2015年2月13日 | カテゴリー:そしてロックで泣け! 舩曳将仁,ライターコラム
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連載第1回目から、ずっとブリティッシュ・ロックが続いているので、今回はオランダのカヤックをとりあげたい。
カヤックといえば?「オランダを代表するプログレッシヴ・ロック・バンド」と答える人がほとんどだろう。確かに、デビュー作『シー・シー・ザ・サン』(73年)は、シンフォ系プログレの名作とされている。日本では、『マーリン』(81年)に収録された、アーサー王伝説をテーマにした組曲の人気が高い。2000年の再結成以降も、ノストラダムスをテーマにしたロック・オペラなどのコンセプト・アルバムを発表している。
でも、プログレのイメージが強いせいで、曲がコンパクトになり、ポップ・ロック色を強めた70年代中後期のアルバムに関しては過小評価が著しい。すなわち、3作目『ロイヤル・ベッド・バウンサー』(75年)から、『ザ・ラスト・アンコール』(76年)、『スターライト・ダンサー』(77年)、『ファントム・オブ・ザ・ナイト』(78年)、『ペリスコープ・ライフ』(80年)と続く5作のこと。「これ全部聴いたよ!」っていう人、手挙げてみ! いや、聴いていなくても仕方がない。たぶん、日本では、これまで一度も再発CD化されていないのでは?
カヤックの中心コンポーザーは、キーボード奏者のトン・スケルペンツェル。見るからに繊細そうなヴィジュアルで、飛行機が苦手。だから国外ツアーはしたくないというナイーヴなトン。このトンさん、キャッチーで、北欧らしい透明感のある美メロ、泣きメロ作りの名手なのだ。美麗メロディ愛好家なら、70年代中後期のアルバムは聴き逃しちゃダメ!
ということで、同時期のカヤックが誇る泣きの名曲で、個人的にオススメのベスト5を紹介したい。
約2分半の曲ながら、トンのクラシカルなピアノが演出する、寂しげな余韻がクセになる。
同作といえば、何はともあれドラマチックなタイトル曲を体験してほしいが、ゴシック的な暗さ&物悲しい雰囲気の「デッド・バード〜」も、トンならではのセンスあふれる名曲。死せる鳥が永遠の命を得て空の彼方へ飛んでいくところを表した(?)後半のピアノには、胸が切なくなる。
「サヨナラするのは辛いけど」というテーマの曲を、しっとり、でも美しく描くカヤックらしい泣きの名曲。
インスト曲だけど、あまりにも美しい調べに、僕みたいな40過ぎのオッサンでも、キュンと切ない気持になれる。トンのメロディ・センスの旨味が凝縮された至福の4分半だ。カヤックにコーラス要因として参加するイレーヌ・リンダースに捧げられた曲で、彼女は後にトンと結婚。イレーヌは作詞面でもトンのパートナーとして、カヤックには欠かせない存在になる。
クリアにして温かみのある声の持ち主、エドワード・リーカースが歌うファンタジックで繊細なメロディにウットリする。この良さは、聴いてもらうのが一番でしょう!
メロディ愛好家なら、この5曲を聴けば「ああ、今までどうしてカヤック聴いてこなかったんだろ!」と叫んでしまうはず。今ならメロディアス・ロックとか、AORハードとかいうカテゴリーに括られるのかな?
と、ここまで書いてきて、僕が一番聴いて欲しい、カヤックの隠れた泣きの名曲は、2008年の『カミング・アップ・フォー・エア』に収録された「アンディサイデッド」だ。
同アルバムは、近作の中でもポップ・ロック色が強い内容で、だから日本ではほとんど話題にならなかったという……なんでなんだろねー?!同作発表当時のカヤックは、エドワード・リーカースと女性シンガーのシンディ・アウズホーンが在籍したツイン・ヴォーカル体制。女性シンガーを起用するのはイイとして、力強い声なのは意外だったけど、ショッキング・ブルーとか、アース&ファイアとか、オランダにはパワフルな女性シンガーを有した先輩がいるから、その流れかもしれない。
そんな最新型カヤックが、思いっきりキャッチーな方向に舵をとって作ったのが、『カミング・アップ・フォー・エア』で、その極めつけが「アンディサイデッド」なのだ。シンディがリードをとって歌う情熱的なロック・バラードで、ハートあたりが歌ってもハマりそうな曲調だけど、そこはサスガのトン・スケルペンツェル。ピアノの優しい調べからスタートし、恋愛に踏み込みたい……けど踏みこめない、「アンディサイデッド」=「決心がつかない」揺れ動く心理を、じわじわと盛り上げていく。歌詞を担当したのは、イレーヌ・リンダース。
カヤックも「アンディサイデッド」はヒット性が高いと踏んだようで、この曲をシングル・カットして、プロモーション・ビデオも制作。こういう曲も、カヤックというバンドの本質なのだと思う。「プログレじゃないからダメ!」なんて言わないで、ポップ・ロック・バンドとしてのカヤックが再評価されてほしい。っていうか、誰か国内再発CD化してくれ〜!
それでは来月も、ロックで泣け!
音楽ライター 舩曳将仁
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