2017年1月13日 | カテゴリー:そしてロックで泣け! 舩曳将仁,ライターコラム
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あけましておめでとうございます。今年もちょっとマイナーな泣ける曲を紹介していきますので、よろしくお願い申し上げます。
さて、みなさま年末年始はゆっくりと過ごされましたでしょうか? 帰郷したという人も多いかと思いますが、親元をたずねるというのは、若い時にはなんだかギクシャクするもの。「ちゃんとご飯食べてるか」と威厳のあるところをみせようとする父とか、「あんたの同級生のミヨシくん結婚したで。あんたもエエ人おらんのかいな」と土足で心に踏み込んでくる母とか、もうとにかく面倒くさいという思いが先に立ってしまって、「正月に少し顔出して帰るだけにしよう」と思ってしまったり。でも年齢を重ねて、気持ちに余裕ができてくると、父がやたらと吹かす「父親風」や、母が会話の随所に挟み込んでくる「余計なお世話」にも、適当に合わせられるようになってくる。「ああ、おれも大人になったな」と思うわけです。
最近は親と子の関係性も変化してきているらしい。友だちみたいな付き合いで、反抗期がない子もいるらしいので、若い頃から親と良質の関係を築いてるという人も多いのかもしれない。確かに、自分の子供たちとの関係をみても、僕が子供だった頃の親子関係とはずいぶん違っているように感じる。それでも、僕ぐらいのエエ年齢の「子ども」が、高齢の「親」に暴力をふるったり殺害したりというニュースも多くて、まあ親子関係というのは、なんかよくわからんですね。
親子関係の話でふと思い出したのが、『新約聖書』のルカの福音書にある「放蕩息子のたとえ話」というもの。ものすごく簡単に説明すると、ある男に二人の息子がいて、弟は先に財産を分けてもらい、家を離れ、放蕩三昧の生活をする。それも長続きせず、飢えに苦しみ、ボロボロになり、散々な目にあって父のところに戻ってくる。すると父は弟の帰還を祝福し宴会を催す。それに腹を立てたのが、父のもとで言いつけに背かず働いてきた兄。なぜ自由気ままに放蕩してきた弟の帰還をこれほど祝うのかと怒りをあらわにする。父は兄に「お前には多くを与え何も失わなかったが、弟は死んだ者が生き返り、失ったものが見つかったのだから祝福されるべきだ」と告げる。
この話にはいろいろな解釈があって、そのあたりは各々で調べてもらいたいと思うが、親子関係には複雑な感情が入り込んで難しいことが起こりうるということは、昔からそうだったんだなということが分かる。
この「放蕩息子のたとえ話」は、英語で「プロディガル・サン」「ロスト・サン」などといい、これをテーマにした曲は多い。ロバート・ウィルキンスのブルース曲「ザッツ・ノー・ウェイ・トゥ・ゲット・アロング」、それをカヴァーしたローリング・ストーンズ「プロディガル・サン」が有名だろう。今回は同じく「放蕩息子のたとえ話」をテーマにした曲から、フリジッド・ピンクの「ロスト・サン」を紹介したい。
フリジッド・ピンクはドラムのリック・スティーヴァーズとベースのトム・ハリスを中心として60年代後半に結成された、ミシガン州デトロイト出身のロック・グループ。69年にパロット・レコーズと契約してデビュー・シングル「テル・ミー・ホワイ」を発表する。先行シングル「ゴッド・ゲイヴ・ミー・ユー」に続き、デビュー・アルバム『フリジッド・ピンク』を発表するも、発売当初は話題にならなかった。
ところが『フリジッド・ピンク』から2枚目のカットとなったシングル「朝日のあたる家(ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン)」が米7位、英4位というビッグ・ヒットを記録し、アルバムも米11位まで駆け上る。ディストーションの効いたハードなギターをメインとしたラフなロックは、同じくミシガン州出身のMC5やストゥージズを思わせもするが、彼らほどの暴力性やサウンドの破壊力はない。フリジッド・ピンクはキーボードも重要な役割を担っていて、音楽的にはブリティッシュ・ロック寄りといえる。
その辺のセンスがアメリカでは受け入れられなかったのか、キーボードのサウンドが多彩かつ豊かさを増し、音楽的にも進歩の跡がみえる2作目『デフロステッド』は米149位に終わってしまう。さらに2枚のシングルを出すが、いずれもチャートに入ることなく、パロットとの契約も終了してしまう。
今回紹介する「ロスト・サン」は、パロット在籍時最後のシングルA面曲。アルバムには未収録で、91年にレパトワから再発された『デフロステッド』にボーナス・トラックとして収録されているほか、ベスト盤などで聴くことができる。
フリジッド・ピンク「ロスト・サン」に描かれているのは、放蕩の限りを尽くした息子が、その自らの行いを悔いている場面だ。最初こそ「俺は男なんだから、助けなんかいらない、やりたいようにやるぜ」などと言うが、多くのものを失い、打ちひしがれ、自分の愚かな行為に気がつく。神に許してもらいたい、家に帰りたいと願い、「失われた息子」であることを自覚する。
曲としてはシンプルで、ピアノのイントロからトム・ボウドリー(ケリー・グリーン)が哀切を込めて歌いだす。秀逸なのはサビの物悲しいメロディで、様々な辛い思いをした主人公が自分の愚かさを知る場面が熱く歌われる。「俺はわかったんだ、自分が失われた息子だということに!」という嘆きが胸を打つ。プログレ・ファンとしては、もっと展開に凝ってドラマチックに仕上げてほしかったと思うが、コンパクトだからこそ何度も聞きたくなるともいえるか。しかし、このウェット感にはデトロイト出身と思えないものがある。
そんなに親不孝なことをしてこなかったと思っているが、できた息子でもないので、フリジッド・ピンク「ロスト・サン」を聴くと身につまされるものがある。なんかわからんけど、今までもろもろすいません、と親に対してそんな気にさせられる曲だったりする。
パロットを離れたフリジッド・ピンクのことも紹介しておくと、新たにライオン・レコーズと契約を結び、72年に3作目『アース・オーメン』を発表する。ここで彼らはユーライア・ヒープばりのオルガン・ハード・ロック・バンドへと変身。同作はブリティッシュ・ロック・ファンならグッとくるはずの良作だ。
だが商業的には失敗で、ライオン・レコーズからファンタジー・レコーズへと移籍。3年のブランクを経て75年に4作目『オール・ピンク・インサイド』を発表する。メンバー・チェンジと同時に音楽的にもフォガットばりのハード・ブギへと変化。こちらも商業的に成功といかず解散してしまう。フリジッド・ピンクといえば、初期2作、特に「朝日のあたる家」を収録したデビュー作が傑作という評価のようだが、3作目、4作目もアルバム単体で見たら実によくできた内容といえる。
フリジッド・ピンクのアルバムは、4枚ともに日本で一度も再発されていないはず。レーベルをまたいでいるから、権利関係がややこしいのかもしれないけど残念だ。ちなみにフリジッド・ピンクは、リック・スティーヴァーズを中心に再結成されて、14年に『メイド・イン・デトロイト』を発表。今も現役で活動中だそうです。
それでは、来月もロックで泣け!
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