ヨーロッパの南東端に位置し、地中海とエーゲ海に数千の島々を擁する国、ギリシャ。
西洋文明の根源と言える古代ギリシャ文明を築き上げ、政治・学問・芸術など様々な方面に影響を及ぼす多くの知識人を輩出した国。
また古来より中東・アジア、そしてアフリカなどヨーロッパ以外の地域と関わりが深かったのもあり、その音楽性にも独特のエキゾチズムと神秘性が滲んでいます。
そんなギリシャを代表するミュージシャンといえば、やはり『ブレードランナー』『炎のランナー』といった映画音楽、また2002年日韓ワールドカップのテーマ曲でも知られる、名コンポーザーのヴァンゲリス。
今回は彼が在籍したプログレ・バンド、アフロディテズ・チャイルドを起点に、ギリシャが生んだプログレ&ロックの名作たちをご紹介してまいりましょう。
ヴァンゲリスを中心に67年に結成されたグループ、最終作の71年作3rd。黙示録をテーマとする2枚組のコンセプト・アルバムで、キャッチーなメロディとギリシャならではのエキゾチズム&崇高さが融け合った、唯一無二のサウンドを鳴らしています。ギリシャのみならずユーロを代表するプログレッシヴ・ロックの傑作。
『666』リリース後、アフロディテズ・チャイルドは解散し、個々のメンバーはソロ活動に専念。後に世界中に名を馳せるヴァンゲリスの初のソロ・アルバムとなったのがこの75年作です。なおこの直前にはキーボーディストとしてYESにも誘われていた彼。そのよしみで、本作を含めた彼のソロ作品では度々ジョン・アンダーソンがヴォーカルとして参加しています。
『HEAVEN & HELL』リリースと同年の75年、ギリシャを代表するハード・ロック・バンド、ソクラテスのプロデュースも手掛けていたヴァンゲリス。76年リリースの『PHOS』では自身もキーボード奏者として参加しています。
そんなヴァンゲリスがキャリア最初期に在籍していたギリシャのポップ・バンドがこちら。ほとんどの楽曲を彼が手掛けており、どの曲も芳醇かつ哀愁滲むメロディが絶品。彼の優れた才能がすでに遺憾なく発揮されています。
ヴァンゲリスばかりになってしまいましたが、アフロディテズ・チャイルドでヴォーカル/ベースを務めたデミス・ルソスもまた、数々の世界的ヒットを飛ばしたギリシャが誇る名ミュージシャン。穏やかで哀愁に満ちた歌声に、管弦楽器を取り入れた気品溢れるアレンジ、そして地中海の風に吹かれるような透明感。心打たれる73年のソロ名作。
同じくアフロディテズ・チャイルドにてドラムを務めたルカス・シデラスもソロ作品を残しています。フォーキーでビートリッシュな中に、ほんのりと幻想性が漂うサウンドがGOOD。この暖かみと崇高さのバランスは、ジョージ・ハリスンにも近いものも感じますね。
ルカス・シデラス繋がりで、彼が参加したこの作品もご紹介。現代ギリシャを代表する音楽家の72年デビュー作。プログレ・ファンにはシンフォ系の作品で知られていますが、本作で聴けるのは素朴で心温まるフォーク・ロック。なおかつ時には泣きのギターや哀愁のハモンドなど、ギリシャらしい重厚なドラマチックさも発揮していてグッと来ます。
次はプログレ・ファン必聴のギリシャ・プログレの名作たちをピックアップ!73年唯一作。イタリアン・ロックにも通ずる性急さと、マイク・オールドフィールドも思わせるツーンと尖ったギター、ヒンヤリとしたシンセによるオリエンタルな雰囲気。畳みかけるパートでも終始格調高い雰囲気に満ちた芸術度の高いサウンドは、いかにもギリシャ。
ギリシャ出身で、アフロディテズ・チャイルドと同じく主にフランスで活動したグループ、73年の2nd。クリムゾン『リザード』に通じる静謐な気品、『太陽と戦慄』ばりのテンションみなぎる変拍子、ヘンリー・カウばりの狂気の室内楽的アンサンブル。極めつけは全面に出て主旋律を奏でるメロトロン!ギリシャのみならずユーロ屈指と言える傑作です。
男女二人のヴォーカルを擁するグループ、72年の唯一作。清楚な女性ヴォーカルとギリシアらしい哀愁いっぱいのメロディ、フルートが彩る陽光降り注ぐようなアンサンブル。メロウ・キャンドルやヴァーティゴやネオン・レーベルのメロウなバンドに通じる逸品。
ちょっとマイナーな作品ですが、ギリシャ・プログレの名バンドAKRITASのヴォーカルと一緒にバンドを組んでいたギタリスト、KOSTAS TOUVASの74年作2ndソロ!エキゾチック&アーティスティックなオルガン・ロックの名品!
次はギリシャのフォーク名作。軍事独裁政権下だった69年のギリシャで、こんなにもリリカルでドリーミーなフォーク作品が生まれていたとは。素朴で味わい深い現地語ヴォーカルと、美しいピアノ、フルート、ハープシコードの旋律が優しく寄り添い合う涙の逸品。
次はニッチなギリシャ・サイケ!60年代のジェファーソン・エアプレイン・フォロワーかと思ったら、80年代半ばに結成されたバンドだって!?紅一点女性ヴォーカルと男性ヴォーカルのハーモニーといい、グレイトフル・デッド「DARK STAR」のような酩酊感あるギターといい、シスコ・ファンにはたまらぬサウンド。
ギリシャのサイケ/プログレ・バンドによる75年作。ポコポコと鳴るパーカッション、どうにも野暮ったいアコギ、ひなびたブルース・ハープの音色に叙情たっぷりのギリシャ語ヴォーカル…とめどない哀愁を滲ませながら突き進むサイケ・ロックが癖になります。ユーロ/辺境サイケ好きならドンピシャな一枚!
こんなバンドもギリシャにおりました。なんとSANTANAに影響を受けたというギリシャのラテン・ロック/サイケ・バンド。エキゾチックなギターと酩酊感のあるオルガン、ファンキーなパーカッションのグルーヴに、時折炸裂するギリシャらしい哀愁のメロディがたまりません。
最後は現代のバンドをピックアップ。10年にデビューした、女性ヴォーカル擁するギリシャのプログレ・グループ。幽玄かつ神秘的でいて、ここぞではヘヴィ&アヴァンギャルドに展開。女性ヴォーカルはマイク・オールドフィールドの作品に起用されそうな美声だし、これはずばりセンス抜群の逸品!
ギリシアを代表する名作、73年の唯一作。バロック調のオルガン、端正なタッチのクラシカルなピアノ、アグレッシヴなキーボード、エッジの立ったエキセントリックなギター、手数多くアグレッシヴに疾走するドラム、静と動のパートの鮮やかな対比。これぞまさにプログレ。イタリアン・ロックを想わせる、性急さと畳み掛けるようなテンションも魅力。曲間なく全体がつながったコンセプト作で、静と動を自在に操る演奏力と、30分以上を一気に聴かせる構成力も見事です。
盤質: | 無傷or小傷 | 傷あり | 全面に多数傷
状態: | 良好 | 並(経年) | 並(一部不備) | 不良 |
盤レーベル面に若干曇りあり、ケースツメ跡あり、背ジャケにウォーターダメージあり
72年作の3rdである本作は、黙示録をテーマとした一大コンセプト作品。ロック、ポップ、クラシック、ジャズ、民族音楽などが渾然一体となっためくるめくサウンド、叙情と狂気を同時に孕んだ圧倒的な表現力は、これぞプログレッシヴ・ロック!VANGELIS率いるAPHRODITE'S CHILDが70年代に世に送り出した一大傑作。
初回5000枚生産限定紙ジャケット仕様、2枚組、スパイラル・ヴァーティゴ・ロゴ内袋、03年リマスター、定価3107+税
盤質: | 無傷or小傷 | 傷あり | 全面に多数傷
状態: | 良好 | 並(経年) | 並(一部不備) | 不良 |
帯有
ギリシャ出身で主にフランスで活動したグループ。ピアノ/オルガン/メロトロンを操る鍵盤奏者が中心で、デビュー作からギタリストが抜け、ギターレスのキーボード・プログレ4人組となって制作された73年の2nd。ベーシストも代わり、一気にプログレ/アヴァンギャルド色が増しました。キング・クリムゾン『リザード』に通じる静謐な気品を漂わせるパート、鋭利に尖ったトーンのキーボードのミニマルな反復に『太陽と戦慄』ばりに狂気の変拍子が炸裂するパート、ヘンリー・カウばりのフリー・ジャズ/チャンバー・ロックなパートなど、一瞬たりとも気の抜けないテンションみなぎるアンサンブルが続きます。特筆なのがメロトロンで、持続音で荘厳にたなびく感じの使い方が一般的ですが、このグループは、全面に出てまるでピアノばりに主旋律を奏でます。アヴァンギャルドかつクラシカルな気品に満ちたギリシャ屈指・・・なのは言わずもがな、ユーロ・ロック屈指と言っても過言ではない傑作アルバム。必聴です!
ギリシャのサイケ/プログレ・バンドによる75年作。鼓笛風のリズム隊に、どうにも野暮ったいリズムギターと叙情ほとばしる泣きのエレキギター、ひなびたオルガン、そして哀愁たっぷりのギリシャ語ヴォーカル!どこか昭和な香りすら感じ取れるコテコテのサイケ・ロックに冒頭からやられます。トルコのHARDALを思い出させる強烈な哀愁が見事。と思ったら2曲目はシリアスでドラマチックな聴き応えあるオルガン・ロックで、これはなかなかのカッコよさ。以降も結構ソリッドな音をやっていて、1曲目の印象からはやや離れたサイケ・ハードを展開。1曲目とそれ以降の落差に驚きますが、とめどない哀愁を滲ませながら突き進むサイケ・ロックは、ユーロ/辺境ファンにはたまらないサウンドのはず。傑作!
ギリシャの名バンドAPHRODITE'S CHILDのドラマーによる73年作ソロ。ビートリッシュなポップさはあるものの、サイケデリックというか白昼夢といった感じの繊細な幻想性が渦巻いているのがいかにもギリシャ・ロックで、『666』のサウンドを確かに受け継いでいます。遠い記憶のように、現実と非現実の間でたゆたう音世界は、どこか懐かしく、どこか蓋をしたいようで、何とも言えぬ味わい。直接的に似てる気はしませんが、なんだかジョージ・ハリスンが頭に浮かんだり、もしかすると人懐っこさと崇高さのバランスが近いのかもしれません。メロディはフックあるし、味わい深い好盤です。
紙ジャケット仕様、英文ペーパー付仕様
盤質: | 無傷or小傷 | 傷あり | 全面に多数傷
状態: | 良好 | 並(経年) | 並(一部不備) | 不良 |
帯有
ギリシア、69年作。アコギの爪弾きをベースに、ピアノ、フルート、ハープシコードが透明感溢れるリリカルなフレーズを添える美しいアンサンブルと、ちょっと虚ろな男女ヴォーカルとによるフォーク作品。繊細で格調高いサウンドは、季節で言えば「冬」。ピンとはった空気に心引き締まる好盤。
ギリシアを代表するプログレッシヴ・ロック・グループ。あのヴァンゲリスがプロデュースした76年作の4thアルバム。前作までのハード・ロックを土台に、幾重にもキーボードが絡み、スケールの大きなサウンドを聴かせています。独特な粒立ちのギター・トーンやツーンと透明感のあるエキゾチックなキーボードなど、ギリシアを代表する名作『APHRODITE'S CHILD/666』を彷彿とさせます。バンドの躍動感は変わらずで、ギタリストのセンスは特筆もの。スリリングなリフといかにもギリシア!と言えるスリリングなソロでヴァンゲリスの才能に対抗しています。ギリシア・プログレを代表する名作。
盤質: | 無傷or小傷 | 傷あり | 全面に多数傷
状態: | 良好 | 並(経年) | 並(一部不備) | 不良 |
軽微な汚れ・軽微なスレあり