2018年7月28日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: サイケ
スタッフ増田です。
「真夏のサイケデリック探検隊」、第二弾はサイケ・ポップ!
ロック・ミュージシャンによるサイケデリック・ドラッグの実践と、その体験の音楽的反映。60年代半ばに巻き起こったサイケデリック・ロックの波は、それまでポップな作風で受け入れられていた人気グループにも音楽性の変化をもたらします。
1966年5月、米国のグループ、ビーチ・ボーイズが『ペット・サウンズ』を発表。それまでサーフィン・ホットロッドをテーマとした軽快なロックでヒットを飛ばしていた彼らですが、『ペット・サウンズ』では中心人物ブライアン・ウィルソンのドラッグ体験に基づいた緻密な実験性をポップ・ソングの中に盛り込み、当時の人々に衝撃を与えました。
そんな『ペット・サウンズ』に触発され、英国のビートルズは67年に『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を発表。テープ逆回転、多重録音など高度な録音技術、オーケストラなどの多彩な楽器、そして一貫したコンセプトに基づく深みのある「アート」的作品作り・・・そういったものが、LSDをはじめとするドラッグが生み出す色彩豊かで混沌とした幻覚作用と結びつき、60年代後半のサイケ・ムーヴメントにさらなる拍車をかけてゆきます。
煌びやかなポップさと複雑怪奇な実験性が共存する新しいムーヴメント、「サイケ・ポップ」・・・それは英国や米国のみならず、60年代後半の世界各地に伝搬し、優れた作品を次々と生み出していきました。
今回はそんなレイト60’sサイケ・ポップを巡って、世界各地を訪ねてみることにしましょう!
まずは英国。有名な作品はコチラ↓でご紹介しておりますので、ここではそれ以外のちょっぴりニッチな作品をご紹介。
ジェネシス加入以前にフィル・コリンズが在籍していたバンドをご存じ?オーケストラや荘厳なコーラスをフィーチャーしたスケール感あるサイケ・ポップを聴かせる好盤!
こ、これぞ英レイト60sサイケ・ポップ最果ての秘宝として鎮座する逸品ですね。これを知ってたら、あなたは相当な英ポップ・マニア。ヒントは、後にSTRIDERを結成するメンバー率いるグループです。
英サイケ・ポップが好き? レア・フォークも好き?この69年作は、マニア度120%!?
このジャケでこの音!? どんなセンス!? 音はゾンビーズやブロッサム・トウズあたりのファンは度肝を抜かれるクオリティなのに・・・ジャケが残念!とりあえず視聴どうぞ
次は米国をご紹介。
まるでスタックスのソウル・バンドをカート・ベッチャーがプロデュースした感じ!?米オクラホマのグループによる68年デビュー作なんですが、メロディもアレンジもグッドでサイケ・ポップ~ソフト・ロックのファンは要注目!
メンバー皆がピエロのお化粧!? HELLO PEOPLEというバンド名はすっとぼけてるし・・・。でも、音はマジカルなポップ・サイケ逸品で謎多き迷盤!
次の2つは70年の作品なんですが、レイト60’sファンならキュンと来ちゃうこと間違いなし!
エネルギッシュかつカラフルなサイケ・ビート・ポップに痺れる!モータウン傘下のRARE EARTHからリリースされた米サイケ・ポップ・トリオによる70年唯一作。
オーソドックスなジャズギターに随所でファズを効かせた荒々しいプレイを交えるギターと、気品ある音運びのヴィブラフォンらが織りなす、名うての西海岸ジャズメンらが残したサイケデリック・ジャズ・ポップスの逸品。
こちらはカナダ出身グループなのですが、メンバーが英国人、カナダ人、ハンガリー人って…どんなバンドよ?でも中身はメロウでキャッチーなメロディにファズ・ギターやチープ・オルガンが程よくガレージなエッセンスをまぶした、上質サイケ・ポップ!
ではここからはユーロに突入っ!まずは北欧の67年サイケ・ポップ名盤3連発。
ホリーズやゾンビーズの甘やかさ、キンクスの哀愁、ジェフ・リンに通じるクラシカルな気品をブレンドしちゃったような、スウェーデンの『サージェント・ペパーズ』と言える67年の名作!ジャケがもっとカラフルだったらなぁ。
コリン・ブランストーン、グレアム・ナッシュ、ポール・マッカートニーがトリオを組んで、ジョージ・マーティンがプロデュースしたようなグループをデンマークで発見っ!?
67年のノルウェーにこれほどまでのサイケ・ポップ/アート・ロック傑作が生まれていたとは。あのテリエ・リピダルが在籍で、ジェフ・ベックばりに尖ったギターを炸裂させてるし、トラフィックや米BS&Tの1stに負けない素晴らしさ!
次はイタリア。70年代初期の作品ですが、サイケでグルーヴィーですこぶるキャッチー!ファズ・ギターとオルガンが渦巻いてるけど、混沌としてなくて洗練されてて、センス抜群!
ハンガリーのブロッサム・トウズ、はたまたプロコル・ハルム!?ファズ・ギターやオルガンによるサイケ・フレイヴァーと金管や弦楽器によるクラシカル・フレイヴァーとが合わさったサウンドはサイケ・ポップ・ファンは必聴。
ポーランドにもこんなマジカルなサイケ・ポップが!?ブラッサム・トウズあたりを彷彿とさせる煌びやかさや奇想天外さに、現地語のちょっぴりエキゾチックな香りが新鮮&魅力的。レイト60sサイケ・ポップ・ファンは要チェックです☆
次はサイケ名盤の宝庫、南米にトリップ!
名Key奏者のJose Cidが在籍していたポルトガルのグループ。ぐにゃぐにゃ揺れるオルガン、テープの逆回転音、そして叙情的なメロディ・・・どこまでもドリーミーなサイケ・ポップ。
問題。ペルーのビートルズと言えば・・・はいっ!WE ALL TOGETHER!・・・ブブー。と言えば、WE ALL TOGETHERですが、そのメンバーが結成したアシッド・サイケ・ポップ・グループと言えば?
レイト60sのコロンビアの奇跡・・・。マザーズやボンゾ・ドッグ・バンドもびっくりの奇天烈サイケ・ポップで、牧歌的で無垢で素っ頓狂で、もう仰天!
最後はこんな一枚。VELVET UNDERGROUNDやSIMON & GARFUNKELなどを手掛けた名手Tom Wilsonによるプロデュース作なのですが、歌っているのは謎の在米日本人!?
Tom Wilsonプロデュース、在米日本人ハルミによる68年のカルト・サイケ盤。LP2枚組で、2枚目部分にはかなりヤバめの実験的サイケ・ジャムが収録されているのですが、1枚目部分はなぜか極上のサイケ・ポップ。管弦楽器を取り入れた気品あふれるアレンジはZOMBIESの『オデッセイ&オラクル』なんかにも引けを取らないマジカルさ!
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イギリスのレイト60sサイケ・ポップをディープな作品中心に聴いたあと、ユーロや南米の作品も聴いてまいりましょう。それでは、冬のマジカル・サイケ・ポップ・ドライヴ、スタート!
67年作。架空のバンドのショウというコンセプトで制作されたロック史上初のコンセプト・アルバム。ジャケットのイメージ通りのカラフルなサウンドは英国中に広がり、60年代後半を華やかに彩った英サイケ・ポップ・ムーブメントへと発展。ロックが真に芸術へと到達した金字塔。
88年規格、黒帯一体型スリップケース・カラー・ブックレット付き仕様、税抜定価2920
盤質:傷あり
状態:並
帯有
若干カビあり、色褪せあり
Brian Wilsonがスタジオにこもり作り上げたアメリカン・ポップス永遠の傑作。66年作。複雑なコード進行、音楽理論に乗っ取らない楽器のフレーズ、にもかかわらず、難解さのかけらもなく、子供の鼻歌のような無垢さに溢れたエバーグリーンなサウンド。まさに奇跡の一枚。
69年発表の激レア盤。ハープシコード、エレピ、オルガンが哀愁のコードを刻み、流れるようなメロディーと泣きのハーモニーがサイケ・ポップ好きを唸らせるレイト60sの隠れた名盤。ギミックはあまり使わず、メロディーとハーモニーで勝負したところに彼らの自信が感じられます。メロディ・ラインの素晴らしさは、なぜこれほど無名なのかが不思議なほど。優雅なメロディと鍵盤のクラシカルさは、Rod Argentを想わせます。ゾンビーズ「オデッセイ・アンド・オラクル」が好きな方にはたまらないサウンドでしょう。完成度高し。
ペルー出身、WE ALL TOGETHERやLAGHONIAのメンバーが結成したグループ。73年に録音された音源で、数枚のみがプレスされただけという幻の音源。WE ALL TOGHETHER直系の英国ものに通ずる甘くジェントルなメロディ&ビートリッシュなコーラス・ワークを基本に、サイケデリックかつ歌心溢れるファズ・ギターが絡む、ドリーミーなアシッド・サイケ・ポップ。ポップ・サイケのファン、WE ALL TOGHETHERのファンは必聴!
PHIL COLLINSが在籍していたことで知られるグループ。69年作の唯一のアルバム。ビート・ポップ〜サイケ・ポップの流れにクラシックのエッセンスを加えたサウンドが持ち味。オルガンとオーケストラによる荘厳なアンサンブル、クラシカルなメロディー、聖歌隊のような分厚いコーラス・ワークが印象的な好アルバムです。
後にOMEGAに加わるドラマーFerenc Debreceniが在籍していたハンガリーのサイケ/オルガン・ポップ・バンド、71年の唯一作。さすがはOMEGAに引き抜かれるだけあって、ジャズの素養もありそうな手数多くタイトなFerencのドラムは特筆もの。そんなドラムを土台に、エッジの立ったシャープなファズ・ギター、むせぶハモンド・オルガン、エコーに包まれたコーラス・ワークが醸すサイケデリック風味、きらびやかな金管やストリングスやハープによるクラシック・フレイヴァーなどがめくるめくサウンドは、英国で言えばブロッサム・トウズやプロコル・ハルムにも通じていて実に魅力的。歌詞はハンガリー語ですが、あまり違和感はなく、東欧らしいエキゾズムもないため、英サイケ・ポップのファンは文句なしに楽しめるでしょう。ベースがゴリゴリと疾走し、ハモンドがうねる楽曲などは、初期イエスも彷彿させます。ほとんど売れることなく、アフリカ・ツアー(!)の後に解散したそうですが、実力十分の好グループによる好盤です。
北欧を代表するギタリスト、テリエ・リピダルがVANGUARDSの後に参加したグループ。北欧屈指のサイケ・ポップと評価される67年の唯一作。グルーヴィーなオルガン、ブルース〜ジャズを飲み込んだ表現力豊かなギター、ソウルフルなヴォーカル、渦巻くエコーや逆回転、というスタイルで、トラフィックやプロコル・ハルムに匹敵するアーシーなサイケ・ポップを展開。ジャジーで洗練された管弦楽アレンジも印象的で、アル・クーパーがブラッド・スウェット&ティアーズでやろうとしていたロックとジャズとの融合を先取りしたようなセンスを感じさせます。ゾンビーズ『オデッセイ&オラクル』のような幻想的なハーモニーも特筆。そしてやはり素晴らしいのが、テリエのギター。ファズ・ギターがアグレッシヴに牙をむくフリーキーなフレーズから流麗なタッチのジャジーなフレーズまで、ジェフ・ベックにも引けを取らない先鋭的なギターを聴かせています。67年のノルウェーにこれほどまでにアーティスティックなロック作品が生まれていたとは。英米の同年代のサイケ・ポップ/ロック名作にも負けない傑作。必聴です。
南米はコロンビアのグループ。ガレージ・バンドとして65年にデビューしてから通算5枚目となる68年ラスト作で、レイト60sのサイケ・ムーヴメントの波を受けた奇天烈なサウンドは仰天!汽車の音やクラシックの早回しなどのサウンド・コラージュをはさみつつ、ハープシコードや管楽器による牧歌的なパート、変テコに乱れ打たれるドラムとチープなファズ・ギターが素っ頓狂なパートが予測不能にめくるめく展開は、マザーズ・オブ・インヴェンションやボンゾ・ドッグ・バンドもびっくりなぶっ飛びっぷり!牧歌的で無垢でポップなメロディも特筆。アヴァンギャルドでいてドリーミー。これは、60年代とは思えないクオリティと言いますか、60年代末だからこそ成しえたと言いますか、コロンビアの奇跡と言えましょう。サイケ・ポップのファンはもちろん、ビーチ・ボーイズ『スマイル』憧憬の90年代以降のインディー・グループやウェールズのゴーキーズあたりのファンにも激烈にオススメな逸品!
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