2022年8月31日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
今回取り上げるのは、フランスとドイツに接する美しき小国ベルギーのプログレ。
ベルギーといったら何と言ってもチェンバー・ロックの大家ユニヴェル・ゼロの本拠地ということで、チェンバー系の名グループを数多く輩出している国ですが、非チェンバーなプログレでもなかなかハイクオリティなアルバムが生まれています。
それでは、フレンチ・プログレともジャーマン・プログレとも趣を異にする魅惑のベルギー・プログレ探求に出発しましょう☆
ELP+GRACIOUS+アヴァンギャルドな実験精神!?
こ、これは凄い作品ですよ~。
ベルギーのアート・ロック/プログレ・グループによる72年の最終作2nd。
痛快に弾き倒すキーボード・ロックと、摩訶不思議なエクスペリメンタル要素が融合した、これぞ「アート・ロック」と呼びたい傑作!
当時のベルギー国内ではかなり知られた存在だったらしいグループの74年1stアルバム。
ベルギー北部の公用語フラマン語で饒舌に歌い上げるヴォーカルと、オルガンとギターをメインに据えたハートフルかつ哀愁に富んだアンサンブルの組み合わせが魅力的。
この巻き舌も交え歌うヴォーカル、イタリアのカンタゥトーレ作品にも通じる味わいが滲みます。
ヘヴィ・ロック・バンドLIGHT FIREなどで活動したベルギーのSSW/マルチ・プレイヤーによる75年の唯一作。
ギターとフルートが哀愁いっぱいに交差し、シンセがうっすら幻想のカーテンを引き、甘い声質のヴォーカルが少しシアトリカルに歌うポップ・ロックは仏ロック彷彿のロマンティシズムたっぷり。
でもダークな雰囲気はなく、明るさとノリの良さが魅力的なベルギー・ポップ・ロックの逸品です!
それでは、有名所から見てまいりましょう~♪
ベルギーを代表するシンフォニック・ロック・グループと言えばこちら。
持ち味と言えるユーロらしい芸術性の高さと英国ポップに通じる明快さや牧歌性が融合した、魅惑のサウンドが堪能できる初期3作を収録!
【関連記事】
魅力あるモダン・ポップ/ニッチ・ポップを聴かせるのは何も英国のバンドばかりではありません。英国勢を手本として時にその国ならではの要素も組み入れた、世界各国のモダン・ポップ/ニッチ・ポップを見てまいりたいと思います♪
RIO系バンドとも交流があり、カンタベリー直系の淡く知的なジャズ・ロックを鳴らすベルギーのグループと言えば?1stよりアヴァンギャルドな色合いを増し、緊張感でヒリヒリするスリリングな演奏を聴かせる傑作2nd!
【関連記事】
涼やかかつ色っぽさのある女性ヴォーカル入りのジャズ・ロック作品をカケレコ棚よりピックアップ!
そのCOSのメンバーだったKey奏者とベース奏者によるグループがこのABRAXIS。柔らかな音色のフルートを中心に、優美に音を散らすエレピ、フィル・ミラー彷彿の繊細なギターが織りなすサウンドは、ナショナル・ヘルスやギルガメッシュらカンタベリー・ジャズ・ロック勢に通じる芳醇さを持っています。名盤!
【関連記事】
欧米各国の「ど」がつくマイナープログレを発掘リリースしている注目の新興レーベルPAISLEY PRESS。リリース作品を一挙ご紹介!
冷たいトーンのシンセに多声合唱風のヴォーカル、CAMELのような暖かみに包まれたトーンから重厚なディストーションまで振れ幅の大きいギター。ひんやりとした幻想性とハードな熱気を併せ持つ、ベルギー産シンフォの秘宝!
【関連記事】
フレンチ・シンフォの名バンドASIA MINORを起点に、冷たく仄暗い幻想性を感じさせるシンフォの秘宝的名盤をご紹介してまいります!
ミック・ロックによるSTRAPPSのジャケを思い出すモダンなセンスのジャケがカッコいい75年作。音の方も最高で、まるで初期シカゴとウィッシュボーン・アッシュとクレシダが合体したような感じ!
【関連記事】
左右に配された2本のギターが時に美しくハモリ、時にお互いのリードをぶつけ合う。世界各国に生まれたツイン・リード・ギターの作品を定番からニッチ盤までピックアップ!
音の方はジャジーなキレがあってかなりカッコいいのに、このジャケですよ。ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターにR&Bフィーリングと女性ヴォーカルを加えたようなサウンドと言えるかな?
【関連記事】
淡い叙情性だったり、知的な凶暴性だったり、プログレッシヴな感性を持ったジャズ・ロック/アート・ロック作品を世界中からピックアップして紹介いたしましょう。
ほとんど知られていないベルギー産ジャズ・ロックですが、洒脱でテクニカルなブラス・ジャズに人を食ったようなユーモアをふんだんに散りばめたサウンドが大変ユニーク。
ケヴィン・エアーズやロバート・ワイアットのソロが好きな人はたまらないかも!?
シンフォニックなOZRIC TENTACLES!?
コズミックな音響とうねるギターはスペースロックそのものだけど、フルートとシンセにはオリエンタルで柔らかなシンフォ・テイストがあって、なのに違和感はゼロ。
このベルギー新鋭は凄いっす。
【関連記事】
「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことをコンセプトに、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を幅広く紹介するコラム。担当は、MUSEAからデビューした日本のアーティストnetherland dwarf!
緻密なスタジオ・ワークとポップ・センスが光る知性的なプログレ・ポップにはさらに磨きがかかっている印象。アラン・パーソンズ・プロジェクトのDNAを継ぐベルギー産プログレッシヴ・ポップ・バンド、佳曲ずらりの2014年作!
【関連記事】
ピンク・フロイドやアラン・パーソンズ・プロジェクトを彷彿させる、緻密なスタジオ・ワークとクールなポップ・センスとが絶妙にバランスした知性豊かなプログレッシヴ・ポップが魅力のベルギーのユニット、FISH ON FRIDAYの魅力に迫るインタビュー!
COSのメンバーだったKey奏者とベース奏者を中心に、WATERLOOやPAZOPやPLACEBOで活動していたフルート奏者、ギタリスト、ドラムにより結成されたベルギーの5人組ジャズ・ロック・バンド。77年の唯一作。爽やかに柔らかにたゆたうフルートを中心に、優美なエレピ、フィル・ミラー彷彿の繊細なギターが織りなすサウンドは、カンタベリーのナショナル・ヘルスやギルガメッシュに通じている印象。シャープでいてファンキーなグルーヴ感もあるリズム隊も特筆ものです。精緻かつダイナミズムもあるサウンドは、カンタベリー・ミュージックをはじめ、COSやPAZOPなどベルギー・ジャズ・ロックのファンは必聴でしょう。名品です。
ベルギー出身、ツイン・ギターに加え、ブラス&フルート奏者、キーボード奏者を含む7人組グループ、EMIより75年にリリースされた唯一作。ブラス・ロックを彷彿させる逞しくもシャープなリズム・セクション、クラシックな気品もあるドラマティックに盛り上がるツイン・リード・ギター、英VERTIGOの作品群を彷彿させる流麗なフルートや淡いオルガン、そして、多声コーラスを交えて荘厳に盛り上がっていくヴォーカル&ハーモニー。まるで初期シカゴとウィッシュボーン・アッシュとクレシダが合体したような何とも魅惑的なサウンドが全編で繰り広げられていてビックリ。演奏は安定感抜群だし、変拍子のキメを織り交ぜながら忙しなく畳み掛ける展開もプログレッシヴだし、メロディもフックたっぷりだし、これは素晴らしい作品。ユーロ・ロック名作!
ベルギー出身、ギターレスでサックス奏者とオルガン奏者を含み、女性ヴォーカル在籍という編成のプログレ・グループ。70年のデビュー作。サックスが低く垂れ込めるVDGGばりに荘厳なパートとジャジーなオルガンをフィーチャーしたジャズ・ロックなパートを行き交うアンサンブル、そしてジュリー・ドリスコールやキャロル・ギライムスを彷彿させるソウルフルな女性ヴォーカル。ベルギーのプログレと言えば、WATERLOOやIRISH COFEEのようなオルガン・プログレやCOSやPAZOPなどカンタベリー・フィーリングなジャズ・ロック・グループを思い出しますが、その両方のエッセンスを併せ持つのがこのグループ。シャープな高速リズムに女性スキャットとサックスとオルガンがユニゾンで畳みかける4曲目は、まさにこのグループならではと言えます。強烈な印象を残すジャケに負けない、ハイ・レベルでオリジナリティ溢れる好グループ!
ベルギーのプログレ・グループ、1978年唯一作。フレンチ・シンフォを思わせる冷ややかな質感のシンセをフィーチャーした、YESやGENSIS影響下のファンタジックなシンフォニック・ロック。・・・と思いきや、時折そこへガッツリと歪んだギターが絡み、ENIDばりの熱く重厚なアンサンブルを展開するのが印象的。穏やかでリリカルなパートとハードでエネルギッシュなパートをダイナミックに使い分けつつ、複数人で歌い上げられる多声合唱的なヴォーカル・メロディや柔らかなエレピ、ヴァイオリンなどを交えた音像はユーロらしくアーティスティックで、全体的に心地よく聴かせています。位置的にドイツとフランスに挟まれたベルギーですが、このバンドはまさにANYONE’S DAUGHTERなどジャーマン・シンフォの熱さと、PULSARなどフレンチ・シンフォの冷ややかさが交わり合った感じ。味のある作品です。
ヘヴィ・ロック・バンドLIGHT FIREなどで活動したベルギーのSSWによる75年のソロ唯一作。4人組バンド編成での制作ですが、本人はヴォーカル/ギター/キーボード/フルート/ベルなどを演奏するマルチ・プレイヤーぶりを発揮しています。ギターとフルートが哀愁いっぱいに交差し、浮遊感あるシンセがうっすら幻想的にアンサンブルを覆い、甘い声質のヴォーカルが少しシアトリカルに歌うポップ・ロックは、さすがフレンチ・ロックに通じるロマンティシズムがたっぷり。でもフレンチもののような憂鬱でダークな雰囲気はなく、総じて明るくノリも良いのが特徴です。ハンガリーのOMEGAなんかを想起する「いなたさ」も、かえって愛すべき度を高めています。ロマンあふれるポップな歌もの秀作!
60年代末に結成され70年にデビューしたベルギーのアート・ロック/プログレ・グループ、72年リリースの2ndにして最終作。ワイルドに唸るオルガン、クラシカルなピアノ、ファズが効いたサイケなギターらが縦横無尽に乱れ飛ぶアンサンブルと、実験的なミュージック・コンクレートが混ぜ合わさり全15曲を曲間なく疾走していく、これぞ「アート・ロック」と呼びたい傑作。クラシックの格式みなぎるピアノ独奏が突如ノイジーなサイケ・ギターソロに取って代わる衝撃のオープニング、ファンキーなリズムをバックにピアノがスリリングに舞うテンションみなぎるジャズ・ファンク、ボサノヴァっぽいアコギが10秒ほど鳴らされると、次にはBEGGARS OPERAのようにダイナミックなオルガン・ロックが炸裂!シンセによる不穏な浮遊音や爆発音やガラスの割れるSEなどが散りばめられるのも特徴的で、まるで夢と現を行き来しているかのような摩訶不思議な感覚を聴き手にもたらします。何と言っても素晴らしいのが、これだけ音数多く忙しなく展開するにもかかわらず、難解さどころかキャッチーですらある点。アヴァンギャルドな場面でも常にリズムが生き生きとしていて躍動感たっぷりなのがポイントに感じられます。ELPに実験精神を加えた感じ、またクラシカルなオルガン・ロックという部分ではGRACIOUSやBEGGARS OPERAも彷彿させます。いやはやこんな凄いアート・ロックが70年代初頭のベルギーに存在した事に驚き!
元PEBBLESや元MAD CURRYのメンバーによって結成されたベルギーのジャズ・ロック・グループ、72年1st。歯切れのよいブラスと優しげな英詩ヴォーカルをフィーチャーした、キャッチーなサイケ・ポップ風…かと思えば2本のサックスがスリリングに絡み合うテクニカルなジャズ・ロックが展開されたり、フリーキーな管弦楽パートが挿入されたりと、めまぐるしく変幻する一筋縄ではいかないサウンドが特徴。かつどこかお洒落というかユーモラスというか、決してシリアスになりすぎない軽快なアンサンブルを聴かせていて、非常にハイ・レベル。ケヴィン・エアーズやロバート・ワイアット、デイヴィッド・アレンといった、カンタベリー人脈のユーモア・センスにも近いものを感じます。これは東欧ジャズ・ロックの隠れた傑作!
72年に結成され2枚のアルバムを残したベルギーのポップ・ロック・バンド、74年の1stアルバム。ベルギー北部の公用語であるフラマン語(低地フランク語から分かれたオランダ語と系統を同じくする言語)で饒舌に歌い上げるヴォーカルと、オルガンとギターをメインに据えたハートフルかつ哀愁に富んだアンサンブルの組み合わせが魅力的。クラシカルに鳴り響く存在感あるオルガン、叙情的なタッチの憂いあるギター、素朴なアコギらが織りなす実直なアンサンブルに乗り、巻き舌も交えて歌うヴォーカルが見事で、イタリアのカンタゥトーレ作品にも通じる味わいがあります。「歌」をメインに聴かせる作風ですが、オルガン・ポップ作品としても素晴らしい出来栄えを誇る逸品です。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!