サイケデリックで、実験精神旺盛な、1970年前後のジャーマン・ロック。いわゆる「クラウト・ロック」。ドイツ料理「ザワー・クラウト(キャベツの酢漬け)」にちなんで、ロック本場の英国人が呼び示した蔑称なわけですが、そんな意味はいざ知らずとも、その音楽性と語感が持つ不可思議な魔力のトリコにされてしまったリスナーは、いまなお増殖していることでしょう...。
ここでは、そんな「クラウト・ロック」を愛聴している皆さんが、最終的には「ジャーマン、ジャーマン、雨、ジャーマン。雨、雨、ジャーマン...」といった具合に、もうドップリとジャーマン漬けになられることを願いつつ、「クラウト・ロック」を足掛かりに、広くドイツのロックをご紹介してまいります。
第一弾は、CANやAMON DUULなどお馴染みのミュージシャンの関連作をご紹介!
別項の特集「趣味のクラウト・ロック」も併せてどうぞ。
CANの前身ユニットが手掛けたアングラ社会風刺映画のサントラ。69年録音。初期ソフトマシーンに通じる地下臭漂うサイケロックを下地に、原初的な打楽器や笛の音色、即興演奏など、音響的な覚醒すら迎えていないもののサウンドは既に『CAN印』。
本人達から「無関係、失敗作」という烙印を押されているクラフトワークの前身。70年唯一作。多様な打楽器による即興が次第に規則的なビートへと移ろい、その上を幻想的なフルートが浮遊し、ベースを伴い、やがて重なりスパークを迎える長尺酩酊曲。
前述のオーガニゼーションの打楽器奏者やクラフトワーク黎明期のドラマーが在籍したグループ。72年唯一作。疾走する原初的なリズム隊のうえで、不釣り合いの管楽器&2本のファズが饒舌なソロを取り合う、ヘヴィでサイケなアフロジャズロック曲!
CANのH.シューカイとJ.リーベツァイトが携わったケルン出身のトルコ弦楽器奏者。ギター、ベース、ドラムを従えたバンド曲は、初期CAN×オリエンタル×レイドバック&アーシーなルーツロック、といった新触感。東洋サイケ好きにも推薦の秘宝盤。
制作/作曲=A.レイチェル、音響=C.プランクという最強布陣で制作された黒人シンガーの71年作。土臭くソウルフルなポエトリーを乗せたヘヴィサイケファンク。初期CANのM.ムーニーとは異質の大陸的シャウトで、魂に問いかける過激ワードを連呼!
こちらはA.レイチェルとC.プランクが企画/参加したジャーマン式クリスチャンサイケ盤。71年作。彼らにしてはギミックや音効は控えめで、ブルース、R&B、ハード、果てはゴスペルまで、ジーザス満載の歌詞を載せた珍妙な佳曲が並ぶ好企画盤。
ポポル・ヴーの名盤「ホシアンナ・マントラ」等に参加したC.ヴァイト在籍のグループ。ヴーのフローリアンとダニエルも参加したネイティブアメリカンをテーマにした73年2ndから、女性Vo入りフォーク曲を。1stは「趣味のクラウトロック」をご参照。
M.ゲッチング、H.エンケ、K.シュルツェといったアシュラテンペルのメンバーを中心にしたプロジェクト。74年作。実験性と神秘性、そしてエレクトロニクスを駆使した酩酊感溢れる極めてドラッギーなジャムセッション。スペースロック大名盤。
アモン・デュール/II/エンブリヨ等で知られるC.カーラーと親交の深かったコミューンサイケグループ。70年自主制作盤。デュールの音楽性とはまた異なり、ミニマルで原初的なリズムとコードを用いたアコースティックな瞑想/脱力ヒッピーフォーク。
ケルン出身のトルコ民俗楽器奏者、ALEXが残した2枚のアルバム(74年1st、76年2nd)を収めた2in1。1stはトルコの弦楽器baglama(バーラマ)の弾き語りを軸にした、叙情豊かなオリエンタル・ソングがメイン。打って変わって2ndは、エレキギター、ベース、ドラムが加わったレイドバック&アーシーな米ルーツ・ロック調のバンドサウンドを軸に、Holger CzukayとJaki Liebezeitによる音響ギミックが見え隠れするクラウト・ロックの秘宝盤。初期CANファンは勿論、Holger Czukay『MOVIES』のテイストや、オリエンタルなサイケが好きな方にも大推薦!
Achim Reichel作曲・プロデュース、Conny Plankエンジニアリングというジャーマン最強布陣で制作された、黒人シンガーのソロ作。71年発表。土臭くソウルフルなポエトリーmeetsジャーマン・サイケ。といっても、ドロドロなメッセージが渦巻くアンチテーゼではなく、彼の熱いソウル・メッセージを乗せたファンキーなサウンド。Achim Reichelのカッティングが冴えるアップテンポなファンク・ナンバー「Together Train」等、ノリのいいファンク・ロック・ナンバーをメインとしながらも、アコギやジャンベを多用した乾いたアコースティック・サウンドに程よく音響処理されたFrankieの声が乗っかる、およそジャーマンらしくない大陸的なスピリチュアル・サイケも収録。クラウト・ロックにおける黒人シンガーと言えば初期CANのMalcolm Mooneyを連想しますが、また彼とは異なった趣の「ソウル」を感じさせてくれる孤高のスピリット・シンガーです。
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