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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第九十回:CANARIOS『CICLOS』

先日、関西のニュース番組のスポーツ・コーナーで、Jリーグの大阪ダービー、セレッソ大阪対ガンバ大阪の対戦のことがとりあげられていた。いや、気持ちはわかる。人気の「ある」「ない」でいえば、そっちかもしれん。でも、その時、女子のサッカー・リーグ、WEリーグで、セレッソ大阪ヤンマーレディースは首位だったのだ! 前シーズン9位だったのが、まだ第3節目とはいえ首位になったんだから、関西のニュース番組でとりあげんかい! セレッソ大阪ヤンマーレディース、第4節終わって現在5位。だから言うたやんか、とりあげるんなら今しかないって! カップ戦のクラシエ・カップでは現在リーグ最下位だけど、まだまだわからん!

セレッソというのはスペイン語で桜のこと。大阪の市花が桜。ユニフォームも桜をイメージしたピンク色。男子も女子もピンクのユニフォームだけど、これはやはりレディースの方が可愛らしい。がんばれ、セレッソ大阪ヤンマーレディース!

さて、桜の春はあったけど、そのあと梅雨から夏になって、ずっと猛暑で、いつまで暑いねん、今年。と思ったら急に寒くなったりと、猛暑の夏が秋を押しまくって、そのままかなり押して、秋をすっ飛ばして冬が来そうな雰囲気。四季の移ろいもへったくれもない。かなり押して、四季がなくなる? というヒドイこじつけで、今回はスペインのカナリオス『四季』(CANARIOS『CICLOS』)です。

前回、KEITH TIPPETT GROUP『DEDICATED TO YOU, BUT YOU WEREN’T LISTENING』を紹介して、内ジャケットに描かれた羽の生えた女性のイラストが可愛らしいと書いた。羽のはえた人物像といえば、妖精とか天使とか、どこかキュートなイメージがあるように思うが、CANARIOS『CICLOS』に描かれているのは、チョウのような羽が生えた、座禅を組む修行僧。長い髪とひげ、ガリガリの肉体って、かなりオス感が強すぎないか? その修行僧の羽の中にも、羽の生えた人物が何人か描かれている。女性もいるが、みんな頭がスキンヘッド。怪物みたいな顔をしているのもいて、なんかコワイ。しかもゲートフォールド仕様の裏ジャケットに全く同じイラストがあるというのは、ゲートフォールドの特性を何も活かしていないのでは?! 本作はプログレ・ファンに有名な作品だけど、プログレを好きになり始めたというような人は、まずこのジャケットを見て購買意欲はそそられないはず。でも、内容は最高なので、ぜひ聴いてほしい。

CANARIOSの中心メンバーは、複数の楽器を操るマルチ奏者のテディ・バウティスタ。彼はLOS IDOLSというビート・グループを結成し、1964年にBEATLESのカヴァーを含む4曲入りシングルでデビューした。やがてLOS IDOLSからLOS CANRIOSと改名。喜劇王チャールズ・チャップリンの娘であるジェラルディン・チャップリン主演のスペイン映画『PEPPERMINT FRAPPE』の主題歌を担当することになり、1967年に「Peppermint Frappe / Keep On The Right Side」をリリースしている。この頃には管楽器奏者を含む7人編成のバンドとなっていて、音楽的にもソウルフルなスタイルへと変化していた。

以降は「Three-Two-One-Ah / Trying So Hard」をはじめとしたシングル、1968年には、POP-TOPSというグループとサイドを分けた『LO MEJOR DEL CLAN!』、さらにマイク・ケネディを加えた3組による『LO MEJOR DEL CLAN!2』を発表したのに続き、1970年にデビュー・アルバム『LIBERATE!』を発表する。ここで色々と謎が。

ウィキペディアをみると、CANARIOSは1967年にTHE CANARIESとして『FLYING HIGH WITH THE CANARIES』をアメリカでリリースしたと書いている。同作でのメンバーは、テディ・バウティスタ(vo,g)、ジェルマン・ペレ(g)、ラファエル・イスキエルド(b)、ホセ・ルザルド(タット・ルザルド、ds)の四人編成。プロデュースしたのは、アメリカのヴォーカル・グループのTHE TOKENSとなっていて、彼らのB.T.Puppy Recordsからリリースされている。これに従うと、LOS IDOLSからLOS CANARIOSになる前にTHE CANARIESと名乗っていて『FLYING HIGH~』を1967年に発表したということになる。しかし、Discogsには本作が1970年のリリースとなっていて、確かにレコード番号の前後のアルバムと発売年を見てみると、どうやらこっちが正しいように思える。ということは、LOS CANARIOSになる前の録音ということではなく、アルバム制作を依頼され、企画ものの一枚としてTHE CANARIES名義で『FLYING HIGH~』を作ったという可能性はないだろうか。

それはさておき、テディ・バウティスタは、女性シンガーのタラ(Tara)のシングルAB面曲「Somebody / Lonely People」を提供するなど、コンポーザーとしても活躍。CANARIOSとしては、1972年にライヴ盤『CANARIOS VIVOS!!!!』をリリースする。歓声の入り方がだいぶ怪しいので、疑似ライヴ盤と思われる。この時点でテディ・バウティスタ以外のメンバーは大幅に入れ替わっていて、ROLLING STONESやBEATLESの曲を中心に、ファンキーなアレンジで聴かせる音楽性になっていた。

そして1974年、CANARIOSは一大プログレ大作『CICLOS』を発表する。1974年といえば、イギリス周辺のヨーロッパ諸国でもプログレッシヴ・ロックの名作が続々と出ていたので、その影響はあったはず。

『CICLOS』では、テディをはじめとするメンバーが多種多様な楽器を操っている。アレンジは、後に名作『LOS ANDARES DEL ALQUIMISTA』(1976年)を発表するアルフレッド・カリオンが担当。オリジナルはアナログ2枚組、ブックレットもセットされている豪華仕様。ヴィヴァルディの有名なクラシック曲『四季』をモチーフに、人間の一生と輪廻をテーマにした壮大なロック・オペラ風に仕立て上げている。これまでのCANARIOSとはまるで違う、演奏、楽曲、アレンジ、テーマ性など、作品の細部にまで強烈なこだわりを感じさせるアルバムになっている。それだけにジャケットよ?! 輪廻を象徴するような美麗かつファンタジー色濃厚なジャケットだったら、もっと注目されたのでは?!

1977年には日本盤が、『CYCLES(四季/チクロス)』というタイトル、ジャケットも変更して発売されている。ヴィヴァルディの『四季』をベースにした楽曲部分を抜粋して1枚のアルバムに収めた内容改変版で、本来CANARIOSが意図していたものとは違っている。でも、スペインの人たちも、そこは注目ポイントだったようだ。CANARIOSがテレビ番組のためにヴィヴァルディ『四季』をアレンジしたパートを演奏する映像が残されている。

CANARIOSとしての活動は『CICLOS』で終わる。テディ・バウティスタは、以降も音楽活動を続け、1976年にはオムニバス盤『FORGESOUND』に参加。また、アナログ2枚組のオムニバス盤『NOS VA LA MARCHA』のプロデュースをしている。これは1978年9月22日にマドリードで行われたコンサートROCKTIEMBREと、そのドキュメンタリー映画に合わせて制作されたものらしい。コンサートにはテディ・バウティスタ自身も出演。同作にはテディのソロ名義で「Si No Te Ries De Tu Propio Culo Acabaras Tomandotelo En Serio」「Anda Suelto Satanas」という2曲が収録されている。前者はテディのシンセやキーボードを中心とした、PINK FLOYD『DARK SIDE OF THE MOON』の影響を感じさせる14分に近い曲で、スキャットでタラが参加している。後者はスペインの有名ミュージシャン、ルイス・エドゥアルド・オーテのブルージーな曲で、COZというバンドとパフォーマンスしている。これらの映像もYou Tubeで見られるという、良い時代だねえ。1981年には、テディと元LOS ARLEQUINES~MUDULOSのペペ・ロブルスとの連名でAOR作『RADIOACTIVO』を発表。以降もスペインの音楽シーンで活躍しているようだ。

ここでは、先に紹介したCANARIOSがテレビに出演して『CICLOS』の一部を演奏した映像を2本ご覧いただきましょう。CANARIOSの映像は、けっこう見つかりますので、気になる方は探してみてください。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

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LOS CANARIOSの在庫

  • LOS CANARIOS / TODAS SUS GRABACIONES (1967-1972)

    あの名盤『CICLOS』を生んだスペインのCANARIOSによる初期音源集、卓抜したアレンジ・センスが施されたサイケ・ポップ〜ビート・ポップ!

    スペイン出身、74年に発表した3rdアルバム『CICLOS』がシンフォニック・ロックの名作として知られるグループ。本作はそれぞれ70年、72年に発表された1stと2ndにシングル曲、未発表音源を加えた音源集です。アルバム・デビュー前の音源は、中期BEATLESの影響を感じさせるサイケ・ポップ。威勢のいいブラス隊、ゴージャスな女性コーラス、情熱的なヴォーカルが特徴的です。1stアルバムは1分未満のインストを曲間に挟んだコンセプト・アルバム。2ndはライブ録音のカヴァー・アルバムで、これが聴きモノです!演奏技術が向上、よりタイト且つラウドなアンサンブルでROLLING STONESやTRAFFICなどの曲をサイケデリック、且つヘヴィにカヴァー。ラテンなアレンジにヒステリックなヴァイオリンを加えた「FEELING ALLRIGHT」や凶暴なギター・リフ、ジャジーなインプロを加えたBEATLESの「BABY YOU’RE A RICH MAN」など、混沌としたアレンジと熱気をはらんだパフォーマンスに惹きこまれます。『CICLOS』に繋がるアレンジの妙や意表をついた展開が楽しめるアルバム。

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