2021年9月18日 | カテゴリー:どうしてプログレを好きになってしまったんだろう@カケハシ 市川哲史,ライターコラム
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ひさびさにやってしまった。
いまだ熱暑厳しい8月末の昼下がり、なかなかのサイズ荷物が届く。差出人は某DU。嫌な予感に苛まれながら開封したらーー現れたよプチプチに包まれた頑強なフライト・ケースが。はい。「あの」8人イエスの、『結晶』ツアー30周年記念CD+DVD32枚組スーパー・デラックス・エディション箱でした。
『UNION 30 LIVE』税込49,500円也。
購入した憶えがないので某DUの注文・購入履歴をチェックすると、予約してましたわはるか昔の5月19日。明らかに酩酊状態下における無意識の行動に起因していると思われる。この道はいつか来た道。
なにせこのBOXはあまりに能天気すぎる。
ケースの蓋を開ければ、各メンバー別8人イエス怪人カード全10種やら、各種バックステージ・パスのレプリカ詰め合わせやら、相変わらず食指の動かぬメモラビリアたちの姿が見えるのは、お約束。とっくの昔に諦めた。とはいえ、この無用にかさばるケースは誰のためなのだろう。
米音楽サイト【the music com.】がゼロ年代以降、ザ・フーやジェネシス、ピーガブなどの世界ツアー全公演をサウンドボード音源で完全収録して売ってたセットも、大袈裟なフライト・ケース仕様だったはずだ。40CDだか50CDだかの爆盛りセット。
嬉しくないわー。
さて肝心の、収録されているライヴ音源&映像は以下のとおり。いろんな意味で「あの」《YESSHOWS ’91 : AROUD THE WORLD IN 80 DAYS》ツアー全86公演中、19公演も集めちゃったからおめでたい。
なお⓱は、2011年商品化のライヴDVD『ユニオン・ライヴ』およびライヴCD『ユニオン・ツアー1991』に、“ショック・トゥ・ザ・システム” “同志” “ドラムス・デュエット~トニー・ケイ・ソロ~変革” “リフト・ミー・アップ”を加えた、いわゆる「完全版」。しかも前者は映像がレストアされ、後者は今回トレヴァー・ラビン本人が新規ミックスを施した—-らしい(失笑)。
どうよこの曖昧な俺の文末。だってこの結晶箱の発売元は【GONZO MULTIMEDIA】だもの、とても断定できません。なにせ旧作復刻と未発表音源発掘の老舗【Voiceprint】から独立した途端に、いなたいまでの実直さを忘れて商魂丸出しになったレーベルだ。公式/非公式が限りなく曖昧な怪音源群は当たり前、せっかく貴重な旧譜をCD化してもレコジャケをそのまま複写しただけだから、文字が微小すぎてクレジットはまず読めないし。そんな雑なレーベルからのアナウンスだからなー。ねえ?
この際だから書いとくと、実はこの結晶箱の収録公演は発売前の告知から幾つか変更されている。収録曲のタイトル間違いもあるし、上記の➁➄➉はサウンドチェックではなくれっきとした本番音源だったりするからアバウトすぎる。
いちばん可笑しかったのはーーブートレグ音源がアーカイヴ箱に堂々使用されててもいまさら誰も気にしない御時世だが、この箱はサウンドチェック音源が隠し録りだったりするから、どこまで適当なのだろうゴンゾこら。どうでもいいが各種メモラビリア群だって、そもそも全容が不明だから2、3点欠品してても絶対わからないと思う。
ちなみに、❶と❼の映像全曲と⓭⑮⑰の音源計7曲は、前述の『ユニオン・ライヴ』と『ユニオン・ツアー1991』を合体させたツアー20周年記念2CD+2DVD限定箱『UNION LIVE』で、実はリリース済みなのであった。
とここまで延々ディスりはしたが、結果オーライというか後は野となれ山となれというか、この大雑把な〈とりあえず記念式典やっとけ〉感こそが、8人イエスには似合うと実は思っている私ではある。
あの《1991年8人イエス珍道中》が何だったのか、いまなら誰でも知っている。
老舗の商標使用をめぐり泥沼の訴訟沙汰にあったはずの二組のバンド、【90125イエス】と【ABWH】が恩讐を忘れ(たふりし)ていきなり合体。しかし、8人編成の【イエス】としてリリースした新作『結晶』は、ABWH9曲と90125イエス4曲とハウ爺ソロ1曲を括っただけ――しかも90125の楽曲でアンダーソンが唄い、ABWHの楽曲ではスクワイアがコーラス参加しただけという、最小限のアフレコと膨大な数の無記名セッション・ミュージシャンと秀逸なデジタル編集作業ででっちあげた作品だ。リック・ウェイクマンなんか、内容が情けなさ過ぎて「聴く度に涙が出る」から『オニオン』と自嘲して呼んでたほどだったことも。
それでも世界ツアーが空中分解することなく無事完遂すると、大方の予想通り大所帯イエスは「リアル新作」を制作することなく幕を閉じた。結局、8人イエスとはジョン・アンダーソンの〈妄想〉とレーベルの〈商魂〉の一致が生んだ、期間限定アトラクションだったのだ。
そもそも前代未聞の《南北朝イエス時代》到来自体が、すべてアンダーソンの犯罪的な無邪気さに裏打ちされた〈我田引水オプティミズム〉のせいだ。
当時は、90125イエスの一大商業音楽路線に「♪僕のイエス・ミュージックはもっと純粋でなきゃならないのさぁぁぁ」と愛想が尽きたアンダーソンが、かつての音楽的理想郷を再構築すべく盟友たちを呼び戻して〈誰がどう見てもこっちがイエス本流〉ABWHを始動させた、ということになっていた。日本のイエス・ファンたちはすべからく、〈誰がどう聴いても『ロンリー・ハート』よりも『ビッグ・ジェネレイター』よりもイエス・ミュージック〉でロジャー・ディーン画伯も復活の『閃光』に大いに納得し、だからこそ皆アンダーソンの「正論」を信じた。法的拘束力によりイエスを名乗ることができず、ABWHのツアー・タイトルで《AN EVENING OF YES MUSIC PLUS》とあてこすったことも、日本人の判官びいき感情を煽動したはずだ。
私も信じた。だって『閃光』は、当時アンダーソンがかぶれてたラテン風味も新鮮な〈あのイエス・ミュージックの最新アップデート版〉としてよくできた名盤だし、なにより1990年3月のABWH来日公演の完成度に騙された。なにせ『イエスソングス』期の1973年初来日公演は、田舎の小学6年生が観られるはずもなし。15年後の再来日は既に90125イエスだったから、観たけど別物。そんな不憫な身の上にABWHライヴしかもビルブル付きだもの、身体に毒に決まってる。
しかも、待望のキング・クリムゾンを初観戦したらディシプリンでがっかりした、あの失望体験と真逆だから、幸福感を3倍増に錯覚しても仕方ないではないか。それが人情というものだ。
かくして我々は、あくなき理想を追求する【正義のABWH】vs商業主義に魂を売った【産業ロックな90125イエス】の図式、をインプリンティングされちゃったのである。ピーガブvsジェネシスとかウォーターズvsギルモアみたいに。その意味合いはだいぶ違うけど。
ところが、いいのか悪いのか私は1988年のイエス再来日あたりから足掛け10年、当事者たちをインタヴューする機会にやたら恵まれ続けた。しかも発表する場は『ロッキング・オン』に『炎』だから、忖度も制約も遠慮も何ら気にせず話を訊けたし、原稿を書けた。すると、彼らの言い分は点ではなく線となり、韓国ドラマ以上にジェットコースターな人生ドラマが生まれてしまった。なら赤裸々に書くしかないと思った。
それが私なりのリスペクトーー全力の愛情表現なのだ。いまも。
「『ロンリー・ハート』が全世界であんなに売れたのには、驚いたよー。だから『ビッグ・ジェネレイター』の根本にある僕の想いも、〈もっとより多くの人たちに届けたい〉ってことなのさぁぁぁ!」
まだ90125イエスに在籍中だったアンダーソンは、こんなにご機嫌だった。
ところがわずか1年半後――ABWHのデビュー・アルバム『閃光』のリリースを控えた1989年初夏になると、言うに事欠いて「LAで90125グループと演ってる音楽はとてもトレヴァー・ラヴィン的でロック的でコマーシャルだけど、自分が本当に演りたい音楽じゃないな、と気づいたよぉぉぉ」ときた。
しかしよくよく訊けば、「『90125』の1/3は僕の助言で出来上がってるのに、『ビッグジェネ』ではいくら頼んでも2年間無視され続けた」とか、「ツアーで“危機”を演りたい、と20回は頭を下げたのに断わられた」とか、かなりいろいろ根に持ってたというか、ほぼ『魔太郎がくる』状態である。
3年後のそれこそ8人イエス来日時には、さらに自己正当化が進行しており、「クリス(・スクワイア)はLA的なロック・グループ・メンタリティーの持ち主」「『ビッグジェネ』は制作費も時間も大量に費やしたばかりかドラッグも摂取しまくりの現場だったから、僕は辞めた」とディスりあげたのだから、つくづく敵に回したくはないなぁ。
この8人イエス来日の際、一方的に〈悪の枢密〉呼ばわりされ続けたラビンの言い分をじっくり訊く機会に恵まれた。すると出るわ出るわ。
❶『90125』におけるアンダーソンは、出来上がったオケをバックに唄っただけだから「そりゃもう愉しかったに違いない」。
➋“ロンリー・ハート”大ヒットの成功体験中毒で、『ビッグジェネ』でも『結晶』でもいちばんコマーシャル性に執着してたのは、「他の誰よりもジョン」。
➌アンダーソン以外の四人の総意として、《ビッグ・ジェネレイター・ツアー》の終演でイエスそのものもいったん打ち止めにしたが、「ジョンだけは『もっとツアーを続けたい』――お金はもっと稼がにゃならんという心づもりだった」。そしてラビンがソロ・アルバムを作ると知った「ツアー続けたいの一点張りだったジョンは、僕がソロを作るなら自分はコレをやるって調子でABWHを結成しちゃった(苦笑)。でも結果的には、イエス打ち止めという僕たちの意志は達成されたからラッキーだったよ」。
➍クリス・スクワイア曰く、「ABWHの一般的評価を上げ、かつ僕たちの評価を下げておきたい思惑で、ジョンは公の場で<商業主義を忌み嫌っている自分>を演出して『だからそんなバンドを脱退した』と言わせている」。
まあ……ねえ?
「第三者」として、私はアンダーソンではなくラビンの言い分を信じた。だってその後もインタヴューする度に〈ありえない朝令暮改〉を繰り返し続けるアンダーソンは、宇宙一面白いけど信用はできないだろ普通。
1992年3月。結晶箱の日本販売分限定特典にもなった⓳日本武道館公演で8人イエス・ツアー全日程を終えたばかりの彼は、本当に幸福の絶頂にあった。
「このバンドはあくまでも8人編成であって、そうじゃないと何も始まらないんだよ。あとはこのメンツで一緒にアルバムをちゃんと作れたなら、もう僕は本当に嬉しいなー。というわけで、僕としては今後も全員イエスに参加してもらいたい」。
「ツアー終了と同時に、『また普通のバンドにしちゃおうぜ』って話が出た。それで僕は『駄目駄目駄目駄目駄目。ステージでせっかくこれだけ素晴らしい音楽の玉手箱を創り上げたんだから、それを素晴らしいレコードにするまで進まなきゃ駄目さ!』と、皆を諭したのさぁぁぁぁぁ」。
しかし。
わずか4ヶ月後の1992年7月。日本ビクターの出資で設立された新レーベル【VICTORY MUSIC】からの新作リリースが発表されたイエスは、90125イエス+リック・ウェイクマンの六人編成で早くも2名減。で1994年3月に新作『トーク』が実際に発表されたら、さらに1名減って〈単なる90125イエス〉に逆戻りとは。
しかもバンド感皆無のレコーディングだった『結晶』を他人事のようにディスり、「やっぱりバンドは兄弟のように一緒に作業しなきゃねー」ときた。おいおい。
「バンドも人間関係も、フットボールやホッケーといったチームワークを要する団体競技もそうだけど、大体いい時期が最初の何年か続いたあとには倦怠期がやって来て、そっから元の鞘に収まるってパターンだよね? よくわかってる奴もいれば、多少ズレてる奴もいる。そんな中で、バンドとしての結束を固めて良いアルバムを作りたかったわけだよ、僕は!」。どの口が言うのか。しかも懐刀として寵愛するのは、〈商業音楽に魂を売った男〉呼ばわりしてたはずのラビンだから、このひとは本当にすごい。
「最高! 言うことなし! トレヴァーは、ポップでコマーシャルでロックな音楽の偉大なる作曲家でプロデューサーで、しかもあらゆる楽器の名手! 唄だって上手い!」
ちなみにそんな優秀な相棒と疎遠になっていた理由は、「自分一人でもっとできると思ってたトレヴァーが、今回『トーク』を僕と共同で作ってみて、彼にとって最も能力を発揮できるのが実は共同作業というスタイルだったことに気づいた」と勝手に納得していた。
ちなみにスクワイア曰く、「五人に戻れてよかったよ」。
しかし。
翌1995年8月、突如ネット上で発表された公式コメント《YES KNOW》がまた、突拍子なかったのをきみは憶えているか。
〈21年前のクリスの誕生日にシンシナティのホテルで、我々は約束した。もし世界が無事なままで、我々全員がミュージシャンとして一緒に活動できる状況にあったならば、1995年の3月4日に再び一堂に会するようにしようーーそれもわずか一枚のアルバムや一本のツアーのためではなく、それから5年間は活動を続け、バンドとファンと一緒に21世紀を迎えよう、と。その約束を実現させるときがやってきた〉。
ちなみにスクワイア曰く、「これはジョンのプレス・キットだな……もしもプロモーションに有効なら……記事にしてくれよ(爆失笑)」。
なかなか手の込んだ、要はアンダーソン+ハウ+スクワイア+ウェイクマン+ホワイトの黄金ラインアップ復活を正当化するための、素敵な方便だったわけだ。でもアンダーソンは『トーク』を「イエスのラスト・アルバムになったとしても悔いのない、有終の美を飾る最高の出来だと思う!」と大自画自賛してたくせに、無節操にもほどがある。
要は『トーク』の商業的惨敗が1970年代イエス・ミュージックへの回帰に向かわせたとしか思えないが、「批評家たちに攻撃されても、『自分たちの音楽を信じている』と高らかに宣言すべきだよね! 自分の信念を守り通すべきだ! 音楽が何よりも大切だよー」と自己完結が甚だしい。
なおアンダーソンが「天才っ」と大絶賛してたはずのラビンは「クラシック・イエスは演りたがらなかった」らしく、「彼はイエスが長期間続くことに、あんまり興味を持ってなかったんだなー」と空の彼方を見つめながら、彼の存在をなかったことにしていた。
話が長くなったが、これが<ジョン・アンダーソン式未来永劫我田引水思考法>の実例である。なんか墾田永年私財法っぽくていいぞ。
何度も書いてきたが、この人の視線は本当に宙を舞い、両手を天に捧げ、ハイトーンで唄うようにいかにイエス(で唄う自分)が素晴らしいかを口走る。イエスの音楽(を伝道する自分)が世界に平和をもたらすと、心から確信しているのだ。だからこそ、一分の隙もない緻密で高性能の<イエス・ミュージック>を構築できたわけだが、その理想論は自己評価が高過ぎてもはや妄想の域に達している。
しかも全ての事実は自分に都合よく歪曲して解釈されているから、タチが悪い。なので自分の意見を否定されるとぷいっとバンドを脱退するが、隣りの芝生が青く見えると光速で合体して盛り上がる。そしてそのついでに、過去の経緯も因縁も全て忘却しちゃうとは、無敵すぎる。
けれどそんなアンダーソンを、メンバーおよびOB一同のみならず我々聴き手も含めあまねく全ての人びとが許容している。誰も嫌いにならない。なぜならばジョン・アンダーソンは、ちっとも悪くないからだ。だって、無意識のうちに事実が反転してしまうだけで、<事実に反した嘘をついている>という自覚がないのだ。これはもう、才能もしくは個性として尊重しなければならない。<自己完結>という最強のポジティヴィティーこそが、イエス・ミュージックそのものなのだから。
だとするならば8人イエスとは究極のオプティミズム・エンタテインメントであり、ジョン・アンダーソンにしか実現できない(もしくは、誰も実現しようとは思わない)大事業だったとしか思えない。
あ、あくまでもライヴ限定の話であって、究極の凡作『結晶』に関しては積極的に忘れてください。
思えば結成十五周年――アンダーソン1985年来の宿願だった。「イエス在籍経験者全員集め、フィラデルフィアとロンドンで2回だけショウを演って、映画にする」的な常軌を逸した発言に、誰もが失笑を禁じ得なかったはずだ。ところが6年後に8人イエスとして本当に実現してしまったのだから、「♪夢を強く念じてれば、それはいつか現実になるのさーっっっ」と、アンダーソンをますます我田引水道に向かわせてしまった。
しかしよくよく想い出せば1990年3月8日。ABWHのNHKホール公演でアンダーソンは、“危機” “同志” “燃える朝やけ” “ラウンドアバウト”などイエス・クラシックスを当たり前のように披露して悦に入ってたけれど、突如“ロンリー・ハーツ”をアカペラで唄い出したほどのおそるべき執念と底意地の悪さあってこそ、だきっと。
とはいえ、彼の身勝手なオプティミズムに血肉を与えられた<不毛な妄想>の進撃っぷりが、魅力的なエンタテインメントとして立派に成立したのもまた、否定できないのだ。
8人イエス30年前のライヴ音源をただただ詰め込んだこの結晶箱は、熱烈信者以外には退屈かもしれない。まさか23年後に実現する同じ8人編成のキング・クリムゾン楽団とは異なり、〈緻密なアンサンブルの再構築〉が求められるイエスのツアーだけに、各公演毎に波乱万丈的展開は起きたりしない。セトリもツアー途中で“変容”“遥かなる想い出”“セイヴィング・マイ・ハート”あたりが追加されたぐらいで、変化には乏しい。
それでも、どの公演も当事者たちが愉しそうに演奏しているのが伝わるから、救われる。
ステージの真ん中ではしゃいでいるアンダーソンを境目に、90125LAイエスとABWHにすっぱり分離してはいるものの、ちゃんとイエスとしてポジティヴにふるまってた観がある。いちばん面倒くさそうなビルブルが「高額報酬が貰えるから」と〈役割〉に徹してたし、ウェイクマンとケイの鍵盤隊は役割分担が明確でそのコンビネーションは予想外に完璧だった。おお。『結晶』を〈茶色の大きいう〇こ〉呼ばわりしてたそのウェイクマンは、「ツアーは愉しかった!」と今回の結晶箱のティーザー動画で推薦コメントまで喋ってるではないか。
唯一「でも長続きしないわなぁ」とあからさまにスリリングだったのは、素養的にも音楽的にもスタイル的にも8人中で最も〈水と油〉なハウ&ラビンに尽きる。同一曲での二人のソロ・パートを較べても、まず別バンドだ。ただし自由気儘にあくまでも自分のスタイルで弾きまくるハウに較べれば、全体のバランスを見ながら演奏するラビンのおかげで、80日間世界一周はなんとか完走できたことがわかる。
その一方でスクワイアは、久々にイエス・クラシックスをアンダーソンと一緒にハモってごきげんなのに、ツアー後半から自分のベース・ソロ・カデンツァに“光陰矢の如し”を追加している。よりにもよってジョン・アンダーソン不在時の『ドラマ』収録曲だもの、やはりなかなかの曲がった性根がさすがスクワイアと感服するしかない。
なんてことを観察するにはこれぐらいの分量が必要なのだろう。きっと。
私はこれまで、8人イエスを全身全霊で満喫し堪能したのは世界中のイエス・ファンではなく、他ならぬジョン・アンダーソン本人だけではないかーーと書き続けてきた。いまもそう確信している。
しかし、今回初出の➄1991年4月24日モントリオール音源を聴いて、ちょっと嬉しくなった私だ。なんと皆で愉しそうに演奏しているのはスペンサー・デイヴィス・グループの名曲、おなじみ“ギミ・サム・ラヴィン”じゃないか。
ま、いろいろ普通じゃないイエスだけど根っこは「ロック・バンド」だもの。
さて結晶箱をいろいろ聴いて片づけてたら、近日発売の新商品紹介チラシを見つけた。【Takeaway RECORDS】とは聞きなれないが、要はゴンゾの新傍系レーベルだ。でその商品とは、ABWH『AN EVENING OF YES MUSIC : SUPER DELUXE EDITION CD AND VINYL BOX SET』と、イエス名義で『QUEENS PARK RANGERS FOOTBALL GROUND 10TH MAY 1975 DELUXE EDITION CD AND VINYL BOX SET』。
詳しい商品仕様は不明だけど、誰でも見当つくに違いない。ちなみに後者はパトリック・モラーツ在籍時で、かつてNHK『ヤング・ミュージック・ショー』でも放映されたあの公演である。
わははははは。
第一回「ジョン・ウェットンはなぜ<いいひと>だったのか?」はコチラ!
第ニ回 「尼崎に<あしたのイエス>を見た、か? ~2017・4・21イエス・フィーチュアリング・ジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン(苦笑)@あましんアルカイックホールのライヴ評みたいなもの」はコチラ!
第三回「ロバート・フリップ卿の“英雄夢語り”」はコチラ!
第四回「第四回 これは我々が本当に望んだロジャー・ウォーターズなのか? -二つのピンク・フロイド、その後【前篇】-」はコチラ!
第五回「ギルモアくんとマンザネラちゃん -二つのピンク・フロイド、その後【後篇】ー」はコチラ!
第六回「お箸で食べるイタリアン・プログレ ―24年前に邂逅していた(らしい)バンコにごめんなさい」はコチラ!
第七回「誰も知らない〈1987年のロジャー・ウォーターズ〉 ーーこのときライヴ・アルバムをリリースしていればなぁぁぁ」はコチラ!
第八回「瓢箪からジャッコ -『ライヴ・イン・ウィーン』と『LIVE IN CHICAGO』から見えた〈キング・クリムゾンの新風景〉」はコチラ!
第九回「坂上忍になれなかったフィル・コリンズ。」はコチラ!
第十回「禊(みそぎ)のロバート・フリップ ーー噂の27枚組BOX『セイラーズ・テール 1970-1972』の正しい聴き方」はコチラ!
第十一回「ああロキシー・ミュージック(VIVA! ROXY MUSIC)前篇 --BOXを聴く前にブライアン・フェリーをおさらいしよう」 はコチラ!
第十二回 「ああロキシー・ミュージック(VIVA! ROXY MUSIC)後篇 --BOXを聴いて再認識する〈ポップ・アートとしてのロキシー・ミュージック〉」はコチラ!
第十三回 「今日もどこかでヒプノシス」はコチラ!
第十四回 「ピーター・バンクスはなぜ、再評価されないのか --〈星を旅する予言者〉の六回忌にあたって」はコチラ!
第十五回 「悪いひとじゃないんだけどねぇ……(遠い目) ―― ビル・ブルフォードへのラブレターを『シームズ・ライク・ア・ライフタイム・アゴー 1977-1980』BOXに添えて」はコチラ!
第十六回 「グレッグ・レイク哀歌(エレジー)」はコチラ!
第十七回 「クリス・スクワイアとトレヴァー・ホーン -イエスの〈新作〉『FLY FROM HERE -RETURN TRIP』に想うこと- 前篇:スクワイアの巻」はコチラ!
第十八回 「クリス・スクワイアとトレヴァー・ホーン -イエスの〈新作〉『FLY FROM HERE-RETURN TRIP』に想うこと- 後篇:空を飛べたのはホーンの巻」はコチラ!
第十九回「どうしてジョン・ウェットンを好きになってしまったんだろう(三回忌カケレコスペシャルversion)」はコチラ!
第二十回「どうしてゴードン・ハスケルは不当評価されたのだろう ー前篇:幻の1995年インタヴュー発掘、ついでに8人クリムゾン来日公演評も。」はコチラ!
第二十一回「どうしてゴードン・ハスケルは不当評価されたのだろう -後篇:幻の1995年インタヴューを発掘したら、めぐる因果は糸車の〈酒の肴ロック〉」はコチラ!
第二十二回「鍵盤は気楽な稼業ときたもんだ--あるTKの一生、に50周年イエス来日公演評を添えて」はコチラ!
第二十三回「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう(by ビリー・シャーウッド)」はコチラ!
第二十四回「荒野の三詩人-誰かリチャード・パーマー=ジェイムズを知らないか-」はコチラ!
第二十五回「会議は踊る、プログレも踊る-リチャード・パーマー=ジェイムズを探して-」はコチラ!
第二十六回「我が心のキース・エマーソン & THE BEST ~1990年の追憶~」はコチラ!
第二十七回:「『ザ・リコンストラクション・オブ・ライト』は、キング・クリムゾンの立派な「新作」である。 プログレ「箱男」通信【KC『ヘヴン&アース』箱】号①」はコチラ!
第二十八回:「《The ProjeKcts》の大食いはいとおかし。 プログレ「箱男」通信【KC『ヘヴン&アース』箱】号②」はコチラ!
第二十九回:「ロバート・フリップの〈夢破れて山河あり〉物語 プログレ「箱男」通信【KC『ヘヴン&アース』箱】号➌」はコチラ!
第三十回:「封印された〈車道楽プログレ〉ー『レイター・イヤーズ 1987-2019』箱から漏れた、ピンク・フロイドVHS『道(MICHI)』」はコチラ!
第三十一回:「どうしてプロレスを好きになってしまったんだろう。へ?」はコチラ!
第三十二回:「LEVINは何しに日本へ? の巻」はコチラ!
第三十三回:「どうして日本人はキング・クリムゾンを唄いたがるのだろう -雑談三部作・完結編-」はコチラ!
第三十四回:「コロナの記憶:どうしてビル・リーフリンを忘れられないのだろう トーヤ&フリップ「夫婦善哉」への道」はコチラ!
第三十五回:「キル・ビル/ビル・ブル 極私的「60歳からのプログレッシヴ・ロック」論」はコチラ!
4枚組ボックス、ブックレット・帯・解説・紙製収納ボックス付仕様、定価9709+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯無
解説無、帯無、ボックスとブックレット無し、CDの圧痕・ソフトケースの圧痕あり
デジタル・リマスター、ボーナス・トラック4曲
盤質:傷あり
状態:良好
ビニールソフトケースの圧痕あり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの71年作4th。その内容は次作「危機」と並ぶ、プログレッシブ・ロック史に留まらず70年代ロック史に残る屈指の大名盤であり、STRAWBSからキーボーディストRick Wakemanが加入、文字通り黄金期を迎えた彼らがトップバンドへと一気に飛躍する様が鮮明に残されています。まだ「危機」のような大作主義こそないものの、「ラウンドアバウト」「燃える朝焼け」など彼らの代表曲を収録。また今作から、その驚異的なエンジニアリング技術で彼らの複雑な楽曲製作に貢献することとなるEddie Offord、そしてその後のYESのトレードマークとなる幻想的なジャケット/ロゴを手がけるRoger Deanが参加、名盤の評価をより一層高めることとなります。
デジパック仕様、スリップケース付き仕様、輸入盤国内帯・解説付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック2曲、定価2400+税
盤質:傷あり
状態:並
帯無
帯無
英国プログレを代表するグループ、71年3rd。John Anderson、Bill Bruford、Chris Squireに加えSteve Howeが加入。前作までのPOPさを残しつつクラシック要素が強まり、楽曲構成がより複雑且つドラマティックなものへと変化しています。大作こそ無いもののYESサウンドを確立させたアルバムです。クラシカルなものからフラメンコまで、多様なフレーズを自然に溶け込ませるSteve Howeのギターが圧巻。細かく正確に刻まれるBill Brufordのドラム、メロディアスに高音を響かせるChris Squireのベース、そして天使の歌声John Andersonを加えたアンサンブルは、瑞々しく表情豊かです。本作でバンドを去ることになるTONY KAYEによるハモンド・オルガンも、英国らしいダークな雰囲気を醸し出しており魅力的。『FRAGILE』、『CLOSE TO THE EDGE』に次ぐ人気を誇る代表作。
紙ジャケット仕様、UHQCD、スティーヴン・ウィルソン・リミックス、定価2800+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
軽微なスレあり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの72年作5th。その内容は前作「こわれもの」と並ぶ、プログレッシブ・ロック史に留まらず70年代ロック史に残る屈指の大名盤であり、20分近い表題曲をメインに据えたコンセプト・アルバムとなっています。Keith Emersonと人気を分かつRick Wakemanによる華麗なキーボード・オーケストレーション、カントリーからフラメンコまでを自在に操る個性派ギタリストSteve Howeの超絶プレイ、難解な哲学詞を伝えるハイトーン・ボーカリストJon Anderson、テクニカルでタイトなBill Brufordのドラム、そしてリッケンバッカーによる硬質なベースさばきを見せるChris Squire、今にも崩れそうな危ういバランスを保ちながら孤高の領域に踏み入れた、まさに「危機」の名に相応しい作品です。
紙ジャケット仕様、HDCD、デジタル・リマスター、インサート封入、定価2000+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
帯中央部分に若干色褪せあり
デジパック仕様、スリップケース付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック4曲
盤質:無傷/小傷
状態:良好
デジパック・スリップケース付き仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック4曲
盤質:無傷/小傷
状態:良好
軽微な圧痕あり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの73年作。「こわれもの」「危機」で大きな成功を収めた彼らですが、本作は彼らが更なる高みを目指した1枚であり、Jon Andersonの宗教的なコンセプトをテーマに神秘的な雰囲気と独特の瞑想感、スペーシーな雰囲気で進行する良作です。全4曲から構成され、うち3曲は20分を超えると言う大作主義の極みのような作風は圧巻であり、Bill Brufordに代わりドラムにはAlan Whiteが初めて参加しているほか、Rick Wakemanは本作を最後に脱退。非常に複雑な構成から賛否両論のある1枚ですが、やはりその完成度に脱帽してしまう傑作です。
2枚組、英文ブックレット付仕様、定価不明
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
盤に指紋跡あり、帯はケースに貼ってある仕様です、帯に折れあり
紙ジャケット仕様、2枚組、HDCD、デジタル・リマスター、定価3619+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
若干スレ・若干汚れあり、解説に軽微な折れあり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの73年ライブ作。名盤「Close To The Edge」を生み出した彼らの自信が感じられる名ライブ作であり、その内容はある種、スタジオ盤以上にファンを虜にしているほどです。もはやおなじみとなったストラビンスキーの「火の鳥」でその幕を開け、「シべリアン・カートゥル」や「燃える朝焼け」「同志」「危機」と、「ラウンド・アバウト」と彼らの代表曲をたっぷりと収録。スタジオ作のクオリティーを完璧に再現するだけでなく、スタジオ作には無いドライブ感の詰まった超絶技巧、名演の数々は全ロックファン必聴です。
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの74年作7th。「こわれもの」「危機」で大きな成功を収めた彼らですが、前作「海洋地形学の物語」でキーボードのRick Wakemanが脱退、後任にはRefugeeの技巧派Patrick Morazが加入しています。その内容はPatrick Morazの参加によってラテン・ジャズ、そして即興色が加味され、超絶なインタープレイの応酬で畳み掛けるハイテンションな名盤であり、「サウンド・チェイサー」ではインドネシアのケチャも取り入れるなど、深化した彼らの音楽性が伺えます。もちろん彼ららしい構築的なアンサンブルも健在であり、大曲「錯乱の扉」の一糸乱れぬ変拍子の嵐など、バンドのポテンシャルの高さが伺えます。大きな成功を経て円熟期に入った彼らを象徴する1枚です。
98年初回盤紙ジャケット仕様、HDCD、デジタル・リマスター、内袋・リーフレット付仕様、定価2000+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
内袋はついていません
盤質:傷あり
状態:並
軽微なカビあり
デジパック仕様、スリップケース付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック3曲
盤質:傷あり
状態:良好
スリップケースに軽微な圧痕あり
その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの77年作。前作「Relayer」でRick Wakemanに代わりテクニカルなプレイを見せたPatrick Morazが脱退しRick Wakemanが再加入した作品となっています。それに伴い、Patrick Morazの即興色やジャズ色が影響した前作に比べてRick Wakeman色がバンドに再び彩りを与え、シンフォニック然としたアプローチが復活。YESらしい個性が再び芽吹いた1枚と言えるでしょう。加えて、非常にポップな印象を与える作風へとサウンドが変化しており、Doger Deanの幻想的なアートワークからHipgnosisの現実的なアートワークへの移行が興味深い作品となっています。
紙ジャケット仕様、MQA-CD×UHQCD(すべてのCDプレイヤー再生可/ハイレゾ品質での再生にはMQA対応機器が必要)、復刻巻帯付き、リーフレット付仕様、定価2800+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
パンク、ニュー・ウェイブ全盛期の中リリースされた78年9作目。大作主義は鳴りを潜め、10分以下の小曲で構成されているほか、音も時代を反映してそれまでよりもかなり煌びやかでポップなものになっています。とはいえ開放感のある瑞々しいメロディや、各楽器が緻密にメロディを奏でていくアンサンブルの構築性は流石のYESと言ったところ。多様な音色を駆使し、生き生きとフレーズを弾きまくるウェイクマンのキーボード。自由奔放かつ繊細さ溢れるハウのギター。地に足のついたスクワイアのベース、タイトかつ柔軟さのあるホワイトのドラム。そこへアンダーソンのヴォーカルが次から次へとメロディを紡ぎ出す、有無を言わせぬ怒涛のプログレッシヴ・ポップ・サウンドは彼らでなければ生み出し得ないものでしょう。「Release Release」など本作を象徴する1stや2ndに入っていそうなスピーディーでストレートなロック・ナンバーも魅力ですが、白眉は「On The Silent Wings of Freedom」。前作『Going For The One』で聴かせた天上を駆けるような夢想的なサウンドと、「ロック」の引き締まったビートが理想的に共存した名曲に仕上がっています。スタイルは変われどもYESらしさは満点と言っていい好盤。
「こわれもの」「危機」を生んだイエス黄金ラインナップからなるABWHと、かつてイエスに在籍した主要メンバー(クリス・スクワイア、アラン・ホワイト、トニー・ケイ、トレヴァー・ラビン)が合体。8人組新生イエスがここに誕生した91年作。
紙ジャケット仕様、K2 24bitマスタリング、ボーナス・トラック1曲、内袋付仕様、定価2000+税
盤質:傷あり
状態:
帯有
透明スリップケースがついています
定価2500+税、36Pブックレット付仕様
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
帯特典部分切り取り有り、帯に若干圧痕あり、クリアケース無し
2枚組、紙ジャケット仕様、SHM-CD、ボーナス・トラック2曲、定価4000+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
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