2015年3月25日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ,新譜CDナビ
90年代はじめに北欧やイタリアから次々とクリムゾンやジェネシスなど往年の名グループのDNAを継いだグループが登場してプログレ新鋭シーンが盛り上がり、00年代に入っても世界中にその勢いを広げながら、魅力的な作品が届けられています。
2014年もまた、世界各国より優れたプログレ新譜が次々とリリースされました。
ここでは、2014年作のプログレ新譜から、90年代以降にデビューした新鋭グループの作品に絞ってピックアップいたしましょう。
試聴しながらお楽しみください!
まずは、アネクドテンの登場以来、90年代以降のプログレ・シーンを彩る好グループを続々と輩出しているスウェーデンから!
2012年に結成され同年にデビューしたスウェーデンの新鋭プログレ・バンド。2014年作2nd。
この透明感溢れるリリシズムとファンタジー。これぞ北欧プログレの魅力ですよね。
アネクドテンに通じるタイトさもあって、幻想性とハードエッジさのバランスが見事で、これはおすすめ!
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『雪景色にぴったりの幻想プログレ紀行』と題しまして、透明感あるファンタスティックでリリカルな作品を求めて、世界中をご案内!
天才と言っても、この人の場合は近寄りがたい感じではなく、ほのぼのハートフル。あのムーン・サファリに一人で対抗できる、と言っちゃっても過言ではない、スウェーデンのマルチミュージシャン、圧巻の14年作!
スウェーデン出身で、Key奏者と女性Voの夫妻を中心に、その子供達も参加するファミリーの新鋭バンドなのですが、これが美麗な北欧シンフォ逸品!
ずばり「ピンク・フロイドのメランコリーと音響感覚 meets ジェネシスの幻想美」。
モダンな音響センスを持ったSSWのバックを、ヴィンテージなプログレ新鋭バンドがサポートして幻想美を加えた、というようなスウェーデン新鋭、2014年デビュー作!
スウェーデンと並ぶ90年代以降のプログレ大国と言えるのがイタリア。2014年もまた優れた作品が多数リリースされました。
ジェネシスやカンサスへの愛情に溢れたフックに富んだプログレ・ハードを聴かせるイタリアのプログレ新鋭グループ、2014年デビュー作。
ラストの17分を超えるタイトル・トラックが特筆で、ジェネシスやグリーンスレイドからムーン・サファリまでを俯瞰したような、躍動感いっぱいで歌心みなぎるアンサンブルがめくるめく名曲。
これは注目のイタリア新鋭!
FINISTERRE、LA MASCHERA DI CERA、HOSTSONATENを率いて次々にプログレ傑作を生み出した90年代以降を代表する奇才ファビオ・ズッファンティが2014年、活動20周年の集大成としてリリースしたモダン・プログレ大傑作ソロ!
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HOSTSONATEN、FINISTERRE、LA MASCHERA DI CERAを率いて次々の傑作をリリース。90年代以降のイタリアン・ロック・シーンを牽引する天才と言って過言ではないFabio Zuffanti関連作を特集!
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イタリアが誇るFabio Zuffantiや今カケレコで大人気のオランダのChrisをはじめ、世界各国からマルチ・コンポーザーによる良質な作品が続々と届けられています。注目の作品をピックアップいたしましょう。
90年代はじめから活動するベテラン伊プログレ・バンドによる2014年作なんですが、クラシックの気品、ジャズの躍動感、地中海音楽のエキゾチズムがブレンドしたまばゆいサウンドは、これぞイタリアン・プログレ!
70年代プログレに憧れるイタリアのコンポーザーUMBERTO PAGANINIの手による楽曲をバンドがファンタジックに演奏するシンフォ・プロジェクト。賞賛された2013年デビュー作に続く2014年の2nd。
陽光溢れるファンタスティックな1stも名作でしたが、SUBMARINE SILENCEのKey奏者が全面参加したこの2ndは、そこにジェネシスのオマージュが散りばめられていて最高の幻想プログレに仕上がっております☆
イタリアは枚数が多いので別記事にて特集しております。
あわせてチェックください。
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90年代以降にプログレ新鋭シーンが盛り上がり、00年代に入っても注目の作品が続々とリリースされています。その勢い衰えず、次々と優れたプログレ新譜が届く2014年。入荷した注目作をピックアップいたしましょう。
ここ数年、注目の作品が登場しているのがロシアのプログレ・シーン。
EL&Pをモダンなヘヴィネスでアップデートしたような重厚極まる「動」のパートと、対照的にエニドばりにクラシカルでロマンティックな「静」のパートの鮮やかな対比。ロシア新鋭屈指のグループによる渾身の2014年大傑作!
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あのチャイコフスキーも輩出したサンクトペテルブルク音楽院出身で、作曲家/Key奏者のGennady Ilyinにより94年に結成された、90年代以降のロシア・プログレを牽引するグループ、LITTLE TRAGEDIESを特集!
2011年のデビュー作もヴィンテージなプログレ・ファン歓喜の傑作でしたが、この2014年作2ndもジェネシスやイエスやEL&PのDNAを継ぎつつ、モダンなヘヴィネスで躍動する傑作。注目のロシア新鋭!
LITTLE TRAGEDIES、LOST WORLDの双璧に割って入る実力を持ったグループが登場!このデビュー作は注目ですよ~。
06年にロシアはモスクワで結成された新鋭プログレ・グループ。
EL&P、U.K.、イエス、ジェネシス、クリムゾン、ツェッペリンに影響を受けたKey奏者でコンポーザーのSergey Bolotovを中心にキーボード・トリオとして活動をスタートし、ヴァイオリン奏者やフルート奏者やギタリストをゲストに迎えて録音され、2014年にリリースされたデビュー作。
ずばりLOST WORLDに比肩する鮮烈なクラシカル・プログレで、ベテランで言えばAFTER CRYINGにも肩を並べると言って過言ではない傑作!
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LITTLE TRAGEDIESとLOST WORLDを双頭に、豊かなクラシック音楽の土壌に根ざしたダイナミックかつ格調高いプログレ・グループが続々と登場しているロシアのプログレ新鋭シーンを特集!
2012年のデビュー作が大好評だったスペインのDRY RIVERの2ndもリリース!
クイーンからディープ・パープル、果てはLAメタルやビック・バンドまでを素材に稀代の諧謔精神で「プログレ」に仕立てあげるスペインの新鋭。
1stに続き、いやはや恐るべしな奇天烈プログレとなった2014年作2nd!
DRY RIVERにも驚きましたが、このSSWの溢れんばかりのセンスも凄いですよ~。
Nick DrakeやDonovanやPete Delloが引き合いに出されるスペインのマジカル・ポップ新鋭SSWによる2014年作2ndなんですが、美メロ、美麗アレンジてんこもりで、このセンス、な、何ものなんだ!
メロディアスなシンフォニック・ロックの宝庫と言えば、オランダですね!
カケレコ月間ベストセラーになるなど出世作となった前作に続く2014年作4thが登場!
前作で極めたキャメル系シンフォ・サウンドに、モダンなエッジとダイナミズムが加わり、ドラマティックさを増したダッチ・シンフォ快作!
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オランダならではの端正でいて素朴な人情味にも溢れたメロディアスなプログレッシヴ・ロック名作をセレクトいたしましょう。フォーカスの他にも愛すべきグループがたくさん居ますね。
オランダ注目の新鋭、CHRISによる2014年作!
1年間に渡って展開する大河ドラマならぬ大河ミュージックの第一弾。光景が眼前に迫ってくるような、躍動感みなぎるイマジナティブなサウンドは彼の真骨頂。
これはファンタスティック・プログレの傑作!
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注目のプログレ新鋭の魅力に迫る「アーティスト・インタビュー」企画。近年続々とメロディアスな名作がリリースされているオランダのプログレ・シーンの中でも特にその才能に注目が集まるコンポーザー&マルチ・インストゥルメンタル奏者のCHRISことChristiaan Bruinにインタビュー。
続々と優れたプログレ作品を生み出す00年代のオランダからまたまた注目の新鋭が登場!清涼感いっぱいに広がる多彩なキーボード・ワーク、そして、オランダらしい柔和で温かみあるハイ・トーンのヴォーカルとフックに富んだ伸びやかなメロディ。充実の2014年デビュー作!
ウクライナが誇るミュージシャンであり、90年代以降のプログレ・シーンを代表する一人と言って過言ではないKey奏者&コンポーザーですね!
映像喚起的でイマジネーション豊かなシンフォ・サウンドが鮮やかに描かれる充実の2014年作!
80年代から活躍するネオ・プログレの雄による確かな現在進行形モダン・シンフォ!霧がかったメランコリー、そして立体的な音像を築くヘヴィネス。この2014年作は傑作ですよ~。
近年、ピンク・フロイドのDNAを継いだグループが登場してきていますが、その最高峰と言えるグループがポーランドのMILLENIUM。彼らの作品をリリースするレーベルLYNXにも注目です。
オープニングを飾る19分を超えるナンバーは、ベートーヴェンやワーグナーなど偉大なる作曲家へのオマージュであるとともに、ジェネシス「サパーズ・レディ」やピンク・フロイド「エコーズ」など偉大なるプログレ名曲へと捧げられた大曲!
1st、2ndともにカケレコ・ロングセラーのポーランド屈指のシンフォ新鋭による2014年作3rd!より鋭さをましたロック的ダイナミズムと東欧らしいメランコリーとが織り成すメロディアスさを極めた傑作!
このドイツのベテラン・バンドによる30年越しの2014年デビュー作ですが、ずばりイングランド『ガーデン・シェッド』やロッカンダ・デッレ・ファーテのファンにオススメ!
明瞭で突き抜けてドラマティックなシンフォニック・ロック快作!
2004年に結成されたオーストラリアのプログレ・グループ、2014年作の3rd。
英国の90年代の人気ロック・バンドTRAVISを彷彿させるメロディ・センスと美麗な歌声とともに、北欧プログレ新鋭にも負けないヘヴィな透明感みなぎるプログレ・アンサンブルがたなびく幻想的な名品。
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「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことをコンセプトに、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を幅広く紹介するコラム。担当は、MUSEAからデビューした日本のアーティストnetherland dwarf!
緻密なスタジオ・ワークとポップ・センスが光る知性的なプログレ・ポップにはさらに磨きがかかっている印象。
アラン・パーソンズ・プロジェクトのDNAを継ぐベルギー産プログレッシヴ・ポップ・バンド、佳曲ずらりの2014年作!
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ピンク・フロイドやアラン・パーソンズ・プロジェクトを彷彿させる、緻密なスタジオ・ワークとクールなポップ・センスとが絶妙にバランスした知性豊かなプログレッシヴ・ポップが魅力のベルギーのユニット、FISH ON FRIDAYの魅力に迫るインタビュー!
フィンランドのプログレ・ファンジン『COLOSSUS』の編集者であり、雑誌主催のトリビュート盤などでも活躍するフィンランド在住のイタリア人Marco Bernard(B)を中心に、MIST SEASONでも活躍するフィンランド人ドラマーKimmo Porsti、RESISTORでも活躍する米人ギター/ヴァイオリン/フルート/ヴォーカルのSteve Unruhによるトリオ。
往年のプログレをカヴァーしたトリビュート色が強かったこれまでの作品の好評を受け、オリジナル曲中心で制作された2014年作。
カヴァーの1曲は英プログレの名バンドENGLANDの28分を超える幻の未発表大曲「Imperial Hotel」で、なんとENGLANDのオリジナルKey奏者のRobert Webbが参加!
ジェネシスとイエスのDNAを継いだ、というか、イングランド『ガーデン・シェッド』そのままと言っていいようなサウンドが溢れだす、ファンタスティック・プログレのファンに送る最上級の贈り物。
これは名作!
ヴィンテージ・キーボードやエレクトリック・ブズーキを操るマルチインストゥルメント奏者、MOTISことEmmanuel Tissot率いるグループ。2014年作6th。
ANGE直系のシアトリカルなシンフォニック・ロックを軸に、MALICORNEに通じるフレンチ・トラッドのフレイヴァーが香るサウンドが持ち味で、とにかくメロトロンM400やソリーナやローズやハモンドなどヴィンテージ・キーボードが大活躍!
しかも、あのアトールの名ヴォーカル、アンドレ・バルザーもゲスト参加ときたら、シンフォニック・ロックのファンは必聴ですね!
お次は南米を周遊!
相変わらずのベテランとは思えない鮮烈なエナジー。70年代から活躍するメキシコのベテラン・グループが2014年に放ったダイナミズムみなぎるモダン・シンフォ傑作!
ヘヴィネスとアンデス・フレイバーが見事に調和した南米ペルーを代表するプログレ新鋭による2014年作!
ビートルズ~クイーン~ジェリーフィッシュの系譜にあるプログレ新鋭バンドがアルゼンチンより登場!
まばゆいメロディとハーモニーは、ムーン・サファリのファンにもオススメですよ~。
ラストは北米を見てまいりましょう。
イエス、ジェントル・ジャイアント、カンサスが好き?でしたら、このカナダの新鋭はやばいですよ~。北米らしい爽快&痛快なプログレ・ハード快作!
ピーター・ガブリエルをハイ・トーンに寄せて、ハート・ウォームにした感じのヴォーカルが良いなぁ。ジェネシスやイエスのDNAを継ぐ米バルチモア産プログレ新鋭による2014年の快作!
まるでGILGAMESHのキラメキと精緻さをシンフォニック・ロックに仕立て直したような感じ!
北欧ISILDURS BANEに通じる映像喚起的なリリシズムや幻想性もあるし、これ本当にアメリカの新鋭!?
いかがでしたか?
みなさまにとってぴったりの一枚が見つかれば幸いです。
カケレコは、これからもプログレ・シーンの最新動向を追い、世界の注目作をみなさまにお届けしてまいりますよ~。
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00年代に入ってジャズ・ロック/チェンバー・ロック/アヴァン・ロックの充実ぶりが凄い!ということで、ユーロ各国から北米、南米まで、世界中から届くジャズ・ロック/チェンバー・ロック/アヴァン・ロックの2014年新譜をピックアップ!
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70年代から活躍するメキシコを代表するシンフォニック・ロック・グループ、2014年作。煌びやかなピアノが華麗に流れていくオープニング。ピアノが不穏なフレーズへと移行していくと、ザクザクとヘヴィ・メタリックなギターが炸裂し、一気に動き出すアンサンブル。ここぞでは視界が開けたように透き通った鋭角なトーンのギターやヴィンテージなハモンド・オルガンやフルートがファンタスティックなフレーズを高らかに奏でます。フルートとザクザク・ギターとのユニゾンあり、ピアノとギターによるクラシカルな高速フレーズが一閃したり、それを支えるリズム隊のキレ味も特筆だし、70年代的な幻想性と現代的な明瞭さやダイナミズムが見事に融合したアンサンブルは、まさに「鮮烈」という言葉がぴったり。それにしても、ベテランとは思えない突き抜けたエナジー。これはモダン・シンフォニック・ロックの傑作です!
ヴィンテージ・キーボードやエレクトリック・ブズーキを操るマルチインストゥルメント奏者、MOTISことEmmanuel Tissot率いるグループ。2014年作6th。ANGE直系のシアトリカルなシンフォニック・ロックを軸に、MALICORNEに通じるフレンチ・トラッドのフレイヴァーが香るサウンドが持ち味。とにかくメロトロンM400やソリーナやローズやハモンドなどヴィンテージ・キーボードがこれでもかとフィーチャーされていて、特にメロトロンが大活躍!幻想的に溢れるメロトロンをバックにリリカルに紡がれるハモンド、そして、スティーヴ・ハケットを彷彿させる格調高いマンドリンやブズーキが織り成すファンタスティックなアンサンブルは、ジェネシス〜アンジェあたりのファンはたまらないでしょう。MOTISによるフランス印象派絵画のように柔らかで親しみやすいハイ・トーンのヴォーカルとフックあるメロディも特筆。なんと、アトールの名ヴォーカリスト、アンドレ・バルザーがゲスト参加し、1曲でヴォーカルを担当。この曲がまた素晴らしい!アナログ的な温かなサウンドプロダクションも印象的で、70年代の発掘作品と言っても分からないでしょう。これはシンフォニック・ロックのファンは必聴の快作!
ウクライナ北東部の工業都市ハルキウ出身で、1981年生まれのAntony Kaluginによるプロジェクトで、HOGGWASHやSUNCHILDやGNOMONなど数多くのサイド・プロジェクトをこなす多作家のKaluginが、学生時代の97年から続ける彼の中核となるソロ・プロジェクト。2014年リリースの6枚目で、2部構成のコンセプト作。キース・エマーソンを彷彿させるファンファーレのように高らかに鳴るリードから幻想的にたなびくバッキングまで奔放にイマジネーションを紡ぐムーグ・シンセ、そして、エッジの立ったヘヴィなトーンで流麗なフレーズを伸びやかに奏でるギター。ピンク・フロイド、キャメル、フォーカス、フラワー・キングスをフェイヴァリットに挙げるとおり、映像喚起的なキーボードを中心に、ギターが力づよいダイナミズムを生む壮大なシンフォニック・ロックが特徴です。フルートやエレピやアコギがそっと叙情を奏でるファンタスティックなパート、近現代クラシック直系の瑞々しく艶やかなパート、ワールド・ミュージック的なエッセンスやニューエイジ的フレイヴァーがにじむ雄大なパートなども織り交ぜながら、鮮やかにサウンドが描かれていきます。これは素晴らしい作品です。名作!
99年結成のポーランド屈指のプログレ新鋭バンド。最高傑作と言える圧倒的な強度のシンフォニック・ロックを聴かせた前作からわずか1年でリリースされた2014年作10thアルバム。「完璧なメロディを探して」というタイトル通り、アルバム冒頭から伸びやかなハイ・トーンのヴォーカルがアカペラで高らかに歌い上げ、鳥肌もの。間髪いれず、彼らの持ち味である、ピンク・フロイドゆずりのディレイ音による空間的なアンサンブルの中、ギター、続いてサックスがリードを取る展開もスケール大きいです。このタイトル・トラックは、ベートーヴェンやバッハやワーグナーなど偉大なる作曲家へのオマージュであるとともに、偉大なるプログレ大曲、ジェネシス「サパーズ・レディ」やピンク・フロイド「エコーズ」やイエス「危機」へのオマージュとして作られた19分を超える大曲。メランコリックでいてスタイリッシュな彼らならではのプログレッシヴ・ロックを極めた名曲です。ロング・トーンでまるで歌うように優美に奏でられるギターと夢想的なサックスが柔らかにメロディを紡ぎ合うインストあり、ストリングスが艶やかに彩る、愛とともに裏切りを描いた渾身のバラードあり、ピンク・フロイドゆずりの洗練を極めたアンサンブルとともに突き抜けたメロディ・センスで聴き手を壮大な音のストーリーへと導き感動を誘うサウンドは彼らの真骨頂。前作に負けず劣らずの傑作です。
ポーランド出身、女性ヴォーカルを擁するシンフォニック・ロック・グループ。前作『STRAW ANDY』からメンバー変わらずに制作された14年作3rd。エッジの立ったトーンで刻まれるギター、肉感的なドラムをまばゆい光で包み込むようなシンセによるデジタル・ビート、緩急をつけて時にスピーディーに突っ走る展開など、デビュー作からロック的躍動感を増した2ndからさらにダイナミズムが増した印象。アンサンブルや展開は鋭くなっているものの、このバンドの持ち味である東欧的なメランコリーはそのままで、常に叙情がたなびいています。陰影からくっきりと情景が目に浮かびあがるサウンドは並のバンドには出せないでしょう。しっとりと伸びやかに歌い上げる女性ヴォーカルとドラマティックなメロディは相変わらず絶品。前作で覚醒したバンドがさらに堂々と、自信に満ち溢れて鳴らしたメロディアス・ロックの傑作です。
06年にロシアはモスクワで結成された新鋭プログレ・グループ。EL&P、U.K.、イエス、ジェネシス、クリムゾン、ツェッペリンに影響を受けたKey奏者でコンポーザーのSergey Bolotovを中心にキーボード・トリオとして活動をスタートし、ヴァイオリン奏者やフルート奏者やギタリストをゲストに迎えて録音され、2014年にリリースされたデビュー作。まるでキース・エマーソンのような重厚かつテンションみなぎるピアノと艶やかに舞い上がるヴァイオリンとがダイナミックに躍動するオープニングから、デビュー作とは思えない鮮烈なプログレを聴かせます。シャープなドラム、ジャズ/フュージョンの確かな素養を感じるベースによるリズム隊も安定感抜群で特筆。瑞々しくリリカルなピアノに、フルートやヴァイオリンが静謐に響く映像喚起的なパートも素晴らしいし、レ・オルメ『フェローナ〜』ばりのキーボード・プログレもカッコ良いし、クラシカルなプログレとして、同郷の新鋭LOST WORLDや、ベテランで言えばハンガリーのAFTER CRYINGあたりと肩を並べる、と言っても過言ではないでしょう。これは素晴らしい作品。ヴァイオリンとフルートをフィーチャーしたシンフォニック・ロックのファンは必聴!
スウェーデン出身、Key奏者を含む4人組バンド、2014年のデビュー作。ゆったりとメランコリックに奏でられるギターのアルペジオと北欧らしい透明感のあるリリカルなピアノ、そして、包み込むように歌う翳りあるヴォーカルとハーモニー。そんなピンク・フロイドに通じる映像喚起的なサウンド・プロダクションと叙情美が印象的なヴォーカル・パートから、インスト・パートでは一気にジェネシス的なヴィンテージな幻想美が溢れ出すのが持ち味で、繊細なタッチでまるでさえずるようなギターのリードと、そこにユニゾンであわせるハモンド・オルガンやムーグ・シンセがハートフルな音像を描きます。美しくクリアなヴォーカルとメロディも特筆で、モダンな音響センスを持ったSSWのバックを、ヴィンテージなプログレ新鋭バンドがサポートして幻想美を加えた、というような感じ。派手さはありませんが、たしかな歌心とアンサンブルのセンスを持った実力派。好盤です。
イタリア北西部はトリノ出身のKey奏者Nico Comoglioを中心に90年代はじめに結成されたグループ。92年と93年にアルバムをリリースした後、いったん解散し、2010年に再結成。再結成後にリリースした2枚のアルバムに続く通算では5枚目となる2014年作。Nicoの他、ヴォーカルとヴィヴラフォン奏者によるトリオ編成で、UKZのドラマーMarco Minnemannやフルート奏者John Hackettなどがサポートとして参加し録音されています。淡いトーンで鳴らされるハモンド・オルガンと躍動感あるヴィヴラフォンで幕を開け、イタリアらしい艶やかで気品あるクラシック・ギターで場面が切り替わると、エモーショナルなヴォーカルが登場。歌に寄りそうヴァイオリンもまたクラシカルな響きに溢れていて特筆です。続くヘヴィなチューンでは、ヴィンテージな音色のムーグとピアノが荘厳に鳴らされ、そこにホーン・セクションも入るアンサンブルは、さすがは映像音楽家としても活動するNicoならではと言えるイマジネーションに溢れています。さらに、クラシック、ジャズだけでなく、北アフリカ〜バルカン由来の地中海音楽も取り入れたサウンドは、ただただ「豊潤」。HOSTSONATENなど若手にも負けない音のツブ立ちと鮮やかなトーンを持った、ベテランミュージシャンによる気鋭の名作です。
紙ジャケット仕様
盤質:全面に多数傷
状態:良好
盤に曇りあり、ホチキス錆あり、ジャケットにシール貼り付け
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