9月は動物愛護週間があります。元々は1915年にアメリカで始まったものを日本にも、ということで始まったそうです。本家アメリカは5月なのですが日本は何故か9月です。
小さい頃から犬・猫と暮らしてきたもので、毎年気になります。犬・猫共に何代飼ったのか真剣に考えないと判らないくらいたくさんのワン・ニャンと暮らしてきました。
現在は奥さんが猫の毛アレルギーで喘息が出てしまうので犬しか飼えませんが、テリアが飼いたくて15年生きた先代はケアーン、現在はノーフォークを飼っています。
テリアはどちらかというと抑制がきかない犬で、けっこう勝手気ままです。うちに来たケアーンも現在のノーフォークも小型のテリアなんですが、元々は使役犬で穀物蔵などを荒らす動物を駆除するために飼われていることが多かったそうで、小さい割に運動量が多く、散歩というよりほぼジョギング状態になってしまいます。
獣医さんにいわせると、テリア種は抑制遺伝子が欠けていて、一度何かに夢中になると頭真っ白状態になっちゃうとかで、それでも訓練すればだいぶ落ち着くそうなんですが、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアという耳が立っていて真っ白なテリアは抑制遺伝子がないそうで(ほんとかよ)一度何かにハマっちゃうともう絶対やめない、って話なんですが、どうなんでしょう?
先代のケアーンはウェスティより若干小さく、色が赤毛(グレーもいます)でしたが見た目はウェスティとほぼ同じ。確かに何かに集中すると言うこと全く聞かない犬でしたね。
現在飼っているノーフォークは垂れ耳で前にも書いたように思いますが、ボンゾくんという名前です。ジョン・ボーナムではなくニール・イネス、ヴィヴィアン・スタンシャルのBONZO DOG BANDのほうからもらいました。本物のボンゾ・ドッグはおそらくブル・テリアがモデルだと思うのですが、イギリスで戦前から親しまれてきたカトゥーン・キャラクターでタバコについていたカードの一コマ漫画で人気が爆発的に広がっていったそうです。今でもebay等で数多く出品されています。僕も何枚か持っていますが、タバコのおまけなので小さいカードなのよ、これが。それでも今やヴィンテージものなので結構な値段が付いています。
BONZO DOG BANDが一旦、活動を停止し、再結成みたいな形で復活した1972年のアルバム『Let’s Make Up And Be Friendly』のオリジナル・アナログ盤には手鏡を持って化粧パフで白粉を顔に塗っているBONZO DOGのハガキ大くらいのカードが貼り付けてあり、それがアートワークになっているという、まぁ、一種の特殊仕様なんですが、ロック・ファンはそれに馴染みがあるので、BONZO DOGのカードはあの大きさと思われがちですが、実際のタバコ・カードは1/6くらいです。ちなみにわざわざジャケットから剥がす人はいないと思いますが、あのカードちゃんと絵葉書になっていて裏も印刷されているみたいなんですよね。
さて、BONZO DOG BANDを聴くのであれば、『Let’s Make Up And Be Friendly』よりも個人的には1969年の『keynsham』を推します。ニール・イネスのポップ・センスが炸裂する一方、インパクトはあるけど何度も繰り返し聴こうとはあんまり思わないコミカルなナンバー含有率が小さめで聴き始めに良し、長い付き合いになっても良しの出来だと思います。
話が軽く脱線しましたのでもとに戻ります。かようなわけで、動物愛護週間に乗っかり、今月は動物つながりで進めたいかと。闇雲に並べても仕方ないので、十二支になっている動物を順番に行こうかと思います。
動物ネタを十二支で行くと言った舌の根も乾かないうち、最初は猫です。十二支に入り損ねた動物です。この間家で探し物をしている時に見つけて、久々に聴いてみてちょっとハマった化け猫ジャケット、POPOL ACE『Stolen From Time』(1975年)です。ノルウェイ、オスロのバンドで、この『Stolen From Time』は当時、国内盤も出ていました。海外ではプログレ・バンドにカテゴライズされることが多いですが、日本人の感覚で行くとハード・ロック、プログレ・ハード寄りのサウンドを持ったバンドでした。
『Stolen From Time』は3rdアルバムにあたり、POPOL ACEに改名して初の作品。これより前の2作はPOPOL VUH名義で発表されていました。説明不要と思いますが、ドイツのエクペリメンタル系の名バンド、POPOL VUHと混同されるのを避けるための改名だったようです。初期はヘヴィなリフを持つハード基調の楽曲にCREAM時代のジャック・ブルースを想起させるアグレッシヴなヴォーカルが乗る上げのハード・サウンドが印象的な上、特に1st『POPOL VUH』ではメロトロンがふんだんに使われており、ポイントの高い1枚と言えるでしょう。ファンキーなテイストを持ったドライヴィング・ナンバーも叙情的な曲もそつなくこなす高い演奏能力から国内では安定した人気を獲得し、この『Stolen From Time』世界進出といったところだったのでしょう。180度の変化というものではないにせよ、この作品は明らかに当時のアメリカのFMフレンドリーなサウンドにシフト。オープニングの「Bury Me Dead」なんかは流麗なピアノやシンセサイザー、中音域を固く締めたオーヴァードライヴの効いたベース、分厚いコーラスなど、当時アメリカ市場で昇り調子にあったプログレ・ハードの必要なエレメンツは全部入ったナンバーでした。
それ以上に感心したのが、この「Bury Me Dead」のメロディラインのセンス。個人的な感想ですが、’80年代半ばのCHICAGOの一連のヒット曲にも通じるポップさとフックを持っており、このアルバムが出た1975年は当のCHICAGOはまだそこまで行っていなかったこと考えると結構凄いなぁと思いましたね。
しかし、このアートワークは凄いですねぇ。ロゴも含めちょっと見ロジャー・ディーン。バンドはこの後もう1枚アルバムを出しますが、そちらはデザインもへったくれもないメンバー写真のシオシオなジャケット。それを考えるとこの『Stolen From Time』はジャケット・内容ともにポイント高いですね。POPOL VUH名義の前2と共に聴く価値は十分あるバンドかと思います。
さて、十二支をぐるりと回っていきましょうか。最初はネズミ(子)ですね。ズバリRATTって手もありますが、この連載の傾向を考えるとこっちでしょう。ドイツはコロン出身のTRIUMVIRAT。’70年代、ドイツのEL&Pとしてアメリカでもそこそこの成功を収めましたし、当時国内盤もしっかり発売されそれなりの人気を博しました。EL&Pによく似たサウンドですが、’70年代半ばに登場したバンドだけあって、やはり最大のロック・マーケットだったアメリカのFM局でのオンエアーを意識したコンパクトでキャッチーなメロディを配した楽曲が用意されているあたりに時代を感じます。この作戦が功を奏し、当時昇り調子だったFLEETWOO MACのサポートとしての全米ツアーが実現し北米市場での認知を獲得しました。作品は『Illusions On A Double Dimple』を挙げます。続くバンド最大の大作『Spartacus』も捨てがたいですが、EL&Pの『Tarkus』のようにA面に大曲、B面を小品でまとめ、この小品がFMライクな作りになっている点がポイントだったのでしょう。
次は牛(丑)ですね。見返り牛はあまりに有名なので飛ばします。前に取り上げたような記憶もありますが、牛といえばこれです。BULL ANGUS。ラテンの血が騒ぐパッショネート・ハード・ロック。良いバンドですね。タイトなハード・ロックからSANTANAばりの熱量の高いナンバーまでがっつり聴かせます。このバンド何が良いって、とにかくサウンドがRaw状態なところ。スタジオで綺麗に仕上げようなどいう小細工が一切なく、ライヴのサウンドをそのまま封じ込めたかのような埃っぽく、粘り気のあるサウンドは今聴いても十分刺激的です。ジャズ・ファンク的なアプローチも見せる2ndも魅力ありますが、やはり持てる力をストレートに打ち出した1stは凛々しくて良いですね。オープニング・ナンバーなんかは、がさつなハード・ロックだなぁと思うのですが、妙に頭にメロディがこびりついて離れません。
虎(寅)はこれもズバリTIGERとかTYGERS OF PAN TANGとかありますが、前のBULL ANGUSとは反対の要素を持つジャーマン・ハード・ロックTIGER B. SMITHで行きます。凄いアートワークですね。ほとんどグラム・ロックのりの衣装ですがルックスは極悪です。その極悪さ加減はJERONIMOと双璧をなしています。MOTORHEADのレミーすら小綺麗に見えます。影響を受けたバンドはジミ・ヘンドリックス、HAWKWIND、BLACK SABBATHなどということで、サウンドの方もなんとなくわかったつもりになりがちですが、実際は一見そのままながら、注意深く聴いていると勢いでやっているというより、結構きちんと計算して作られた跡が見て取れます。ハード・ロック・バンドとしての演奏力は並で、特に誰が凄いとかがない典型的B級バンドなのですが、結構聴かせます。時代を反映してかハード・ロックにグラム要素が加味されており、なんかMOTORHEAD、HAWAKWIND連合軍がT.REXやっているみたいな妙な味わいがありますね。
兎(卯)はスウェーデンのキーボード奏者BO HANSONの『El-ahrairah』を出します。見慣れないアートワークかと思います。種を明かせばワールドワイド・リリースの際には『Music Inspired By Watership Down』として発表された作品の本国盤です。ふたつを比べると曲のタイトル違いますが内容は一緒です。1973年に発表されたイギリスのリチャード・アダムス著の児童文学「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」にインスパイアされたインストゥルメンタル・アルバムです。BO HANSONはこれ以前にもトールキンの「指輪物語」を作品化しています。流麗というより朴訥なキーボード・ロックで、どの作品も時間がゆったりと流れる印象があり、人によってはかったるい印象を受けることもありそうです。どの作品もテクニック的にどうのという内容ではないですし。ただ、不思議なメロディ・センスを持った人で、様々なエスニック要素の入り混じった温かみのある旋律は彼固有の世界ですね。
竜(辰)。HANSON『MAGIC DRAGON』です。ジャマイカ出身でオリジナルのTHE WAILERSにも在籍したジュニア・マーヴィン・ハンソン率いるUK産のファンク・ロック・バンドでEL&Pが設立したマンティコア・レーベルからデビューしたことでプログレ・ファンにも広くその名は知られていますが、音のほうはちゃんと聴かれている感じはありませんね。ジュニア・ハンソン自体はUKファンク・ロック・シーンの初期名バンドGASSやミラー・アンダーソン脱退後のKEEF HARTLEY BANDに参加するなど存在感のある活動を展開後、このHANSONで独り立ちします。先にバンドと書きましたが、マンティコアからの2枚のアルバムはそれぞれメンバー総とっかえ状態で、おそらくセッション・バンド的なノリだったと思われます。1stはクライヴ・チャーマン(b)、コンラッド・イシドア(ds)、ボブ・テンチにキャット・スティーヴンスとの活動で知られたジーン・ラッセル(kbds)という編成でJEFF BECK GROUPからHUMMINGBIRDに移行するメンバー中心で完全にセッション・スタイル。2ndはベースにニール・マーレイを迎えバンド形態を整えた形に移行したものの、長続きせず終わっています。ファンク色の強かった1stからファンク色は残し、緩めのグルーヴをソリッドなロック・スタイルに移行させ、サウンド的にはグッとロック色が強くなり、ジミ・ヘンドリックスのBAND OF GYPSIESがポップかつソリッドになったかのような楽曲群は良い感じなんですがね。
蛇(巳)。ハーヴィー・スネーク・マンデルの『Snake』で行きましょう。紙ジャケット+SHM-CD化の再発がユニバーサルからちょうど発売になったばかりのCANNED HEATのギタリストとして知られるマンデルはソロも数多くリリースしています。CANNED HEAT流れの歌入りブルース・ロック・アルバムもありますが、この人のソロの真骨頂はインスト・アルバムにあると言って良いでしょう。
ハービー・マンの『Memphis Underground』あたりからTHE CRUSADERSに至る当時の湿度の高いジャズ・ファンクの流れを汲んだ粘りのあるサウンドにロックなギターを真正面からぶつけたみたいな熱気をはらんだファンク・ロックが全編堪能できる作品です。マンデルの他のインスト作には数曲収められているメロー・ムードのナンバーがこの作品には収録されておらず、直球のロック・ファンクで押し通した1枚となっており、マンデルのソロ作品中最も高いカロリーの高い作品と言えるでしょう。
歪み成分が多く、サスティーンも効きねっとりしたトーンのギター・サウンドはスワンプ・ムードもたっぷりで、油ものファンクを好まれる向きには重宝されそうなアイテムとなっています。
午(馬)ここは素直にHORSEで。アナログはメジャーのRCAから出たもののセールス的には伸びず、今日ではハード・ロック系の有名廃盤の1枚ですが、早い時期からCD化されていました。今は当時のLP未収録のアウトテイクスも含めた拡張盤『For Twisted Mind Only』も出ており、入手しやすい作品です。後にATOMIC ROOSTERに参加するドラマー、リック・パーネルが在籍したことでも知られています。レンジ狭め、開放感がなく閉塞的な重さを持ったそのサウンドはいかにもブリティッシュ・ハード・ロック。埃っぽく押しの強いサウンドはLEAF HOUND等とともにブリティッシュ・ハードの奥深さを今に伝えておりますが。で、このHORSE、ギタリストのロッド・ローチはSATUNALIAで女性ヴォーカルをフィーチュアしたサイケとプログレの境目に落とし所を作ったかのようなアルバムを制作します。アナログは同じ年にでたCURVED AIRの1stと同じピクチャー・ディスク。CURVED AIRの場合は普通のプレスのものもあり、問題ないのですが、こちらはプレス状態が極端に悪いピクチャー・ディスクのみ。元々女性ヴォーカルがヘタウマというよりはっきり言ってド下手で、後にAKARMAからCDも出るのですが、これもレコードから起こしたかのような無残な音質で良い印象全くなかったのですが、久々に聴き直したら、女性ヴォーカルでない曲は結構良い出来で、特に「Winchester Town」は良い曲じゃんとか思ったら、これHORSE時代の曲だったみたいで『For Twisted Mind Only』にHORSEヴァージョンがありましたね。まぁ、そういうわけでSATUNALIAは関連バンドではありますが、本当に歌下手ですから。でも当時、ロンドンのレインボー・シアターで公演やっているんだよねぇ。
未(羊)1969年アメリカABCレーベルからリリースされたWOOLです。この当時のアメリカの大小様々なフェスティヴァルの出演者一覧を見ているとこのWOOLの名前が結構出ていて妙に気になるバンドでした。男女のリード・ヴォーカルをフィーチュアしたロック・ベースでR&B、ファンク、フォークの要素がごったになったサウンドです。ちょっとBIG BROTHER & HOLDING COMPANYに似ているところもありますが、あそこまでアクが強くはありませんし、ブラス抜きのCOLD BLOODっぽい雰囲気もありますがリディア・ペンスほどWOOLのおねぇさんは歌がうまくありません。僕はこれ、レコードで持っていますが、なんとCD化されていましたので紹介しました。平均的っていえばそれまでですが、アルバム全体は結構良い雰囲気でたまに聴いています。なによりこの間抜けな感じのアートワークが好きですね。
申(猿)CLEARLIGHT『Les Contes Du Singe Fou』。フランス人キーボード奏者シリル・ヴェルドーのプロジェクトの3rdアルバム。前2作はマイク・オールドフィールドがヒットしたことを受け、シンセサイザー・ミュージックやエクスペリメンタル・ミュージックに食指を伸ばしていた頃のヴァージン・レーベルから出ていましたが、この3作目でフランスに戻り発売された経緯があります。CLEARLIGHTの作品では極めて珍品でしょう。インスト・メインの作品の中にあり、これはヴォーカル入りの1枚。タイトルはフランス語ですが、歌詞の方は英語です。ヴァージン時代の2作は浮遊感たっぷりのシンセサイザー・ミュージックでしたが、本作はシンセよりもピアノが活躍。ミステリアスなムード漂うプログレ・トータル・コンセプト・アルバムといった作りに変貌を遂げています。ちょっとGENESIS『Supper’s Ready』を思わせるメロディがあったりして・・・。
酉(鳥)わざわざこれを出すかと言われそうですが、最近聴き直してハマった1枚! COSMIC TRAVELLERS『Live! At The Spring Crater Celebration Diamond Head, Oahu, Hawaii』。リー・マイケルズのバックレコーディングに参加したジョエル・クリスティー、Paul Revere And The Raidersのギタリスト、ドレイク・レヴィン、エッタ・ジェイムスらのバックをやっていたジミー・マッギーらスタジオ中心の活動をしていたミュージシャンがLAで結成したロック・ファンク・バンド。もう1972年だというのにまだサイケデリックを引きずっている感覚に惹かれます。ガチなスタジオ・ミュージシャン連中の集まりだけあって、演奏は、半ばセッションのりとはいえタイトです。デイヴ・メイソンの「Look At You Look At Me」の荒っぽいカヴァーなんかも演奏しております。しかしながら、レコーディングのせいもあるのでしょうが、みんなライヴの出音ではなく、スタジオでレコーディングするときのセッティングっぽく、演奏は白熱しているのに妙に覚めて雰囲気がありそこが逆にツボにはまります。オリジナルはサイケやらファンク・ロック・コレクターに人気があるのでプレミアがついていますが、2000年代の頭にCD化されているそうです。洗練のかけらも感じない雑なファンク・ロックなのですが勢いだけは全開モードですね。
戌(戌)イギリスで最も活躍したペダル・スティール、ギタリストBJコールの最初のソロ・アルバム『The New Hovering Dog』です。多分ジャケットの写真が小さくてわかりにくいと思いますが、テリア犬がよく見ると宙に浮いています。写真の関係で耳が立っているのか、垂れているのか判別できませんが、立っていればケアーンかノーリッチ、垂れているならノーフォークかと思います。COCHISE等ブリティッシュ・スワンプ系名バンドで活躍した人だけに良い感じにカントリー・テイスト入った黄昏ロックをやってくれそうな印象がありますが、実際は全然違います。プログレ色が強く、部分的にエクスペリメンタル・ミュージックのテイストすら感じる不思議なフォーク・ロックを披露しております。多少カントリーっぽくなる部分もありますが、全体はプログレ・フォークの範疇だなぁ。夕暮れ時が似合いそうな静謐な雰囲気を湛えたサウンドは一聴の価値あり。なんとも形容しがたい世界観です。CD化も済んでおります。
亥(猪)ぱっと思いつきませんでした。思いついたのがこれ、マッチョなおねぇさんに殺された後でした。南無・合掌です。考えてみれば動物愛護週間にあるまじきヴィジュアルです。写真は割愛させていただきましょう。URIAH HEEP『Fallen Angel』(1978年)ジョン・ロートン時代最後の作品です。これもアメリカ市場を意識したFMライクな、固めに締まったツヤのあるサウンドになっています。当時のハード・ロック系ではありがちな音なのですが、URIAH HEEPにこれが合っていたかはちょっと疑問。良い曲はあるけれど、どこか小ぶりで食い足りない印象を受けますね。
さて、今月の1枚ですが、海外のファイル交換仲間から前にもらっていたものの聴きもせず放置していた音源の中にあったものです。ファイルはCD起こしという表記があるのですが、聴いているとトレースノイズのようなものがあるので、元はレコードから取ったものかもしれません。仮にこの音源が当時レコードで出ていたとすると、逆に驚きます。ずいぶん細かいものまでアナログで集めたつもりでしたが、このバンドは知りませんでした。SUNDAYというバンドです。イギリス(と書いてある)のバンドで1971年あたりの発表。どうもドイツでは出たという話ですが、う〜ん、それにしても知らなかった。初期型プログレの魅力溢れるオルガン&ギター・バンドです。タイプ的にはBEGGAR’S OPERA、CRESSIDAなどに近い系統ながらもう少し、ブルース・ロック色が強い印象ですが組曲形式の長尺曲「SadManReachingUtopia」なんかは前出の2バンドに引けを取らない構成力・演奏力を見せています。多少とっつきにくい感じはあるものの、メロディ作りのセンスも良く、初期型オルガン・プログレとしては完成度の高いサウンドとなっていると思います。個人的には初期ARGENTやJODY GRAINDなんかのテイストも感じました。発掘音源は多数聴いてきましたが、これはその中でもかなりの高クオリティと感じましたので紹介させてもらいました。
「ドイツのEL&P」と異名を取るグループ、74年に英ハーヴェストよりリリースした2nd。前作においてすでに完成されていたユルゲン・フリッツによるkeyは、アグレッシヴな超絶プレイからリリカルな泣きフレーズまで更に表情豊か。彼の鮮やかなキーボード・ワークに引きずられるように、その他メンバーも聴きどころ満載な演奏を繰り広げています。曲の水準も非常に高く、メロディー、アレンジ、演奏力のすべてが高水準でまとまった傑作。
ノルウェー出身、前作までのPOPOL VUHというグループ名を改め、PAPAL ACE名義でリリースされた75年の通算3作目。KING CRIMSON的ダークさを感じさせた前作からキーボードによるクラシカルな色合いが増し、格調高くドラマティックなシンフォニック・ロックを練り上げた傑作です。オルガン、エレピ、ピアノ、シンセを折り重ねて優美なサウンドを作り上げるキーボードを中心に、歌心を感じさせるメロディアスなギター、リッケンバッカーっぽい存在感あるベースらも印象的な、ひたすらファンタジックに紡がれるアンサンブルが絶品。キャッチーなメロディを少しシアトリカルに歌い上げる男性ヴォーカルも逸材です。テクニカルではありませんが、丹念に描かれるファンタジーそのものといった風情のサウンドが感動を呼ぶ一枚です。
76年作3rd。CYRILLE VERDEAUX、FRANCIS MANDIN、TIM BLAKE (GONG)によるトリプル・キーボードを中心にしたクリアライト史上、最もシンフォニックなアルバム。DIDER LOCKWOOD (MAGMA)参加。
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