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「そしてロックで泣け!」第二十一回 UFOの「クリスタル・ライト」

エレキ・ギターを手に入れる以前、中学生の頃の僕の愛機といえば「布団叩き」だった。ヘッドフォンでハード・ロック、ヘヴィ・メタルを聴きながら、「布団叩き」でエア・ギター。ほぼ毎日、部屋で一人、エア・ライヴに勤しんでいた。
 
ある夜のこと、いつものように部屋で布団叩きを弾きまくっていたら、そこに母が踏み込んできた。「あんた何時や思てんの!!」と。アクションが激しすぎて、ヘッドフォンのジャックが抜けたのに気がつかなかったのだ。
 
でも、それで不憫に思ったんだろう。雑誌の通信販売に出ていた、アンプ、シールド、チューナーとかがセットされて3万ぐらいのエレキ・ギターを買ってくれた。黒いボディのストラトキャスター・タイプ。ヘッドにはギブソンに似せた書体でTomsonと書いてある。それでも「本物のエレキ・ギターが弾ける!」ってだけで幸せだったから、目いっぱい練習した。
 
ターゲットはマイケル・シェンカー。MSG「イントゥ・ジ・アリーナ」が弾きたくて弾きたくて。でもいきなり耳コピじゃ無理で、マイケル・シェンカーが在籍したUFOやMSGの曲が載っているスコア本を買った。

どの曲も難しかったけど、継続は力なり、それなりに弾けるようになっていった。そうするとスコアに載ってない曲も弾きたくなってきて、とにかくマイケル在籍時のUFOの曲は次々と耳コピしていった。出来はまあ、なんとなくそう聴こえる、というぐらいの完成度だったけども。

マイケル・シェンカーに惹かれたのは、やっぱり泣きのギター。特にUFO時代のマイケルが弾く泣きのギター・ソロは神がかっている。究極は『ライツ・アウト』収録の「トライ・ミー」後半部分だろう。そこでのむせび泣くギターは、マイケル・シェンカーのベスト・プレイと思う。

『フォース・イット』収録曲「ディス・キッズ」のラストに挿入された「ビトウィーン・ザ・ウォールズ」も素晴らしい。ギターが饒舌すぎる。
 
他にも『フォース・イット』収録の「ハイ・フライヤー」、『ノー・ヘヴィ・ペッティング』収録の「ベラドナ」「オン・ウィズ・ジ・アクション」とか、UFO時代のマイケル・シェンカーには泣きの必殺ギターが多いけど、個人的にイチオシで紹介したいのが、『フェノメノン』収録の「クリスタル・ライト」だ。

UFO / CRYSTAL LIGHT

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まずは簡単に彼らの歴史を紹介しておこう。UFOは69年にイギリスで結成され、70年に『UFO』でデビュー。当時のメンバーは、シンガーのフィル・モグ、ベースのピート・ウェイ、ドラムのアンディ・パーカー、ギターのミック・ボルトンの4人。
 
71年には2作目『フライング』を発表。サイケデリック・テイストのあるハード・ロックで、本国ではパッとしなかったが、エディ・コクランのカヴァー「カモン・エヴリバディ」がドイツと日本で受けた。71年には来日公演も行なっている。
 
その来日公演を収録した『ランデッド・ジャパン』を最後に、ギターのミック・ボルトンが脱退。UFOはかつてミックの代役でライヴをサポートしたことのある、スコーピオンズのドイツ人ギタリスト、マイケル・シェンカーのスカウトに成功する。
 
これがUFOを激変させる。マイケルは、ソリッドなリフ、流れるようなソロ、哀愁とハードさを備えた作曲センス、どれをとっても前任者より秀でていた。いや、彼はまさにギターの神だった。
 
フィル・モグの歌メロディ作りの才能も一気に開花。彼の声域は広くないが、自らの声が生きるメロディ作りには抜群のセンスを持っている。マイケルの提示したリフや楽曲のアイディアに、ピタッとはまる歌を乗せていく。その結果、マイケル参加後初のアルバム『フェノメノン』(74年)は、ハード・ロック史に残る傑作となった。
 
以降も『フォース・イット』『ノー・ヘヴィ・ペッティング』『ライツ・アウト』『オブセッション』と名作を連発。これまた名ライヴ作とされる『ストレンジャー・イン・ザ・ナイト』を残し、78年にマイケル・シェンカーは脱退する。
 
それ以降のUFOはフィル・モグ中心に活動を続け、イギリスではそれなりに成功を維持している。94年には『ライツ・アウト』期のメンバーで再結成。マイケル・シェンカーが離脱したり、出戻ったりと落ち着かなかったが、近年はフィル・モグ中心に順調な活動を行なっている。
 
だが、『フェノメノン』から『オブセッション』までのUFOが持っていた、胸の奥にズンと響くような叙情性は、78年以降はもとより、マイケルが復帰した94年以降のUFOにおいても再現されなかった。マイケルが在籍した70年代のUFOは、まさに孤高の存在なのだ。
 
そのなかにあって、「クリスタル・ライト」は、あまり目立たない曲といえる。ライヴで披露されたのも、『フェノメノン』発表前後の数回だけ。だが、マイケル期UFOの叙情美を代表する隠れた名曲と思う。

実はこの曲、スコーピオンズ「フライ・トゥ・ザ・レインボー」のコード進行を転用した曲となっている。「フライ・トゥ・ザ・レインボー」はマイケル・シェンカーとウリ・ジョン・ロスの共作ということになっているが、この前半部分がマイケルの作なのだろう。
 
後にマイケルはUFOのインスト曲「アルボリー・ヒル」を、自らのバンドMSGで歌入りの曲「テイルズ・オブ・ミステリー」として発展させている。それと似たようなことだが、「フライ・トゥ・ザ・レインボー」から「クリスタル・ライト」への発展ぶりを聴けば、同曲の叙情美には、フィル・モグの歌メロ・センスも重要な役割を果たしていることがわかる。

CRYSTAL LIGHT(1973 LIVE VERSION)

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『フェノメノン』レコーディング前、73年11月のライヴ音源による「クリスタル・ライト」が残されていて、聴いてもらうとわかるが、歌詞とソロが『フェノメノン』収録ヴァージョンと異なっている。ソロも泣かせるし、歌メロも出来上がっているが全体の緊張感には欠ける。この後すぐに『フェノメノン』のレコーディングとなるが、短期間で曲の完成度が急激に高まったことがわかる。
 
歌詞は、夢を抱きながらも挫折した時の孤独感みたいなことが描かれているようだけど、フィル・モグの湿り気のあるヴォーカルがヒリヒリとした心の痛みを掻き立てる。
 
そしてマイケルの泣きのギター・ソロ。ずっとアコギでコードを鳴らしていたところに、タメの効いたチョーキングを駆使して、まるで歌っているかのようなフレーズを紡ぎだしていく。短いソロだけど、傷ついた者の張り裂けそうな心の叫びが、強烈に伝わってくる泣きのギターだ。

実際にギターで同曲のソロを弾いてみるとわかるが、弾き手の感情の込め方ひとつで泣きの深さが変わってくる。ギターがどれほど感情と直結した楽器かということを教えてくれるソロでもある。
 
年齢を重ねた今、「クリスタル・ライト」を弾いたらどうだろう? いぶし銀のエモーショナルが出るのでは? と思ってギターを手にしたけど、指が思うように動かないという悲しい結果に……。
 
それでは、来月もロックで泣け!



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