2016年9月9日 | カテゴリー:そしてロックで泣け! 舩曳将仁,ライターコラム
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前回はイタリアン・ロックの中でも、それほど甘口ではなく、どちらかというとスタイリッシュというか、オーソドックスなロック・ファンにもアピールするイタリアン・ロックの泣ける曲として、ロッカンダ・デッレ・ファーテ「蛍が消える時(Forse Le Lucciole Non Si Amano Piu)」を紹介した。今回はその反動で、思いっきりイタリア的な甘さたっぷりの曲を紹介したい。人によっては甘すぎてお口、いやお耳に合わないかも?
甘口イタリアン・ロックといえば有名なのはイ・プー。7月にワーナーからイ・プーの4タイトルが廉価盤CDとして再発された。興味ある方はそちらを購入していただくとして、当連載の主旨は「ちょっとマイナーな泣ける曲」ということなので、ここはイル・バレット・ディ・ブロンゾ「瞑想(Meditazione)」を紹介したい。
イル・バレット・ディ・ブロンゾといえば、イタリアン・ロック史に残る傑作『YS』が有名。日本のファンは『イプシロン・エッセ』という邦題でご存知でしょう。『YS』の中心となったジャンニ・レオーネは、「あれは『イース』と読むのだ!」とインタビューで発言していたこともあり、新しいファンほど『イース』というのかもしれない。僕は『イプシロン・エッセ』の方が馴染むんだけどね。『アトム・ハート・マザー』より『原子心母』、みたいな感じで『イプシロン・エッセ』でもいいんじゃないかと。だめかな?
そのイル・バレット・ディ・ブロンゾ、とにかく『YS』が有名だけど、それ以前に異なるメンバーで発表された『シリウス2222』というデビュー作があり、「瞑想」はそのデビュー作に収録されている。
まずは彼らのバイオグラフィーを簡単に書いておこう。イル・バレット・ディ・ブロンゾの前身バンドであるバッティトーリ・セルヴァッジ(Battitori Selvaggi)は、1960年代末にナポリで結成されている。いくつかメンバー交代を経て、リノ・アイェーロ(g)、ジャンキ・スティンガ(ds)、マルコ・チェチオーニ(vo)、ミシェル・クパイオーロ(b)の四人になったころにイル・バレット・ディ・ブロンゾと改名した。彼らはRCAと契約を結び、同年にデビュー・シングル「Neve Calda / Comincio’ Per Gioco」をリリース。A面の「Neve Calda」は疾走系ハード・ロックの良曲なので、こちらも聴いてもらいましょう。
1970年には、デビュー・アルバム『シリウス2222』を発表。「瞑想」を含む同作収録曲のすべてにおいて、イル・バレット・ディ・ブロンゾのメンバーは作曲に参加していない。楽曲を提供した中心人物は、同作にアレンジャーとして参加しているジャコモ・シモネリ。彼が黒幕として関わっていた……のかもしれない。
同70年に2作目のシングル「Si,Mama Mama」を発表。そのB面には「瞑想」が選ばれている。71年にはチリで「Neve Calda」のスペイン語ヴァージョン「Nieve Calida」をA面に据えたシングルが発売されている(B面は「Si,Mama Mama」)。これは90年に500枚限定で発売された『IL RE DI CASTILLO』で聴くことができるが、同作はメンバーの公認ではないようだ。
イル・バレット・ディ・ブロンゾはデビュー作発表後に精力的なライヴ活動を行なったようだが、メンバーは今後の方向性やバンドの在り方に疑問を感じていたという。マルコ・チェチオーニ、ミシェル・クパイオーロが脱退し、リノ・アイェーロとジャンキ・スティンガの二人になったところで、当時チッタ・フロンターレで活動していたジャンニ・レオーネに声をかける。
チッタ・フロンターレに満足していなかったジャンニ・レオーネは、イル・バレット・ディ・ブロンゾへの加入を快諾。ナポリからローマへ活動の場所を移し、ベースにヴィト・マンザリが加入。レコード会社もRCAからポリドールへ移籍して再起をかける。ジャンニ・レオーネにはすでに『YS』のアイディアがあったという。レコード会社からの要請を受けて、英語詞による「イントロダクション」「第2部」をレコーディング。この2曲は92年に『FROM THE ALBUM “YS” UNRELEASED ENGLISH VERSION』として発掘CD化されている。
それを経て72年に発表されたのが『YS』だった。もちろんジャンニ・レオーネが中心となって制作されたアルバムだが、全作曲を手掛けたのはN・マゾッキとクレジットされている。これは当時の彼らがイタリアの著作権協会に加入していなくて、マルコ・チェチオーニのおばさんにあたるノラ・マゾッキの名前でしか印税をもらえなかったからだとか。
そんなことも含めてバンドの体制は不安定だったようだ。バンドはツアーに出るも70年代中ごろに解散。以降のジャンニ・レオーネのソロ活動や、90年代中ごろに彼が中心となって再結成した話はここで長々と書かないけど、彼の活躍があって、今ではイル・バレット・ディ・ブロンゾといえばジャンニ・レオーネ、そして『YS』というイメージが強くなっている。
そこで「瞑想」を紹介するのは天邪鬼な気がするけど、イタリアン・ロックらしい甘口メロディとクラシカルなアレンジがきいた名バラードなので、聴いてみてください。
歌詞は……といってイタリア語がわからないので、以前にCD化された際の日本語訳詞を参考にすると、テーマは2つ。「愛する君がいないと、僕は自分が何者かもわからなくなる」ということと、「僕の中にはたくさんの音楽が生まれていて、それを君に捧げる」ということ。まあ、ラヴソングですわ。
オープニングからストリングスが優雅に鳴り、マリオ・チェチオーニが甘口メロディを歌う。気持ちよく浸っていると、狂ったようにハープシコードが暴れ、今度はバンドの演奏をバックにしてメインのメロディが歌われる。ドタバタと叩かれるドラムとフリーキーに暴れまくるギター、なんだろうこの騒々しさは?!と思ったら、再びストリングスで華麗にエンディングを迎える。
かなり強引な展開。でも恋愛している時の混沌とした心理状態と捉えられなくもないし、その中にあっても「君がいなきゃダメだ!僕の音楽を君に捧げる」と訴えるメロディには胸に迫るものがある。プログレが開花していなかった70年代初頭のイタリアで、クラシカルなアレンジとバンド・サウンドの融合というプログレッシヴなアレンジに挑んでいたという点でも、「瞑想」はなかなか興味深い1曲だと思う。
「瞑想」を収録した『シリウス2222』は、2007年に日本で初めて再発CD化されて、そのライナーノーツを担当させていただいた。その日本盤紙ジャケCDは廃盤みたいだけど、輸入盤では手に入る。カケレコにも在庫があるかな? 他の収録曲も良曲ぞろいなので、イタリアン・ロックの入口としても、ぜひ聴いてみてもらいたい作品だ。
それでは、来月もロックで泣け!
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