2014年12月30日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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こんにちは、カケレコ店長の田中です。
今年ももうあと3日です。
カケレコ的2014年総括として、2014年に発売されたCDの中から、ベストセラー盤をピックアップしつつ、いくつかのテーマに分けながら、1年間のプログレ/オールド・ロック・シーンを振り返ってまいりましょう。
年末年始休みのロック探求の参考に少しでもなれれば幸いです。
まずは、カケレコで今最も熱いジャンル「プログレ新鋭」カテゴリーを見てまいりましょう。
今年光ったのがロシアのプログレ・シーン。ウクライナ問題やルーブル暴落など、政治・経済的には危機の状態にあるロシアですが、プログレ・シーンは大きく盛り上がりました。
2015年も変わらず優れたグループ&作品が生まれることを願うばかりです。
ベストセラーの3枚をピックアップいたしますよ~。
本格的な音楽教育を受け、交響曲も書けるほどにクラシックに精通したKey奏者&コンポーザーのGennady Ilyinを中心に、ロシア南西部のウクライナ国境に近い町クルスクで結成された新鋭プログレ・グループ。
EL&Pをモダンなヘヴィネスでアップデートしたような重厚極まる「動」のパートと、対照的にエニドばりにクラシカルでロマンティックな「静」のパートが鮮やかな対比したドラマティック極まる渾身の2014年大傑作!
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あのチャイコフスキーも輩出したサンクトペテルブルク音楽院出身で、作曲家/Key奏者のGennady Ilyinにより94年に結成された、90年代以降のロシア・プログレを牽引するグループ、LITTLE TRAGEDIESを特集!
ずばりLITTLE TRAGEDIESやLOST WORLDに比肩する、ロシア注目の新鋭、鮮烈な2014年デビュー作!
ベテランで言えばハンガリーのAFTER CRYINGにも肩を並べるクラシカルなシンフォを聴かせますよ~。
2011年のデビュー作もヴィンテージなプログレ・ファン歓喜の傑作でしたが、この2014年作2ndもジェネシスやイエスやEL&PのDNAを継ぎつつ、モダンなヘヴィネスで躍動する傑作。
ロシアが誇る二大プログレ新鋭バンド、LOST WORLD、LITTLE TRAGEDIESに割って入る実力を持った注目のグループ!
ロシアが誇るプログレ新鋭バンドLOST WORLDは、廃盤だった06年の傑作が、2014年新たにリイシューされましたね!
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キング・クリムゾンからの影響が感じられる硬質でアグレッシヴなサウンドをベースに、クラシカルなヴァイオリンやフルートが疾走するテクニカル・アンサンブルが痛快な、現在最も注目すべき新鋭の一つですLOST WORLDの魅力に迫るインタビュー!
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LITTLE TRAGEDIESとLOST WORLDを双頭に、豊かなクラシック音楽の土壌に根ざしたダイナミックかつ格調高いプログレ・グループが続々と登場しているロシアのプログレ新鋭シーンを特集!
90年代以降のプログレ新鋭シーンの幕を開けたバンドといえば、北欧はスウェーデンのアネクドテン。
アネクドテン、それに続くアングラガルドの2大バンドが築いた土壌のもと、00年代に入ってもムーン・サファリをはじめ、数多くのバンドが登場しています。2014年に発売された中で人気だった作品を3枚ピックアップいたしましょう。
スウェーデン出身のFredrik Larssonによるソロ・プロジェクト。2014年作の2nd。
ドラムがサポートしている以外は、キーボード、ギター、ヴォーカルなどすべての演奏をおこなうマルチ・プレイヤー&コンポーザーで、あのムーン・サファリに一人で対抗できる、と言っちゃっても過言ではないかも!?
オープニング・ナンバーからもうあまりにファンタスティックなシンフォニック・ロックに感動しっぱなし!
キーボード奏者でコンポーザーのMats Benderを中心に、妻のAnna Jobs Bender(リードVo)、息子のMattias Bender(ドラム&バッキングVo)、娘のJohanna Bender(バッキングVo)を配した、Benderファミリーを中心とするスウェーデンのシンフォニック・ロック・グループ。2014年作の3rd。
北欧らしいヒンヤリと透明感あるシンフォニック・サウンドに、女性ヴォーカルとメランコリックなメロディが美しく映える北欧シンフォの快作!
2012年に結成され同年にデビューしたスウェーデンの新鋭プログレ・バンド。2014年作2nd。
ツインKey編成の5人組だったデビュー作からKey奏者一人が抜け、4人組となって制作。12分を超えるオープニング・ナンバーなど、柔和で幻想的だったデビュー作と比べ、演奏は洗練されてソリッドになり、音のみずみずしさと艶もまし、モダンなプログレとしてのダイナミズムがグッと増した印象。
これは素晴らしい作品!
ロシアとともにここ最近シーンが盛り上がっているのがオランダ。
特にCHRISのイマジネーションたるや、凄まじい!
オランダのマルチ・ミュージシャンChristian Bruinによる一人プロジェクト。
1年間に渡って展開する大河ドラマならぬ大河ミュージックの第一弾。
光景が眼前に迫ってくるような、躍動感みなぎるイマジナティブなサウンドは彼の真骨頂。
これはファンタスティック・プログレの傑作!
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注目のプログレ新鋭の魅力に迫る「アーティスト・インタビュー」企画。近年続々とメロディアスな名作がリリースされているオランダのプログレ・シーンの中でも特にその才能に注目が集まるコンポーザー&マルチ・インストゥルメンタル奏者のCHRISことChristiaan Bruinにインタビュー。
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オランダならではの端正でいて素朴な人情味にも溢れたメロディアスなプログレッシヴ・ロック名作をセレクトいたしましょう。フォーカスの他にも愛すべきグループがたくさん居ますね。
カケレコ月間ベストセラーになるなど出世作となった前作に続く2014年作4thが登場!
前作で極めたキャメル系シンフォ・サウンドに、モダンなエッジとダイナミズムが加わり、ドラマティックさを増したダッチ・シンフォ快作!
往年のプログレのDNAというと、ジェネシス系、キャメル系、クリムゾン系がポピュラーでしたが、最近、ピンク・フロイドのDNAを継ぐバンドが登場してきていますね。
昨年はノルウェーのAIRBAGが人気でしたが、今年人気だったのがこちら。
ずばり「ピンク・フロイドのメランコリーと音響感覚 meets ジェネシスの幻想美」。
モダンな音響センスを持ったSSWのバックを、ヴィンテージなプログレ新鋭バンドがサポートして幻想美を加えた、というようなスウェーデン新鋭、2014年デビュー作!
ピンク・フロイド系の新鋭プログレといえば、ポーランドのLYNXレーベル所属のバンドも注目。LYNXレーベルを代表するバンドMILLENIUMの2014年作も人気です。
オープニングを飾る19分を超えるナンバーは、ベートーヴェンやワーグナーなど偉大なる作曲家へのオマージュであるとともに、ジェネシス「サパーズ・レディ」やピンク・フロイド「エコーズ」など偉大なるプログレ名曲へと捧げられた大曲!
ポーランドのプログレ新鋭シーンについては、日本のプログレ新鋭ミュージシャンnetherland dwarfによる記事も要チェック。
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「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことをコンセプトに、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を幅広く紹介するコラム。担当は、MUSEAからデビューした日本のアーティストnetherland dwarf!
カンタベリーのDNAを継ぐポップ・ロックなグループも注目ですね。
SYD ARTHURの2014年作も人気でしたが、カケレコで一番人気だったのがこれ!
スタックリッジ meets カンタベリーな新鋭がイギリスから登場!
この2014年作、ニッチ・ポップとカンタベリー・ミュージックのファンならド直球ですよ~。
スウェーデンとともに90年代のプログレシーンを牽引したイタリアをはじめ、北米、南米からも名作が生まれました。
FINISTERRE、LA MASCHERA DI CERA、HOSTSONATENを率いて次々にプログレ傑作を生み出した90年代以降を代表する奇才ファビオ・ズッファンティが2014年、活動20周年の集大成としてリリースしたモダン・プログレ大傑作ソロ!
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HOSTSONATEN、FINISTERRE、LA MASCHERA DI CERAを率いて次々の傑作をリリース。90年代以降のイタリアン・ロック・シーンを牽引する天才と言って過言ではないFabio Zuffanti関連作を特集!
イエス、ジェントル・ジャイアント、カンサスが好き?でしたら、このカナダの新鋭はやばいですよ~。北米らしい爽快&痛快なプログレ・ハード快作!
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ハイ・トーンのヴォーカルとヌケの良いコーラス・ワーク、そして、突き抜けるように躍動感いっぱいのアンサンブル。そんなイエスのDNAを継ぐ00年代以降の世界各国のプログレ作品をセレクト!
ずばり、ブラジルからのMOON SAFARIへの回答!
透明感あるヴォーカルと美しいメロディ、そしてムーグとギターによるめくるめくドラマティックなアンサンブル。激レコメンドですよ~。
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新鋭プログレ部門で今ホットな作品の一つ、南米ブラジルの新鋭プログレ作品『BRUNO MANSINI/DREAMS FROM THE EARTH』を出発点に、世界のプログレを巡ってまいりましょう。
他にもプレグレ新鋭カテゴリーには注目作品がいっぱいあって、どれも紹介したいのですが、記事があまりに長くなってしまうので、ここまで。続きはこちらの記事を是非ご覧ください。
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90年代以降にプログレ新鋭シーンが盛り上がり、00年代に入っても注目の作品が続々とリリースされています。その勢い衰えず、次々と優れたプログレ新譜が届く2014年。入荷した注目作をピックアップいたしましょう。
ジャズ・ロック/アヴァンギャルドの新鋭シーンも、シンフォニック・ロックに負けじと盛り上がっていますね。
『ROCK in OPPOSITION JAPAN 2014』も11月に開催されましたし、2015年も要注目でしょう。
ベストセラーはこちら!
アルゼンチンが誇る新鋭チェンバー・ロック・バンドと言えば?SLAPP HAPPYやCOSのファンにはたまらない女性ヴォーカルのコケティッシュ声炸裂!
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00年代に入ってジャズ・ロック/チェンバー・ロック/アヴァン・ロックの充実ぶりが凄い!ということで、ユーロ各国から北米、南米まで、世界中から届くジャズ・ロック/チェンバー・ロック/アヴァン・ロックの2014年新譜をピックアップ!
新鋭に負けじと、往年のプログレ名バンドからも新譜が届きました。
巧みなリズム・チェンジによって場面を切り替えながら、映像喚起的にストーリーを紡ぐアンサンブルはずばりキャメル『スノーグース』直系!80年代に叙情派シンフォ名作を残したグループによる復活の2014年作!
さぁ、ここからはリイシュー盤をピックアップしてまいりましょう。
プログレ系のリイシュー・レーベルで一番人気なのがFLAWED GEMSですが、その中でも断トツのベストセラーだったのがこの作品。
スージー・クアトロのお兄さんって、こんなにも素晴らしいキーボード奏者だったのか。この75年作は、トレース『鳥人王国』あたりと並び称されるべきクラシカルなキーボード・プログレ逸品ですよ!
FLAWED GEMSレーベルのリイシュー盤のリストはこちら!
今年は、旧ユーゴなど東欧のプログレの名作が多数リイシューされて盛り上がりました。カケレコのWebマガジンでも積極的に取り上げてまいりましたので、あらためてチェック是非。
こ、これは旧ユーゴ屈指のプログレ傑作ですよ。
蘭トレースの端正さと伊レ・オルメのほの暗い叙情美やヘヴィネスを合わせつつ、奇天烈さや熱気、東欧ならではの哀感も混ぜ込んだアンサンブルはプログレ・ファンは歓喜すること間違いなし!
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旧ユーゴを代表するプログレ・グループの一つ、SMAKの75年のデビュー作『SMAK』をピックアップ!
こ、この1曲目、ずばり旧ユーゴからのフランスATOLLへの回答!
シャープなリズム隊、壮麗なキーボード、音響センス抜群なギター、そして、スロヴェニア語のセンチメンタル&ドラマティックなヴォーカル。
ジャケは残念ですが、サウンドはグレイト!
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全編に渡って荘厳に響き渡るOldrich Veslyによるムーグ・シンセ。そして、スラヴ的な哀感たっぷりのメロディとヴォーカル。東欧を代表する傑作のみならず、チェコはボヘミア地方の出自を持つ彼らだからこそ出せた濃厚なサウンドを持つユーロ屈指と言えるシンフォニック・ロック傑作。
ユーロ・ロックのリイシュー盤でベストセラーだったのがスペインのCAI。
イタリアのPIERSALIS、フランスのIRISも大人気でした。
これぞスパニッシュ・プログレ!シンフォニック・ロックに、フラメンコなどアンダルシアの民族音楽、そしてフュージョンが融合したサウンドはかなりの完成度ですよ~。
イ・プーの「愛」を「郷愁」に変えたようなサウンドからはリリシズムが溢れんばかり。
サルディニア島出身、GRUPPO 2001のリーダーによる愛すべき74年作ソロ。
フランス印象派サイケ・ポップ!?
初期ピンク・フロイドからの影響とともに、ドビュッシーやバッハなどクラシックの素養を練り込んだ愛すべきフランチ・ロックの逸品。
リイシュー盤と言えば、韓国のBIG PINKレーベルも相変わらず勢いがあって、毎月、驚きのニッチ&ディープ盤を多数リイシューしてくれましたね。
ベストセラーのNo1、No2はこちら!
リーダーは、ウィングスで「My Love」の名ソロを残した名ギタリストで、バックは、グリース・バンド + フランキー・ミラー・バンド!
そりゃ、英スワンプ屈指の大傑作になるにきまってるでしょ!
このカナダのSSW、THE BANDをはじめ、GREASE BANDやHENRY McCULLOUGHやBRONCOやFRANKIE MILLERあたりのサウンドが好きならグッとくること間違いなし。
BIG PINKというとSSWやルーツ・ロック作品がメインでしたが、今年はビートリッシュなニッチ・ポップのリイシューも印象的でした。
ポール・マッカートニー~ピート・ハムの系譜にあるエネルギッシュなヴォーカルと甘くキャッチーなメロディがたまらない!
アビーロードなどで録音され、77年にEMIよりリリースされたニッチなパワー・ポップ名品!
ポール・マッカートニー風というとエミット・ローズみたいなポップな作風が多いですが、これは「Maybe I’m Amazed」タイプのロックなポール直系で、ウィングスのファンはたまらないだろうなぁ。
ナッシュビルからのウィングスへの回答!
韓国の紙ジャケ・レーベルといえば、BELLA TERRAレーベルも枚数は少ないものの注目盤が多数ございます。
今年リイシューされたこの作品は人気でしたよ~。
かな~り過小評価されているミュージシャンだなぁ。霧の向こうから聞こえてくるようなファンタスティックな佳曲ぞろいで、もうニッチ・ポップのファンは必聴と断言!
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過小評価されている英国のソングライター&ヴォーカリストの一人と言えるでしょう。MANFRED MANNで活躍したMike Huggの72年作1stソロ『Somewhere』と73年作2ndソロ『Stress & Strain』をピックアップ!
いかがでしたか?
2014年のロック探求の日々はワクワクでいっぱいでしたか?
まだまだ残り3日間ございますので、聴き逃したCD、気になるCDがございましたら、是非ゲットして、年末年始のロック探求をお楽しみください。
2014年の1年間の変わらぬご愛顧、ただただ感謝申し上げます。
2015年もお客様のロック探求のワクワクの最良のパートナーとなるべく、品揃え、サービスの両面を磨いていければと思いますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
99年結成のポーランド屈指のプログレ新鋭バンド。最高傑作と言える圧倒的な強度のシンフォニック・ロックを聴かせた前作からわずか1年でリリースされた2014年作10thアルバム。「完璧なメロディを探して」というタイトル通り、アルバム冒頭から伸びやかなハイ・トーンのヴォーカルがアカペラで高らかに歌い上げ、鳥肌もの。間髪いれず、彼らの持ち味である、ピンク・フロイドゆずりのディレイ音による空間的なアンサンブルの中、ギター、続いてサックスがリードを取る展開もスケール大きいです。このタイトル・トラックは、ベートーヴェンやバッハやワーグナーなど偉大なる作曲家へのオマージュであるとともに、偉大なるプログレ大曲、ジェネシス「サパーズ・レディ」やピンク・フロイド「エコーズ」やイエス「危機」へのオマージュとして作られた19分を超える大曲。メランコリックでいてスタイリッシュな彼らならではのプログレッシヴ・ロックを極めた名曲です。ロング・トーンでまるで歌うように優美に奏でられるギターと夢想的なサックスが柔らかにメロディを紡ぎ合うインストあり、ストリングスが艶やかに彩る、愛とともに裏切りを描いた渾身のバラードあり、ピンク・フロイドゆずりの洗練を極めたアンサンブルとともに突き抜けたメロディ・センスで聴き手を壮大な音のストーリーへと導き感動を誘うサウンドは彼らの真骨頂。前作に負けず劣らずの傑作です。
06年にロシアはモスクワで結成された新鋭プログレ・グループ。EL&P、U.K.、イエス、ジェネシス、クリムゾン、ツェッペリンに影響を受けたKey奏者でコンポーザーのSergey Bolotovを中心にキーボード・トリオとして活動をスタートし、ヴァイオリン奏者やフルート奏者やギタリストをゲストに迎えて録音され、2014年にリリースされたデビュー作。まるでキース・エマーソンのような重厚かつテンションみなぎるピアノと艶やかに舞い上がるヴァイオリンとがダイナミックに躍動するオープニングから、デビュー作とは思えない鮮烈なプログレを聴かせます。シャープなドラム、ジャズ/フュージョンの確かな素養を感じるベースによるリズム隊も安定感抜群で特筆。瑞々しくリリカルなピアノに、フルートやヴァイオリンが静謐に響く映像喚起的なパートも素晴らしいし、レ・オルメ『フェローナ〜』ばりのキーボード・プログレもカッコ良いし、クラシカルなプログレとして、同郷の新鋭LOST WORLDや、ベテランで言えばハンガリーのAFTER CRYINGあたりと肩を並べる、と言っても過言ではないでしょう。これは素晴らしい作品。ヴァイオリンとフルートをフィーチャーしたシンフォニック・ロックのファンは必聴!
ブラジルはサンパウロ出身のコンポーザー&マルチ・インストゥルメンタル奏者。2013年デビュー作。煌びやかなトーンで荘厳に鳴り響くキーボードとたおやかなアコギによるバッキング、その上で流麗なメロディを紡ぐムーグ・シンセ、精緻なタッチで伸びやかなメロディを奏でるギター、心にスッと入り込む透明感あるヴォーカルと豊かなコーラス・ワーク、美しくキャッチーなメロディ・ライン。オープニング・ナンバーを聴いて、ムーン・サファリが頭に浮かびました。ムーン・サファリのKey奏者/VoのSimon Akessonに曲調・声質ともによく似ている気がします。クイーンばりのコーラス・ワークから、ムーグとエレキがめくるめくメロディアスなリードを交換しあう間奏部分のドラマティックさも特筆。イエスの明快さとジェネシスの叙情美とがあわさったようなサウンドは往年のプログレ・ファンは歓喜すること間違いなしでしょう。2曲目もまた、瑞々しいアコギの爪弾きに、艶やかな音色のストリングスとピアノが入るイマジネーション豊かなイントロも良いし、そこから、タイトなリズムが入り、ムーグとギターがのびのびとリードを奏でるダイナミックなパートへとスイッチする展開も心躍るし、これは素晴らしいです。イエスやジェネシスのファンはもちろん、ムーン・サファリのファンは必聴と言える驚きの快作!
78年に結成され、80年代に叙情派シンフォの名作を残したドイツのプログレ・バンド。26年ぶりとなる2014年作。伸びやかに歌い上げるギターと柔らかなトーンのリリカルなムーグによるメロディアスなリード、そして、まるでオーケストラのように壮麗に鳴りひびくストリングス。巧みなリズム・チェンジによって場面を切り替えながら、映像喚起的にストーリーを紡ぐアンサンブルはずばりキャメル『スノーグース』直系。躍動感あるリズムに乗って次々と溢れ出るファンタスティックなメロディの数々に、シンフォニック・ロックのファンは歓喜間違いなしと断言いたします。オール・インストでもまったく物足りなさはないと思いますが、ヴォーカル曲もあって、ゲルマンらしい叙情に満ちたエモーショナルな歌声がまた絶品。アコギのパートも霧に包まれたように幻想的で良いし、ピアノが転がるとバロック音楽の香りに包まれて感動的だし、これぞジャーマン・シンフォと言えるとめどない美旋律に溢れています。サウンドは明瞭ですが、ベテランらしくヴィンテージな温かみに溢れていてサウンド・プロダクションも出色。これはシンフォ・ファン必聴の名品!
旧ユーゴのイタリアにほど近いリュブリャナ(現スロヴェニアの首都)出身のプログレ・グループ。78年の唯一作。ジャケの印象では、どんなに恐ろしいハード・ロックやヘヴィ・サイケが聴こえてくるかと思いますが、実際のサウンドは、シンフォニック&ジャジーなプログレ・ハード!明るいトーンで広がる壮麗なキーボード、音響的なセンス抜群のアルペジオからファンキーなカッティング、ブルージー&メロディアスなソロまで表現力豊かなギター。リズム隊も特筆で、シャープに引き締まったトーンで小気味良くドライヴするドラム、ハイポジションでよく動くベースはキレ味抜群。そして、魅力的なのが、辺境プログレの哀愁がつまった霧に包まれたようなセンチメンタルでドラマティックなセルビア語のヴォーカル。ジェネシスやイエスなど英プログレからの影響とともに、マハビシュヌ・オーケストラなどジャズ/フュージョン・ロックやファンクなどのエッセンスを加えた色彩豊かなサウンドは、テクニック、アレンジセンスともに抜群。個人的には、1曲目を聴いて、「旧ユーゴのアトール!」というキーワードが頭に浮かびました。
スウェーデン出身、Key奏者を含む4人組バンド、2014年のデビュー作。ゆったりとメランコリックに奏でられるギターのアルペジオと北欧らしい透明感のあるリリカルなピアノ、そして、包み込むように歌う翳りあるヴォーカルとハーモニー。そんなピンク・フロイドに通じる映像喚起的なサウンド・プロダクションと叙情美が印象的なヴォーカル・パートから、インスト・パートでは一気にジェネシス的なヴィンテージな幻想美が溢れ出すのが持ち味で、繊細なタッチでまるでさえずるようなギターのリードと、そこにユニゾンであわせるハモンド・オルガンやムーグ・シンセがハートフルな音像を描きます。美しくクリアなヴォーカルとメロディも特筆で、モダンな音響センスを持ったSSWのバックを、ヴィンテージなプログレ新鋭バンドがサポートして幻想美を加えた、というような感じ。派手さはありませんが、たしかな歌心とアンサンブルのセンスを持った実力派。好盤です。
ドイツとスイスとの国境近くにあるフランス東部にある町モンベリアルにて1970年に結成されたグループ。72年の唯一作。ビートルズなど英ビート・ポップのほか、米西海岸のサイケデリック・ロック・ムーヴメントや、バッハ/ベートーヴェン/ドビュッシーなどクラシックの影響の元でサウンドが練られたようで、なるほど、シド・バレット期のピンク・フロイドをアンニュイにして、バロック調のオルガンを入れ、英アンダーグラウンド・サイケのジュライのようなローファイ感もまぶしたような、そんな印象派サイケ・ポップと言えるような、もやに包まれたサウンドが印象的です。ファルセットを中心としたナイーヴなフランス語によるヴォーカルと幻想性たっぷりな多声コーラスも素晴らしい。ベースがゴリゴリと走るハードな曲は、英クレシダやグレイシャスあたりも頭に浮かびます。フランスの片田舎らしい、神聖ローマ帝国の伯領時代の面影が残るような、気品と優美さに包まれた愛らしい名品です。
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