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「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう@カケハシ」 第三十回: 封印された〈車道楽プログレ〉ー『レイター・イヤーズ 1987-2019』箱から漏れた、ピンク・フロイドVHS『道(MICHI)』  文・市川哲史

第三十回: 封印された〈車道楽プログレ〉-『レイター・イヤーズ 1987-2019』箱から漏れた、ピンク・フロイドVHS『道(MICHI)』


昨年暮れにまた出た。

2016年の28枚組『The Early Years 1965-1972』箱に続き、16枚組『The Later Years 1987-2019』箱をコンパイルしたピンク・フロイドである。


2011年9月『狂気』からの同年11月『炎~あなたがここにいてほしい~』、そして翌2012年2月『ザ・ウォール』と、CDにDVDにBDにストーム・トーガソンによる豪華40数頁アートブックに27㎝四方のアートプリントにジル・フルマノフスキー撮影の写真集にコレクターズ・カードに当時のツアー・チケット&バックステージ・パスのレプリカにバッジにコースター9枚にスカーフにビー玉3個を各々詰め込んだ「どおだまいったか」箱――思えば《THE IMMERSION BOX SET》三部作は、鬱陶しい各種メモラビリアを積極的に無視すれば、発掘音源的には愉しかった。

アラン・パーソンズによる、ハイセンスな『狂気』アーリー・ミックス。ライト渾身の“アス・アンド・ゼム”ピアノ・ヴァージョン。ウォーターズが唄う“葉巻はいかが”。ローリング・サンダー・レヴュー的フィドルが主役の“あなたがここにいてほしい”。ちょっとだけ公開された世紀の大失敗作『ハウスホールド・オブジェクツ(仮)』音源。『ザ・ウォール』収録曲の習作デモ群。

そしてわずか数秒間の、あのウォーターズとギルモアが一本のスタンド・マイクを挟んでユニゾる“ヤング・ラスト”のアールズ・コート公演映像。

奇蹟だ。


で4年後の11CD+9DVD+8BD『アーリー・イヤーズ1965-72』箱が、137曲の未発表&レア音源と映像でデビュー前から『狂気』前夜までを網羅した。

ボウイもボランも目じゃないシド・バレットの、常軌を逸した美少年っぷり。異常な途中加入しておそろしく引っ込み思案だった頃のギルモア映像。1969年3月から半年だけ披露されたコンセプト・ライヴ《The Massed Gadgets of Auximines:オーグジマインズ氏の人生集積回路-ピンク・フロイドが贈る、さらに深刻な非日常》の初公式音源化。ありとあらゆる“原子心母”11ヴァージョン(っ)。アニメもバレエ団もなぜかバレエを踊りこなす“吹けよ風、呼べよ嵐”。実はライヴ・バンドとしての演奏力が尋常じゃなかった、『おせっかい』期の1971年9月のBBCライヴ音源。

そして『炎』箱CD2➀➁➂と『狂気』箱CD2➀➁➂➃➄➅➆⑧⑨⑩と『アーリー・イヤーズ』箱CD10⑰を続けて聴けば、1974年11月16日英ウェンブリー・エンパイア・プールにおけるピンク・フロイド最強公演のフル・ライヴを体験できるよお立合い。

〈『アニマルズ』が薄くて『ファイナル・カット』は無視〉という不公平は残念だが、こうしたウォーターズ時代のフロイドの発掘再検証作業そのものの獲れ高は、なかなかのもんだったと思う。と言いつつ「2~3年以内にはきっと出るんだろうなぁ続篇」と思ってたら、やっぱりコンパイルされたのが『ザ・レイター・イヤーズ』である。

仕方ない。予定調和は大事なのだ。

とはいえこの箱のテリトリーは、1987年以降の【ウォーターズ抜きピンク・フロイド】。該当作品は『鬱』と『対(TSUI)』の2タイトルのみ。例の『永遠(TOWA)』は『対』の補集合アルバムみたいなもんだから、さすがに除外されている。箱の中身はもうすっかすか必至と思いきや、CDとBDで音源を、DVDとBDで映像を重複させるというディズニー並みの非道に走りつつも、いろんなアーカイヴを集めるだけ集めてきっちり豪華商品化してきた。

さすが資本家ギルモア。


まず《鬱》ツアー関連は、1988年11月発表のライヴ盤『光~PERFECT LIVE!』が8曲追加の全23曲、翌89年6月の同名ライヴ・ヴィデオも5曲追加の全21曲に。続く《対》ツアーの方は、1995年5月の点滅ライヴ盤『P.U.L.S.E.』は今回無視されてるものの、同名ライヴ・ヴィデオを2006年にDVD化した『驚異』がレストア再編集で、まるで別物に生まれ変わった。

さらには、1990年6月30日開催のチャリティー・イヴェント《KNEBWORTH》出演時の、全7曲55分を音源も映像も初めて完全収録したCDとDVD/BD。文字通りの初出ライヴ映像は、1989年7月15日伊ヴェニスで20万人の観客を集めた無料水上コンサート全14曲ときた。《対》ツアー中の1994年10月20日ロンドン・アールズ・コート公演の、開演前リハ3曲なんてもんまでぶちこんでるし。

珍しいところでは、❶1996年1月17日第11回ロックの殿堂授賞式で実現したギルモア&ライト&スマパンのビリー・コーガン編成による、“あなたがここにいてほしい”ライヴ映像。➋2007年5月10日のシド・バレット追悼コンサート《SYD BARRETT―MADCAP’S LAST LAUGH》における、レイター・フロイドの“アーノルド・レーン”ライヴ映像なんてのもある。

その一方で、またコンサート演出用スクリーン映像全19本が言うまでもなく収録されてるし、ジャケ撮影用に800台のベッドを砂浜に並べたり、一対の巨大像を野っ原に何度も立てるドキュメンタリー映像も観せられてしまうのだ。

初出スタジオ音源8曲は、『対』レコーディング時の未発表セッション音源で、『永遠』のデラックス・ヴァージョン収録のものとは重複していない。一方『鬱』のアウトテイクスが1曲も収録されてないということは、やはりアレはギルモアのキャパを超えて搾るだけ搾って作ったアルバムだったわけだ。うんうん。

またアルバム未収録のライヴ音源も5曲聴けはするが、3枚のシングル“現実との差異”“理性喪失”“テイク・イット・バック”で既発の曲ばかりだったりする。

しかしこうなってくると6年前、2014年6月にリリースされた『対』20周年記念箱の立場が、いよいよ微妙だ。

あの箱は2LP+12インチシングル+7インチシングル×2+1CD+1BDものメディア量を誇りながら、音源的には2014年制作の『対』本編5.1サラウンド&ハイレゾ・ミックスと、3枚のレプリカ・シングルで辛うじて2曲聴けるアルバム未収録ライヴ・ヴァージョンしか、取り柄がなかった。そのささやかな取り柄――①ライヴ音源2曲が初CD化された上で、また➁2014年版ミックスはそのまんま、今回の『レイター・イヤーズ』箱にもれなく再収録されてしまった以上、『対』箱はまさに絵に描いたような無用の長物と化したのである。

成仏してくれ『対』箱。



というわけでこの『レイター・イヤーズ』箱、大枚5万円をはたいて購入するかどうかは、まさにプログレッシャーズ各自の価値観と判断に委ねられている。〈ウォーターズ抜き〉フロイドを許容できるか/できないか、だ。日本の発売元であるソニーさんが国内リリースをギリギリまで悩んだらしい、のも当然と言える。

なんて、ここまで妙に客観的で奥歯に何か挟まったような物言いが続いている今回の私に、あなたは気づいただろうか。理由は簡単――まだ全部観て聴いていないから。わはは。 とはいえ、プロの音楽評論家のくせに不届き者なんて思わないでくれ。そもそも買うか買わないか、たしかにかなり逡巡したけども結局、予約購入したのだ。


だって私は『プログレ「箱男」』だもの、買わないわけにはいかないじゃないか。
くそ。

で2019年暮れのクリスマスだったか、自宅に巨大箱は届いた。

早速『鬱』のニュー・ヴァージョンを聴きながら、箱内に格納されてるアイテムを吟味していると――ん? 何か足りない。あ、新ピクチャー・スリーヴの7インチシングル2枚と各種レプリカ・グッズが、特殊仕様の封筒ごと見当たらないではないか。おいおいおいおいおいおい。一日かけて重箱の隅を突つくがやはり発見できず、結局返品交換する羽目に。しかも年末年始を挟んだので、再び届いてからまだ間もなかったりする。そりゃまだ全部聴けない観られない。

やはり私はギルモアと相性が悪いようだ。


 
なんてここまで書いておきながら、今回の原稿に『レイター・イヤーズ』箱の具体的な内容は二の次だったりする。私の関心の先はそこではないのだ。おいおい。

前述のとおり、《ウォーターズレス・ピンク・フロイド》の関連映像と音源を根こそぎサルベージした大蔵ざらえ箱である。再収録できるものならもうなんでも詰め込みたかったはずだ。ところが実は1アイテムだけ収録されていない――というか、むしろなかったことにされてる作品が存在する。

1992年4月にVHSとLDでリリースされた映像作品『LA CARRERA PANAMEICANA』である。ちなみに日本語タイトルは『道(MICHI)』だった。すごいだろ。


私のカーキチ(←死語)の旧友の言葉を借りて内容を説明するとーー。

ピンク・フロイドの音楽をBGMに、疾走する参加車両の映像がメインながら、コース沿線の中米の習俗とともに、ラリーや公道レースにつきもののマシントラブルと夜を徹しての復旧作業の様子、そしてこの《カレラ・パナメリカーナ・メヒコ》に対する熱い想いを語る参加者たちの表情を織り交ぜながら描く、なかなか優秀なレース・ドキュメンタリーなのだそうだ。

たしかにレース後半になると人も車も限界を超えるのか、壮絶なコースアウトやクラッシュが続発したりなんかして、人生58年一度もクルマに興味を持ったことない私でも、そこそこ愉しめたりはする。

アメリカ大陸縦貫道路《パンアメリカン・ハイウェイ》のメキシコ国内部分の完成記念として、1950年に開催されたのが第1回。メキシコ市街地を激走する北米から参加のアメリカン・クーペ車たちが、勢い余って住宅に突っ込む過激さが衆目を集めた。すると翌1951年の第2回には、北米市場へのプロモーションを兼ねて欧州からフェラーリ勢が出走。しかも余裕のワンツー・フィニッシュをかましたことで、続く第3回以降は欧州のライバル・メーカーたちがこぞって参戦するように。

ところが、全長3,000km強で標高差3,000mの曲がりくねる山岳部の未舗装道路などを、丸7日懸けて走破する極めて苛酷な公道レースにもかかわらず、高速化が著しくなった結果、コースアウトによる死傷者が続出して1954年の第5回でレースそのものが終焉を迎えてしまう。
 で第4回でクラス優勝&総合3位と大活躍したポルシェは、のちに911のベースグレードを指す呼称にレース名の《カレラ》を記念に冠したらしい。かつて『サーキットの狼』をいやいや斜め読みした私でも知ってるネーミングだ。

そういえば昔、BUCK-TICKの櫻井敦司に乗せてもらってたよ助手席に。首都高を走行中に突然炎上しちゃったけど。わははは。

全っ然笑えない。

それでもこの〈世界で最も過酷なレースの一つ〉は1988年、復刻版パナメリカーナ・メヒコとして復活。再び旧友に言わせると、《欧州スポーツカー対北米クーペ、34年目の仁義なき戦い》だったのだそうだ。異種格闘技戦みたいなものか?

おそろしく前置きが長くなった。

その1991年10月に開催されたカレラ・パナメリカーナ・メヒコに参戦した、メイソン&ギルモア&(フロイドのマネージャー)スティーヴ・オルークから成るピンク・フロイド・チームのドキュメンタリー映像作品が、『道』なのだ。まず同年12月21日に英BBC2で放映し、半年後に商品化された。

しかし未だDVD化およびBD化されてはいない。

まずカー・レース参加に関する主導権を握ってたのは、問答無用でニック・メイソンのはずだ。数多の超高級車を所有する車道楽なのは言うまでもなく、たとえば彼のフェラーリ1953年式250MMは世界屈指の自動車イヴェント《グッドウィル・フェスティヴァル・オブ・スピード》で毎回披露されるほど、とてもレアな車種らしい。しかしそれ以上に、彼のレース歴が尋常ではない。

記録を調べたら、ウォーターズ&ギルモアが3ヶ月間に及ぶ『ザ・ウォール』の断続的デモ・レコーディングを終え、続くウォーターズのヴォーカル・セッション中にもかかわらずル・マン24時間耐久レースに初挑戦したのが、1979年6月。いきなりの18位完走という好成績が、それからル・マンやシルバーストーンなど毎年毎年2~3本はレースに出場するという、メイソンの車道楽を常習化させちゃったはずだ。

ちなみに主な戦績は、ル・マンが80年22位→82・83・84年完走できず、シルバーストーンが80年完走できず→81年16位→82年20位→84年敗退。他レース群でも、80年19位に81年16位に83年7位とたぶん成果を上げている。いやあ、1973年頃までのメイソンの野蛮なドラムの恰好よさはわかるんだけど、レース関係はよくわかんない。


で、フロイド・イン・メヒコ。

参加資格が1950年代のグラン・ツーリスモ限定ということで、裕福なカーキチたちが操る限定フェラーリやアルファロメオや各種ポルシェの欧州車とビュイックやフォードやキャデラックのアメ車クーペが、バトルロイヤル状態で競う中、フロイド・チームが乗車したのは2台の1952年型ジャガーXK120Cタイプ――たぶんレプリカらしいのだが、私の知ったこっちゃない。

レース的には、リンゼイ・ヴァレンタイン(←誰だ?)と交代で運転したメイソン号は健闘したが、〈ウォーターズからフロイドを奪った男〉オルークを助手席に乗せたギルモア号はレース三日目、墨サン・ルイス・ポトシの町近郊でスピードの出し過ぎから山の斜面を70m滑落。なんと米テキサス(!)の病院まで緊急搬送された二人は、やはりVIPか。ちなみに酷い痣だけですんだギルモアに対して、オルークは両脚の複雑骨折とは。

こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か。明らかにロジャー・ウォーターズの祟りである。

でも個人的には、この「ギルモア号の最期」映像をいちばんの見どころに推す。

というわけで、映像作品『道(MICHI)』のサウンドトラック。まず曲目から。

➀ラン・ライク・ヘル(Gilmour/Waters)
➁Pan Am Shuffle(Gilmour/Mason/Wright)
➂空虚なスクリーン(Gilmour/Leonard)
➃時の世界(Gilmour)
➄生命の動向(Gilmour/Ezrin)
➅Country Theme(Gilmour)
➆Mexico’78(Gilmour)
➇Big Theme(Gilmour)
➈ラン・ライク・ヘル(Gilmour/Waters)
➉理性喪失(Gilmour/Manzanera)
⑪Small Theme(Gilmour)
⑫Pan Am Shuffle(Gilmour/Mason/Wright)
⑬Carrera Slow Blues(Gilmour/Mason/Wright)



➂➃➄➉が『鬱』収録曲で、邦題すらつけてもらっていない➁➅➆⑧⑪⑫⑬が本サントラ用の新曲。レース後帰英したギルモアは1991年11月、メイソンの他にライト、ティム・レンウィック(g)、ガイ・プラット(b)、ジョン・カーリン(kb)、ゲイリー・ウォリス(per)――要は《鬱》ツアーのメンバーをアストリア・スタジオとEMIスタジオに招集して、サントラをレコーディングした。ライトのフロイド復帰が正式にアナウンスされたのが1993年11月なので、彼が復帰後初めて録ったフロイドの新曲は実はこの➁⑫⑬だったりする。ぞんざいな扱い受けてるわこのひとはいつも。

➀➈は『ザ・ウォール』でおなじみフロイド・クラシックス、“ラン・ライク・ヘル”のライヴ・ヴァージョンである。なにせ共作者はウォーターズだから、オリジナル・ヴァージョンの使用許諾は期待できないし、わざわざ再レコーディングするのは癪だ。なら『光』収録のライヴ・ヴァージョンしかないじゃないか。

〈♪目茶苦茶に走りまくれ 無我夢中でとにかく走れ 後部座席で女といちゃついてるのを奴らに見つかったら、あんたはダンボール箱に入れられてあの母親の元へ送り届けられちまう、だからおもいきり走って逃げろ〉。

とはまさに世界一苛酷なカーレースのドキュメンタリーに相応しい楽曲だもの、ギルモアとしては絶対外せない。「でもウォーターズには頭を下げたくないしぃ」的な葛藤には、さぞ苛まれただろうと察するに余りある。

正直、どの楽曲もたいしたものではない。無理矢理➁が“狂ったダイアモンド”の後半、➅が『雲の影』っぽく聴こえなくもないが、ギルモアの思いついたインストゥルメンタル・フレーズを膨らませただけの、お手軽な小品揃い。しかしそれでもBGMには充分だったりするから、これはこれで天性の才能である。あとは歌詞とアレンジを大袈裟にすれば、ちゃんと《ピンク・フロイド・ミュージック》になるはずなのだ。

でも結果的に映像作品『道』もサウンドトラック音源『道』も、『レイター・イヤーズ』箱からは締め出された。ギルモア的には、フロイドも商業的大成功も手に入れて余裕しゃくしゃくだった、29年前の〈身も心もバブルだった自分〉を想い出したくないだけかもしれない。たぶん。

たしかに軽いっちゃ軽かったもの、サントラも車道楽もそしてギルモア自身も。

法廷闘争の末にようやくピンク・フロイドの新作『鬱』を発表。1987年9月9日米オタワ公演から1990年6月30日英《ネブワース》出演まで、足掛け4年全199公演に及ぶ一大ワールド・ツアーを完走。「こんなのフロイドじゃない」的な地球規模の逆風を真正面から受けながら、ここまでたどり着いたのだ。極めて同情的に言わせてもらえれば、ギルモアはよく踏ん張ったと思う。

そりゃ油断と隙と慢心が相まって凪も訪れるわなぁ、〈1991年のピンク・フロイド〉。たった一度きりの、両肩から力の抜けたギルモアズ・フロイドが『道(MICHI)』に見えた。『レイター・イヤーズ』箱にその『道』をちゃんと、しかもBDかなんかで収録していたらもっと見直してやったのにギルモア。

〈利益のあくなき追究〉が墓碑銘としか思えない男、スティーヴ・オルーク。だから彼はバンド解散を主張したウォーターズではなく、バンド継続だけが全てだったギルモアを選択した。そりゃ両脚複雑骨折くらい朝飯前である。

ちなみにどのくらいえげつないかというと、彼は《カレラ・パナメリカーナ・メヒコ》に出場する際の参加費を浮かすために、予め撮影権を売却してたのであった。おお。

オルークに関しては以前、メル・コリンズから訊いたことがある。1974年頃、彼のような腕利きセッション・ミュージシャンたちが結成した、ファンキー・パブ・ロック・バンド【ココモ】に関しての話からだった。


メルコリ もうセッションばっかり演ってるとある朝、目が醒めた瞬間から嫌気がさしてるもんでさ(苦笑)。「あーそろそろバンド組んで自分の演りたい音楽を演りたいよなー」とか、渇望しちゃうわけ。しかもこれは俺だけの特殊な現象ではなくて、やたらお呼びがかかるセッション・マンは皆、同じようなことを考えてたんだよなー。

市川 いろんな輩からいろんな要望を受けていろんな音楽演ってると、バンドが恋しくなるんですねぇやっぱり。

メルコリ 不治の病だ(愉笑)。そこで俺の場合はもう遊びでクラブで吹いてたら、【グリース・バンド】のアラン・スペナーとニール・ハバート、ブライアン・オーガーのとこにいた目茶目茶ギターが上手いジム・ミューレンと一緒に演奏する機会が、なぜかどんどん増えてくんだよ。

市川 スペナー&ハバートとは、アルヴィン・リーのレインボー・シアター公演(←1974年3月/ライヴ盤『栄光への飛翔』)で共演して意気投合したんですか。

メルコリ そうそう。他にもあの夜のコーラス隊だった元【アライヴァル】の女子3人(←ダイアン・バーチ/パディ・マクヒュー/フランク・コリンズ)まで合体しちゃってね。なんと10人の大所帯に膨らんで勝手に愉しんでたら――ある日突然バンドになってたんだこれが。ははは。

市川 そりゃまた徹底的にアバウトな、ココモの成り立ちで。

メルコリ 気がついたらレコード・デビューしてたわけだ。

市川 でもその1stアルバム(←『ファンキー・マシーン★ココモ1号』1975年)のジャケ裏集合写真に、あなただけ写ってないんですよね。名前はちゃんとクレジットされてるのに。ずっと謎だったんですけど、イジメなんかで?

メルコリ はははは! ちょうど撮影の日に、俺がアルヴィン・リー&カンパニーのツアーでいなかっただけの話なんだよ。

市川 つくづく緩い時代ですなぁ。

メルコリ しかもセッション仕事を続けてると、ありがたいことにツアー・バンドにあちこちから呼ばれるから幾つもかけもちする羽目にもなる。まあ俺自身がいろんな場面に自分から出てって吹きたい願望が強過ぎたりするから、自業自得ではあるんだけども。でココモはアヴェレイジ・ホワイト・バンドと一緒に米国ツアーを廻ったこともあって、アルバムが地味に売れた(←米ビルボードR&Bチャート最高34位)し、結構充実してたんだぜ? なにより俺が参加してきた数多のバンドの中でいちばん愉しかったのは、ココモなんだから。

市川 だけど本格的に全米進出を意識した2ndアルバム(←『ライズ・アンド・シャイン』1976年)を出した翌年でしたか、解散しちゃいました。

メルコリ いくらいいバンドでも、大所帯は長続きさせるのが難しいからね……ただそれ以上に致命的だったのは、マネージャーのスティーヴ・オルークが(1976年の)ツアーの途中でいなくなっちゃったことさ。

市川 あらら。ココモもフロイドの守銭奴マネージャーの顧客だったとは。『ココモ1号』でプロデューサーにクリス・トーマスを起用できたのは、その線かぁ。

メルコリ フロイドの連中から「フロイドとココモのどちらを取るんだ」迫られたあいつは、さっさと俺たちを見限ったんだよ。ふふ。


さすがオルーク、期待を裏切らない男であったとさ。














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    • 5099902943121IMMERSION

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      2枚は無傷〜傷少なめ、4枚は傷あり、情報記載シートにスレあり

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    67年の記念すべきデビュー・アルバム、シド・バレットの才気ほとばしるブリティッシュ・サイケデリック・ロックの大傑作!

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1967年に発表されたデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』は、Syd Barrett期のPINK FLOYDサウンドが収められた貴重な作品です。PINK FLOYDと言えば、ベーシストRoger Watersを中心とした体制で大躍進を遂げる70年代の印象がありますが、本作はSyd Barrettを中心とした体制で制作された作品であり、大半の楽曲をSyd Barrett作曲しています。その内容は、強烈な酩酊感と浮遊感を持ったブリティッシュ・サイケデリック・ロックであり、Syd Barrettの個性が発揮されたアルバム。旧邦題が『サイケデリックの新鋭』だったことにも納得のトリップ感覚を持った、60年代らしい作品です。

  • PINK FLOYD / SOUNDTRACK FROM THE FILM MORE(MUSIC FROM THE FILM MORE)

    69年発表の通算3作目、映画『MORE』のサントラ盤、名曲「Cymbaline」収録

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1969年に発表された『モア』は、バーベット・シュローダーの監督作品「モア」のサウンドトラック・アルバム。本作の特筆すべき点は、Roger Waters、Rick Wright、Nick Mason、Dave Gilmourという4人編成での初めてのアルバムであるということでしょう。音楽的には、インストゥルメンタル楽曲(5曲)よりもヴォーカル楽曲(8曲)に比重が置かれている点が意外ですが、これはすでにあったストックを流用したことと関係があるのかもしれません。わずか8日間で制作が終了したのも、そのためでしょう。PINK FLOYDが新たなロック・サウンドを創造すべく実験精神に溢れていた時代の必聴作です。ちなみに、旧邦題は『幻想の中に』。

  • PINK FLOYD / ATOM HEART MOTHER

    70年発表、プログレと言えばこのジャケ!A面の大作、B面の小曲集ともに美しく気品ある佇まいの名曲で固められた傑作

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1970年に発表された4thアルバム『原子心母』は、ヒプノシスによる牛のカバー・アート、英単語の直訳をそのまま並べた個性的な邦題、そして、日本盤帯に書かれた「ピンク・フロイドの道はプログレッシヴ・ロックの道なり!」というキャッチ・コピーが広く知られた名盤です。やはり一番の聴きどころは、スコットランド出身の前衛作曲家Ron Geesinをオーケストラ・アレンジャーに迎えた23分のタイトル曲「Atom Heart Mother」でしょう。ブラス・セクションや混声合唱を贅沢に配置したサウンドが、プログレッシヴ・ロック時代の幕開けを宣言するかのように堂々と響きます。一方、Roger Waters作曲の「もしも」、Rick Wright作曲の「サマー’68」、Dave Gilmour作曲の「デブでよろよろの太陽」は、共通して美しいメロディーが印象的な小品。そして、アルバムの最後にはミュージック・コンクレートの手法を用いた「アランのサイケデリック・ブレックファスト」が控えます。なおグループは、本作で初めて全英初登場1位を獲得しました。

  • PINK FLOYD / MEDDLE

    71年作、代表曲「ONE OF THESE DAYS」「ECHOES」収録、両極に挟まれたメロウな小曲群も魅力的な名盤

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1971年に発表された5thアルバム『おせっかい』は、ヒプノシスによる耳と波紋を重ね焼きしたアートワークが印象的な作品です。本作の最も大きなポイントは、4人体制のPINK FLOYDが初めて、彼らだけの手で作り上げた純粋なスタジオ・アルバムであるということでしょう。なぜなら『モア』はサウンドトラックであり、『ウマグマ』はライブ・レコーディングとメンバーたちのソロ作品から成る変則的なアルバム、『原子心母』は前衛作曲家Ron Geesinがアルバムの出来栄えに大きく関与していたためです。やはりオープニングに置かれた「吹けよ風、呼べよ嵐」と、エンディングに置かれた「エコーズ」が、本作を名盤に押し上げています。「吹けよ風、呼べよ嵐」は、広がりのあるRoger Watersのベースの反復とフェードイン・フェードアウトを繰り返すRick Wrightのオルガンを核とする前半、そしてDave Gilmourのヘヴィーなギターが加わる中盤から一瞬の静寂を経て、Nick Masonのハード・ロック・ドラムが加わる後半から成る名曲。一方の「エコーズ」は23分を超える大曲であり、現在多くの音楽ファンがPINK FLOYD「らしさ」と受け止める音楽的な振る舞いが確立された重要な楽曲です。

  • PINK FLOYD / RELICS

    60年代にリリースされたシングル音源を中心に収録した71年作

  • PINK FLOYD / OBSCURED BY CLOUDS

    『狂気』のレコーディングを中断して映画『ラ・ヴァレ』用に録音された72年作品、サントラながら最盛期を感じさせる佳曲が満載の一枚

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1972年に発表された『雲の影』は、バーベット・シュローダー監督作品「ラ・ヴァレ」のサウンドトラックとして発表されました。なお、69年作『モア』も、同じくバーベット・シュローダー監督作品「モア」のサウンドトラックでした。『おせっかい』と『狂気』という傑作の間に挟まれ、さらにサウンドトラック・アルバムということで影の薄い印象も持たれがちな作品ですが、大傑作『狂気』と同時期に制作された本作のクオリティーが低いはずがありません。制作はパリのシャトー・ド・デルヴィーユで行われ、わずか2週間ほどで完了。PINK FLOYDのオリジナル・アルバムに見られるような張り詰めた緊張感こそ見られないながらも、初期の彼らを思い起こさせる、サイケデリックな質感を漂わせた耳馴染みの良いヴォーカル曲、インストゥルメンタル曲が収められています。

  • PINK FLOYD / DARK SIDE OF THE MOON

    73年発表、ロックの歴史に燦然と輝く世紀の名盤!

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1973年に発表された『狂気』は、“人間の内面に潜む狂気”をテーマに制作されたPINK FLOYDの代表作のひとつ。このクラスの名盤ともなれば、もはやプログレッシヴ・ロックという音楽ジャンルに限定する必要すらありません。本作は、世界で最も売れた音楽アルバム(推定5000万枚以上)のひとつであり、ビルボード・チャートに741週(15年)連続チャート・イン、さらに発売から2年を経過したアルバムのみを扱うカタログ・チャートに至っては1630週(30年)以上チャート・インするというギネス記録を打ち立てた大傑作です。あえてプログレッシヴ・ロックの側面から指摘するならば、本作は「コンセプト・アルバム」という表現方法を象徴するアルバムだということでしょう。本作の成功によって、コンセプトの中核を担ったベーシストRoger Watersのグループ内での発言権が増し、次作以降のPINK FLOYDにも大きな影響をもたらすことになります。ロック・ミュージックの歴史に燦然と輝く名盤であり、当然ながらプログレッシヴ・ロックを語る上で外すことはできない作品です。

  • PINK FLOYD / WISH YOU WERE HERE

    前作『狂気』にも劣らぬ内容を誇る75年リリースの傑作

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1973年発表の『狂気』の大ヒットを経て、PINK FLOYDは日用品を使った前衛音楽「Household Objects」を企画。しかし、これは実際にレコーディングも行われていましたが、途中で頓挫しました。そして、1975年に発表された『炎〜あなたがここにいてほしい』は、全米および全英1位を獲得した前作『狂気』と並ぶPINK FLOYDの代表作のひとつとなりました。最大の聴きどころは、アルバム冒頭と最後に収められた9つのパートから成る「クレイジー・ダイアモンド」でしょう。この大曲は、(Roger Waters自身は否定しているものの)早くにグループを離脱することになってしまったSyd Barrettに捧げられた楽曲だと言われています。さらに、79年にリリースされる傑作『ザ・ウォール』につながるテーマが登場する「ようこそマシーンへ」、プログレ・フォーク・ミュージシャンRoy Harperをゲスト・ヴォーカリストに迎えた「葉巻はいかが」、そしてRoger WatersとDavid Gilmourが揃って「グループの最高の楽曲のひとつ」と胸を張る「あなたがここにいてほしい」が収められています。『狂気』に続き、本作も間違いなく名盤です。

  • PINK FLOYD / THE WALL

    ロジャー・ウォーターズの内面世界が色濃く反映された79年作、世界一売れた2枚組アルバム!

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与え続けています。1979年に発表された大作『The Wall』は「全世界で最も売れた(3000万枚以上)2枚組のアルバム」であり、『狂気』や『炎〜あなたがここにいてほしい』と並ぶ、グループの代表作のひとつ。その内容は、バンドの実権を掌握したRoger Watersの思想が強く表れたロック・オペラ。Roger WatersとSyd Barrettの姿が投影されていると言われるロック・スター「ピンク」を主人公に、彼が人生の中で経験してきた教育に対する違和感や社会の中での疎外感を「壁」に見立て、各曲が切れ目なく進行していきます。本作を引っ提げて行われたツアーでは、ステージと客席の間に実際に「壁」を構築し、大きな話題となりました。2010年代に入って以降も、例えばRoger Watersによる大規模な再現ツアーが行われていることからも、PINK FLOYDのディスコグラフィーの中での本作の重要度が分かるでしょう。シングル・カットされ全米・全英1位を獲得した「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール (パート2) 」や、コンサートの定番曲「コンフォタブリー・ナム」といった名曲も収められた、ロック・ミュージックの歴史上類を見ない傑作です。

    • TOCP65742/3

      紙ジャケット仕様、2枚組、デジタル・リマスター、年表・歌詞対訳付き仕様、タイトル入りプラ製シート・内袋2枚付仕様、レーベルカード4枚入り、定価3495

      盤質:全面に多数傷

      状態:並

      帯有

      プラ製シートなし、レーベルカード1枚に若干折れあり、内袋1枚に若干汚れあり、帯に若干カビあり

      2100円

      1680円
      (税込1848円)

      462円お得!


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    • CDP724383124329CAPITOL

      2枚組

      盤質:傷あり

      状態:並

      1枚は無傷〜傷少なめ、1枚は傷あり、カビあり

  • PINK FLOYD / A MOMENTARY LAPSE OF REASON

    新生フロイドの第1弾となった87年作

  • PINK FLOYD / DELICATE SOUND OF THUNDER

    88年のNY公演を収録、代表曲多数の傑作ライヴ・アルバム

  • PINK FLOYD / PULSE: IN CONCERT (CD)

    94年「対(TSUI)」ツアーの音源を収めたライヴ・アルバム、全24曲

    94年の「対(TSUI)」ツアーの模様を収めたライヴ・アルバム。アメリカ、ヨーロッパを回る77都市、110回の公演で300万人以上を動員したツアーは「史上最大の光と音のスペクタクルショー」として今や伝説として語り継がれるツアーとなった。荘厳なピンクフロイドの音世界とともに、史上最大のステージセット、複雑怪奇な映像を写し出す大円形スクリーン、目が痛くなるほどの光の洪水(ヴァリライトが生き物のように動き回り、レーザー光線が会場中を照らし出す)、牙の生えたブタが宙を舞い、巨大ミラーボールが光を放ち、これでもかと言わんばかりの花火の嵐・・・。まさに「美」としかいいようのない、それまでのコンサートの定義を大きく変えるものであった。今作の目玉はなんといっても「狂気」全曲再演収録。75年の最後の演奏以来19年振りに94年7月のデトロイト公演で復活。ここに収録されているのは、8月ドイツ、9月イタリア、10月ロンドンのライヴより。1-(2)の「天の支配」はUS公演ではオープニング・ナンバーだったのだが、誰もが度肝を抜かれたシド・バレット在籍時の1stアルバムからの曲。

  • PINK FLOYD / ATOMIC SAUCERS

    70年11月28日のドイツ公演を収録

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