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「そしてロックで泣け!」第十八回 イリュージョンの「マドンナ・ブルー」

90年代初頭の再発CDブームに乗って、ほぼ引退状態にあったアーティストが活動を再開するということがあった。ブリティッシュ・インヴェイジョン・オール・スターズもそのひとつ。

どこまで本格的に活動していたのかは知らないが、ある日、彼らの『リグレッション』というCDと出会った。91年に発表された作品で、メンバーはクリエイションのエディ・フィリップス、ダウンライナーズ・セクトのドン・クレイン、ナッシュヴィル・ティーンズのレイ・フィリップスとキース・グラント、ヤードバーズのジム・マッカーティ。なるほど、ブリティッシュ・インヴェイジョンと騒がれた60年代中頃の英ロック・シーン体現者たちが顔を揃えている。

収録されているのは、「トレイン・ケプト・ア・ローリン」「ルート66」など、スタンダードな曲ばかり。裏ジャケットでは、ギター型の風船を持ったメンバーがおどける姿で写っていて、それが内容の全てを表している。ええ歳したおっちゃんたちが、楽しみにスタジオで演奏したモノを収録したような気楽な内容で、他に買うべきCDを犠牲にしてまで、これを買ってしまった自分を激しく責めるのでした……。

ここで注目したいのが、同作に参加している元ヤードバーズのドラマー、ジム・マッカーティ。ブリティッシュ・インヴェイジョン・オール・スターズはもとより、再結成ヤードバーズやニュー・エイジ系音楽のステアウェイをやりはじめるなど、どこかスタンスが軽い。ミュージシャンとしてのイメージはパッとしないんだけど、実は類まれなる叙情派メロディメイカーなのだ。

ヤードバーズ解散後、ジム・マッカーティは同バンドのシンガー、キース・レルフ、キースの妹ジェーンらと69年にルネッサンスを結成する。クラシックとロックを融合させた孤高の音楽性を誇ったが、『ルネッサンス』(69年)、『イリュージョン』(71年)を残して解散する。同連載の1回目に、『イリュージョン』収録曲「ラヴ・イズ・オール」を紹介しているが、同曲がジム・マッカーティの作。

ルネッサンスはメンバーを総入れ替えして、アニー・ハズラムをシンガーに活動を再開。一般的に知られているルネッサンスは、実は第二期ルネッサンスだということは、カケレコ・ユーザーならご存知でしょう。

ジム・マッカーティは、第二期ルネッサンスにも作曲者として関わっていて、第二期のデビュー作『プロローグ』(72年)に「バウンド・フォー・インフィニティ」、『燃ゆる灰』(73年)に「オン・ザ・フロンティア」という名曲を提供している。

まずは「バウンド・フォー・インフィニティ」を聴いてもらいたい。第二期ルネッサンスに関わる作詞家ベティ・サッチャーとジムの共作曲で、ジムの叙情派メロディメイカーぶりがわかってもらえるだろう。

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ジム・マッカーティはシュットというバンドを結成し、ルネッサンスに提供した曲のセルフ・カヴァーを収録した『オン・ザ・フロンティア』(73年)を発表。こちらもジムらしいメロディが満載されたブリティッシュ・ポップ作だが、ジャケットがひどい!

その間に第二期ルネッサンスが成功しちゃったもんだから、「オリジナルの俺たちも何かやる?」ということになったかどうか、ジムはキース・レルフら第一期ルネッサンスのメンバーで活動再開をめざす。ところが、その直前の76年5月14日、キース・レルフが感電死するという悲劇に見舞われてしまう。

ジム・マッカーティはキース・レルフの意思を引き継ぎ、第一期ルネッサンスのメンバーであるジェーン・レルフ、キーボードのジョン・ホウクン、ベースのルイ・セナモ、さらにギターのジョン・ナイツブリッジとドラムのエディ・マクニールを加えて、イリュージョンを結成する。キース・レルフはバンド名をナウというダサいものにしようとしていたらしいから、そうならなくてよかったと思うなう。

イリュージョンは77年にデビュー作『アウト・オブ・ザ・ミスト』を発表。まずはトップに収録された「イザドラ」をお聴きください。

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演歌に通じる哀切が溢れんばかりのこの「イザドラ」を筆頭として、同作には叙情性豊かなメロディとクラシカルなピアノが醸し出す気品があり、叙情派メロディ愛好家なら、是が非でも聴いておきたい一枚だ。

78年にはジャケットも気合の入った『イリュージョン』を発表。今回特におススメしたいのが、同作の一曲目に収録された「マドンナ・ブルー」だ。

ILLUSION / MADONNA BLUE

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冒頭のギター・フレーズからもうたまらんでしょ? ジムのソフトなヴォーカル、それを支えるジェーンのコーラス、二人のハーモニーは柔らかだが、駆けるようなピアノや力強い演奏が、愛する人を失った心のざわつきを表現するかのよう。そしてサビのパートへ。

「さようなら、マドンナ・ブルー、僕は君にすべてをささげた。さようならマドンナ・ブルー、僕は君を愛している。君もそれを知っているだろ。マドンナ・ブルー」

愛する人を失う辛さ、胸を締めつける思い、感情の震えが爆発している。ジェーン・レルフの声もジムを上回る熱さでグイグイと迫ってくる。

中間部分、ジムが震えるような声で「おー、マドンナ・ブルー」と歌いだし、ジェーンもそれに呼応。二人の歌が高ぶり、頂点を迎えるところでラストのサビ・パートヘ。曲はシンフォニックと呼んでもいい壮大な盛り上がりをみせる。
 
「マドンナ・ブルー」は歌メロが終わってからのインスト・パートでも泣かせる。シンプルかつクラシカルながら、神経質に響くピアノ、エモーショナルなギターが、喪失感で取り乱す心を煽りたてる。前半の畳みかけるような歌パートとは一転して、心の動揺をジワジワと描きだしていく。イリュージョン屈指のドラマ性を誇る名曲だ。

他の曲もメロディ豊かな曲ばかりで、『アウト・オブ・ザ・ミスト』と並ぶ名作なのだが、当時は成功しなかった。イリュージョンは3作目の制作に入るが、お蔵入りになってしまい、そのまま解散してしまう。

同音源は後に『エンシャンテッド・カレス』のタイトルで発掘CD化されている。音が少し軽くなっているが、同作にも味わい深いメロディ満載だ。これまでに何度もジャケットを変えて再発されているが、日本のエアー・メイルから独自に紙ジャケ化されたCDは、緑を基調にしたデザインに金文字のタイトルという凝ったもの。ライナーは僕が書いてます。担当者から「3000字程度で」と依頼されたが、勢いに乗って4000字くらいは書いたはず。

01年には、ジム・マッカーティとジョン・ホウクン、ジェーン・レルフ、ルイ・セナモが再集結して、ルネッサンス・イリュージョン名義で『スルー・ザ・ファイア』を発表。初期2作ほどではないにしろ、叙情的作風が魅力的な良作に仕上がっていた。でもジムはというと、再結成ヤードバーズとかの活動を中心にしているみたい。まだ「マドンナ・ブルー」みたいな曲を生み出しそうなポテンシャルは持ってると思うんだけど、なぜこの路線を追求しないのか、残念だなぁ。

それでは、来月もロックで泣け!


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