2016年4月8日 | カテゴリー:そしてロックで泣け! 舩曳将仁,ライターコラム
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2016年9月、マザー・テレサが聖人に列せられる見通しがあるという。それ自体はさておき、モラルの低下著しい世の中で、マザー・テレサの活動や言動に改めて注目が集まることは意義深いんじゃないかな、と。
マザー・テレサの活動に関しては本がいっぱい出てるし、ウィキペディアでチラッと見ても、その奉仕の精神には頭が下がる。「僕みたいな小市民には、そんなことできないな」と思うわけだけど、僕と同じように感じた記者がいて、マザー・テレサが1979年にノーベル平和賞を受賞した時に、「私が世界平和のために出きることってありますか?」と質問を投げかける。それに対するマザー・テレサの答えは、「家に帰って、家族を愛しなさい」だった。
ええこと言うなあ。こういうのを「寸鉄人を刺す」っていうのかな。心にグサッと突き刺さる。マザー・テレサの名言をまとめた本やサイトなどもあるので見てもらうといいけど、ごく普通の人が、普段の生活の中で、愛を感じながら生きる、「美しい生き方」のためのヒントになる名言が多い。
何をもって「美しい」とするかは難しいけど、マザー・テレサが言うように、自分の周りの人や物、仕事や言動などに対して、常に愛を込めて生きている姿は「美しい」と思う。
でも、2007年に発表されたマザー・テレサの私的書簡集『来て、わたしの光になりなさい(Come Be My Light)』によって、彼女も神の不在や孤独の念にさいなまされるなど、様々な葛藤を抱えていたことが明らかになっている。
大人になると、「美しい生き方してるな」と思わせる人と出会う方が稀で、「こんな人になりたくないな」と思うことの方が多い。「美しく生きる」っていうのは、簡単なようでいて、実は本当に難しい。
なんか説教くさい話になってきたけど、「自分は「美しく」生きているかな? そうありたいけど……」と、自問自答してしまうような繊細な感性の人に聴いてもらいたいのが、イギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド、マリリオンの「ビューティフル」だ。
マリリオンは、79年にスティーヴ・ロザリー(g)とミック・ポインター(ds)を中心に結成される。結成当時はシルマリリオンと名乗っていた。やがて2メートル近い身長のシンガー、フィッシュなどが加入し、バンド名をマリリオンと改める。
当時のイギリスは、若手のハード・ロック・バンドが台頭し、ニュー・ウェーヴ・オブ・ブリティッシュ・へヴィ・メタルとして騒がれていた。そのなかにあって、マリリオンはピーター・ガブリエル時代のジェネシスに叙情性とハードさを増量したような音楽性で勝負していた。
マリリオンは大手EMIと契約し、82年にシングル「マーケット・スクエア・ヒーローズ」でデビュー。83年にはデビュー・アルバム『スクリプト・フォー・ア・ジェスターズ・ティアー』を発表する。
デビュー作は英7位のヒットを記録。84年の2作目『フガジ』は英5位、85年発表のコンセプト・アルバム『ミスプレイスド・チャイルドフッド』では英1位を獲得。続く87年『クラッチング・アット・ストロウズ』も英2位と国民的バンドに成長するが、同作を最後にフィッシュが脱退してしまう。
看板シンガーの脱退でピンチに陥ったマリリオンだが、スティーヴ・ホガースという全くタイプの違うシンガーを入れて復活。89年の『シーゾンズ・エンド』を英7位に送りこんで見事復活。音楽的にも初期ジェネシスからグッと遠ざかり、もっと柔らかな叙情性で、ゆったりとドラマを描き出す音楽性に変化していた。
91年の『ホリデイズ・イン・エデン』はポップなアルバムだったが、94年の『ブレイヴ』ではシリアスなストーリー作に挑むなど、作品ごとに異なる方向性を打ち出した。
『ブレイヴ』に続いて95年に発表された『アフレイド・オブ・サンライト』では、有名人やセレブの破滅的な側面を描くというテーマがあったが、前作ほどシリアスでなく、メロディや演奏の魅力でストレートに勝負していた。そんな同作の中でもひときわ美しいメロディの魅力で聴かせるのが「ビューティフル」だ。
シンプルなコード進行ながら、歌メロディがジワリと心の奥に沁みこむように広がり、「美しく生きること」の難しさに触れた歌詞が、聴く者の心の弱い部分をキュッと締めつける。歌詞を次に意訳しておこう。
みんな知っている、私たちが美しいものを悪く呼ぶ世界に住んでいることを。
みんな知っている、私たちが美しいものに見向きもしない世界に住んでいることを。
天は知っている、私たちが売り出されている商品を美しいと呼ぶ世界に住んでいることを。
人々はかよわくて繊細な人にチャンスを与えず、彼らを笑い飛ばしている。
そして葉は赤から茶色に変わる。踏み固められるために。踏み固められるためだけに。
葉は赤から茶色に変わり、散り落ちる。散り落ちていく。
1番の歌詞では、この世の中がいかに醜いかが歌われる。今から約10年前の曲だけど、世の中や人の心がどんどんすさんできているだけに、より強いメッセージ性を感じさせる。サビでは誰も顧みない枯れ葉のはかない運命が歌われ、孤独感&虚無感が際立たされる。
だが、2番の歌詞では、醜い世の中で生きる人たちに希望が与えられる。
私たちは美しいものを悪く呼ぶ世界に生きる必要はない。
私たちは美しい世界に生きるべきだ。
私たちは「美しさ」ということに、もう一度チャンスを与えるべきなんだ。
なんかちょっと「ああそうか、美しく生きるべきなんだ」って気がしてくるよね。ところが、続くブリッジ部分で「美しく生きる」ための覚悟を問いかけてくる。
君は美しくあるための強さを十分に持っているか。
そのための信念を持っているか。
そのための勇気を持っているか。
発言に正直でいるか。
同じである必要はない。
決まった方法をとる必要もない。
ここに君の名前を書くんだ。
君は美しくあるために、ありのままでいることができるか?
熱の込もったスティーヴ・ホガースの声が、畳みかけるように決意のほどを問う。そして、ラストに向けてサビが繰り返され、このすさんだ世の中で、まっすぐ生きることの難しさが切々と歌われる。
「美しく生きること」、「美しくあること」、それを心がけているような繊細な心の持ち主なら、胸がキュッと締めつけられるはず。
マリリオンは以降もプログレッシヴで叙情性に溢れたアルバムを連発するが、フィッシュ時代も含めて、彼らのアルバムのほとんどが日本盤で手に入らないというのが残念すぎる。
それでは、来月もロックで泣け!
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