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「そしてロックで泣け!」第九回 スパイロジャイラ「ブリング・ミー・バック」

それは、90年代初頭のこと。60年代~70年代に発表されたレアなアルバムが、怒涛の勢いで次々とCD化された。俗に言う再発ブームだ。

それこそ中古盤市場で10万円を超え、死ぬまで聴くことはできないと思っていたようなアルバムが、次から次へとCD化された。60~70年代を後追いで好きになった僕のような世代には、願ってもない嬉しい状況といえた。

それはまあそうなんだけど、当時は学生だったので、バイト代をいくらつぎ込んでも、お金が足りない。でも、見つけたら買わないと、次にいつ出会えるかわからない。

そのすぐ後には、音源発掘ブームもやってきて、ラジオ・セッション音源や未発表デモ音源が次々と登場したからもう大変。

当時はカケハシ・レコードみたいに便利なネットショップもないので、入手しようと思ったら、中古&輸入盤店を歩きまわるしかない。

そこで市場調査をする。どの店に、どのアーティストの再発CDが、ナンボであるか?とにかく毎週末、大阪の難波や日本橋に繰り出して、ひたすら中古&輸入盤屋めぐり。そりゃあ彼女も出来ないわな。ううっ、暗い学生生活でした! いやいや、それがあって今があるわけだから、良しとするか?!

今回は、そんな発掘音源アイテムの中から、隠れた泣ける曲として、スパイロジャイラの「ブリング・ミー・バック」を紹介したい。

スパイロジャイラはケント大学の学生だったマーティン・コッカーハムと女性シンガーのバーバラ・ガスキンらで結成されたイギリスのフォーク・ロック・バンド。活動中に3枚のアルバムを残した。

71年発表のデビュー作『セント・ラディガンズ』は、アシッド・フォーク色が強め。72年発表の2作目『オールド・ブート・ワイン』は、少しポップになっている。73年発表の3作目『ベルズ・ブーツ&シャンブル』では、マーティンとバーバラのデュオになっているが、チューダー・ロッジ、メロウ・キャンドルの唯一作とともに、英国フォーク3種の神器と呼ばれるほどの傑作となった。

スパイロジャイラのアルバムは、どれもレア・アイテム。中古盤屋でも現物を目にすることはなかった。「あった!」と思ったら、同名のアメリカン・フュージョン・グループのアルバムだったり。いや、仮にあったとしても買える値段ではなかった。

それが90年代初頭に、ドイツのレパトワから3枚とも再発CD化されたんだから、 「それ! 輸入盤屋に急げー!」と。これが前評判通りの傑作ぞろいで、家で繰り返し聴きました。ずっと、そんな感じだから、そりゃあ彼女も出来ないわな。ううっ、暗い学生時代でした。

それはさておき。再発ブームも落ち着いてきたかな?という2000年、突如韓国のシー・ワンから、スパイロジャイラの未発表デモ音源集『バーン・ザ・ブリッジズ』が登場した。恐らく生産数も少ないだろう。これは売り切れたら大変と、慌てて難波の某店で購入。その後、すぐにレパトワからも発売されたので、そんなに急ぐ必要はなかったんだけど、シー・ワンのCDには、スパイロジャイラのロゴ・ステッカーが封入されていた。レパトワの方はどうなんでしょう?

『バーン・ザ・ブリッジズ』には、スパイロジャイラが70年から71年にかけて、ケント大学でレコーディングした未発表デモを中心に17曲を収録。まさに彼らがデビューする前夜の記録となっている。

デビュー作『セント・ラディガンズ』に収録される曲もあるが、多くは未発表曲。ほとんどがアシッド・フォーク色の強いなかにあって、驚くほどオーソドックスなラヴ・ソングなのが、「ブリング・ミー・バック」だ。

ギターとピアノをバックに、マーティン・コッカーハムがダミ声で歌い出す。歌われるのは、恋をしたら誰もが一度は味わう不安な感情と自信のなさ……と言っていいかな?その自分の弱さで、別れてしまった女性のことを思い出しているようにも思える。マーティンの声は、どこか寂しげだ。

この歌のハイライトは、そこからサビまでの展開。バーバラ・ガスキンの神秘的といえる美しくもはかなげな声が、打ちひしがれている彼に語りかける。

「彼女の命の歌に耳を傾けなさい。呼んでいる。呼んでいるでしょ。私を連れ戻して、今の私にはあなたが必要なの。助けて、助けて!と」

そして、マーティンとバーバラが共にサビを歌う。

「僕に教えて、僕はひとりじゃないんだと、僕は君を愛している」

ここは、彼女の声であり、また彼の声でもあると解釈したい。男女がすれ違って、でも心では互いに互いを求めている。そんな状況を描いているんじゃないかと思う。ちょっとミュージカルのワンシーンぽいけど。

バーバラが歌い出すところからのメロディでは、心の中のざわめきが大きさを増していくように盛り上がり、「I Love You」が柔らかく波打つように引き延ばされて歌われる。手垢にまみれたフレーズなのに、聴き手の胸をはげしく打つ。ひなびたヴァイオリンの音もキュンとくる。

マーティンの愁いを帯びたメロディ・センスとバーバラの透き通るような歌声のコラボ、これこそがスパイロジャイラの魅力だと思うし、この曲にはシンプルに、それが表れている。

胸に迫る、泣けるイイ曲なのに、スパイロジャイラは、この曲をどのアルバムにも収録しなかった。あまりにもストレートすぎたからかな?でも、埋もれなくてよかった。

では、また来月、ロックで泣け!

「Bring Me Back」

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