄昏感にアクセントを加えている様にグッときました。
今年も黄昏が良い感じの季節に近づいてきましたね。11月はまた黄昏ロック特集かなと思いますね。今月は雑ですいません! また来月。さぁ、台風は何処にいるんでしょうか?
メロトロンなどの積極的な利用で、フレンチ・プログレッシブ・ロックの名盤を作り上げた代表的グループの77年3rd。彼らの最高傑作といわれる本作は2部構成から成る大曲のみで構成された作品であり、非常に映像的なドラマチックさを持った傑作となっています。メロトロンの幻想はKING CRIMSONの静的な部分を想起させ、ロングトーンで静かに広がるキーボードや流れるような無理の無い展開はPINK FLOYDのような麻薬的魅力を放ちます。全編にフレンチ・ロックの冷ややかな質感と芸術性が表われており、夢想の中に落ちていくような傑作です。
イギリスを代表するヴォーカリスト/ミュージシャン、スティーヴ・マリオットとハンブル・パイの絶頂期を記録した大作(アナログ盤は2枚組でのリリース)。ホワイト・ソウルの真髄を伝える7thアルバム。女性コーラス・グループ、ブラック・ベリーズを従えたライヴ・テイク3曲ほか全編が聴きどころ。73年作。
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