2015年4月10日 | カテゴリー:そしてロックで泣け! 舩曳将仁,ライターコラム
タグ: ハード・ロック
ドイツの重鎮ハード・ロック・バンド、スコーピオンズが、2015年に新作『祝杯の蠍団』を発表した。あれ? 解散するって言ってなかったっけ?!
そう、彼らは2010年発表の『蠍団とどめの一撃』とともに解散宣言をした。ところが、アルバムのセールスは好調で、ツアーも世界各国で大盛況。それを受けて、あっさりと解散宣言を撤回する。
オジー・オズボーン、ジューダス・プリースト、ホワイトスネイク……、解散&引退とか言いながら後に撤回という図式は、ハード・ロック界で珍しいことではない。でも、それに見合うだけの活動が伴わないと批判を受ける。スコーピオンズの新作『祝杯の蠍団』も、その運命を背負っていた。
しかし、これが素晴らしい内容だった。各曲に80年代~90年代のスコーピオンズのエッセンスがバランスよく配分されていて、「だからスコーピオンズが好きなんだよな~!」とファンに再確認させるような仕上がりになっていた。
『祝杯の蠍団』は、ギターのルドルフ・シェンカーがスコーピオンズを結成して、50周年を記念する作品でもあるというから驚く。50周年って、驚異的すぎ?! 駅の階段を登るだけで、「ああ、しんどい」と言ってしまう自分に「渇!」だな。
さて、50年間にわたりハード・ロックを追求し続けてきたスコーピオンズだが、リード・ギタリストがウリ・ジョン・ロート(ウルリッヒ・ロート)だった時期(~78年)と、彼に代わってマティアス・ヤプスが加入した時期では、音楽性が若干異なっている。特に日本では、陰鬱で、もの悲しい雰囲気が濃厚なウリ時代の人気が高い。
僕はマティアスが加入した以降のキャッチーかつシャープなハード・ロックもお気に入りで、一般的に評価の高くない『電獣~アニマル・マグネティズム』(1980年)、『サヴェイジ・アミューズメント』(1988年)、ヒットはしたけどスコーピオンズらしくないという声もある『クレイジー・ワールド』(1990年)や『蠍団の警鐘 ヒューマニティー・アワーⅠ』(2007年)も愛聴している。
マティアス時代には泣きの名曲も多い。「スティル・ラヴィング・ユー」「ウィンド・オブ・チェンジ」「センド・ミー・アン・エンジェル」は、スコーピオンズを代表する名バラードとなっている。他にも、マティアス時代の隠れた泣きの名曲として、『ラヴドライヴ』(1979年)収録の「オールウェイズ・サムホェア」、『ブラックアウト』(1982年)収録の「静寂の煙」、『フェイス・ザ・ヒート』(1993年)収録の「ロンリー・ナイツ」など、機会があればぜひ聴いてみてほしい。
そもそもウリ時代、マティアス時代といっても、メインのソングライターはルドルフ・シェンカー(g)とクラウス・マイネ(vo)の二人で、彼らはデビュー当時から不動だから、ほとんどのアルバムに、スコーピオンズらしい悲哀メロディに溢れた泣ける曲が存在している。
では、数あるスコーピオンズの泣きの名曲のなかで、どれかひとつだけ選べ、と言われたら? 僕は迷わず「フライ・ピープル・フライ」を挙げる。同曲は、彼らにとって通算2作目となる『電撃の蠍団~フライ・トゥ・ザ・レインボウ』(1974年)に収録されている。
ウリがリード・ギターになって初のアルバム。ところが、作曲したのは、デビュー作の頃に関わっていたルドルフの弟のマイケル・シェンカー。歌詞はクラウス・マイネ。ウリ時代の曲だけど、でも作曲はマイケルだから……という、そこがちょっとややこしい。それが理由なのかどうか、「フライ・ピープル・フライ」は、ライヴでほとんど演奏されなかったようだ。
基本的なメロディ展開には、マイケルのエッセンスが強く入っている。だが、聴いていて胸が苦しくなるぐらいの哀愁と泣きの歌メロは、やはりスコーピオンズ、それも初期の彼らにしか出せなかった味わいだ。クラウス・マイネがタメながら歌う冒頭の歌メロなんて、それこそ演歌に通じる情念が感じられる。この曲を聴くと、ウリ時代のスコーピオンズにこだわる人がいるのも判らなくはない。
歌詞は、「みんなで空へ飛んでいこう、虹に向かって飛んでいこう」というもの。何よりウリ・ジョン・ロートによるむせび泣くギター・ソロと、クラウス・マイネの歌うドラマチックな哀愁のメロディが胸を打ちまくる。
ウリのオフィシャル・ホームページによると、「フライ・ピープル・フライ」のリード・ギターは、1974年4月7日に録音したようだ。今から41年前、マイケル・シェンカーの曲に、ウリ・ジョン・ロートが魂を吹き込み、比類なき名曲「フライ・ピープル・フライ」が生まれた。ウリが奏でるギター・ソロは、まるで歌っているかのように饒舌。チョーキングを駆使して熱い情感をこめまくっている。彼のスコーピオンズ時代のソロの中でも屈指のものだ。マイケル・シェンカーだったら、どんなソロを添えただろうか? 想像してみるのもおもしろい。
僕は、この「フライ・ピープル・フライ」を、4月に新生活を迎える人たちに捧げたい。少しの寂しさと不安を背負いながら、新天地で頑張ろうという人が、この曲を聴いて、「未来に向かって飛び上がっていこう」と、やる気をふつふつと奮い立たせてくれたら……。メロディの陰鬱さにとらわれて、ズドーンと落ち込まれると困るんだけど!
それでは来月も、ロックで泣け!
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