2021年3月5日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
2015年に運営を開始したドイツの注目リイシュー・レーベルPAISLEY PRESSをご存知でしょうか。
ある程度のマニアの方ですら存在を知らないのではないかという欧米各国の「ど」マイナープログレを発掘してきてはせっせとリイシューしてくれているありがたい注目レーベルなのです。
とは言え決して玉石混交というわけではなく、どの作品もクオリティは大変高いのがまた素晴らしいところ。
担当者のプログレ審美眼の確かさが窺えるラインナップとなっております。
それでは、ディープな探求をお楽しみください☆
オーストラリアの超マイナーなミュージシャンですが、これがなかなか完成度の高いプログレ・ポップなのです。
シンセやチェンバロが折り重なるクラシカルな鍵盤と、生き生きしたポップなメロディの組み合わせが魅力的だなぁ。
そしてそれらをゆったりと覆っていくメロトロンがまた絶品!
当時たった500枚のみが限定プレスされた幻のフレンチ・シンフォ逸品!
イエス影響下の明るく開放的なシンフォにエレピやオルガンが醸し出す甘い幻想性が加わったメロディアスで聴きやすいサウンドが◎!
こ、これは「MAGMA+GG」と言っても過言じゃない、暗黒エネルギーと意表を突くアレンジセンスが融合した個性派ジャズ・ロック!
おっと、あの変態チェンバー・シンフォ・バンドTIEMKOを結成するドラマーだったのね!それならこの超絶ぶりも納得。
仏ジャズ・ロック・シーン、まだまだ奥深しだなぁ…。
こちらも無名ながらとんでもない一枚。
ザッパへのリスペクト溢れまくりのこの1曲目なんて、『シーク・ヤブーティ』がお好きなら絶対ニヤリとしちゃうはず!
他の曲ではカンタベリーな芳醇さも匂い立ってくるし、こんな素晴らしいバンドが一枚しかアルバムを残さなかったとは…。
フランスからの極めつけはこの作品!
淀みなく紡がれるアコギアルペジオに、少し緊張感あるエレキが被さるギター・サウンドを、ストリング・シンセや浮遊感あるSEが幻想的に彩るプログレは、さながらMIKE OLDFIELD+CARPE DIEMって感じ!?
フレンチ・ジャズ・ロック、82年の唯一作。
ギターとサックスが時にエネルギッシュなプレイを応酬させ、時に一糸乱れぬユニゾンで快走する、硬質なテクニカル・ジャズ・ロックはもう抜群のカッコよさ!
反復フレーズで煽るようなサックスのプレイからはZEUHL色も垣間見えます。
遊び少なめの武骨で硬派なジャズ・ロックの逸品。
2020年のリイシューの中では一番の目玉かもしれないのがこの北欧シンフォ名品。
決して技巧的じゃないけれど、まるでオランダのTRACEと同郷KAIPAを合わせたような、クラシカルな美麗さと北欧然とした透明感&温かみが融合したサウンドが至上です。
秘宝感満点のジャケット通りのサウンドだなぁ。
近年素晴らしい作品が数多く発掘リイシューされているスイスのプログレ。
その中でも特に再発が待たれていた作品の一つでしょう。
それにしても78年のスイスで、よもやCRESSIDAファンにオススメできるオルガン・プログレ作品が誕生していたとは。
でも夢想的に漂うシンセのトーンなんかはいかにもユーロ・ロック的で、これまた味わい深いんだよなぁ。
ジャケは何とも言えないセンスですが、この2ndもさすがの内容です。
キーボード&ギターがクラシカルでエレガントなフレーズを次々と紡ぎ出すファンタジックな演奏が素晴らしい。
キャッチーなメロディメイクにも注目の、前作に劣らぬスイス産クラシカル・ロック秀作!
アルティ・エ・メスティエリ彷彿のスピードとテクニック、そしてカンタベリー・ロックに通じる柔らかくしなやかな音色使い…。両者が完璧に調和したこんな凄いジャズ・ロックがイギリスに存在したなんて。ずばり全ジャズ・ロック・ファン必聴作。
このアイルランド産グループ、無名も無名だけど、カンタベリー・ロックやジェントル・ジャイアントを彷彿させる捻りあるセンスと圧倒的なテクニックで展開する極上ジャズ・ロック盤。どの曲も緻密に組み上げられた手工芸品のような完成度を誇っており、こりゃ素晴らし~!
ヒプノシス中屈指のインパクトを誇るホラーチックなジャケデザインでお馴染み、GREATEST SHOW ON EARTHのギタリストによる変名プロジェクトなんです。
ワイルドに歪んだトーンとタメの効いたフレージングがたまらないエレキと厚く鳴り響くハモンド・オルガンが痛快。
ソリッドに畳みかけるブリティッシュ・ハード・ロック必殺盤!
50年代あたりのレトロSF映画のパッケージを思わせるダサジャケットがかえってマイナー・プログレ・ファンの心をくすぐる英ジャズ・ロック作。
ほう、マンダラバンドの2ndに参加するサックス奏者によるバンドなのかぁ。
クールなサックスのプレイを軸に繰り広げられるイギリスらしい幻想感と憂いを帯びたサウンドにやられます!
ジム・モリソン在籍バンドTHEMの一員として活躍し、後にアメリカに渡って活動もしたギタリストJim Armstrongを中心に結成されたアイルランドはベルファスト出身のグループ。
78年の唯一作。
タメの効いたメロウかつスリリングなオブリガードとリードプレイ、哀愁たっぷりのギターがさすがです。
なんと南半球のオーストラリアに、オランダのTRACEやチェコのCOLLEGIUM MUSICUMばりのクラシカルなキーボード・プログレ・バンドが居たとは!
ツイン・キーボード編成のオーストラリア産プログレ・グループによる75年の唯一作ですが、マイナーながら、クラシカルなキーボード・プログレとしてかなり完成度高いです。
オススメ!
なんとオーストラリアにもマハビシュヌやウェザーリポートばりのフュージョン系ロック・バンドが居たとは・・・。
たおやかさもあって、気持ちいい~。
イングランドが『ガーデンシェッド』をリリースしたのと同じ77年に、南半球のニュージーランドにて、ジェネシスとイエスのエッセンスを同じく継いだこんな名盤というか迷盤が生まれていたとは・・・。
これは名づけて「大道芸プログレ」!
痛快!
オランダのジャズ・ロック・バンドが残した唯一の作品で、これぞ「職人的アンサンブル」と呼ぶべき鮮やかな技巧の応酬が最高に心地よい好盤。ジャズ・ロック好きなら一聴の価値ありですよ~。
「渋めのFOCUS」と言えるかもしれないメロディアスで技巧的なダッチ・ジャズ・ロックの逸品。
ジャズ/フュージョン/ハードロックを織り交ぜた自在なギタープレイもヤン・アッカーマンばりだし、舞うようなタッチでクールに音を刻むエレピのプレイも特筆。
内容は申し分ないんだけど、ジャケの酷さだけが惜しいんだよなぁ…。
トラフィック(特にデイヴ・メイスン)やフェアフィールド・パーラーやピンク・フロイドのフォーク・ロックな楽曲あたりが好きなら、このオランダのマイナー盤は掘り出し物間違いなし!
マルチ奏者の2人によるデュオ・グループ。72年の唯一作。
イエスやフォーカスや北欧のカイパが好きなら、このオランダのマイナー・グループには「おおっ」と前のめりになっちゃうはず!
女性Key奏者&ヴォーカル、サックス&フルート奏者を擁するオランダの5人組プログレ・バンド、76年唯一作。
ジャケからプンプン臭ってくるプログレ秘宝臭。
さぁ、音の方はどうかと言うと・・・瑞々しい響きの管弦楽器、シャープに躍動するリズム隊、クラシックとジャズの両方の素養を感じさせるキーボード。
溢れるイマジネーション、たまらん・・・。
76年にイエスやフォーカスに通じるプログレ・ハードの名作『DAYBREAK』を残したMIRRORのギタリスト、ベーシスト、管楽器奏者が結成した、MIRRORの後継と言えるオランダのプログレ・バンド。81年の唯一作。
なんとマイルド&メロウなんだろう。
木霊のような男女ヴォーカルのハーモニー、幻想的にたゆたうサックス、エモーション溢れるギターなど、すべてのパートが味わい深いです。
これはロマン溢れるシンフォニック・ロック秘宝だ・・・。
もしもムーディー・ブルースに、スティーヴ・ハケットとピート・バーデンスが加入したら、って感じ!?
これはブリティッシュ・プログレ・ファンにはたまらん過ぎるダッチ・プログレ・マイナー盤!
演歌調と言ってもいいほどの哀切極まるフレーズを奏でるギターに、アルトサックスが叙情たっぷりに絡み、シンセサイザーが幻想のカーテンをなびかせる冒頭で、叙情派シンフォ・ファンならノックアウト必至!フレンチ・プログレに通じる儚さと浮遊感で包まれたオランダの秘宝盤がこちら。
key奏者とドラマーからなる仏シンフォ・ユニットが残した79年作。ストリングス・シンセやハモンドが丁寧に織り上げていく、実にフランスらしいエレガントなシンフォニック・ロックが絶品です。パーカッションを交えた表情豊かなドラムも聴き所!
アコギ、エレピ、サックスらが紡ぐこのどこかミステリアスで浮遊感ある音使い、どうしようもなくフランスだなぁ。枯れた哀愁もたっぷりと含んだメランコリックかつ浪漫あるジャズ・ロックの逸品です。
R.フリップとJ.マクラフリンを合わせたような攻撃的なギターと、ふくよかなダブルベースの響きが対比する、フランス発個性派インプロ・ジャズ・ロック!硬質さと芳醇さの絶妙な均衡が見事!
アトールと同じEURODISCよりデビューしたもうひとつのフレンチ・シンフォ・グループによる76年デビュー作。
マイナーな作品ですが、ずばりアトール、アンジェ、モナ・リザあたりのフレンチ・ロックの名バンドにも一歩も引けをとらないと言って過言ではありません。
70年代末に残されたフレンチ・シンフォの秘宝。
ジャケには秘宝感ないですが、奥ゆかしく叙情的なシンフォニック・サウンドはいかにもフランスならではで秘宝感ぷんぷん。
30名を超えるミュージシャンが演奏に参加した、フランス産ジャズ・オーケストラの傑作!
注目はのちにSANDROSEの一員として名作を残すギタリストJean-Pierre Alarcenの存在で、一聴して彼と分かるアーティスティックな感性を伴った緊張感あるプレーを披露していて必聴。
フランスらしい格調高さも垣間見れるものの、基本は技巧的に畳み掛けるアグレッシヴな攻めのサウンドが続いていく内容で、プログレ・ファンなら興奮しっぱなしのサウンドのはず!
サックスとキーボードの感じは『4th』『5th』あたりのソフト・マシーンですが、そこにぶつかっていく硬質なギターとリズムが実に強烈。
サックス奏者を擁するフランスのジャズ・ロック/アヴァン・ロック・バンド。77年の唯一作。
マイナーながら、ずばり傑作。
こんな作品まで存在したとは…。
タイ・フォンのキーボード奏者が結成したフレンチ・シンフォニック・ロック・バンド、77年の唯一作。
イマジネーションがめくるめくアンサンブルが持ち味で、独特な音の色彩感覚はいかにもフランス。
ゲスト・ヴォーカルとして、タイ・フォンのKhanh Mai、Tai Sinh、Jean-Jacques Goldmanが参加しているのも特筆。
フランスらしい魅力に溢れたシンフォニック・ロック傑作!
MONA LISAやANGEが好き?
ならこの超絶マイナーなフレンチ・シンフォ作品も聴いてほしいです。
霧の中から響くようなミステリアスで奥ゆかしい演奏に、これでもかとエモーショナルなシアトリカル・ヴォーカルが映える!
夢想的なキーボードワークとジャジーで緊張感あるギターが対比する、実にフランス然としたサウンドが堪らぬマイナー・プログレ82年作。
70年代に出ていれば名を残していたであろう完成度の高い好盤!
ヴィブラフォンやエレピが静謐に鳴るアート・ロックに、ジミヘン彷彿の奔放かつスリルあるギターが豪快に乗っかる1曲目、ずばり名曲!
MAGMAで知られるローラン・チボーも参加した、フランスの奇才ギタリスト71年作。
COSのメンバーだったKey奏者とベース奏者によるグループの77年唯一作。
爽やかに柔らかにたゆたうフルートを中心に、優美なエレピ、フィル・ミラー彷彿の繊細なギターが織りなすサウンドは、カンタベリーのナショナル・ヘルスやギルガメッシュに通じている印象。
カンタベリー・ミュージックをはじめ、COSやPAZOPなどベルギー・ジャズ・ロックのファンは必聴と言える名品。
管弦楽器が中心となって紡いでいく、ただひたすらに優美でリリカルで歌心に溢れたアンサンブルは、聴いていて涙が出そうなほど。スイスにこんな感動的なシンフォが眠っていたなんて。
ブルース・ロックに荘厳なメロトロンって…合うの!?これが合っちゃうんですよね~。
さらにはエネルギッシュなフルートやサックスまで絡んできて、このスイスのグループ、かなり個性的っす!
スイスのプログレと言ったらISLAND、DRAGONFLY、CIRCUSなどが有名ですが、こんなにも素晴らしいバンドが埋もれていたとは。
ずばりトレースmeetsキャメルと言えちゃう、クラシックの引用を巧みに織り込んだ優美かつキャッチーな音作りと、時に情熱的に畳みかけるツイン・キーボード主体のアンサンブルが特徴。
キーボード・シンフォ好きなら一聴の価値ありと言える逸品です☆
まるで初期シカゴとウィッシュボーン・アッシュとクレシダが合体したような感じ!?
ベルギー出身、ツイン・ギターに加え、ブラス&フルート奏者、キーボード奏者を含む7人組グループ、EMIより75年にリリースされた唯一作。
ずばりユーロ・ロック名作。
70年代後半のスペイン頭部のバレンシアでこんなにも美しくセンチメンタルなシンフォニック・ロックが生まれていたとは。
特にギターの表現力、まるでギターを震わせているような感じで『ブロウ・バイ・ブロウ』でのジェフ・ベックを彷彿させるヴァイオリン奏法が見事です。
軽快なジャズ/フュージョン展開も抜群に決まってるし、これはグレイト!
クリムゾンの『ポセイドンのめざめ』をジェスロ・タルがカヴァーして、そこにマイルス・バンドの面々が乱入したらこんな感じになるかも!
スペインのアンダルシアにこんな強烈なプログレ作品が生まれていたなんて…。。
北欧らしい透明感のあるクールなジャズ・ロックを聴かせていたかと思ったら、突如マハヴィシュヌばりのスリリングなバカテク・アンサンブルが炸裂して仰天~!
特にギターはマクラフリンに通じる知的な凶暴さを持っており、ハード・ロックすれすれの所で切れ味鋭くヘヴィにのたうつプレイが圧巻です。
時おり挿入されるオリエンタルな旋律もセンス抜群な北欧ジャズ・ロックの秘宝盤!
イエスやジェネシスやグリーンスレイドやベガーズ・オペラあたりのファンは聴いていて、思わず笑みがこぼれてくること間違いなし。
このスウェーデンのバンド、マイナーだけど驚きのクオリティ!
このヴォーカル、ジム・モリソンとスティーヴ・ウィンウッドの中間に位置するような感じで良いなぁ。
演奏は、フロイドや初期タンジェリン・ドリームみたいだし、ぬぬ、スウェーデンのグループによる69年作とは!
ハード・ロック前夜の煙のような空気が充満する中で、鳴り響くハモンド・オルガンとファズ・ギター。
でも、スウェーデンらしく、ヘヴィさの向こうには透明なリリシズムも感じさせてグレイト。
デンマークのジャズ・ロック・グループによる、「人の一生」をテーマにしたと思われる79年作。
ベースとなるのはゴリゴリ疾走する熱くハードなジャズ・ロックですが、フュージョン~フォーク~中世風味のクラシカル・タッチまで、
一曲の中でジャンルレスに展開していく変幻自在さも持ち合わせた実力派。
スタイルの多彩さとユニークさでは北欧のみならず、ユーロ・ジャズ・ロックでも屈指と言っていいかも!
デンマークにこんな心躍るクラシカル・キーボード・ロック・バンドが居たなんて!
トレースやコレギウム・ムジカムあたりのファンはウキウキしちゃうはず。
77年の2ndアルバム。
サウンドの印象は、グリーンスレイドとオランダのトレースを足して2で割り、EL&Pのエッセンスをスパイスで加えたような感じ!
やはりトレースやチェコのコレギウム・ムジカムなど、クラシカルなキーボード・プログレのファンは必聴でしょう。愛すべき逸品です。
聴いて頭に浮かんだコピーは「カイパ meets イル・ヴォーロ」。
高い演奏力に裏打たれたアンサンブルのキレ味と北欧産らしい流麗さ&透明感が味わえる、デンマーク発インスト・ジャズ・ロック!
ザッパばりの諧謔精神炸裂しつつ、切れ味鋭く駆け抜けていくジャズ・ロック・アンサンブルがカッコ良すぎ!
こんな凄いバンドがデンマークに眠っていたとは…。視聴是非!
ダウナーなサイケ感と洗練されたジャズ/フュージョン、北欧らしい幻想性が一つになったサウンドは実に個性的。
カンタベリー界隈にもちょっぴり通ずる、淡く幽玄なデンマーク産プログレ秘宝。
いかがでしたか?
これは一枚でも知っている作品があれば相当なプログレ・マニアと言えるレベルのディープさではないでしょうか。
気になる作品を見つけていただけたなら幸いです☆
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サザン・ロック奥の細道を歩き続けるCROSSROAD PRODUCTIONSのリイシュー作をピックアップ!
1974年に英ブリストルで結成、2人の管楽器奏者を擁する7人組ジャズ・ロック・バンドによる77年の唯一作。このサウンド、ずばり「アルティ・エ・メスティエリ meets カンタベリー・ロック」!手数多くも精密に刻む技巧的なドラミング&ベースが作り出すタイトかつスピーディなリズムに乗って、流れるように快速フレーズを繰り出すギター、ふわりとファンタジックな音色を紡ぐエレピ&シンセ、そして艶のあるしなやかな音色で駆け抜けるフルート&サックスが躍動。アルティばりのスピードとテクニックでひた走るテクニカル・ジャズ・ロックに、カンタベリー風の優雅で芳醇な管楽器群を重ねたこのアンサンブル、ジャズ・ロック然とした強度と、柔らかく軽やかなタッチが見事に一体となっていて、もうとにかく素晴らしすぎます。アルバム後半で聴けるアコースティック・ギターをメインとする地中海的エキゾチズム薫るアンサンブルも極上。こんな大変な傑作がまだイギリスにあったなんて!と驚かずにはいられない逸品です。
COSのメンバーだったKey奏者とベース奏者を中心に、WATERLOOやPAZOPやPLACEBOで活動していたフルート奏者、ギタリスト、ドラムにより結成されたベルギーの5人組ジャズ・ロック・バンド。77年の唯一作。爽やかに柔らかにたゆたうフルートを中心に、優美なエレピ、フィル・ミラー彷彿の繊細なギターが織りなすサウンドは、カンタベリーのナショナル・ヘルスやギルガメッシュに通じている印象。シャープでいてファンキーなグルーヴ感もあるリズム隊も特筆ものです。精緻かつダイナミズムもあるサウンドは、カンタベリー・ミュージックをはじめ、COSやPAZOPなどベルギー・ジャズ・ロックのファンは必聴でしょう。名品です。
スウェーデン出身のキーボード・シンフォ・トリオが79年に残した唯一の作品。これは、オランダのTRACEと同郷のKAIPAを合わせたようなサウンド!気品高く美旋律を紡ぐクラシカルなオルガン、北欧然とした透明度高くデリケートな音色のシンセ、そしてどこか人懐っこく温かみあるスウェーデン語ヴォーカルが織りなすシンフォニック・サウンドは、技巧的ではありませんが、両バンドに通じる味わいを持っています。気高く飛翔するヴァイオリンやトランペットもアンサンブルを劇的に彩っていて至上。秘宝感満点のジャケット通り、これは北欧シンフォ・ファンならマストな一枚!
スイス出身のプログレ・グループによる、78年作1stアルバム。気品漂う叙情的なメロディとオルガンがこれでもかと哀愁のフレーズで畳みかける演奏を聴かせる1曲目は、70年代初頭のブリティッシュ・ロックと言われても信じてしまいそうです。派手に泣くハードロック色を帯びたギターも印象的。でもシンセのフワフワと夢想的なトーンや、クラシックの引用を軽やかでエレガントに聴かせるセンスなどは、やはり英国とは異なる欧州ロックならではの味わいを感じさせます。CRESSIDAあたりのオルガン・ロック・ファンにもオススメですし、同郷ならWELCOMEあたりがお好きであればきっと気に入るはず。
デンマーク産ジャズ・ロック・バンド、77年作1st。こ、これは凄いです…。北欧トラッド感漂うフレーズを吹き鳴らすサックスとアヴァンギャルドなギターが変拍子織り交ぜつつ疾走、かと思えば突如洒脱でムーディーなジャズ・ロック・パートに突入し、ヴォーカルが入れば人を食ったようにファンキーなサウンドに変貌し…。本格的なジャズの素養を感じさせるしなやかな技巧性と、ザッパやSAMLA MAMAS MANNAを思わせる諧謔精神が交わった変幻自在のアンサンブルは、とても無名とは信じられぬほどの完成度。とにかくキレのあるサックスが出色で、幻想的なエレピや強靭に歪んだギターと絡み合うナンバーはクリムゾンやHENRY COW好きにもグッと来ること間違いなしでしょう。COMPANYIA ELECTRICA DHARMAのファンにもオススメです!視聴是非。
スペイン東部は地中海に面するバレンシアで結成されたスパニッシュ・シンフォニック・ロック・バンド、78年のデビュー作。一曲目のタイトル・トラックの何と物悲しく美しいこと!寄せては返す波のようにしっとりと奏でられるピアノ、一音一音をゆったりと紡ぐメロディアスなギター、そこにユニゾンであわせる陰影たっぷりのキーボード。ギターの表現力は特筆もので、まるでギターを震わせているような感じ。『ブロウ・バイ・ブロウ』でのジェフ・ベックを彷彿させるヴァイオリン奏法も見事です。ハイ・トーンのセンチメンタルな男性ヴォーカルも胸に迫るし、これは名曲だなぁ。柔らかなトーンのエレピや軽やかに奏でられるギターのアルペジオなど、フュージョン・タッチの歌ものなんか、イスラエルあたりのジャジー&ポップなバンドも彷彿させて素晴らしいし、12分を超えるラストでは、シャープなジャズ/フュージョン・ロックを軽快に聴かせるし、このバンドはグレイト!
スイス出身のプログレ・グループによる、80年リリースの2ndアルバム。キーボードとギターがクラシカルな気品をたっぷり含んだエレガントなフレーズを次々と紡ぎ出す、たおやかでファンタジックなアンサンブルが素晴らしい。ヴォーカルが歌うメロディは前作よりもポップでキャッチーな聴き心地を持っていますが、クラシカルな演奏と見事にマッチしておりこのへんのセンスはやはり抜群です。若干80sエレポップ的なノリも見え隠れしますが、全編クラシカルなキーボードが色調をまとめていて他にはない味わいとなっているのも面白いです。前作同様、同郷スイスのWELCOME(特に2nd)に通じるクラシカルでポップなプログレの好盤です。
2人のギタリストとサックス/フルート奏者を擁するフレンチ・ジャズ・ロック・グループが、79年に残した唯一のアルバム。まるでザッパの同年作『SHEIK YERBOUTI』のあの猥雑さ/おふざけセンスを1曲に詰め込んでしまったかのような凄まじい1曲目で幕を開けます。変拍子まみれの突っかかりまくりのリズムを難なく刻む技ありリズム隊を土台に、ギターとサックスがスリリングなフレーズを応酬させ、怪しいコーラスともはや奇声に近いヴォーカルが素っ頓狂に歌い上げる、狂乱のジャズ・ロックは濃厚すぎて眩暈がするほどです。2曲目以降、ザッパ色が薄れると、テンションみなぎるギター&サックスを軸とするキレのあるジャズ・ロック・アンサンブルが一層冴え渡ってくるのも素晴らしい。サックスとフルートがリードするパートでは、カンタベリー・ロック色も芳醇に匂い立ってきて、その変幻自在なセンスに終始驚かされます。とりあえずザッパ・ファンにはこのオープニング・ナンバーだけでも聴いて欲しいなぁ。フレンチ・マイナー・プログレ屈指の衝撃作!
フランスのギタリスト/コンポーザーが、ANGEのキーボーディストFrancis Decampsをプロデューサーに迎え制作した78年の唯一作。淀みなく紡がれるアコースティック・ギターのアルペジオに、鋭角的で少し緊張感あるエレキが被さる初期MIKE OLDFIELDを想わせるスタイル、そこにストリング・シンセや浮遊感あるSEが湧き上がり奥行きある音世界が広がっていきます。このほの暗い幻想美が揺らめくようなインスト・プログレは、間違いなくフランス以外からは出てこないサウンドでしょう。さながらMIKE OLDFIELD+CARPE DIEMといった感じでしょうか。この世ならざる幻想性を帯びたプログレがお好きなら、この作品はきっと響くはず。マイナーながら傑作です。
ビート・ポップ・バンドSHOWMANに在籍したオーストラリア出身キーボーディスト/コンポーザーが残した74年のプログレ作品。シンセやチェンバロが折り重なる、クラシックの素養を感じる気品高いプレイと、生き生きしたポップなメロディの組み合わせが魅力的。そしてそれらをゆったりと覆うメロトロン…。英国ポップ・ロックに通じる緻密でジェントルな音作りと、メロトロンの音色に現れたオセアニアらしい大らかさのコンビネーションがとても心地いいです。「愛すべき」というワードがぴったりのキーボード・シンフォの逸品。
78年から80年までの活動期間に3枚のアルバムを残したスイスのグループ、80年作の最終作。ALLMAN BROTHERSの曲から拝借したであろうグループ名の通り、ギターにはブルース・ロックの残り香を感じますが、このバンドが面白いのは、ユーロ・ロックらしい幻想性や寂寥感に満ち溢れているところ。ひっそりとたなびくように鳴るキーボード(メロトロン?)、初期クリムゾンを彷彿させるアヴァンギャルドなサックスやフルート、マイケル・ジャイルスからの影響を強く感じるタイト&メロウなドラム、そして、物悲しいヴォーカルとリリカルなメロディ。まるでクリムゾンの『ポセイドンのめざめ』『リザード』 meets ウィッシュボーン・アッシュって感じ!?辺境プログレらしい奥ゆかしさもたっぷりなユーロ・ロック&プログレの隠れた名品です。
タイ・フォンのキーボード奏者が結成したフレンチ・シンフォニック・ロック・バンド、77年の唯一作。ジャケットのイメージ通りのほの暗いスペーシーなトーンで鳴るシンセ。繊細なタッチとサステインの効いた幻想的なトーンが魅力のメロディアスなリード・ギター。そんなシンセとギターを中心とするスペーシーかつ幻想的なパートを軸に、アコギの軽やかなバッキングとパーカッションをフィーチャーしたP.F.M.「セレブレーション」ばりに躍動するパート、クラシカルなアコギの爪弾きと格調高いピアノによる「春」を想わせるパート、マリンバをフィーチャーしたドリーミーなパートをはさむなど、イマジネーションがめくるめくアンサンブルが持ち味です。独特な音の色彩感覚はいかにもフランス。ゲスト・ヴォーカルとして、タイ・フォンのKhanh Mai、Tai Sinh、Jean-Jacques Goldmanが参加しているのも特筆で、壮麗な多声コーラスも聴きどころ。フランスらしい魅力に溢れたシンフォニック・ロック傑作です。
オランダ出身のジャズ・ロック・バンドが74年にリリースした唯一のアルバム。寸分も狂いなく刻む鋭い打音のドラムス、メロディアスな音運びのベース、ヤン・ハマーを思わせるピッチベンドを多用した躍動感あるプレイのシンセとエレピ、スリリングで緊張感あるフレーズで切り込むギター。緊密なテンションが支配するテクニカル・ジャズ・ロックを聴かせる、挨拶代わりの一曲目でその実力がわかります。以降はファンキーな跳ねるリズムも入ったフュージョン風ジャズ・ロックとなり、一曲目に比べてリラックスしているようでいて、どこか緊張感を持続させた油断ならない演奏がまた堪りません。基本的にインストですが、ムーディーなフュージョン曲で突如歌い出すリチャード・シンクレアみたいなヴォーカルも印象的。これぞ「職人的アンサンブル」と呼ぶべき鮮やかな技巧の応酬がただただ心地よい好盤。ジャズ・ロック好きなら一聴の価値あり!
アイルランド出身、ギター、キーボード、ベース、ドラムの4人からなるプログレ/ジャズ・ロック・グループ、76年の唯一作。安定感あるリズムと流れるようなタッチのギター&エレピが紡ぐ端正なジャズ・ロックがベースとなっていますが、その音楽性は実に多彩。77年に唯一作を残した美声女性SSW、Rosemarie Taylorをフィーチャーしたカンタベリー・ロックに通じる柔らかくロマンチックな3曲目、GGのケリー・ミネアの作風を思わせる浮遊感あるプログレ・ナンバー、バグパイプ風のキーボードのプレイがカッコいいアイリッシュ風味香るテクニカル・ジャズ・ロックなど、バラエティに富みつつもどの曲も緻密に組み上げられた手工芸品のような完成度を誇っており実に素晴らしいです。ラストは初期GGのアルバムに入っていてもおかしくないほどの凝りに凝った展開とコーラスに彩られたナンバーでハイライトの一つ。底知れぬ技巧と捻りあるユニークな音楽センスを備えたグループによる名盤です。
デンマーク出身のキーボード・プログレ・バンド、77年作の2nd。デビュー作からキーボード奏者2人が代わり、新たなツイン・キーボード編成で録音されています。サウンドの印象は、グリーンスレイドとオランダのトレースを足して2で割り、EL&Pのエッセンスをスパイスで加えたような感じ!?キース・エマーソンを彷彿させるスペーシーかつ攻撃的なフレーズあり、天へと真っ直ぐに登っていくようなクラシカルなフレーズあり、温かでファンタスティックなトーンのフォーキーなフレーズあり、ムーグやハモンドがこれでもかと躍動する、キーボード・プログレのファン歓喜の音が溢れています。引き締まったタイトなリズムから、R&Bなグルーヴで躍動するリズムまで、リズム・セクションの充実も特筆。ここぞでは、エレキ・ギターや激しいフルートをフィーチャーするなど、プログレッシヴなアレンジも見事です。ほぼインストながら、デンマークらしい朗らかなメロディ・ラインが散りばめられていて、最後まで一気に聴き通すことができます。デビュー作と並び、トレースやチェコのコレギウム・ムジカムなど、クラシカルなキーボード・プログレのファンは必聴でしょう。愛すべき逸品です。
ジェネシスやキャメル影響下のメロディアスなサウンドが人気のフランスのシンフォニック・ロック・バンド。76年のデビュー作と甲乙つけがたく人気の79年作2ndで、フランスの作家ボリス・ヴィアンによるSF青春小説『日々の泡』をモチーフにしたコンセプト・アルバム。前作から、ドラムが代わり、キーボーディストが加わってツイン・キーボード編成となって録音されています。ラインナップの変化はプラスとなった印象で、シャープに引き締まったドラム、左右チャンネルから鳴らされてシンフォニックに広がりドラマ性を高めるキーボード・アンサンブルは特筆。スティーヴ・ハケットやアンディ・ラティマーを彷彿させる繊細なタッチのリリシズム溢れるギターは相変わらず絶品だし、奥ゆかしさがフランスらしいヴォーカルもまた魅力的だし、ジェネシスやキャメルのファンにはたまらない「詩情」と「ドラマ」に満ちています。マイナーながら叙情的なシンフォニック・ロックの名作です。
オランダのシンフォニック・ロック・バンド、79年の唯一作。サウンドはずばり「もしもムーディー・ブルースに、スティーヴ・ハケットとピート・バーデンスが加入したら!?」って感じ。フォーキーなメロディ、朗らかでジェントルなヴォーカル、陰影を描くメロトロンなどはムーディー・ブルースを彷彿させながら、アンサンブルにはジェネシスやキャメルに通じるドラマティックさがあります。ハモンド・オルガンのクラシカルなキメとシャープなリズム・チェンジで緊張感を生むリズム隊との組み合わせはまるでジェネシスだし、ギターの繊細なアルペジオにムーグの柔らかなリードが乗るパートはキャメルを思い出します。ローカルなレーベルからのリリースで原盤は激レアのようですが、クオリティの高さは特筆もの。これはユーロ・ロックの秘宝と言える名作です。
フランス出身、80年代末〜90年代にチェンバー/シンフォ・バンドTIEMKOで活躍するドラマー/コンポーザーが80年に残したソロ唯一作。マイナーながら、これはジャズ・ロック・ファン要チェック!息つく暇も与えず畳みかける緊張感みなぎるドラミングと数多く躍動するベースが牽引、ギターとオルガンが切れ味鋭いフレーズを応酬させ、その周囲をシンセが不気味に浮遊する、タイトな疾走感と不穏さを併せ持つアンサンブルはかなり個性的。1曲目や5曲目の執拗な反復で熱気たっぷりにまくしたてる展開は間違いなくMAGMAを受け継ぐZEUHLの系譜だし、かと思うと不気味なトーンのシンセがクラシックを独奏したりと変幻自在。この摩訶不思議なセンスはさすが孤高のバンドTIEMKOのコンポーザーなだけあります。まるでMAGMAの暗黒エネルギーとGENTLE GIANTの意表を突く楽曲展開を合体させたと言っても過言ではない、アヴァン・ジャズ・ロックの傑作!
70年代前半に活動したオランダのジャズ・ロック・グループによる74年作2nd。俊敏なリズムに乗って、派手に弾きまくるオルガンとスリリングで技巧的なギター、渋くむせぶブラスらが丁々発止で繰り広げるスタイリッシュなジャズ・ロック・アンサンブルが炸裂!のっけからかなりカッコいいです。2曲目からはややジャズ要素が強めですが同郷FOCUSへの意識を感じさせるメロディアスなナンバーが続きます。ジャズ・ロックと言うと無骨で硬質な印象を持ちがちですが、このバンドはフュージョン的な軽やかさとどこかお洒落な感覚が備わっていて、伸びやかで洗練されたサウンドがとても心地いいです。ギターはジャジーに抑えたプレイを主としますが、ここぞという場面ではハードに切り込む熱いプレイで圧倒し振れ幅自在。このへんは少しヤン・アッカーマンを彷彿させるかも知れません。舞うようなタッチでクールに音を刻むエレピのプレイも特筆です。これほどのバンドが埋もれていたとは驚き!ジャケの酷さが勿体無いですが、中身は絶品ジャズ・ロック。これは名品です。
デンマーク出身のキーボード・プログレ・バンド、74年のデビュー作。明るく華やかなトーンで広がるハモンド・オルガンとクラシカルなリードを奏でるムーグ・シンセを中心に、粒立ちの良いトーンの明瞭でメロディアスなギター、高音が際立ったゴリゴリとしたトーンでアグレッシヴにランニングするベースがめくるめく心躍るサウンドが印象的。ジェントルなヴォーカル、気品のある美しいメロディもグッときます。エドヴァルド・グリーグによる組曲「ペール・ギュント」をモチーフにした15分を超える大曲も聴きどころ。オランダのトレースやチェコのコレギウム・ムジカムあたりが好きなら間違いなく気にいるでしょう。クラシカルなキーボード・プログレの名作です。
スウェーデン出身、ツイン・ギター、Key奏者を含む6人組シンフォニック・ロック・バンド、74年リリースの唯一作。切れ味鋭くも端正なリズム・セクションをバックに、ハープシコードとピアノが格調高いフレーズを奏でるクラシカルなアンサンブルを土台に、北欧らしく粒立ちの良いトーンのギターが次々にメロディアスなリードを奏で、ここぞではツイン・リードで畳み掛け、さらに、ハープシコードとピアノも流麗なリードで続く、というドラマティック極まる演奏にグッときっぱなし。エモーショナルに歌い上げる力強くもメランコリックなヴォーカル、流れるように美しいメロディ(英詩)もまた特筆で、演奏も歌も日本人の琴線にビシバシと響いてきます。カイパに通じるところもありますが、彼らよりも陰影たっぷりで、ブリティッシュ的要素が強い印象。イエスやジェネシスやグリーンスレイドやベガーズ・オペラあたりのファンは聴いていて、思わず笑みがこぼれてくること間違いなし。これは驚きのグループ。名作です。
GREATEST SHOW ON EARTHのギタリストGarth Watt-Royの変名プロジェクト。72年の唯一作。ワイルドに歪んだトーンとタメの効いたフレージングがたまらないエレキ・ギター、キレのあるリズム・チェンジで攻撃的なダイナミズムを生むリズム隊、厚く鳴り響くハモンド・オルガン。ソリッドなブリティッシュ・ハード・ロックの快作です。オール・インストで爆走!ソロ・パートはディープ・パープルばりにスピーディー!
フルート、サックス、リコーダー、ヴァイオリン(ヴィオラ)、チェロなどをフィーチャーしたスイスはクール出身のグループによる74年リリースの唯一作。これは絶品です!ゆったりと刻まれるリズムに乗って、クラシカルで柔らかなタッチのエレピとオルガン、切ない泣きのフレーズを主とするギター、ひたすら気品高く優美に鳴らされるフルートやリコーダー、奥ゆかしくも伸びやかなフレーズを紡ぐヴァイオリンやチェロ、それらが美しく交わり合いながらデリケートに織り上げていくシンフォニック・ロックは、とにかく息を呑むほどに感動的。テクニカルではないのですが、どの楽器のプレイにも「歌心」が溢れんばかりで、アルプスの雄大な山々を臨むスイスの自然情景をそのまま音に置き換えたような映像喚起力に満ちた演奏を聴かせてくれます。英語とドイツ語で歌う厳かでロマンチックな表情の低音男性ヴォーカルも見事にサウンドとマッチ。CAMELやケベックのシンフォ・バンドOPUS SANKあたりがお好きならきっと間違いない、まさしくユーロ・シンフォの隠れ傑作です!
スペイン南部はアンダルシア地方の地中海に面する都市マラガ出身のプログレ・バンド。80年の1stで、RCAからのリリースながらわずか600枚ほどがプレスされたのみの激レア盤。海外のレビュー・サイトでは、ゴング、ソフト・マシーン、チック・コリア、マイルス、ザッパ、そして、フラメンコの融合、と評されていましたが、なるほど言い得て妙。クリムゾンの『ポセイドンのめざめ』をジェスロ・タルがカヴァーして、そこにマイルス・バンドの面々が乱入したらこんな感じになるかも。バタバタと手数多くシャープ&タイトなジャズ・ロック・スタイルのドラム、動きまくるアグレッシヴなベースによるリズム隊を土台に、ギターが、猥雑なファズ・ギターからロバート・フリップ風の緊張感あるアルペジオまでダイナミズムをつけ、フルートが時にミスティックに、時に軽やかなフレーズで駆け抜け、ここぞではサックスがブイブイと炸裂する。熱情のアンダルシア・スタイルのヴォーカルも特筆で、オペラ・スタイルを持つバンコのジャコモへの、フラメンコ・スタイルからの回答といった感じ。雰囲気抜群のジャケのイメージ通りのプログレ/ジャズ・ロックの秘宝です。
マンダラバンドの2ndに参加するサックス奏者Phil Chapmanや、後にセッション・ミュージシャンとして数多くの名ジャズ・プレイヤーと共演するドラム/パーカッション奏者のDave Hassellが在籍したイギリスのプログレ・バンド。76年唯一作。時にパーカッションをフリーフォームに叩いては空間を埋め、時にタイト&シャープなドラミングでアンサンブルを引き締めるリズムを土台に、スペーシーかつメロディアスなエレピのバッキングが色彩を放ち、その上でサックスが流麗なリードを次々にキメていくスタイルのジャズ・ロックが持ち味。サックスとキーボードがミニマルなキメのフレーズを炸裂するところは、ソフト・マシーン『6th』あたりのサウンドも彷彿させます。
オランダのプログレ・グループによる78年のデビュー作。冒頭からとにかく哀愁が迸りまくり!!演歌調と言ってもいいほどの哀切極まるギターフレーズに、アルト・サックスが叙情たっぷりに絡み、そこにシンセサイザーが幻想のカーテンをなびかせる冒頭で叙情派シンフォ・ファンなら即ノックアウトでしょう。やや頼りない歌声の英語ヴォーカルも、かえって叙情味を際立たせていてこれしかないといった風情を漂わせます。比較的端正で歯切れのいいバンドが多いオランダにあって、まるでフレンチ・プログレのように儚げで浮遊感あるシンフォを聴かせる一枚。
76年にイエスやフォーカスに通じるプログレ・ハードの名作『DAYBREAK』を残したMIRRORのギタリスト、ベーシスト、管楽器奏者が結成した、MIRRORの後継と言えるオランダのプログレ・バンド。81年の唯一作。小刻みなハイハットワークで軽やかに疾駆するドラム、ハイ・ポジションで動き回るベースによる躍動感いっぱいのリズムを土台に、クラシカル&ジャジーで洗練されたピアノのリード、粒立ちがよくハード・エッジでメロディアス&エモーショナルなギターのリードがめくるめくインスト・プログレが持ち味。優しくメロディを奏でるオーボエと格調高くリリカルなピアノによる穏やかな情景が浮かんでくるようなパートなど、溢れるイマジネーションも魅力です。フォーカスやフィンチのファンは必聴と言える逸品です。
81年に自主制作リリースされた、スイス産シンフォニック・ロックの逸品。TRACEとCAMELを合わせたような、クラシックの引用も多用し凛とした気品を保ちつつも情熱的に展開される、ツイン・キーボードを主体とするアンサンブルが絶品です。スイスと言えばISLANDやDRAGONFLY、CIRCUS当たりが知られますが、こんな素晴らしいバンドが存在したとはっ!
17年初CD化、デジタル・リマスター。最終曲終了後約10秒にわたって雑音が入っておりますが、CD化の過程でのミスと思われます。ご了承ください
女性Key奏者&ヴォーカル、サックス&フルート奏者を擁するオランダの5人組プログレ・バンド、76年唯一作。太くもエッジの立ったトーンのリズムと粒立ちの良いキャッチーなリードがフォーカスを彷彿させるエレキ・ギター、ゴリゴリと疾走するベース、手数多くスピーディーに畳み掛けるドラム、そして、エネルギッシュなリズム隊&ギターと対照的に、涼やかなトーンのキーボード、流麗なフルートやサックス。そんな各パートが押しては引いてのせめぎあいを続ける「緩」「急」いっぱいのアンサンブルが持ち味です。イエスやフォーカスや北欧のカイパが好きなら「おおっ」となることでしょう。インスト中心ながら、時にハイ・トーンの女性ヴォーカルも入るのも特筆。ちょっとバタバタ感はいなめませんが、そのB級感がまた愛すべきところであり、リード・ギターをはじめ、リードはハッとするメロディに溢れています。
オランダのプログレ・バンド、原盤は激レアとされる76年の唯一作。神秘的でフォーキーなパートと、夢想的にたなびくハモンド・オルガンや沈み込むようなトーンのスペーシーなムーグをフィーチャーしたジャジー&プログレッシヴなパートとが織りなす、オランダらしいマイルドな幻想サウンドが印象的。木霊のような男女ヴォーカルのハモり、幻想的にたゆたうようなサックス、ここぞでエモーションを解き放つエレキ・ギターなど、なんとも味わい深いです。ロマン溢れるシンフォニック・ロックの秘宝と言えるでしょう。
ツイン・キーボード編成のオーストラリア産プログレ・グループ、75年の唯一作。手数多く切れ味の鋭いドラム、ゴリゴリのトーンで疾走するリッケンバッカー(←おそらく)ベースによるスピード感あるリズム隊、そして、クラシカルかつR&B〜ジャズ的なグルーヴ感もあるピアノと透明感あるトーンの幻想的なキーボード・ワークが印象的で、端正かつジェントルなキーボード・プログレ・サウンドは、EL&PというよりオランダのトレースやチェコのCOLLEGIUM MUSICUMあたりを彷彿させます。気品のある伸びやかな男性ヴォーカル、フックに富んだ流麗なメロディもまた魅力的。マイナーながら、クラシカルなキーボード・プログレとしてこれはかなり完成度高いです。これはオススメ!
スウェーデン出身のサイケデリック・ロック・バンド。69年の唯一作。ジム・モリソンとスティーヴ・ウィンウッドの中間に位置するような陶酔的でいてソウルフルなヴォーカル、深く沈み込むように鳴るハモンド・オルガン、R&Bの要素を感じさせつつも沈殿していくようなサイケデリック感たっぷりのリズム隊。ジミ・ヘンドリクスやトラフィックに通じるR&B〜サイケ感と、ピンク・フロイドや初期タンジェリン・ドリームあたりが頭に浮かぶ、内省と宇宙が同一化したような酩酊感とがあわさったサウンドはかなり完成度高いです。いかにも60年代末の空気をとらえたアート・ロック逸品。
ベルギー出身、ツイン・ギターに加え、ブラス&フルート奏者、キーボード奏者を含む7人組グループ、EMIより75年にリリースされた唯一作。ブラス・ロックを彷彿させる逞しくもシャープなリズム・セクション、クラシックな気品もあるドラマティックに盛り上がるツイン・リード・ギター、英VERTIGOの作品群を彷彿させる流麗なフルートや淡いオルガン、そして、多声コーラスを交えて荘厳に盛り上がっていくヴォーカル&ハーモニー。まるで初期シカゴとウィッシュボーン・アッシュとクレシダが合体したような何とも魅惑的なサウンドが全編で繰り広げられていてビックリ。演奏は安定感抜群だし、変拍子のキメを織り交ぜながら忙しなく畳み掛ける展開もプログレッシヴだし、メロディもフックたっぷりだし、これは素晴らしい作品。ユーロ・ロック名作!
フランス出身、ギター、ダブルベース、ドラムスのトリオ・グループが79年に発表した唯一作。ジャズの素養豊かな手数多くもしなやかに刻むリズム隊と、縦横無尽な音運びながらどこか焦燥に駆られたような神経質さを持つギターが繰り広げる、硬質なインプロ・ジャズ・ロックが大変カッコいいです。まるでR.フリップとJ.マクラフリンを合わせたような攻撃的なギターを筆頭にスリリングで緊張感あるアンサンブルを主としますが、一方でダブルベース特有のふくよかな低音が効いていて、ゴリゴリとアグレッシヴなようでいて得も言われぬ芳醇さも感じさせるサウンドが特徴的。クリーントーンとディストーションを使い分け硬軟自在に畳み掛けるギターと、クールに音を紡ぐダブルベースが鮮烈に対比する17分の大作も圧巻の出来です。キング・クリムゾン、マハヴィシュヌ・オーケストラのファンには是非お聴きいただきたいフレンチ・ジャズ・ロックの逸品。
イスタンブールに生まれ、十代でフランスに移住、以後フランスで音楽活動を続けてきたコンポーザー/アレンジャー/キーボーディストJanko Nilovic主宰によるジャズ・オーケストラの72年唯一作。30名を超えるミュージシャンが演奏に参加していますが、注目はSANDROSEで知られる名ギタリストJean-Pierre Alarcenが名を連ねていることでしょう。名手Andre Ceccarelliのグルーヴィーかつ鋭いドラミングを土台に、トランペットとトロンボーンによる重厚なブラス・セクション、滑らかに旋律を紡ぐサックス、熱っぽく渦巻くコーラス、そして一聴して彼と分かるアーティスティックな感性を伴った緊張感あるAlarcenのギターらが繰り広げるスリリングなアンサンブルがカッコよすぎます。時折アンサンブルの熱気を洗い流すかのように格調高いストリングスが入ったりするのも特徴的です。2曲目「Underground Session」は、アレンジはかなり異なりますが、SANDROSEの唯一作にも収録されたナンバー。フランスらしい格調高さも垣間見れるものの、基本は技巧的に畳み掛けるアグレッシヴな攻めのサウンドとなっていて、プログレ・ファンなら興奮しっぱなしのサウンドでしょう。重厚にして華麗なジャズ・オーケストラの傑作です。
デンマークのサイケ/プログレ・バンド、79年唯一作。霧に包まれたような幻想性、ダウナーなサイケデリック感、そしてジャズ/フュージョンの洗練味…。時には妖しいシタールの音色も取り入れ、ひっそりと幽玄に繰り広げられるアンサンブルは実に個性的。北欧らしい哀愁を孕んだメランコリックなメロディも魅力的です。Robert WyattやKevin Ayersなどのカンタベリー界隈にもちょっぴり通じそうな、淡い浮遊感に満ちた北欧プログレの隠れ名品。
74年から83年の活動期間中に5枚のスタジオ作を残したオーストラリアの名ジャズ/フュージョン・ロック・バンド、75年デビュー作。軽快かつ流麗なギターのカッティング、緩急自在のリズム・セクション、そして、その上をたおやかに舞う管楽器のリード。清涼感たっぷりのフュージョン・ロックが魅力です。エレピとギターとベースによる高速ユニゾンなど、マハビシュヌやウェザー・リポートばりのテクニカルなパートでの切れ味も特筆。フュージョン系ロックのファンにオススメの快作です。
フランス出身、キーボーディストとドラマーからなるシンフォ・ユニットが79年に発表した唯一作。ティンパニ、トライアングル、ウッドブロックなど多彩なパーカッションを交えながらリズムを刻む表情豊かなドラムを土台として、壮麗に広がるストリングス・シンセやクラシカルで気品高いタッチのハモンドを折り重ねて作り上げられていく、実にフランスらしいエレガントなシンフォニック・ロックが絶品です。キーボードは決して技巧派というわけではありませんが、終始繊細な佇まいを崩さず、ジャケット通りと言える幻想的で気品ある世界観を演出する音色作りに才能を発揮。一方ドラムは上記パーカッション群を多用した現代音楽風のプレイから、ジャズ・ロック的な手数多く疾走するテクニカルなプレイまで、緩急自在にアンサンブルを引っ張ります。全体としてはフランスらしい軽やかでファンタジックな色合いが強く出た作風と言えるでしょう。デュオ編成ながら音の密度が高くしっかりとした聴き応えのある作品です。
デンマークのインスト・ジャズ・ロック・バンド、ポリドールから76年にリリースされたデビュー作。聴いて頭に浮かんだコピーは「カイパ meets イル・ヴォーロ」。カイパに通じる北欧らしい幻想性やリリシズムに加え、イル・ヴォーロを彷彿させる清涼感あるフュージョン・ロック風味があって、このバンドはいいなぁ。シャープかつ手数多く引き締まったリズム・セクションをはじめ、テクニックも特筆だし、キレ味と流麗さが同居したアンサンブルも見事。これは名作です。
ヴァン・モリソンのTHEMで活躍し、70年代にはアメリカにてドアーズやキャプテン・ビーフハートやザッパとも共演した名ギタリストJim Armstrongを中心に結成されたアイルランドはベルファスト出身のグループ。78年の唯一作。Jim Armstrongによるタメの効いたメロウかつスリリングなオブリガード&リードが魅力的なハード・ロック。ここぞでは、シン・リジーばりのツイン・リードも印象的。ハイ寄りの端正なヴォーカル、憂いあるメロディにもグッときます。
前身バンドを経て76年に活動を開始したフランスのプログレ・グループによる82年のデビュー作。コロコロしたエレピとソリーナが作り出す夢想的な浮遊感と、ジャジーな中にマイク・オールドフィールドやスティーヴ・ハウに近いフレーズセンスも感じる忙しなくも緊張感あるギターが織りなす、スリリングかつフランスらしいエレガンスもたっぷりのインスト・プログレが絶品。ギターが伸びやかに歌うロマンティックなパートも大変良く、同郷で言うとSHYLOCKに近いスタイルです。演奏をタイトにまとめ上げる手数多くキレのあるリズム・セクションは、甘やかさのあるリード楽器のプレイと鮮やかな対比を成しています。これ、70年代にリリースされていてばきっとフレンチ・プログレの名品として語られていたはず。ジャズ・ロック・ファンにもシンフォ・ファンにもおすすめです!
スウェーデン出身、オルガン兼ギター奏者とドラム兼ハーモニカ奏者によるデュオ編成、69年のデビュー作。ほの暗く厚みのあるトーンで荘厳に鳴り響くハモンド・オルガン、重く力強いリズム・セクションを中心とするヘヴィ・インスト・アート・ロック。曲によっては、歪んだトーンのサイケデリック&ブルージー&ヘヴィなギターが炸裂し、ハード・ロック前夜の煙のような空気が充満します。クラシカルなエッセンスを感じさせる曲では、ヘヴィに歪んだ音の向こうにある透明感あるリリシズムも印象的です。
サックス奏者を擁するフランスのジャズ・ロック/アヴァン・ロック・バンド。77年の唯一作。サックスとキーボードの感じは『4th』『5th』あたりのソフト・マシーンですが、ギターとリズム・セクションが実に強烈で、その組み合わせが個性的。硬質なトーンで音を叩きつけるように鳴らされるリズム・ギター、重くタイトで力感たっぷりなリズム隊、そして、ダダイズム感たっぷりに無意味な叫びを続けるヴォーカル。何というテンション。ソフト・マシーンをはじめ、クリムゾン『太陽と戦慄』のファンはまず驚くはず。これはずばり傑作。
76年〜78年に活動したニュージーランド出身のプログレ・ハード・バンド、77年の唯一作。ピーター・ガブリエルにちんどん屋&サーカス風味を加えたような演劇的かつ素っ頓狂なヴォーカルがいきなり強烈。演奏もテープを早回ししてるようにえらく焦燥感たっぷりで、切れこむ変拍子のキメはジェントル・ジャイアントばりだし、エッジの立ったトーンで忙しなく動きまわるベースはイエスを土台にしつつも何だか違う方向に突き抜けちゃってるし、子供の声みたいなコーラスも奇天烈感たっぷりだし、イングランドが『ガーデンシェッド』をリリースしたのと同じ77年に、南半球にて、ジェネシスとイエスのエッセンスを同じく継いだこんな名盤というか迷盤が生まれていたとは・・・。これは名づけて「大道芸プログレ」!痛快なるプログレ・ファン必聴の一枚です。
フランスのプログレ・バンドが唯一残した76年の作品。アコギとシンセ&エレピをメインに紡がれるシンフォニックな哀愁味を帯びたジャズ・ロックを持ち味とします。乾いた音色が郷愁を誘うアコギ、ジャジーで洒脱な音運びのエレピ、ここぞというパートでシンフォニックに溢れ出すシンセ、時にはサックスやヴァイオリンも絡んで展開されるアンサンブルは、ややシアトリカルさを含んだヴォーカルとも相まってフランスらしいメランコリーと耽美なロマンティシズムがたっぷり。後半はサックスの存在感が強まり、歌うように饒舌なサックスのプレイを中心に据えたジャズ・ロックがまたカッコ良し。前衛的なラスト曲も含め、フランスからしか出てこないであろうどこかミステリアスで浮遊感ある音使いが印象に残る逸品です。
フランスのシンフォ・バンドが78年にリリースした唯一のアルバム。ダークな幻想性と哀愁に富んだサウンドにシアトリカルなヴォーカルが映える、MONA LISAやANGEを彷彿させるスタイルが魅力です。クラシックの確かな素養を持つ格調高くどこかミステリアスなタッチのピアノとシンセ、霧の奥から聴こえてくるような幻想性を帯びた少しハケットにも似る奥ゆかしい音使いのギターらが織り上げる眩惑のアンサンブルは、いかにもフレンチ・プログレらしい耽美な香りがいっぱい。そこに時にまくしたてるように激しく、時にコーラスを伴い優しく繊細に自在な振れ幅で歌い上げるフランス語ヴォーカルが乗ります。まだこんな実力派のシアトリカル・プログレが存在したとは驚きです。上記2バンドがお好きならこれは是非!
キーボード/ギター/ベース/ドラムという4人編成のスウェーデン出身ジャズ・ロック・グループによる74年デビュー作。シャープでキレの良いクールな表情とファンキーなノリを合わせ持ったジャズ・ロックを基本としますが、突如牙をむくように荒々しいギターとキーボードが熱量高く畳み掛ける、マハヴィシュヌ・オーケストラばりの緊張感みなぎる超絶技巧アンサンブルが炸裂したりと、油断ならないスリリングなサウンドが持ち味。特にギターはマクラフリンに通じる知的な凶暴さを持っており、ハード・ロックすれすれの切れ味鋭くヘヴィにのたうつプレイが圧巻です。時おり挿入されるオリエンタルな旋律もセンス抜群。これぞユーロ・ジャズ・ロックの隠れた名品。
フランス出身、オリジナルは500枚限定プレスだったという80年リリースのレア・シンフォ作品。手数多く刻む緊張感あるドラムとスクワイアばりに存在感あるベースによる初期YES彷彿のリズムを土台に、ファンタジックで温かなトーンのシンセやジャジーで滑らかなギターが時にメロディアスにユニゾンしながら駆け抜けます。YESからの影響を強く感じますが、滲むようなエレピやオルガンが醸し出す甘い幻想性やシアトリカルな母国語ヴォーカルなどは、いかにもフランスらしい濃厚な聴き応えをもたらしていて流石。明るく開放的なサウンドを主とする聴きやすいフレンチ・シンフォの好盤です!
デンマーク出身のジャズ・ロック・バンドによる79年作。人の一生をテーマにしたと思われるコンセプトアルバム。細かくタイトに刻むジャジーなリズム隊に、フルピッキングで熱く弾き飛ばすギター、七色にトーンを変化させ豊かな色彩感をもたらすシンセ、そしてやや暑苦しくパワフルに歌い上げるヴォーカルらによる、熱量ある骨太なジャズ・ロックを展開します。ハード・ロック的なスピード感で疾走するパートではエネルギッシュな盛り上がりを見せますが、スッと熱が引きアコースティックギターやフルート、ストリングス・シンセなどが甘やかに交歓するロマンチックなパートへ、そのしなやかな切り替えが実に見事です。更に面白いのが、上記のジャズ・ロックをベースとしながらも、滑らかなフュージョン・タッチ〜フォーク・タッチ〜中世風味のクラシカル・タッチまで、一曲の中でもジャンルレスにどんどん展開していくコロコロと表情豊かな演奏で、とにかく痛快。ユニークさではデンマークのみならず、北欧でも屈指と言っていい一枚!
70年代に5枚のアルバムを残したフランス出身のギタリスト/マルチ・ミュージシャンによる71年作2nd。キーボードとプロデュースを務めるのはMAGMAで知られるLaurent Thibaultです。聴きものは1曲目。淡々と刻むドラム、歌うような奔放な音運びのベース、密やかなタッチのエレピやオルガン、そして繊細に奏でるヴィブラフォンらによるサイケの残り香たゆたうアート・ロックなアンサンブル。そこにジミヘンからの影響を感じるブルージー&エモーショナルなスリルあるギタープレイが炸裂!ギターが過熱すると共にバックも手数多く畳みかけてきて一気に緊張感が高まっていく後半の展開が見事。儚げな幻想美とロックの熱量が調和した名曲です。アコースティック・ギターを主役に据えたアシッドなフォーク・ロック曲も魅力で、牧歌的なフォーキー・サウンドが、不意にピリッとしたミステリアスな空気に包まれていく展開など、フランスのアーティストらしい感性を随所に覗かせます。フレンチ・ロック黎明期において特筆すべきアーティスティックな音楽性に彩られた逸品!
フレンチ・ジャズ・ロック・バンドによる82年の唯一作。ギターとサックスが時にエネルギッシュなプレイを応酬させ、時に一糸乱れぬユニゾンで快走する、硬質なテクニカル・ジャズ・ロックはもう抜群のカッコよさ!変拍子まみれの複雑なリズムを武骨に紡ぐリズム・セクションも圧巻の技巧の持ち主です。随所で現れるサックスが反復フレーズで熱っぽく煽る展開にはZEUHL色も感じられ、さすがフランスといったところ。仏ジャズ・ロック屈指のテクニックで押し通る、硬派なジャズ・ロック名盤!
オランダ出身、マルチ奏者の2人によるデュオ・グループ。72年の唯一作。ふくよかなリズム隊を土台に、豊かなトーンの端正なアルペジオから高速の単音リードまで卓越したアコースティック・ギターが要となり、クラシックの素養を感じさせるピアノをはじめとするキーボードが気品を添えるアンサンブルが印象的。クラシカルな格調高さとサイケ・ポップ的なキャッチーさとが同居したフックに富んだメロディとジェントルなヴォーカル&ハーモニーも絶品です。テクニック、メロディ・センスともにハイ・レベルで、トラフィック(特にデイヴ・メイスン)やフェアフィールド・パーラーやピンク・フロイドのフォーク・ロックな楽曲あたりが好きなら気にいるでしょう。ポップな楽曲は、キャパビリティ・ブラウンあたりも彷彿。ニッチ・ポップのファンもチェック是非。歌詞は英語です。
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