2021年11月18日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
サウンドは最高なのに、なんでこのジャケ選んじゃったの!?という作品が、世界のロック探求を進めれば進めるほど出てきます。
今回は、そんながっかりジャケの数々をサウンドとのギャップと一緒にお楽しみいただきたいと思います。
まずは、英国モノよりスタート。「あのイングランド」とは別のディープなグループによる76年唯一作。
まあガッカリというほどではなく、個人的には割と好きなジャケだったりしますが、ピーター・バンクスに近い鋭角的に切れ込むギターワークとゴリゴリとアグレッシヴなベース、ソウル色のあるヴォーカルによる、初期YESタイプのスリリングなサウンドには残念ながら不似合いでしょう。
オルガンが淡い英国叙情を醸し出すブリティッシュ・ロックの好バンドによる71年唯一作。ギロチン処刑をテーマにしたハイライトの一曲『Guillotine』に因んで、右下にポツンとギロチン台が描かれた簡素なデザインは、中身の良さからしたらやや寂しい印象。ヒプノシスやキーフが印象的なジャケをつけていれば、ブリティッシュ・ロックの傑作として評価されていただろうになぁ。
【関連記事】
音楽ライター後藤秀樹氏による連載コラム「COLUMN THE REFLECTION」!第3回は、ことし未発表音源を含むボーナス・トラックと共に再発された、ブリティッシュ・ロックの逸品DEEP FEELINGの唯一作を取り上げます。
このジャケも昔からなんだかなぁと思っていたんですよね。プロコル・ハルムにも通じるアーシーかつ英国的リリシズムいっぱいの極上メロディが溢れ出してくるのに。タイトル通りにブルーベルが一面に咲く神秘的な森とかなら良かったのに、と思わずにはいられません…。でもこの変テコなセンス、そう嫌いじゃなかったり。
このジャケのダサさ、お好きな人にはたまらないですよね(?)。中身では極上のニッチ・ポップ・サウンドが広がっているとは到底思えないでしょう。これをジャケ買いした人はこの世にいないと断言!
と言ってメンバー写真などを使おうものならこの有様です…。う~ん難しい。
英ロック好きなら一度は目にしているであろう体を張った全身金ぴかジャケですが、残念ながら「中身の想像がつかない」「いや怖い」という声しか上がらなそう。でもこれがとっても愛すべき英プログレ・ポップの名品なのですよね。MOVEファンからFACESファンまで、一聴の価値あり♪
ロバート・フリップ、ピーター・ガブリエル、ジョン・アンダーソン、ピーター・ハミルなどありえない豪華メンツが参加した1stで知られる英フォーク・ロックSSWの2nd。本作ではVDGGのニック・ポッター、レイ・クーパー、デヴィッド・ヘンチェルなどが参加。カントリーやスワンプ色もあるフォーク・ロックに英国らしい格調が滲む味わいある逸品。なのですが、このゾワワッ来るジャケは何とかならなかったのでしょうか。恐いっす。
これも結構トホホなジャケット。OSIBISAのkey奏者と、その弟で『Blow By Blow』『Wired』に参加したドラマーが在籍するファンク・バンド。カリブ風味の陽気なファンクネスと英ジャズ・ロックに通じる職人気質な技巧が融合した演奏は、伸びやかさと緻密さの両面から気持ちよさ抜群です。
この知られざる米サイケ・ハード71年作もなかなかのガッカリ度合。でもジャケはこんなですが、中身はソリッドなギター、ピアノ主体のスリリングかつ洒脱なキーボード、そして迫力あるコーラスワーク等が印象的な、かなりの力作なんです!
ノースキャロライナ出身のサイケ・ハード・バンドが74年に自主制作した一枚。ギター/リード・ヴォーカルRichard Drye、鍵盤/ヴォーカルShaye DryeのDrye夫妻を中心とするバンドで、熱気とシャープさのバランスが絶妙なサイケ・ハード好盤なのに・・・なぜこんなにジャケにやる気ないわけ?予算が尽きたのかなぁ。
新鋭の手形ジャケと言えばこれ。アルゼンチンの新鋭グループで、ギター主体で組み上げられた強度あるアンサンブルにメランコリックな音響感覚を纏わせたサウンドは、相変わらず素晴らしい映像喚起力を誇ります。前2作品はサウンドと結びついた幻想的な良いジャケットだったのになぁ。
【関連記事】
18年上半期に人気を集めた新作&リイシューCDを、【新作部門】と【リイシュー部門】に分けてTOP10でご紹介してまいります。お聴き逃しの作品はないか、チェックしながらお楽しみください☆
記事背景にすら溶け込んでしまったこの究極のシンプルさ。捉えようではカッコいいとも言えるけど、出てくる音はちょっとフランスのアトールっぽい奥ゆかしい色彩感がある良質なシンフォニック・ロックなんだよなぁ。音を考えるとファンタスティックなジャケが欲しかったところ。
白一色ときたら黒一色も出さなければ、というわけでスウェーデンのこの超マイナー・バンド。ジム・モリソンとスティーヴ・ウィンウッドを合わせたようなヴォーカルも、フロイドや初期タンジェリン・ドリームが脳裏に浮かぶ内宇宙的かつ酩酊的なサウンドも個性的だし、この69年作はちょっと普通じゃありません。
【関連記事】
欧米各国の「ど」がつくマイナープログレを発掘リリースしている注目の新興レーベルPAISLEY PRESS。リリース作品を一挙ご紹介!
何だかちょっと考えさせられる意味深なジャケですが…。音はゾンビーズやブロッサム・トウズに通じる色彩感豊かなサイケ・ポップだって!?え、どんなセンス!?
【関連記事】
愛の夏、サイケの夏!第二弾は「サイケ・ポップ」。『ペット・サウンズ』や『サージェント・ペパーズ』から派生した、マジカルでカラフルな世界のサイケ・ポップの旅にご招待。
まるでデスメタルみたいなジャケットはちょっとセンスを疑うところですが、内容はうっすらとダークに立ち込めるシンセが印象的なフロイド系シンフォの良作。80年代より映画音楽の分野をメインに活動してきたカナダのマルチプレイヤー/コンポーザーで、さすがSEを効果的に用いた映像喚起的な音作りは素晴らしい完成度!
なんだかんだでこれ以上のダサジャケって無いかも知れません。いやもうここまでくると笑わせに来てるとしか…。ところがサウンドはと言えば、ジャケ通り青空へと突き刺さるような抜けの良いギター、ちょいと線が細めだけどロバート・プラントを彷彿させるワイルドなヴォーカルが炸裂する、爽快&キャッチーなカナディアン・ニッチ・ハード。
イタリアのマルチ・ミュージシャンによる作品。アヴァンギャルドなサウンドを想像させる、何とも「おぞましい」ジャケットが強烈ですが、誰も中身が極上のアンビエント/チルアウトで充たされているとは思いも拠らないことでしょう・・。「イタリアのマイク・オールドフィールド」とも呼ばれる人物なんです。
【関連記事】
「イタリアン・ロック?プログレ聴かないしな~。」 そんなあなたにオススメしたい『プログレ嫌いなロック・ファンにこそ聴いて欲しいイタリアン・ロック・セレクション!』
イタリアなら、この新鋭のジャケもかな~りガッカリ。中身はまるでロバート・ワイアットがドラム&ヴォーカルで、ジョン・ウェットンがベースで、ゾンビーズのロッド・アージェントがキーボードで、イアン・マクドナルドがサックス&フルートのような凄いサウンドなのに。なんでこんな意味不明のジャケットに…。
【関連記事】
カンタベリーのDNAを受け継ぐ魅力的な新鋭グループがイタリアから登場していますので、ピックアップいたしましょう!
「渋めのFOCUS」と言えるかもしれないメロディアスで技巧的なダッチ・ジャズ・ロックの逸品。ジャズ/フュージョン/ハードロックを織り交ぜた自在なギタープレイもヤン・アッカーマンばり!でもこのジャケじゃあ売れませんよ。
【関連記事】
オランダならではの端正でいて素朴な人情味にも溢れたメロディアスなプログレッシヴ・ロック名作をセレクトいたしましょう。フォーカスの他にも愛すべきグループがたくさん居ますね。
素っ頓狂なヘタウマジャケが、がっかりというよりは愛すべきな、スペインのジャズ・ロック・グループの作品。気になる内容は、人懐っこくもアーティスティックに展開するなかなかの実力派オルガン・ジャズ・ロックなのです。
これは有りっちゃ有りなんですが、音とのギャップという点では勿体ない一枚かな。『ウォール』期のピンク・フロイドをフランスらしく静謐でエレガントにした感じ。実はタイ・フォンのオリジナルドラマーStephan Caussarieuによるソロ作で、ドラマーの作品だけにリズムにこだわりを見せたダイナミックなプログレ作品に仕上げています。
ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターにソウルフルな女性ヴォーカルが入った感じのサウンドと聞いて手に取ってみたら、もうジャケで脱力。ただただ「何これ?」という感想しか浮かんできません。でもジャジーかつ暗黒感むんむんの演奏と厳かな女性ヴォーカルの組み合わせは、狂気と表裏一体な感じがあって、かなり聴かせます。ベルギー随一の個性派バンド。
【関連記事】
フランスとドイツに接する美しき小国ベルギーが生んだ個性みなぎるプログレ作品の数々をレコメンド!
ブラジルより現れた要注目マルチ・ミュージシャンの16年作。南米というより北欧に通じる透明度の高いリリシズムに溢れたメロディ、美声のハイトーン・ヴォーカル、爽やかなコーラス・ワーク。ムーン・サファリも想起させるクリア且つ壮麗なシンフォニック・ロックを楽しませてくれます。唯一残念なのがジャケットで、毎回こんな味気ないデザインなんですよね…。
最後を飾るのは、がっかりジャケを通り越して痛ジャケにまで踏み込んでしまったこの作品しかないでしょう。優美なソリーナ&キーボード、胸を打つ詩情豊かなメロディ、溢れんばかりの泣きのリード・ギター。東欧シンフォの大傑作だというのに、ジャケで盛大にぶち壊しちゃってます。いやここまで極めると、もうかえって名ジャケットですね!
気になるがっかりジャケはございましたでしょうか?
今後も新たながっかりジャケ作品が入荷しだい、本記事に追加してまいりますのでどうぞご期待ください(??)
『GARDEN SHED』で知られるグループとは同名異のブリティッシュ・ギター・トリオ。COMPLEXなどで知られるDEROYレーベルから76年にリリースされた唯一作。前のめりに疾走するアグレッシヴなドラムとゴリゴリと手数多いベースを土台に、ギターがスリリングかつジャジーなフレージングで縦横無尽に駆け回る、というスタイル。ギターのセンスは特筆もので、スリリングな単音フレーズが基本ですがスピード一辺倒ではなく、テンション・ノートによる豊かな色彩を滲ませるのが持ち味。初期YESやFLASHのめくるめくスピード感に通ずるものがあります。プログレッシヴかつジャジーなブリティッシュ・ハードの逸品。これは素晴らしいグループです!
EYES OF BLUEのメンバーそのままに71年にリリースされた唯一作。EYES OF BLUE時代の格調高い英国ポップに、プログレ、スワンプなどの要素を加えた、いかにも70年代初期の薫り漂う極上英国ポップ。叙情的なメロディー、クラシカルなストリング、哀愁のオルガンが絶妙なアンサンブルを奏でる1曲目は、70年代英国ロック・ファン必聴の名曲。もう少し品のあるジャケットであれば、評価も違っていたでしょう。完成度としては文句無しの傑作。
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
小さい圧痕あり
ベルギー出身、ギターレスでサックス奏者とオルガン奏者を含み、女性ヴォーカル在籍という編成のプログレ・グループ。70年のデビュー作。サックスが低く垂れ込めるVDGGばりに荘厳なパートとジャジーなオルガンをフィーチャーしたジャズ・ロックなパートを行き交うアンサンブル、そしてジュリー・ドリスコールやキャロル・ギライムスを彷彿させるソウルフルな女性ヴォーカル。ベルギーのプログレと言えば、WATERLOOやIRISH COFEEのようなオルガン・プログレやCOSやPAZOPなどカンタベリー・フィーリングなジャズ・ロック・グループを思い出しますが、その両方のエッセンスを併せ持つのがこのグループ。シャープな高速リズムに女性スキャットとサックスとオルガンがユニゾンで畳みかける4曲目は、まさにこのグループならではと言えます。強烈な印象を残すジャケに負けない、ハイ・レベルでオリジナリティ溢れる好グループ!
VELVET OPERA〜STRAWBSで活躍したRichard Hudson(G/Vo)、John Ford(G、B、Vo)の2人によるデュオ。75年作3rd。1曲目「Did Worlds Collide ?」からポップ・ファンの心を鷲づかみELO風のシンセのイントロから始まり、ハードなギターが視界を一気に広げ、そこにスウィートでヌケの良いメロディ&ハーモニーが現れる!サビのキャッチー過ぎるメロディに思わずニンマリ。ちょっと変拍子入ったギター・ソロも勢いがあって、さらにニンマリ!この曲を聴いて心躍らないポップ・ファンは居ないでしょう!その他の曲もキャッチーなメロディの金太郎飴。2ndよりもグッと洗練され、メロディの魅力も一層増しています。ELOやPILOTあたりと比べても何ら遜色は無いブリティッシュ・ポップの名作!このデュオの作品にはずれ無し。
「イタリアのマイク・オールドフィールド」の異名を取るマルチ・ミュージシャン。77年作。ギター、シンセ、ハープ、フルート、タブラ、シタールなど、すべての楽器を自ら演奏し丁寧に紡いだ、ユートピア志向溢れるエスニックなソロ作。温かみを宿した瞑想的なサウンド・メイキング、リズムとビートに重きを置いたワールド志向のアプローチ、そしてサイケデリック終焉後=ノンドラッグな作風という意味では、ジョー・ザヴィヌルのソロ作などが好きな方にも推薦です。
70年代前半に活動したオランダのジャズ・ロック・グループによる74年作2nd。俊敏なリズムに乗って、派手に弾きまくるオルガンとスリリングで技巧的なギター、渋くむせぶブラスらが丁々発止で繰り広げるスタイリッシュなジャズ・ロック・アンサンブルが炸裂!のっけからかなりカッコいいです。2曲目からはややジャズ要素が強めですが同郷FOCUSへの意識を感じさせるメロディアスなナンバーが続きます。ジャズ・ロックと言うと無骨で硬質な印象を持ちがちですが、このバンドはフュージョン的な軽やかさとどこかお洒落な感覚が備わっていて、伸びやかで洗練されたサウンドがとても心地いいです。ギターはジャジーに抑えたプレイを主としますが、ここぞという場面ではハードに切り込む熱いプレイで圧倒し振れ幅自在。このへんは少しヤン・アッカーマンを彷彿させるかも知れません。舞うようなタッチでクールに音を刻むエレピのプレイも特筆です。これほどのバンドが埋もれていたとは驚き!ジャケの酷さが勿体無いですが、中身は絶品ジャズ・ロック。これは名品です。
ツイン・ギター編成のケベック産ハード・ロック・グループ、75年の唯一作。気持ち良く歪んだヌケの良いトーンのギターによる突き抜けるギター・リフ、ちょっと線が細めながらロバート・プラントを彷彿させるハイ・トーンのエネルギッシュなシャウトを中心とするエネルギッシュなハード・ロック。時に変拍子も織り交ぜるなど、巧みなリズム・チェンジによるキメのパート、そこからスピーディーに弾きまくるギター・ソロに突入する展開に痺れます。ギター・ソロの疾走に呼応するようにハイ・ポジションで動きまくるベースも印象的。アコースティックな楽曲では、流麗なシンセをフィーチャーするなど、ユーロ・ロック的なリリシズムも聴かせます。爽快でキャッチーなカナダ産ハード・ロックの名作です!
ブラジルはサンパウロ出身のコンポーザー&マルチ・インストゥルメンタル奏者。2013年のデビュー作に続く2015年作2nd。サウンドを端的に言えばクリアで壮麗。瑞々しい響きの流麗なピアノ、澄んだトーンで広がるキーボード、ブラジルというより北欧に通じる透明度の高いリリシズムに溢れたメロディ、美声のハイ・トーン・ヴォーカル、澄み渡るコーラス・ワークが印象的です。キーボードとメロディはどこまでも詩情たっぷりですが、リズム隊とギターにはモダンなシャープさがあり、キレのあるリズム・チェンジ、ザクザクとエッジの立ったギター・リフでメリハリを生むとともに、全体に透明度を上げているのも特筆。硬質な部分は、メキシコのCASTも彷彿させます。圧倒的な澄んだメロディ、クリアな中にも南米らしい生命感が宿ったアンサンブルとが絶妙に同居した伸びやかなシンフォニック・ロック名作です。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!