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「そしてロックで泣け!」第一回 ルネッサンス「ラヴ・イズ・オール」

月イチ連載「そしてロックで泣け!」がスタート!

世間ではあまり知られていないが、聴いたら思わず涙がホロリ、もしくは嗚咽をあげて泣きむせぶ、そんなロックの隠れた「泣ける名曲」を紹介していきたい。お相手は、叙情メロディとネコをこよなく愛する音楽ライター、舩曳将仁が務めさせていただきます。

さて、記念すべき第1回目は、ルネッサンスの「ラヴ・イズ・オール」でいってみよう。

ルネッサンスというと、一般的にはクリスタル・ヴォイスの持ち主と謳われた女性シンガー、アニー・ハズラムが在籍したバンド、と思われているが、実はまるで別のメンバーによるオリジナルのルネッサンスというのが存在していた。というのは、ロック通の皆さんならご存知だろうか? 「ラヴ・イズ・オール」は、そのオリジナル・ルネッサンスの曲だ。

ルネッサンス結成の中心となったのは、ヤードバーズのキース・レルフ(vo)とジム・マッカーティ(ds)の2人。ヤードバーズ解散後、かつて同バンドに在籍したギタリスト、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジは、それぞれに成功の階段を駆け足でのぼっていく。それを横目で見ながら、キースとジムの2人はフォーク・デュオのトゥギャザーを結成。68年にデビュー・シングルを発表するが、全く注目されなかった。そこで2人は、ピアノをリード楽器とし、クラシカル・テイストを前面に押し出した、新しいコンセプトのロック・バンドを結成するという、起死回生のアイディアを打ち出す。それがルネッサンスだった。

2人は、キーボード奏者に元ナッシュヴィル・ティーンズのジョン・ホウクン、ベースにザ・ハードのルイス・セナモを起用。さらにキースの妹ジェーン・レルフをシンガーに加えてラインナップを完成させる。69年、アイランド・レーベルから発表されたデビュー作『ルネッサンス』では、きらびやかなピアノをメインにしたクラシカルな要素とロック的ダイナミズムが見事に調和したオリジナリティの高い音楽性を聴かせる。まさに革新的な作品となった。

……というのは後年の評価で、当時はイギリスで60位という結果に。アメリカ・ツアーも失敗に終わり、帰国の途についたところで、リーダーのキース・レルフがやる気を失ってしまう。彼らはセカンド・アルバムのレコーディングに入るが、次々とメンバーが離脱。後期メンバーのマイケル・ダンフォードが中心となって「ミスター・パイン」を録音し、何とか2作目『イリュージョン』を完成させた。

しかし、『イリュージョン』は71年にドイツでのみの発売にとどまり、イギリスでは76年になってようやく発売となった。それは、マイケル・ダンフォードが引き継いだルネッサンスの成功に便乗したものと思われる。これを好機とオリジナル・ルネッサンスのメンバーが再集結し、新たにイリュージョンというバンドの結成を目指すが、デビュー前にキース・レルフが感電死してしまう……なんとツイてない男なんだ!

いよいよ本題。今回紹介したい「ラヴ・イズ・オール」は、そんな悲運のアルバム『イリュージョン』の3曲目に収録されている。先述したように、録音時のメンバーのテンションは低く、アルバムとして『ルネッサンス』のような統一感には欠けるが、曲の出来は粒ぞろい。そのなかでも、コンパクトながら涙を誘う名曲が「ラヴ・イズ・オール」だ。

作曲はジム・マッカーティ。後にキース・レルフの遺志をついだイリュージョンで中心メンバーとなり、「イザドラ」「マドンナ・ブルー」など、叙情メロ愛好派を涙させる名曲をうみだす。その才能はここで開花したといえる。

作詞はベティ・サッチャー。ジェーン・レルフの友達という縁で起用された彼女は、後のルネッサンスでも女性らしい繊細かつファンタジー溢れる歌詞を手掛け、同バンドに欠かせない存在となる。彼女にとっても作詞家として重要なスタートを切ったのが、この「ラヴ・イズ・オール」といえるだろう。

歌詞はほぼすべて「マイ・ラヴ・イズ……」から始まり、「僕の愛」を、「海」、「風」、「空」、「永遠」などと様々に例えて表現している。そして、サビで「愛こそはすべて、愛が唯一のもの」と繰り返す。

「愛とは○○」というテーマは目新しいものではないし、つまりは、ビートルズ「愛こそはすべて」路線の恋愛賛歌といえる。だが、ルネッサンスの「ラヴ・イズ・オール」には、ビートルズのような力強さや「オール・トゥギャザー・ナウ!」みたいなハッピーさは少しもなくて、全体的に悲壮感が漂っている。シチュエーションとしては、「今、俺、恋してます、サイコー!」というのと違って、叶わぬ恋とか、打ちひしがれるようなことがあったり、それでもなお「僕の愛は気高く、愛がすべてなんだ」とつぶやかずにはいられないような、そんな悲痛さが感じられるのだ。

そんな哀愁の雰囲気を醸し出しているのが、ジム・マッカーティとジェーン・レルフの声。ジム・マッカーティは声量も歌唱力も超一流といえないが、人の良さがにじみ出たような親しみやすい声のトーンには、不思議な魅力がある。ジェーン・レルフもアンニュイな憂いのある声を持っていて、その二人の声が初期ルネッサンスの柔らかな音楽性と絶妙にマッチしている。「ラヴ・イズ・オール」では、その理想形ともいえるハーモニーを聴くことができる。

朴訥とした、それでいて柔らかな二人の声が、物悲しいメロディにあわせて愛の尊さを歌い、そこにキラキラとしたピアノの響きがからむ。それが、どこかホロ苦い感じを「ラヴ・イズ・オール」に与えている。恋することの楽しさだけでなく、切なさや苦しさを知っている人なら、「ラヴ・イズ・オール」の「愛こそすべて、愛が唯一のもの」というリフレインには、きっと泣けてしまうはず。

『イリュージョン』には、後にイリュージョンでセルフ・カヴァーされる、「フェイス・オブ・イエスタディ」も収録されている。こちらもしっとり系の名曲なので、ぜひチェックしてみてほしい。

では、また来月。そしてロックで泣け!

音楽ライター 舩曳将仁

ルネッサンス「ラヴ・イズ・オール」

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