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「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう@カケハシ」第四回 これは我々が本当に望んだロジャー・ウォーターズなのか? -二つのピンク・フロイド、その後【前篇】ー 文・市川哲史

第四回 これは我々が本当に望んだロジャー・ウォーターズなのか? -二つのピンク・フロイド、その後【前篇】ー 文・市川哲史

【フィル・コリンズ<ピーター・ガブリエル】に【アラン・ホワイト<ビル・ブルーフォード】に【90125イエス<ABWH】に【エイドリアン・ブリュー<ジョン・ウェットン】、そして【デイヴ・ギルモア<ロジャー・ウォーターズ】。

我々のみならず地球上に生息する<熱心>なプログレ者たちの共通認識として、いずれのケースも前者より後者を激しく肯定してきた。ただし世界中の音楽ファンの大半を占める<普通に好き>な人々は、前者と後者のどっちが偉いかなんて視点とは無縁で、バンドを屋号として認識し御贔屓にしてるだけだったりする。

健全だ。それが普通の生き方だ。

そんな偏執的なこだわりの中でも特に【ギルモアvsウォーターズ】戦は、<ピンク・フロイドとは何だったのか?>的な本質論まで発展したわけで、つくづくプログレッシャーの業は根深い。というわけで、フロイド内の対立構造をおさらいしておく。

『アニマルズ』『ザ・ウォール』『ファイナル・カット』と、作品コンセプトもそのコーディネイトも作詞もほとんどの作曲も<一人無双>状態だっただけに、ウォーターズは<自分の独立=ピンク・フロイド解散>と信じて疑わない。なので自分と一線を画すギルモアを成敗すべく1985年、<フロイド脱退>という究極の嫌がらせを敢行した。子供か。

それでもギルモアは、解散どころか<ウォーターズ抜きフロイド>始動に踏み切ってしまった。「自分不在でフロイドの新作は作れない」というウォーターズの頑強な自負が、<一寸のギルモアにも五分のフロイド魂>を見誤らせちゃったのである。
結局、事態は訴訟沙汰までこじれたものの、なんとか両者は和解にこぎつけた。

①今後のフロイド作品の印税は、ウォーターズにも分配する。
②『ザ・ウォール』のライヴ上演権は、ウォーターズが保持する。
③フロイドのライヴで今後、勝手に豚を飛ばしてはいけない。

なんだこの条件。

でようやく<ピンク・フロイドの新作>として『鬱』が87年9月にリリースされ、連動した足掛け3年にも及ぶワールド・ツアー共々、商業的大成功を収めた。しかしウォーターズは『鬱』を「すごく浅はかだが、非常によく考えられた偽モノ」と酷評し、《現在のピンク・フロイドはピンク・フロイドではない》と書いたビラを、ライヴ会場の広大な駐車場を埋め尽くした膨大な数の車のフロントグラスに一枚一枚挟むフロイド信者たちが、各国に出没した憶えがある。

「わははは! そういう連中はキング・クリムゾンのレコードを買えばいいんだぁ!!」(ギルモア談)。

となればウォーターズに残された<正当な嫌がらせ(エゴ・テロリズム)>は、一つしかない。自分のソロ・アルバムが、内容でもセールスでもギルモアズ・フロイドのアルバムを超えてみせること、だ。だがしかし――。



時系列は前後するがまずフロイド脱退前、84年5月発表の初ソロ『ヒッチハイクの賛否両論』は、神経症の主人公が見る淫靡でパラノイアな夢の中で人生を思索するという、愉快な妄想哲学アルバムだったのに、結果は英13位/米31位。僅か2ヶ月前にリリースされたギルモアの<はは能天気だねぇ>2ndソロ『狂気のプロフィール』の成績――英21位/米33位と、ほとんど大差なかったとは。ああ。

続く情報操作や表現規制、政治のエンタテインメント化の危険性を訴えた87年6月の次作『RADIO K.A.O.S.』は、新生フロイド第1弾『鬱』と直接対決の構図となったものの英国で25位vs3位、米国では50位vs3位という大惨敗を喫してしまった。ひー。

そして、92年9月発表の、湾岸戦争に端を発した<人類滅亡エンタテインメント>を揶揄しまくった憂いの3rdソロ『死滅遊戯』は、かろうじて英8位/米21位と過去最高の健闘は見せたものの、翌々年『対』の英米1位の大成功の前では木っ端微塵に。

ついでに書いとくと、その翌95年6月のライヴ盤『光』も英米1位だったりして、要は<自分抜きピンク・フロイド>に、ウォーターズは完膚なきまでに叩き潰されたのであった。くー。

言うまでもなく当時の私は<ロジャー・ウォーターズ・フロイド>派で、『ロッキングオン』誌上のみならず数多くの関連ライナーやプログレ系の売文仕事を通じて<ギルモアズ・フロイド>の欺瞞とウォーターズの正義を、日本国民に啓蒙しあげた。オルグだオルグ。

日常とたった薄皮一枚で隣り合わせの<非日常空間>を、大胆かつ繊細な実験魂を発揮して音楽に具現化させたからこそ、ピンク・フロイドは革命的なプログレ・バンドとして世間を圧倒した。ただし実験性なんて偶発的な刺激は、やがて色褪せる。しかしフロイドにはそれに代わる新たな個性をいつしか装備していた。

『狂気』以降アルバム単位で明確なコンセプト・ワークと歌詞、である。
担当者はもちろん、ロジャー・ウォーターズ。

例えば“あなたがここにいてほしい”は、<月の裏側に逝ってしまった僚友へのラヴレター>と一般的に評価されているが、当時個人的内省が勃発したウォーターズは「そもそもは、もう一人の自分に語っていた」と後日、真相を明らかにしている。

要はそうしたナイーヴな憂鬱や内省は、突き詰めれば突き詰めるほど<アグレッシヴな被害者意識>に転化して、警告を発し不条理を糾弾する<正義の鉄槌>を振るうわけだ。そのためならば豚も空に飛ばすし、ステージと客席の間に巨大な壁だって構築する。強烈なエゴは、手段を選ばないのである。
メンバー間の緊張関係に亀裂が入り、やがてバンドそのものが瓦解しようとも――。

正直な話、ウォーターズによるコンセプト・ワークは凝り過ぎるがあまり、前出のソロ三部作なんかは聴いても咄嗟に内容を把握できないほど、ストーリーが複雑怪奇化した。あてつけがましくギルモアより格上のエリック・クラプトンやジェフ・ベックに、代わりにギターを弾かせても全然緩和されないほど、わかりづらかった。

併せて『アニマルズ』以降、歌詞の言葉数も毎回毎回増量を重ねた結果、ウォーターズが書くメロディは言葉を重視するがあまり起伏が少ない、淡白で単調なものへと変貌していく。その歌詞の詰め込み方たるや、もはや海援隊の“母に捧げるバラード”状態なわけで、彼のソロ作品が内容に反比例して商業的成功に全く恵まれなかったのは、当然の結果だった。だってちっともポップな大衆音楽じゃなかったのだから。

ああ、素晴らしき<父に捧げるプログレ>ロジャー・ウォーターズ。

私は一貫して、そんな彼の自爆っぷりにシンパシーを抱き続けてきた。そもそも<左翼のくせに独裁者体質>という自己矛盾がたまらないじゃないか。

そして、ソロ作が売れなくてもギルモアが<ピンク・フロイドっぽいもの>で儲けても、やはりウォーターズこそがピンク・フロイドである。そして彼自身も悟ったはずだ――ピンク・フロイドという<スタイル>ではなく、ピンク・フロイドという<作品>にこだわればいいや、と。だから1999年夏を契機に、ウォーターズはソロ作品への固執を終息させると、ピンク・フロイド・クラシックスのセルフ・カヴァー解禁に舵を切ったのだ。

まず、99年7~8月と00年6~7月の二度の北米ツアーをフロイド時代と同名の《イン・ザ・フレッシュ》と題し、『狂気』『炎』『アニマルズ』収録曲のみならず“太陽讃歌”まで披露して、いきなりふっきれる。で02年2~6月に延長戦として日本公演も含む世界ツアーを成功させると、06~08年には『狂気』を全曲演奏する《ザ・ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン・ライヴ》ワールド・ツアー、発売30周年を記念して10年秋からは『ザ・ウォール』を全曲披露する《ザ・ウォール・ライヴ》をスタートした。これがまた好評につき延長に次ぐ延長で、北米→欧州→オセアニア→南米→再北米→再欧州と精力的に廻り、結局13年までに200本を超える公演数と450万人以上もの観客動員数を誇ったのである。そして15年に公開されたドキュメンタリー映画『ロジャー・ウォーターズ:ザ・ウォール』に及んでは、ちょっと感動的ですらあった。

つまり、ライヴ盤『イン・ザ・フレッシュ』とベスト盤『フリッカリング・フレイム』を除けばフランス革命を題材にした05年のオペラ・アルバム『サ・イラ~希望あれ』、そしてオリジナル・アルバムなら92年の『死滅遊戯』まで遡らなければならなくても、ずーっと<もう新作は諦めちゃった感>が漂ったとしても、我々はもうポジティヴに諦めることができた。
いや、達観――なんか違うな、そう、めでたく成仏できたのである。

思えばウォーターズは、人生に挫けそうになる度に壁に助けられてきた。

自分抜きフロイド『鬱』の栄華と裏腹に、過剰な自意識が商業的にはほとんど報われなかったソロ・ワークスの惨状に絶望したウォーターズを、最初に救済したのは《1990年の壁》。東西ドイツを永く分断してきたベルリンの壁が89年11月にまさかの崩壊、翌90年7月21日に<現場>ポツダム広場に35万人もの群集を集めたライヴ・イヴェント《ザ・ウォール:ライヴ・イン・ベルリン》における『ザ・ウォール』の完全再演は、<ロック・アイコン>としてのウォーターズが誕生した記念すべき瞬間となった。

また前述した10~13年の《ザ・ウォール・ライヴ》全世界ツアーは、延長に次ぐ延長に次ぐ延長に次ぐ延長でソロ・アーティスト史上1位の興行収入を稼ぎ出して、ウォーターズを<超一流ロック・エンタテイナー>の座に大躍進させる。

そしてさすがに誰もが壁に食傷していたはずの16年10月1日、メキシコシティ・ソカロ・スクエアで開催され11万人がメキシコ全土から集結した野外フリー・ライヴは、米建国以来最低最悪の大統領に就いたドナルド・トランプが「不法移民の流入を防ぐためにメキシコ国境に巨大な壁を築く」なんて言ってくれちゃったものだから、既存の墨米国境の壁を背に唄ったウォーターズは<最高齢のロック・アジテイター>として甦ってしまった。

結局、『ザ・ウォール』は具現化される度に、知らぬ間に変化を遂げてきた。

そもそも最初の壁は、<一煉瓦に過ぎない個人という存在の象徴>のはずだった。しかし世界各地でとめどなく続く戦争の群れに業を煮やしてというか、むしろ糧にして壁は巨大化し、演奏を捧げる<戦禍の犠牲者>たちの名前を日々アップデートして投影するスクリーンに変貌していく。まさに<反戦集会の演壇>としての壁。

でもってメキシコでは、再び<壁そのもの>に回帰したわけだ。

私には「もう<壁バカ一代>でもいいわ」と達観した、ナイーヴ過ぎてアグレッシヴという本当に面倒くさいおっさん、ロジャー・ウォーターズの嫌ぁな笑顔が浮かんでいる。


そして2017年5月、デビュー50周年記念のピンク・フロイド大回顧展《The Pink Floyd Exhibition:Their Mortal Remains》の英国開催と共に、ウォーターズの新型北米ツアー《Us +Them》全54公演もスタートした。しかし最も我々を驚かせたのは、四半世紀ぶり(!)の新作『イズ・ディス・ザ・ライフ・ウィ・リアリー・ウォント?』まさかの同時リリースだったりするのだけど――。

我が国の公文書名物<のり弁>を彷彿させるジャケが予感させる以上に、混迷する国際情勢に徹頭徹尾対峙したアジテーション・アルバムである。十八番の難解コンセプト・アルバムではない分、73歳とは思えぬ直球ぶりが一周して微笑ましい。

さすが筋金入りの左派社会主義者、とにかく怒っている。新自由主義だったり拝金主義だったり極右政党の躍進だったり移民排斥運動だったりの、全世界的に蔓延する諸悪の象徴的根源であるトランプ米大統領の登場が、ウォーターズを蘇らせてしまった。
10年前のライヴ会場には尻に《Impeach BUSH(ブッシュを弾劾せよ)》と大書された豚が飛んでいたが、今回アリーナ上空を浮遊する豚はトランプの醜悪な似顔絵をどてっ腹に描かれているだけ。もはや檄キャッチすら不要なほど憎悪しているのか?

それでも今回の“デジャ・ヴ”の詞は秀逸だ。構造的には『原子心母』収録の“もしも”再登場なのだが、導入部からの<♪もしも僕が全知全能の神だったら>はともかく、<♪もしも僕が外国の空を飛ぶ無人飛行機だったら>へと行き着いちゃう展開は、さすがすぎる。

加えて音楽的には、“吹けよ風、呼べよ嵐”やら“走り回って”やら“マネー”やら“タイム”やら“葉巻はいかが”やら“シープ”やら各種SEにシンセにエコーやら、過去のフロイド・イディオムが随所に顔を出す。でもって、レディオヘッド仕事でお馴染みナイジェル・ゴドリッチのポスト・ロック的感性が溢れるプロデュースが的確だから、<70年代ピンク・フロイド(2017年ヴァージョン)>的なオーディオ感すら生まれちゃったわけだ。
となるとやっぱり、あの『三途』もとい『彼岸』もとい『永遠(TOWA)』よりこっちの『イズ・ディス・ザ・ライフ・ウ』……えーい面倒くさい勝手に邦題つけるか……『へ?』の方に惹かれてしまう、駄目な中年プログレ者の私を見逃してくれ。

とはいえこんな<七十路超えの青臭いアルバム>だから、とても市場のメインストリームに浸透するとは思えない。せっかく前世紀のソロ商業的惨敗から立ち直り、ライヴの度に巨大な壁を建造して供養する余生に生き甲斐を見い出してたのに。これで新作ツアーなんか敢行したら二の舞だよ三の舞だよ。

私は心配性なのだ。

そして《Us+Them》北米ツアーが始まったのだが、なんだこの圧倒的な充実感は。
この際だから、5月28日@ケンタッキー州ルイズヴィル公演のセットリストを載せる。

第Ⅰ部①スピーク・トゥ・ミー②生命の息吹き③吹けよ風、呼べよ嵐④タイム~生命の息吹き(リプライズ)⑤虚空のスキャット⑥ようこそマシーンへ⑦ホエン・ウィ・ワー・ヤング⑧デジャ・ヴ⑨ザ・ラスト・レフュジー⑩ピクチャー・ザット⑪あなたがここにいてほしい⑫ザ・ハピエスト・デイズ・オブ・アワ・ライヴス⑬アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パートⅡ)⑭同(パートⅢ)第Ⅱ部①ドッグ②ピッグス(三種類のタイプ)③マネー④アス・アンド・ゼム⑤スメル・ザ・ローゼズ⑥狂人は心に⑦狂気日食⑧ヴィーラ~ブリング・ザ・ボーイズ・バック・ホーム⑨コンフォタブリー・ナム。

大雑把にいえば、【『狂気』~『炎』~新作『へ?』4曲~『炎』~『ザ・ウォール』~『アニマルズ』~『狂気』~『へ?』1曲~『ザ・ウォール』】という構成で、ニュー・アルバムとフロイド・クラシックスの単純な二部構成ではない。そして披露された新曲は僅か5曲だけだけど、その文脈を自ら拡大解釈したクラシックス群で新曲群を補填することで、ライヴ全体の起承転結を無理矢理完結させちゃってるから、素敵である。

例えば新曲パートの冒頭を飾るⅠ⑦は、淡々と唄われる問題意識といい牧歌的なアコースティック・アレンジといい、とても“あなたがここにいてほしい”的だ。でもって理不尽に破壊されていく日常を⑧⑨⑩が加速度的に描いた図を、よりにもよって⑪が⑦のコーダのように引き受けるのだから。この強引な辻褄合わせは癖になる。

When We Were Young / Deja Vu(Kansas City 2017)

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例えば第Ⅱ部は、いきなり巨大な壁が客席ド真ん中の花道に現れて二つに隔絶してしまうが、よく見るとその壁は四本の煙突がそびえ立つ、あのバターシー火力発電所だ。要は、『アニマルズ』の皮を被った『ザ・ウォール』なのだ。
するとウォーターズはもう止まれない。

特にひたすらトランプをあげつらうⅡ②は、<宇宙一の悪意>そのものだ。場内を包囲する発電所の壁には<プーチン露大統領に「高い高ぁぁぁい♡」されるベイビー・トランプ>や、まんま<豚トランプ>の映像、そして「メキシコ国境に壁を造る」「寒くて雪が降り続くニューヨークには、地球温暖化が必要だ」「我輩の美徳は金持ちであること」といった名言がエンドレスで映し出される。詞の<♪Big man,pig man,ha ha charade you are>に呼応して、AV両面からひたすら<シャレード(見かけ倒し)>呼ばわりされまくるトランプに、もはや同情を禁じえない私を赦してくれ。

Pigs(Kansas City 2017)

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でこのⅡ②の3番のオリジナルで「おいおいホワイトハウス、つくづくおまえは見かけ倒しだよなぁ」と唄われていた<ホワイトハウス>とは、同名の米大統領官邸ではない。誰から頼まれたわけでもないのに自分の道徳観を世間に押しつけまくった英国の女役者、メアリー・ホワイトハウスを指していた。<道徳の権力化>とは、ウチの安倍晋三と頭の程度は大差ないが。

特に70年代全般にわたって彼女は鬱陶しく、イアン・ギランは第2期ディープ・パープル時代にアルバム『紫の肖像』収録の“マリー・ロング”で国民の道徳を守るがあまり勝手に暴走を続ける彼女を笑い、アリス・クーパーは“スクールズ・アウト”英国大ヒットの要因を「彼女があの曲を散々批判してくれたから」と、腹抱えて感謝した。そして同様にウォーターズもおちょくっていたがそれから40年が過ぎ、“ピッグ”のホワイトハウスは遂に<豚扱い大統領の棲み家>として唄われる日をめでたく迎えたわけだ。

さらにⅡ③“マネー”へ劇的に受け継がれるに至り、ピンク・フロイドは半世紀近く前から<未だ見ぬ将来の米国大統領>批判を作品化してたのかと、聴いてるこっちが錯覚するほど見事な意訳と拡大解釈が施されている。都合のいい再解釈は本来ならオリジナルを冒涜するような行為ではあるのだけど、ウォーターズなら仕方ない。だってそもそも彼が書いた作品だもの、誰にも文句を言う資格などないのである。

Money(Kansas City 2017)

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今回のツアー・タイトルでもあるⅡ④は、「月の表側の住人も裏側の住人も紙一重」であることを73年に唄った楽曲だ。と同時に「のうのうと生き延びる指揮官の命令に従って死んでいく兵士たち」という戦争の理不尽さを想えば、敵も味方も皆同じ――まさに<アス>と<ゼム>は常に表裏一体であるという、ストレンジで魅力的な考察にウォーターズは行き着いた。

Us and Them(Kansas City 2017)

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現在もなお変わらぬ構図を描いたそんな楽曲を経て、お約束の『ザ・ウォール』C面後半の3曲――Ⅱ⑧⑨へ。つまり「モラトリアムの夢から醒めてしまった大人の僕には、全てに麻痺して弛緩している現在の状態が心地好い」という、身も蓋もない<コンフォタブリー・ナム>な自分を逆説的に唄うことで大観衆の覚醒を促すのだ。そして壇上もといステージ上に上がった沢山の少年少女たちが手に手に《Resist(抵抗せよ)》のボードを掲げ、反トランプや反移民排斥を鼓舞したところで、ライヴは大団円を迎えることとなる。

かつてのような<左派過ぎて文芸過ぎて>のソロ作品群も個人的には全然嫌いじゃないが、<まず愉しく啓蒙すること>を第一義とした新約ピンク・フロイド的<政治集会エンタテインメント>こそ、ロジャー・ウォーターズに相応しい余生に違いない。

にしても今回の新作とツアーにおける異常なアドレナリンの放出量から類推するに、絶対ウォーターズはトランプのおかげで蘇った。だからこの二人、単に表裏一体の存在なだけなのかもしれない。

どっちが<アス>でどっちが<ゼム>かはわからないけれど。






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      解説・紙ジャケ内側にバーコードシールあり、カビあり、帯にテープあり

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    • TOCP65910/1

      2枚組、24bitデジタル・リマスター、スリップケース付き仕様(画像はスリップケースです)、定価3495+税

      盤質:傷あり

      状態:並

      帯無

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    • 724353611125EMI

      スリップケース付き仕様(画像はスリップケースです)、2枚組

      盤質:傷あり

      状態:並

      1枚は無傷〜傷少なめ、1枚は傷あり、若干カビあり、ケースにスレあり

    • 724353611125EMI

      スリップケース付き仕様(画像はスリップケースです)、2枚組

      盤質:傷あり

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      スリップケース無し、盤に曇り・若干指紋あり、若干経年変化あり

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    • 5099902943121IMMERSION

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  • PINK FLOYD / SOUNDTRACK FROM THE FILM MORE(MUSIC FROM THE FILM MORE)

    69年発表の通算3作目、映画『MORE』のサントラ盤、名曲「Cymbaline」収録

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1969年に発表された『モア』は、バーベット・シュローダーの監督作品「モア」のサウンドトラック・アルバム。本作の特筆すべき点は、Roger Waters、Rick Wright、Nick Mason、Dave Gilmourという4人編成での初めてのアルバムであるということでしょう。音楽的には、インストゥルメンタル楽曲(5曲)よりもヴォーカル楽曲(8曲)に比重が置かれている点が意外ですが、これはすでにあったストックを流用したことと関係があるのかもしれません。わずか8日間で制作が終了したのも、そのためでしょう。PINK FLOYDが新たなロック・サウンドを創造すべく実験精神に溢れていた時代の必聴作です。ちなみに、旧邦題は『幻想の中に』。

  • PINK FLOYD / UMMAGUMMA

    張り詰めたテンションが支配する戦慄のライヴ・サイド&各メンバーによる実験精神に溢れたサウンドが繰り広げられるスタジオ・サイドからなる69年作4th

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1969年に2枚組で発表されたサード・アルバム『ウマグマ』は、1枚目がライブ・アルバム、2枚目がメンバーたちのソロ作品を収録したスタジオ・アルバムとなっています。1枚目のライブ・アルバムは、バーミンガム・マザース・クラブとマンチェスター商科大学でのステージを収録しており、ライブの人気曲だった「天の支配」、「ユージン、斧に気をつけろ」、「太陽讃歌」、「神秘」をワイルドなサイケデリック・ロック・サウンドでプレイしています。一方2枚目には、Rick Wrightの「シシファス組曲」、Roger Watersの「グランチェスターの牧場」と「毛のふさふさした動物の不思議な歌」、Dave Gilmourの「ナロウ・ウェイ三部作」、Nick Masonの「統領のガーデン・パーティ三部作」が収められており、こちらは実験的な色合いの強い内容となっています。

  • PINK FLOYD / ATOM HEART MOTHER

    70年発表、プログレと言えばこのジャケ!A面の大作、B面の小曲集ともに美しく気品ある佇まいの名曲で固められた傑作

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1970年に発表された4thアルバム『原子心母』は、ヒプノシスによる牛のカバー・アート、英単語の直訳をそのまま並べた個性的な邦題、そして、日本盤帯に書かれた「ピンク・フロイドの道はプログレッシヴ・ロックの道なり!」というキャッチ・コピーが広く知られた名盤です。やはり一番の聴きどころは、スコットランド出身の前衛作曲家Ron Geesinをオーケストラ・アレンジャーに迎えた23分のタイトル曲「Atom Heart Mother」でしょう。ブラス・セクションや混声合唱を贅沢に配置したサウンドが、プログレッシヴ・ロック時代の幕開けを宣言するかのように堂々と響きます。一方、Roger Waters作曲の「もしも」、Rick Wright作曲の「サマー’68」、Dave Gilmour作曲の「デブでよろよろの太陽」は、共通して美しいメロディーが印象的な小品。そして、アルバムの最後にはミュージック・コンクレートの手法を用いた「アランのサイケデリック・ブレックファスト」が控えます。なおグループは、本作で初めて全英初登場1位を獲得しました。

  • PINK FLOYD / MEDDLE

    71年作、代表曲「ONE OF THESE DAYS」「ECHOES」収録、両極に挟まれたメロウな小曲群も魅力的な名盤

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1971年に発表された5thアルバム『おせっかい』は、ヒプノシスによる耳と波紋を重ね焼きしたアートワークが印象的な作品です。本作の最も大きなポイントは、4人体制のPINK FLOYDが初めて、彼らだけの手で作り上げた純粋なスタジオ・アルバムであるということでしょう。なぜなら『モア』はサウンドトラックであり、『ウマグマ』はライブ・レコーディングとメンバーたちのソロ作品から成る変則的なアルバム、『原子心母』は前衛作曲家Ron Geesinがアルバムの出来栄えに大きく関与していたためです。やはりオープニングに置かれた「吹けよ風、呼べよ嵐」と、エンディングに置かれた「エコーズ」が、本作を名盤に押し上げています。「吹けよ風、呼べよ嵐」は、広がりのあるRoger Watersのベースの反復とフェードイン・フェードアウトを繰り返すRick Wrightのオルガンを核とする前半、そしてDave Gilmourのヘヴィーなギターが加わる中盤から一瞬の静寂を経て、Nick Masonのハード・ロック・ドラムが加わる後半から成る名曲。一方の「エコーズ」は23分を超える大曲であり、現在多くの音楽ファンがPINK FLOYD「らしさ」と受け止める音楽的な振る舞いが確立された重要な楽曲です。

  • PINK FLOYD / RELICS

    60年代にリリースされたシングル音源を中心に収録した71年作

  • PINK FLOYD / OBSCURED BY CLOUDS

    『狂気』のレコーディングを中断して映画『ラ・ヴァレ』用に録音された72年作品、サントラながら最盛期を感じさせる佳曲が満載の一枚

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1972年に発表された『雲の影』は、バーベット・シュローダー監督作品「ラ・ヴァレ」のサウンドトラックとして発表されました。なお、69年作『モア』も、同じくバーベット・シュローダー監督作品「モア」のサウンドトラックでした。『おせっかい』と『狂気』という傑作の間に挟まれ、さらにサウンドトラック・アルバムということで影の薄い印象も持たれがちな作品ですが、大傑作『狂気』と同時期に制作された本作のクオリティーが低いはずがありません。制作はパリのシャトー・ド・デルヴィーユで行われ、わずか2週間ほどで完了。PINK FLOYDのオリジナル・アルバムに見られるような張り詰めた緊張感こそ見られないながらも、初期の彼らを思い起こさせる、サイケデリックな質感を漂わせた耳馴染みの良いヴォーカル曲、インストゥルメンタル曲が収められています。

  • PINK FLOYD / DARK SIDE OF THE MOON

    73年発表、ロックの歴史に燦然と輝く世紀の名盤!

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1973年に発表された『狂気』は、“人間の内面に潜む狂気”をテーマに制作されたPINK FLOYDの代表作のひとつ。このクラスの名盤ともなれば、もはやプログレッシヴ・ロックという音楽ジャンルに限定する必要すらありません。本作は、世界で最も売れた音楽アルバム(推定5000万枚以上)のひとつであり、ビルボード・チャートに741週(15年)連続チャート・イン、さらに発売から2年を経過したアルバムのみを扱うカタログ・チャートに至っては1630週(30年)以上チャート・インするというギネス記録を打ち立てた大傑作です。あえてプログレッシヴ・ロックの側面から指摘するならば、本作は「コンセプト・アルバム」という表現方法を象徴するアルバムだということでしょう。本作の成功によって、コンセプトの中核を担ったベーシストRoger Watersのグループ内での発言権が増し、次作以降のPINK FLOYDにも大きな影響をもたらすことになります。ロック・ミュージックの歴史に燦然と輝く名盤であり、当然ながらプログレッシヴ・ロックを語る上で外すことはできない作品です。

  • PINK FLOYD / WISH YOU WERE HERE

    前作『狂気』にも劣らぬ内容と言える75年リリースの傑作

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1973年発表の『狂気』の大ヒットを経て、PINK FLOYDは日用品を使った前衛音楽「Household Objects」を企画。しかし、これは実際にレコーディングも行われていましたが、途中で頓挫しました。そして、1975年に発表された『炎〜あなたがここにいてほしい』は、全米および全英1位を獲得した前作『狂気』と並ぶPINK FLOYDの代表作のひとつとなりました。最大の聴きどころは、アルバム冒頭と最後に収められた9つのパートから成る「クレイジー・ダイアモンド」でしょう。この大曲は、(Roger Waters自身は否定しているものの)早くにグループを離脱することになってしまったSyd Barrettに捧げられた楽曲だと言われています。さらに、79年にリリースされる傑作『ザ・ウォール』につながるテーマが登場する「ようこそマシーンへ」、プログレ・フォーク・ミュージシャンRoy Harperをゲスト・ヴォーカリストに迎えた「葉巻はいかが」、そしてRoger WatersとDavid Gilmourが揃って「グループの最高の楽曲のひとつ」と胸を張る「あなたがここにいてほしい」が収められています。『狂気』に続き、本作も間違いなく名盤です。

  • PINK FLOYD / ANIMALS

    社会に生きる人々を動物になぞらえたコンセプト作、77年作10th

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1977年に発表された『アニマルズ』は、ビジネスマンを「犬」、資本家を「豚」、平凡な労働者を「羊」に喩えた社会風刺的なコンセプト・アルバムとなっており、アートワークを担当したヒプノシスは、バタシー発電所上空に巨大な豚の風船を飛ばし本作のカバーアートを撮影しました。本作は、アルバムのプロローグ「翼を持った豚(パート1)」とエピローグ「翼を持った豚(パート2)」という小品に、『ドッグ』、『ピッグス(三種類のタイプ)』、『シープ』の3曲が挟まれる構成となっており、そのうち『ドッグ』と『シープ』は、前作『炎〜あなたがここにいてほしい』への収録が見送られた楽曲をベースに改変。Roger Watersが新たに、アルバムの核となる『ピッグス(三種類のタイプ)』を作曲しています。これまでの音楽性に比べると、そのコンセプトの影響もあってか非常にアグレッシブに迫るロック・サウンドが収められていることがポイントとなる名盤です。

  • PINK FLOYD / THE WALL

    ロジャー・ウォーターズの内面世界が色濃く反映された79年作、世界一売れた2枚組アルバム!

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与え続けています。1979年に発表された大作『The Wall』は「全世界で最も売れた(3000万枚以上)2枚組のアルバム」であり、『狂気』や『炎〜あなたがここにいてほしい』と並ぶ、グループの代表作のひとつ。その内容は、バンドの実権を掌握したRoger Watersの思想が強く表れたロック・オペラ。Roger WatersとSyd Barrettの姿が投影されていると言われるロック・スター「ピンク」を主人公に、彼が人生の中で経験してきた教育に対する違和感や社会の中での疎外感を「壁」に見立て、各曲が切れ目なく進行していきます。本作を引っ提げて行われたツアーでは、ステージと客席の間に実際に「壁」を構築し、大きな話題となりました。2010年代に入って以降も、例えばRoger Watersによる大規模な再現ツアーが行われていることからも、PINK FLOYDのディスコグラフィーの中での本作の重要度が分かるでしょう。シングル・カットされ全米・全英1位を獲得した「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール (パート2) 」や、コンサートの定番曲「コンフォタブリー・ナム」といった名曲も収められた、ロック・ミュージックの歴史上類を見ない傑作です。

    • TOCP65742/3

      紙ジャケット仕様、2枚組、デジタル・リマスター、年表・歌詞対訳付き仕様、タイトル入りプラ製シート・内袋2枚付仕様、レーベルカード4枚入り、定価3495

      盤質:全面に多数傷

      状態:並

      帯有

      プラ製シートなし、レーベルカード1枚に若干折れあり、内袋1枚に若干汚れあり、帯に若干カビあり

      2100円

      1680円
      (税込1848円)

      462円お得!


      CD詳細ページへ

    • CDP724383124329CAPITOL

      2枚組

      盤質:傷あり

      状態:並

      1枚は無傷〜傷少なめ、1枚は傷あり、カビあり

  • PINK FLOYD / FINAL CUT

    ウォーターズ在籍時代の最終作にして最大の問題作と云われる83年作、ウォーターズのソロ的色合いが強い一枚

    サイケデリック・ロック全盛期に登場しデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』をリリースするも、中心メンバーのギタリストSyd Barrettが脱退。以降、ベーシストRoger Waters、ギタリストDave Gilmour、キーボーディストRick Wright、ドラマーNick Masonという布陣でブリティッシュ・ロック史に残る傑作を連発し、1996年には「ロックの殿堂」入りも果たした世界的なグループ。奥深いテーマに基づいたコンセプト・アルバムの数々は、現在に至るまで多くのミュージシャンたちに影響を与えて続けています。1983年に発表された『ファイナル・カット』は、前作『The Wall』制作時にRick Wrightがグループを解雇(その後のツアーにはサポート・メンバーとして参加)されたため、69年作『モア』から続いた鉄壁の布陣が崩壊。Roger Waters、Dave Gilmour、Nick Masonの3名にナショナル・フィルハーモニック・オーケストラをはじめとするゲスト・ミュージシャンを迎え制作されました。本作もまた『The Wall』と同様、Roger Watersの私的な色合いが強く出た作品であり、反戦や政治批判を非常に重苦しいサウンドに乗せて表現。ブックレットには第二次世界大戦中にイタリアで戦死した父親の名前がクレジットされています。本作でRoger WatersはDave Gilmour、Nick Masonとの確執をより強固なものとしてしまい、85年にグループを脱退。本作がRoger Watersにとって、PINK FLOYD名義のラスト・アルバムとなりました。

  • PINK FLOYD / A MOMENTARY LAPSE OF REASON

    新生フロイドの第1弾となった87年作

  • PINK FLOYD / DELICATE SOUND OF THUNDER

    88年のNY公演を収録、代表曲多数の傑作ライヴ・アルバム

  • PINK FLOYD / PULSE: IN CONCERT (CD)

    94年「対(TSUI)」ツアーの音源を収めたライヴ・アルバム、全24曲

    94年の「対(TSUI)」ツアーの模様を収めたライヴ・アルバム。アメリカ、ヨーロッパを回る77都市、110回の公演で300万人以上を動員したツアーは「史上最大の光と音のスペクタクルショー」として今や伝説として語り継がれるツアーとなった。荘厳なピンクフロイドの音世界とともに、史上最大のステージセット、複雑怪奇な映像を写し出す大円形スクリーン、目が痛くなるほどの光の洪水(ヴァリライトが生き物のように動き回り、レーザー光線が会場中を照らし出す)、牙の生えたブタが宙を舞い、巨大ミラーボールが光を放ち、これでもかと言わんばかりの花火の嵐・・・。まさに「美」としかいいようのない、それまでのコンサートの定義を大きく変えるものであった。今作の目玉はなんといっても「狂気」全曲再演収録。75年の最後の演奏以来19年振りに94年7月のデトロイト公演で復活。ここに収録されているのは、8月ドイツ、9月イタリア、10月ロンドンのライヴより。1-(2)の「天の支配」はUS公演ではオープニング・ナンバーだったのだが、誰もが度肝を抜かれたシド・バレット在籍時の1stアルバムからの曲。

  • PINK FLOYD / ATOMIC SAUCERS

    70年11月28日のドイツ公演を収録

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