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「そしてロックで泣け!」第十五回 カルメンの「アイヴ・ビーン・クライング」

「オレの若い頃は」から始まる説教ほど、説得力のないものはない。息子に向かって「お父ちゃんの子どもの頃は、もっと勉強したぞ!」なんて言っても、「ウソやろ~?」と軽く笑い飛ばされるぐらいだから、大人だったら「お前の若い頃なんか知るか!」ってところだろう。でも、思わず職場の若い子に言っちゃったんだよな…。だって、まだ20代なのに、「休みの日は家でひとりゲームしてます」とか言うんだもん。

「別にそれでもええんやけど、遊びに誘いたいな、っていう女の子とかもおらんの?」
「その質問、セクハラっすけど。でも、まあ、好きな子とかいないっすね。恋愛とか、色々考えたり、もろもろ面倒くさいっす」
「面倒くさくないっす?!それが楽しいんやんか。あの子の好きなのなんやろ?なにげなく、サプライズ・プレゼントしよかな?とか」
「そういうの、今、気持ち悪いっすよ?バレたらラインでフルボッコっすよ」
「何それ?日本語?」
「ああ、ふなびきさん、まだガラケーっすよね」
「会いたいな、と思ってたら、いつの間にか彼女の家まで来ていたとか、さ」
「ストーカーっすね、それ」
「じょ、情熱がないねん!あの子と付き合いたい!あのバンド死ぬまでに生で見たい!音楽ライターになってやるー!とかさ、僕が若い頃は、もっと情熱を持って生きてたよ!」

ああっ、今まさに、「あんな風には成りたくない」と思っていた大人に、キレイな形で出来あがっちゃったよね。もう完全に自己嫌悪。でもさ、情熱って大切だと思うんだよね。

と、どうでもいい話をしておいて、今回の泣ける曲は、カルメン「アイヴ・ビーン・クライング」を紹介したい。

カルメンが結成されたのは、1970年のロサンゼルス。中心となったのは、フラメンコ・シンガーの母と、フラメンコ・ギタリストの父の間に生まれたデヴィッド・アレン。彼は1960年代中ごろからオフビーツ、マリアンヌなどのビート・グループで活動してきたが成功は掴めなかった。

そこで一念発起。デヴィッド・アレンとブレイヴ・バターというユニットを組んでいたデニス・トレロトラ(vo)、デヴィッドの妹のアンジェラ・アレン(vo,kbd)、イギリスからアメリカに来ていたブライアン・グラスコック(ds)らとフラメンコとロックの融合を目指したカルメンを結成して勝負をかける。

メンバー・チェンジを経てデビューを目指すが契約を結ぶことができず、1973年にイギリス行きを決行する。その時には、デヴィッド・アレン、アンジェラ・アレン、ブライアン・グラスコック、彼の弟のジョン・グラスコック(b)、フラメンコ・ダンサーとしてスペインでも活動していたロベルト・アマラル(vo)の5人となっていた。

ところが渡英前にブライアン・グラスコックが脱退し、イギリスでクリスティーのポール・フェントンが加わった。クリスティーのマネジメントを担当していたブライアン・ロングレイがカルメンと契約を結び、名プロデューサーのトニー・ヴィスコンティに引き合わされる。
 
こうして、1973年にリーガル・ゾノフォンからデビュー作『ファンダンゴズ・イン・スペース』を発表する。カスタネット、床を踏み鳴らすサパテアード、ダンス、リズム感、哀愁のフレーズ、コーラス・ワークなど、通常のロックと異なるアプローチのフラメンコを、ロックと理想的な形で結びつけていて、そのサウンドは今も衝撃的だ。

カルメンはアメリカのTV番組『ミッドナイト・スペシャル』に出演。アメリカ・ツアーも経て、1975年に2作目となる『ダンシング・オン・ア・コールド・ウインド』を発表する。フランスの煙草ジタンのパッケージをあしらったジャケットは、見たことがあるという人もいるだろう。本作では、アナログB面丸ごとを使って組曲を収録するなど、唯一無二のフラメンコ・ロック・スタイルを究極的な形で完成させている。

「アイヴ・ビーン・クライング」は、その2作目のA面2曲目に収録されている。邦題は「情熱の女」だ。特異なリズム、高らかに鳴るカスタネット、「オー、オー、オー」というコーラスと、冒頭からフラメンコ色が濃厚。鮮やかに転調して、アンジェラの官能的なヴォーカルが、「わたしはまた泣いてしまったの」と歌い出す。

この曲の歌詞、男が悪い奴でね。行きずりの恋だと言って、彼女を捨てて立ち去ってしまう。彼女は悲嘆にくれながらも、あの人を愛していると歌う。その哀しさと熱い思いがこもったアンジェラの歌は、まさに「情熱の女」という邦題がピッタリ。

歌パートからコーラス、メロトロンを交えた静かなパートへ展開し、彼女の深い孤独が演出される。それに続いて、「私は一人立ちつくす。私は一人残されたの」とコーラスが歌う。そして再び、嵐のようなカスタネット、ブイブイ唸るベース、せわしなく鳴るドラムに支えられた熱い演奏がラストに向けて畳みかける。これは彼女の諦めを表しているのではない。自分を捨てた男を、それでもなお想い続けるという、恋敗れてなお燃え上がる女の情念を表している。

燃えるような恋もしないで、「ストーカーっすね、それ」とか言ってたら、カルメンの良さはわからないよ! 僕なんて玉砕、玉砕、また玉砕の恋愛人生だからさ、「アイヴ・ビーン・クライング」聴くと、ボロボロ泣けちゃう。

トニー・ヴィスコンティの細やかなアレンジも見事に曲の雰囲気を盛りたてていて、カルメンという特異なバンドの、良いところだけをクローズアップして磨きあげたという印象だ。彼の手掛けた数ある傑作の中でも、カルメンのアルバムの完成度は群を抜いていると思う。

カルメンは1975年に『ザ・ジプシーズ』という3作目を残して解散してしまうが、残された3作品ともに強力な内容だ。1973年にイギリスへ渡っていなかったら、その3作も世に出なかったわけで、やっぱりそこには、カルメンのメンバーの燃えたぎる情熱があったはず。そういう熱さって、大切なんだよ。でも、デヴィッド・アレンも若いミュージシャンに「オレが若い頃はさ~」とか説教してたりして。

それでは、来月もロックで泣け!

Carmen / I’ve Been Crying

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当時のテレビ出演時の映像

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CARMENの在庫

  • CARMEN / FANDANGOS IN SPACE

    叙情溢れる英国ロックにフラメンコの要素を大胆に取り入れた個性派グループ、トニー・ヴィスコンティによるプロデュースの73年作1st

    フラメンコとロックを融合したサウンドで大きな注目を集めた5人組。トニー・ヴィスコンティのプロデュースによる1st。73年作。フラメンコの静と動を表現したオリジナリティー溢れるサウンドは現在でも十分刺激的。メンバーのジョン・グラスコックは後にジェスロ・タルに加入。

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