2016年1月8日 | カテゴリー:そしてロックで泣け! 舩曳将仁,ライターコラム
タグ: プログレ
あけましておめでとうございます。2016年も「少しマイナーだけど泣けるロック曲」を紹介していきたいと思いますので、宜しくお願いします。新年一発目は、僕の大好きなパブロフズ・ドッグでいってみよう!
よく考えたらすごいバンド名のパブロフズ・ドッグ。日本で初めて紹介されたのは1976年のこと。彼らのセカンド・アルバム『At The Sound Of The Bell』が『条件反射』という邦題で発売された。帯には「かつてのロック概念を打ち破る、新しい世代のための新しいロック・アイドルの台頭。秘密のベールを脱いでパブロフ、ついに日本上陸」とある。パブロフって略したら、アイドルではなくて、ヒゲの学者の方を想像するけどね。
『条件反射』にはイエス~キング・クリムゾンのビル・ブルフォードやロキシー・ミュージックのアンディ・マッケイが参加。それもあって、パブロフズ・ドッグは熱心なロック・ファンの間で知られていたようだが、知る人ぞ知るという存在だった。
その状況が変わったのは93年で、ソニーから75年のデビュー作『禁じられた掟』と2作目『条件反射』が国内初CD化された。僕が初めてパブロフズ・ドッグを聴いたのも、その再発時。とにかく聴いてビックリした。叙情派アメリカン・ロック・バンド、という情報は知っていたけど、まさかこれほどまでに泣きと陰りのメロディが満載とは! 本当に衝撃的だった。
「こんなすごいバンドなのに、知る人ぞ知る存在じゃもったいない! もっと広く知ってもらいたい!」と、そんな思いは、僕が音楽ライターを目指す動機にもなった。その思い入れもあって、後に『トランスワールド・プログレッシヴ・ロック』という本を監修した時に、『禁じられた掟』のジャケットを大きく表紙に載せて欲しいと頼んだ。
そこで、今回は音楽ライターの初心に戻って(?)、パブロフズ・ドッグの「オンリー・ユー」を紹介したいが、その前にザッと彼らの作品を紹介しておこう。
まず基本アイテムといえるのが、75年発表のデビュー作『Pampered Menial』と、76年発表の2作目『At The Sound Of The Bell』の2枚。
その後解散したように思われていたが、実は3作目もレコーディングしていた。だが所属レーベルが発売を拒否してお蔵入りとなり、後に『St.Louis Hound』という名義の同名タイトル盤が自主制作(ブートレッグ?)でコッソリ出ていた。90年代になって『Third』などのタイトルでCD化され、07年に発表された『Has Anyone Here Seen Siegfried?』というタイトルのCDが、現行のオフィシャル・ヴァージョンとなっている。
90年には、デヴィッド・サーカンプとダグ・レイバーンの元メンバーで再結成され、4作目となる『Lost In America』を発表。上記1~4作目までは、ボートラ入りの再発CDがあり、国内盤でも紙ジャケット仕様で再発された。
95年には元メンバーのマイク・サフロンがパブロフズ・ドッグ2000を結成して『End Of The World』を発表。01年にはデヴィッド・サーカンプがソロで『Roaring With Light』を発表。いずれも6曲入りのミニ・アルバムだった。
07年には、デヴィッド・サーカンプがソロで『Dancing On The Edge Of A Teacup』を発表。また10年には、再結成パブロフズ・ドッグの09年のライヴを収録した『Live And Unleashed』、そして通算5作目の『Echo & Boo』を発表。さらにスタジオの火事で焼失したとされていた75年録音のデモ音源『Pekin Tapes』のコピー・テープが奇跡的に発見され、14年にCD化されている。上記4作は国内盤でも発売され、僕がライナーを担当させてもらった。
15年には76年のライヴ音源が『Of Once And Future Kings…Live』のタイトルで発掘CD化されるなど、近年はライヴ活動もリリース状況も活発になっている。
泣ける曲という点からすれば、なにはともあれ初期2作をお勧めしたいが、今回はちょっとマイナーなところで、3作目収録曲「オンリー・ユー」を紹介したい。
歌詞のテーマは悲恋もの。自分の元を去っていった彼女に、君しかいないんだ、戻ってきてほしい、と訴えている。よくあるテーマだが、デヴィッド・サーカンプのヴォーカルが、尋常でないほどに泣きまくる。
ピアノの調べをバックにした冒頭の歌から、デヴィッド・サーカンプの声は悲しみをたたえているが、そこではまだ冷静で、落ち着いた雰囲気がある。ところが、サビで一気に感情が爆発。このサビの最初の歌詞「ラヴリー・ユー」の「ユー」のメロディの抑揚が、胸をギュッと締めつける。どこか演歌に通じるような歌いまわしだ。
彼女を失って、初めてその大切さを知った男の絶望が、何とか戻って来てほしいと願ってかき乱れる心の叫びが、「ラヴリー・ユー」の歌に込められている。このデヴィッド・サーカンプの独自の歌唱センス、感情表現こそが、パブロフズ・ドッグの悲哀感の根幹といえる。
2番目の歌メロからはメロトロンも登場し、デヴィッド・サーカンプの歌も悲痛さを増している。どこか弱々しいギターとメロトロンのインスト・パートを経て、ラストで執拗に「君だけなんだ」と繰り返す。「愛しい君よ。君だけが愛とすべての痛みに耐えることができた。君だけなんだ。君だけなんだよ」と。切なすぎるよなぁ。
惜しむらくは、3作目がアルバムとして最終的な完成をみていないために、デヴィッド・サーカンプの歌、各楽器の音に厚みがない。ギターやドラムの音色も軽くて、曲自体の重みが不足している。アレンジに関してももう少し凝ることができただろう。1・2作目に比べると影が薄いアルバムだけど、きっちりとプロデュースされていたら、同曲も本作も違う評価がされているはず。
まずはこの3作目からパブロフズ・ドッグを聴いてみようという人は少ないかもしれないけど、1・2作目が好きなら、きっと気に入るはず。先に紹介した近作も、派手さには欠けるけど良質の内容なので、ぜひチャレンジしてみてほしい。で、あとは待望の初来日が実現すれば、ってとこなんだけど、2016年に何とか……無理かなあ?
それでは、来月もロックで泣け!
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